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異端審問

ヴァチカンが異端審問に関する展示会を開催しているようです。Revisiting the Inquisition[Newsweek]ヨーロッパの暗黒史としてこの異端審問は今でも恐怖の感情をひきおこす対象になっていますが、この展示会の目的はいわれているほどひどくはないことを示すためのものだそうです。現在の対テロ戦争における囚人の虐待や拷問について米欧諸国へ警告を与える意図もあるとのこと。むー。そういう言い訳になりますか。ローマのヴィットリアーノ美術館で異端審問にまつわる「神話を解体する」ために開かれたこの展示会には拷問具みたいなエグいものはなく、ユダヤ人やプロテスタントの迫害に関する史料や禁書目録やユダヤ人居住区の地図、監獄のスケッチなど60点ほどが展示されているそうです。ひざの出血部分を「修正」されたイエスの磔刑画が目玉のようですね。なにか地味な印象です。

これは異端審問が思われているほど残酷ではなかったことをヴァチカンが示そうとした最初の例ではないそうで、2004年には悪名高いスペインの異端審問で処刑されたのは被疑者のうち1,8%に過ぎなかったという内容のレポートを出版したこともあるそうです。確かに異端審問は近代の刑事訴訟法の先駆けともいうべき当時にあっては先進的な裁判制度だったと言われていますね。世俗の法廷などよりもはるかに理論的にも制度的にも厳密かつ稠密なものだったそうです。それぐらい知的リソースが結集していたわけです。

ヴァチカンとローマ市の共催でこれはイタリア史における両者の複雑な関係の和解の意味合いもあるそうです。またローマ教会の透明性を高める試みの一環として位置づけられている模様。とはいえこの程度の展示では異端審問の全容にせまるというわけにはいきません。異端審問に関する研究はそれこそ山のようにありますが、ヴァチカンに秘匿されている史料が完全公開される日は来るのでしょうか。すごい史料がまだまだたくさん眠っていそうな印象があるがゆえに作家の想像力を刺激するのでしょうね。

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