« 道州制に関するメモ(2) | トップページ | 事件報道 »

道州制に関するメモ(3)

九州の事例を紹介しましたが、北海道もまた道州制の実現にむけて積極的な姿勢で知られていますね。日本の両端から大きな声があがっているわけです。どちらも地理的な完結性をもっている点で共通していますが、地域意識も重要なのでしょう。「日本のアメリカ」とも言われる北海道が他の地域とは異なったその歴史的成り立ちから特有の地域性を保持していることはあらためて指摘するまでもないでしょう。なにか感覚が違いますよね、北海道出身者と話していて感じることがあります。

北海道は自らを道州制のパイロット地域と位置づけ、その先行的な実現を求めています。新たな行政区の画定が必要ないですから「縦の区割り」だけでいい、道州制の実現は最短コースとなるわけです。それだけ導入しやすい。また北海道が重要なのは九州に比べて経済的に弱い地域である点です。夢みる九州に対べて、北海道はより厳しい認識をもってなお道州制の実現を求めているわけです。地方分権化や道州制論に対してそれは「地方の切り捨て」だという左右の国家主義者からの批判があるわけですが、この点において厳しい財政事情の北海道のケースは注目に値するでしょう。

北海道庁のHPが道州制に関して詳細なコーナーを設けていますが、そこにあったこのPDFは北海道の思考を端的に伝えていると思われます。まず「官治的」な地方分権ではなく、住民自治の拡充を目指すとのことですが、地域間の経済格差、財政格差がある以上、自己完結型の道州制論(九州の「自律経済圏」)には立てないと述べています。そのうち2点についてだけ紹介します。ひとつは「縦の区割り」の問題、もうひとつは財政問題についてです。

先に述べましたように、北海道の場合は「横の区割り」は必要ない。国、道、市町村の役割分担だけに論点は集約されます。北海道の考える役割分担は、

・国の役割
外交、国防、社会保障
・道の役割
警察、高等教育、都市計画、産業政策、電源開発、金融、運輸、雇用、環境対策
・市町村の役割
消防、初等中等教育、都市計画、保健福祉、公衆衛生

といった感じで九州と同じく「ラディカルな」分権論に近いと言えます。法的には連邦制ではないが、実質的にはそれに近いイメージです。また公共事業に関しても国からのバラマキでなく道や市町村レベルで主体的に行うのが望ましいと述べられています。

次に財政問題ですが、まず北海道は財政力指数で全国的に下位にあり、市町村レベルでも自主財源でまわっているのはわずかというシビアな現状であります。97年と古い統計ですが、地方税収入が18%に対して地方交付税が23%、国庫支出金が22%とのこと。ふう。税源移譲した場合のシミュレーションによれば、移譲額は現在の交付税より1兆円低くなってしまうとこのこと。ふう。

というわけで経済的に完全に自立するのは無理なわけです。それで財源をどうするのかという問題になりますが、まず同州間での水平的財政調整モデルが挙げられています。各州間で所得移転をするやり方でドイツ連邦で採用されているそうです。ところが試算してみるとこの方式でも財政はもたないようです。それでどうするかですが、国庫支出金は全廃、また特定財源(いわゆるヒモつき財源)も可能な限り減らす必要がある述べ、地方税と地方交付税のふたつで構成される財政を理想型として提出しています。根拠はどちらも地方自治体の自由裁量が認められている一般財源であり、地方自治の理念からいって望ましいからであるとしています。

以下ややテクニカルになりますが、地方交付税のあり方についても現状維持でよしとはせず、現在の補助金化したあり方を改革すること、簡素化することで財政調整機能を充実させた新たな交付税のあり方を提言しています。またこの新しい地方交付税が確立するまでは国庫支出金を廃止する代わりに暫定的に包括的補助金という制度にすべきだとしています。これはフィンランドの制度だそうで、国が支出項目を細かく決定せずに地方に任せる補助金のあり方だそうです。また建設事業に関して国庫支出金ではなく一括交付金にすべきだと述べていますが、これも同様の論理で、要は地方の裁量を大きくするということです。

「道州制は自主・自律のバラ色の未来ではなく、国の財政構造改革により公共事業が減少していく中で、公共事業に依存してきた地域社会と経済を支えるため自らに厳しい改革を課す取組ともなり得るのである」という言葉が端的に示しているように、厳しい改革の試練としてとらえています。

もちろん完全自立できないところに所得移転はなされるべきだと思いますが、その条件は透明性が確保されていること、効率的な経営がなされていることにあります。大都市圏の住民たちが怒っているのは非効率なバラマキであります。北海道の提言する新たな地方財政のあり方がそれに答えるものであるのかどうかはわたしの能力を超えています。経済学者や財政学者のみなさんの評価を読んでみたいところですね。

|

« 道州制に関するメモ(2) | トップページ | 事件報道 »

地方」カテゴリの記事

コメント

九州なり北海道なりを先行させる、というアイデアはいいですね。
本件は地方分権の強化ということだけだと、国民にイメージがわかりにくい。経済的メリットの他、行政改革の一環としてあり、官僚の既得権益を奪うからこそ、官僚から抵抗もある、という路線でいけば、国民の支持を得やすいかな、とも思います。

投稿: 空 | 2008年3月28日 (金) 00時44分

ええ、わたしも九州、北海道をパイロット地域にするのがいいような気がしてきました。具体例を示すのが一番かと。どちらもやる気まんまんみたいですし、横並びで雪崩をうって変化が起きるかもしれません。
他の地域の議論も少し読んでみましたが、県民意識が邪魔をしてなかなかまとまれないみたいですね。関西州をめぐるつばぜり合いは笑ってしまいました。ここが最後になりそうな気がしますね。

投稿: mozu | 2008年3月28日 (金) 02時44分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/507226/11846073

この記事へのトラックバック一覧です: 道州制に関するメモ(3):

« 道州制に関するメモ(2) | トップページ | 事件報道 »