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マケドニア問題

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この旗がどこの国旗なのかご存知の方はそれほど多くはないと推測しますが、みなさまいかがでしょう。わたしは最近Coming Anarchyというサイトで知ったのですが、これはthe new sun of libertyと呼ばれるマケドニアの国旗です。またこの国に親近感を抱く日本人というのは稀少であろうと推測しますが、これもなにかのご縁でしょうか、この旗を見ているとなんとなく身近な存在に感じられるのが不思議なところです。

この旗がマケドニアの国旗になったのは1995年のことで、そこにいたるまでには隣国ギリシアとのごたごたがありました。マケドニアは旧ユーゴスラビア連邦の共和国のひとつでしたが、1991年の連邦解体とともに独立国家となり、Vergina Sunと呼ばれる類似の太陽モチーフの旗を国旗に選定したのですが、ギリシアはこの国旗の著作権を世界知的所有権機関(在ジュネーブ)に訴え出ました。国連の仲介で1995年に妥協が成立し、上の旭日旗(みたいなもの)に落ち着いて現在にいたっています。

問題はギリシアがこの国旗ばかりではなく、マケドニアという国名そのものの使用停止を求めていることにあります。現在マケドニアはEUやNATOへの参加を希望していますが、この国名問題がその障害となっています。遠くから見ているとなにやってんだかという感想を抱きますが、考えてみれば、われわれのすぐそばにも海の名前を変えろと躍起になっている国があるわけですから親近感がいや増そうというものではないですか。

わたしの巡回先のひとつにGlobal Voicesという世界各国のブログ界の議論を紹介しているサイトがあるのですが(もちろん日本のブログ界の議論もです)、このマケドニア呼称問題をめぐる議論の一端が紹介されていました。無体な要求にも見えるギリシア側の主張ですが、「マケドニア共和国」の呼称を使用することは、ギリシアの歴史、文化的な権利を侵害するものであり、またギリシア北部のマケドニア州に対する領土的主張を含意するものであるとのことです。そう、あの世界史で学ぶフィリッポス2世とアレキサンダー大王のマケドニアのことです。この名称はギリシア史に属するというのは果たして普遍妥当性をもつ主張でありましょうか。そのせいもあり、ギリシアと国連はこの国を「マケドニア」とは呼ばず、「旧ユーグスラビアのマケドニア共和国」と呼んでいるそうです。

Lucy Mooreさんは「この小さな国の名前としてはひどく長過ぎるけど、略してFYROM(長い名前の英語表記の略)と呼べるかも」とする一方で「紀元前3世紀の名前にこだわっているギリシアに比べれば、1389年のコソボに対するセルビアの主張が突然ずっと理に適っているように見えてくる」とその主張の妥当性に疑念を呈していますが、事情をよく知らないわたしも彼女に同意したくなります。ギリシアはNATO、そしてEU参加に対して国名を変更しない限りは拒否権を発動すると威嚇しており、EU拡大委員会も「この問題を解決できなければ、ネガティブな波及効果がある」と述べています。

もう少しブロガーの意見を拾うと、Balkan Babyさんは地域の安定を維持するために両者が妥協すべきだと論じていますが、その際、ギリシア側に柔軟になれと諭しています。ギリシア側の要求はマケドニアのナショナリストを刺激することになり、2001年に起きたアルバニア系住民との衝突のような事態を招くかもしれない。またマケドニアは貧しいけれども西側寄りの民主主義国となろうとしており、バルカン諸国ではなく地中海国家として自国をプロモートしているのだからと。Dieneke's Anthropology Blogさんは「マケドニア」というのは単なる地理的呼称ではなく、民族呼称であると述べ、マケドニア民族はマケドニア地方に住み、スラブ語族のマケドニア方言を話し、バルカンのスラブ人とは違うと考えているのであるから、両国の主張はそれぞれ一理あると述べています。ふーんという感じですが、そういう議論になるとやっかいそうですね。もう面倒だし、文化的に共通しているところが多いし、アレキサンダーを同じく英雄にしているんだからひとつの国になろうぜというラディカルな解決を主張しているギリシア人ブロガーもいます。

国連は現在、5つの国名の選択肢を提示しています。マケドニア立憲共和国、マケドニア民主共和国、マケドニア独立共和国、マケドニア新共和国、上マケドニア共和国の5つですが、マケドニアの国民にはえらい不人気らしくデモが各地で起こっているそうです。他はともかく上マケドニアはいやだろうなと推察申し上げます。

というわけで4月のEUのサミットでこの問題がどうなるのか続報を待ちたいです。われわれには直接関係ない話ではありますが。やはり国旗や国名の問題というのは感情を刺激する話ですから難しいですね。

PS われわれには関係ないと書きましたが、日本政府はコソボの独立を承認したばかりでした。日本政府にしては早い対応だったと思います。これもロシアがらみの問題ですが、日本になにができるでしょうね。政府の現状ではとてもなにかできるような状態ではなさそうに見えますが。

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