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岸信介

岸信介—権勢の政治家 (岩波新書 新赤版 (368))原 彬久
ずいぶん前に読んだ本ですが、ブックオフで100円になっていたので購入して再読。非常にバランスのとれたいい新書です。岩波ということで特に警戒する必要もないです。筆致は冷静で淡々としていますが、飽きさせることなく、さりげなく散りばめられている興味深いエピソードにひかれたこともあって最後まで一気に読めました。岸信介は毀誉褒貶が激しい人ですが、間違いなく凄い政治家です。著者は「権勢の人」と呼んでいますが、これは蔑称ではありません。その理想への情熱と怜悧な知性と狡智に長けた権謀術数には圧倒されます。こんな政治家が日本にもいたのだなと感慨にふけりました。

岸の評価としては満州がらみのいつもの批判は別にしても、最近では日本経済に統制的な要素を導入した責任者として指弾するという1940年体制論者の批判が有力みたいな印象を受けますが、どうも批判としては底が浅いような気がします。なんとか論者に仕立て上げるにはかなり複雑で多層的な人ですから。政治家であって思想家じゃない。こういう真のマキャベリストはどんな矛盾でも平気で飲み込んでしまう。

戦前はともかくとしても戦後に関しては、小選挙区制の導入による2大政党制の提案にせよ、安保改定にせよ、非常に正しい認識だったと言わざるを得ないでしょう。また反対派はいったいなにをやっていたんだと言わざるを得ない。社会党のミスリードっぷりにはあきれてしまう。どこまで本気だったのかよく分からないんですよね。

この人に関しては国粋主義者とか国家社会主義者とかそういうレッテルをはって片付けてしまうのは実に惜しいことだと思います。あ、そう言えば、お孫さんもいましたね、おじいさんからいったいなにを受け継いだんでしょうねえ。

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