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NATOの現状

Economistの記事から。抄訳です。やや長めですが、NATOの現状について非常に分かりやすい記事ですのでご参考までに。我が国にもけっこう影響はありますから、この問題は広く理解される必要があると思います。アフガニスタンの現状から現在ぐずぐずの感のあるNATOの現状の解説になります。なぜ象徴的な貢献とはいえ給油問題であれだけ非難されたのか分かるでしょう。個人的には日本はNATOのオブザーバー的な地位を占めてもいいと思うのですがね。少しは国民の世界観も広がるでしょう。改革のキーになるのはサルコジです。ここで言及されているNATOと欧州連合との関係をどう調整していくのかという問題ですが、欧州の対米関係や対露関係の定義、さらには欧州そのものの定義にかかわるだけにかなり難しい問題です。


「暗い谷間の一条の光」[Economist]
アフガニスタンでまた戦闘のシーズンが始まる。欧州諸国が戦争に嫌気がさしている一方でアメリカはやる気のない同盟国にうんざりし、アフガン人は幻滅しつつある。それでもNATOは主導権を握っていると主張している。

昨年は最悪の流血の年であった。230人以上の欧米の兵士が死亡した。アヘン生産が記録的に上昇し、タリバンを財政的に潤し、カブールの政権の腐敗が進んでいる。対反乱作戦(counter-insurgency)の古い真理が有効だ。軍はあらゆる戦闘に勝利するが、収拾のつかない戦争を遂行する意思を失っていく。

英国の政治家で元軍人のパディ・アッシュダウンは大英帝国とアフガンの部族との戦いを描いたキプリングの詩「辺境の算術」を引用して説明する。こうした弱いはずなのに捉え難い敵との戦いでは「オッズは安い者の側につく」。実際、ジェイムズ・ジョーンズ将軍によるリポートによれば、「間違えてはならない。NATOはアフガニスタンで勝利しているのではない」。「この失敗は信頼性が高く、一体的で、実際的な軍事同盟としてのNATOの未来を深刻な危険に投げ込むことになる」だろうと。

来週ブカレストにNATOの指導者達が集まるが、アメリカの国防長官ロバート・ゲイツはNATOが「戦う意思があり、人々の安全を守るために死ぬ意思のある同盟国とそうでない同盟国」との2重の同盟になるだろうとの警告を発した。コストは主としてアメリカ、イギリス、カナダ、オランダによって担われているが、(イタリア、ドイツとともに)オランダはぐらいついているし、カナダは別の同盟国がカンダハールに1000人の部隊を派遣しなければ撤退すると言っている。イラクでのコミットにもかかわらず、戦力の大部分を供給し、アフガンの軍事訓練を行い、経済援助するのはアメリカというわけだ。アメリカは現在3000人以上の海兵隊員を展開している。

しかしこの暗闇にいくばくかの希望が生まれている。ニコラ・サルコジが駆けつけているのだ。ブッシュの不人気にもかかわらず、フランス大統領はアメリカとの友好を求め、ド・ゴールが1966年に脱退したNATO統合軍事機構への復帰を望んでいる。さらに望ましいことにサルコジ氏はブカレストで東部アフガニスタンに1000人のフランス軍兵士を展開することを発表することが予想されている。そうすれば米軍兵士がカンダハールに移動し、カナダ人はアフガニスタンにとどまり、互いに士気を高め合うことになるだろう。

またもうひとつの支援の手段が別の予期せぬ方からやってくる。ロシアだ。NATOの拡大とアメリカのミサイル防衛への怒りにもかかわらず、プーチン大統領はブカレストに招かれており、そこでNATO軍の補給のためのロシア経由の空路と陸路を開放する協定に調印する予定である。

米仏軍の到来は現地のNATO軍の指揮官が求めている戦力の不足を埋めることになるだろう。アフガニスタンはなお兵士不足なのだ。イラクの反乱が示すように異なる結果を生むのは数である。

対等ではない同盟
米欧はアフガニスタンへの同程度のコミットを共有しているわけではない。軍事手段が大幅に異なっているのだ。欧州はアメリカよりもGDPが大きく、より多くの兵士を抱えているが、そのグローバルな軍事的効果は弱々しいものだ。アメリカがGDPの4%ほどを防衛に費やしているのに対して、24の欧州の同盟国のうち5カ国だけがNATOの最小限防衛費の目標たるGDP2%を満たしているにすぎない。アメリカが対外遠征のために軍を組織しているのに対して、欧州諸国の軍はなお自国の国境線防衛のためのものだ。

欧州では英仏のみが対外派遣の伝統をもつが、軍事予算の伸びと闘っている。国家的プライドのためか自国の産業振興への願いのためか欧州の軍事支出は断片的で重複的だ。欧州の4種類の戦車に対してアメリカは1種類、16種類の装甲車に対して3種類、11種類のフリゲート艦に対して1種類といったように。

バルカン、中東、アフリカで戦力を展開している多くの欧州諸国は限界に近づいている。NATOのソースによればこれ以上10000人の部隊しか欧州から出せない。ヘリコプターも不足している。アフガニスタンの戦力強化の望みはイラクの米軍の縮小を待つほかないのだ。

そういうわけでアメリカはフランスの帰還を「巨大なチャンス」と見ている。NATOの議論はこれまでフランスの頑固とアメリカの苛立ちとの惨めな混ぜ物であった。アメリカは欧州連合が自らの安全保障と軍事力を展開しようとする試みを無駄であると考えていたし、2003年のサミットではイラク戦争をめぐる危機の中、フランス、ドイツ、ベルギー、ルクセンブルクが独立した欧州連合の作戦司令部をつくる計画を発表し、イギリスと他の大西洋主義者はこれをブロックするという具合だ。

今やムードが変わった。フランスの拒否(Non)の代わりにアメリカの考え方がおそらく(peut-etre)で迎えられる傾向にあるのだ。NATOの会合も衝突の場から「日曜ミサぐらい退屈な」会合へと変じた。

しかしNATOに参加することは立ち去ることよりも大変なことである。フランスは軍事計画のトップテーブルに地位を再獲得しようとする試みたが、あまりにも指揮権を求めたがゆえに1996年に決裂した。今回は今のところそのような駆け引きはない。その代わりにサルコジ氏は政治的なトレードオフを求めている。欧州連合の安全保障の役割を拡大することへのアメリカの支持だ。

アメリカもまた「コペルニクス的転回」を遂げつつある。より強力な欧州連合の防衛政策はNATOに取って代わるものではなくこれを補完するものであるというサルコジ氏の考えに説得されているようなのだ。アメリカのNATO大使は欧州安全保障政策(ESDP)の必要性を訴えたのである。「欧州は、アメリカは、NATOは、そして民主主義世界は必要としている、より強力かつ有能な欧州の能力を」「ソフトパワーのみのESDPは十分ではない」と。

米仏の接近によってイギリスは奇妙に仲間はずれにされている。イギリスは1998年にESDPの着手を手助けしたが、最近ではユーロ官僚(Eurocrats)に自律的な欧州連合防衛政策の最大の障害とみなされているのだ。今やイギリスはアメリカに方針を変えるように説得されている状態だ。

フランスは7月に始まる欧州連合の6ヶ月の議長国の期間に欧州防衛の野心的な計画を新たに開始しようとしている。これは2009年のNATO60周年にNATO統合軍事機構への帰還を可能にするだろう。サルコジ氏はイギリス議会で「兄弟関係」を望んでおり、防衛に関する「神学的」議論を放棄したいと述べた。しかし未来の統合へのイギリスの敏感さを配慮して詳細については言及するのを避けた。

アフガニスタンの教訓
ペンタゴンもアメリカの軍事力の限界を自覚している。アフガニスタンでは問題はタリバンの強さだけでなくアフガン国家の弱さである。

ブッシュ政権がかつて小学生をエスコートして時間を潰すなと述べた師団は今学校をつくり、モスクを改装し、「軍事的ソーシャルワーク」を行っている。司令官は今緊急に必要なのは非軍事的な力であると述べている。すなわち農業技術者、獣医、さらには人類学者だ。

軍や医師や国際的なエージェンシーはアフガニスタンで様々な目的で─例えば教師のいない学校の建設─働いている。この機能しない再建努力に方向性を与えるひとつの試みはアッシュダウン卿をカブールの国連代表に就任させることだ。しかしカルザイ大統領は彼をイギリスの総督を体現するものとみなし、反対した。尊敬されてはいるが控えめなノルウェーの外交官のカイ・エイデ氏が現在候補にあがっている。

アッシュダウン氏は問題を次のように要約した。「我々はタリバンを打倒できないだろう。タリバンを打倒できるのはアフガンの民衆だ。もし我々が彼らの支援をこのプロセスで獲得できなければ、我々は勝利できない」と。

軍事的なツールと非軍事的なツールをどう混ぜるかという問題─「包括的アプローチ」─が大西洋の両岸の戦略家の心中を占めている。米英は兵士を助けるために送られる民間の専門家の「予備」を結成する計画である。

この点で欧州連合はアメリカにもっと魅力的に見え始めている。欧州連合は既に経済援助と反腐敗トレーニング、警察、憲兵スタイルの作戦、選挙監視、他の国家建設のためのツールを結合させている。欧州連合は現在世界中で12のESDPの作戦を展開中ないし計画中であるが、ほとんどが警察や法の支配に関わる活動だ。しかし軍事的野心も増大しつつある。欧州連合はボスニアでPKFを展開し、ダルフール国境で警察活動をすべくチャドに3700人の兵士を送りつつある。

欧州連合は戦闘グループ(?battlegroups)の交代制も設置した。ノルウェーの戦闘グループのような部隊は統合のモデルである。小規模ではあるが、多くの専門家はこの戦闘グループは危機管理により役立つツールであると考えている。

欧州の無様なかたち
アメリカはこうしたリソースに頼りたいと考え、独立した欧州司令部に対するタブーを再考する用意があるように見える。イギリスもそうした組織をSHAPEに付属し、NATOのラベルを与えることを提唱している。NATOの頭でっかちな構造を簡素化し、その指揮権の一部をコンバートすることを提唱するアメリカ人もいる。欧州連合の役人は非軍事的な技術を利用する目的ならば、ブリュッセルに本部を設置するのがいいと答えている。フランスの国防大臣のエルヴェ・モランは欧州は軍事的影響力をもつべきで、「NATOの民生部門」ではないと言う。

NATOと欧州連合は多くの点で同じ団体の2つの腕である。21のメンバーを共有し、ブリュッセルに本部がある。欧州連合はNATOの保護下で発展したし、ベルリンの壁の崩壊後はかつての共産主義国の統合は共通の冒険であった。NATOのメンバーになることはたいてい欧州連合への参加に先行してきた。

しかしフィットしないギアのようにこの2つの団体はうまくかみ合わない。アメリカとの関係の設定は、キプロスの紛争やトルコの欧州連合内の位置の問題と同様に、閉塞を明らかにするだけである。キプロス政府はトルコを欧州防衛の団体から排除しようとするし、トルコはキプロスが代表になるならばNATOが欧州連合と結合することを禁じようとする。

その結果が危険な不条理だ。NATOと欧州連合はボスニアについて語るばかりで、NATOはアフガニスタンでの欧州連合の警察活動に保護を提供しないのだ。コソボでもNATOの平和維持活動と欧州連合の法の支配の活動に間にいかなる協定もない。両者は非公式に協力するが、重要文書は「テーブルの下で」交換されるだけだ。キプロスの新たな大統領選挙や平和交渉の約束は官僚同士の接触を滑らかにするかもしれない。しかしトルコの欧州連合のメンバーシップが疑問視されているうちはこれ以上の決裂があるだろう。

欧州の境界が至る所で問題を生み出している。アルバニアとクロアチアはブカレストでNATO加盟に招かれるようだが、ギリシアは国名紛争ゆえにマケドニアの加盟を保留している。アメリカはさらに進んで、NATOの加盟プランをウクライナやグルジアへと拡大することを望んでいる。アメリカと元共産主義諸国はこれを新興民主主義国の安定手段と見ているが、ドイツはウクライナの世論が分裂していることを理由に反対している。グルジアの民主主義の信任も疑わしいし、アブハジア、南オセチアをめぐる領土紛争も未解決のままだ。

クレムリンはNATO拡大を侮辱とみなしている。ドイツと他のいくつかの国は大統領がプーチンからメドベージェフに変わろうとする時にロシアを刺激したくない。ロシアとの直接対決に引き込まれるような国々へNATOの相互防衛の約束を拡大するという考えを好むメンバーはほとんどいないのだ。

悪い隣人達
プーチン氏はNATOの気の進まないゲストになるだろう。彼は新冷戦の恐怖をふりまくのに多くのことをなした。彼は自国で民主主義を抑圧し、対外的にも攻撃的に行動した。

ロシアは欧州の通常兵力を限定する条約を停止した。またもしアメリカのミサイル防衛を受け入れるのに同意したならばポーランドとチェコを核ミサイルの標的にすると威嚇した。ロシアは隣人への供給を停止することでオイルとガスを政治的武器として利用した。ますますコソボの独立からイランへの制裁まで欧州の利害の関わる問題で妨害者の役を演じている。

プーチン氏は不快なナショナリストのロゴージンをNATOの大使として派遣した。ロゴージン氏のオフィスはソ連時代の赤軍の戦車を率いるスターリンのポスターで飾られている。ロシアは良好な関係を望んでいるが、NATOがその友好を阻害しているのだと彼は言う。

西側の外交官はロシアのいじめ戦術はバックファイアを呼び、欧州人により強硬な立場を採用させるものだと論じている。バルカン諸国のような直接の隣人を恐怖に陥らせる一方で、ロシアはNATOへの通常の軍事的脅威となっているわけではない。がかつて中立だったフィンランドもスウェーデンもNATO参加を語りつつある。

新たな「戦略概念」を描いてNATOを再編成する必要についてブカレストで多くの事柄が語られるだろう。しかしアフガニスタンにおけるNATOの困難、さらには失敗の可能性にもかかわらず、ロシアの恫喝は同盟国が結束する明瞭な理由を提供することになるかもしれない。

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