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中選挙区制の復活?

最近政界再編にむけて中選挙区制度の復活を論じる議論を目にするようになりました。政界のキーマンがあいついで同様の発言をしています。わたしが目にしたものだけでも、中曽根、麻生、小泉古賀各氏が小選挙区制度の弊害を述べているようです。少数党に転落している公明党、共産党、社民党がこれに賛成であることは言うまでもありません。公明党についてはたとえばここ

ヤフーの「みんなの政治」に与謝野氏のインタビューがありましたが(その1その2)、ここで氏も小選挙区制度の批判に連なっています。経済論戦におけるミスター財務省的な発言にはうんざりしていましたが、この人のことは以前からそれほど嫌いというわけではない。優秀な仕事人なんでしょう。まず日本経済に関して「自虐的」になるなとクギをさした上で(なかなかいい指摘もしています)、ねじれ国会について述べています。選挙制度に関係する発言を抜粋すると、

一つは、「無手勝流」の新人が、まったく選挙に出られなくなってしまった。小選挙区制は、志のある若い人に実質的に門戸を閉ざしているわけです。

また選挙において、正論だと思っていても、一部でも有権者の反感を買うような主張をしたら当選は危うくなりますから、皆に好かれるような口当たりのいいことしか言えない。

かつての中選挙区制では有効投票の二五%程度の得票で当選できたわけです。今は四五%ぐらいが必要ですから、そりゃあ「いいこと」しか口にできませんよ。第一、これだけ国民の意識が多様化していると言われるのに、どうして選挙では「二大政党」のどちらかを選択しなければならないのですか?

日本の選挙制度の変遷を見ると、明治時代に小選挙区制でスタートしたものが大選挙区制に変わり、その後、原毅が小選挙区制を復活させましたが、昭和三(一九二八)年以降は基本的に中選挙区制に改められました。この中選挙区制導入の時に、小選挙区制の弊害がずいぶん議論されたのです。「小選挙区小人物論」というのもあって……。

自民党の唯一と言ってもいい「売り」は、肝心な局面では多少国民の反発を食らっても「こうすべきだ」と言えたところでしょう。それが結果的には信頼につながっていた。ところが、今や総裁選びでさえテレビ映りや国民の人気が優先される。小選挙区制は、そういう政治の堕落を生んだ元凶です。

というように政治のポピュリズム化や政治家の小物化を小選挙区制度の導入に帰責しています。かつての中選挙区制度の弊害(利権屋の跋扈など)が除去されつつあるというメリットの部分の言及がないため一方的な批判だと思いますが、どうなんでしょう。二大政党制批判というのは英米にももちろんあるわけですけれども(国民の意見の多様性を反映しない)、日本政治の現状で中選挙区制度への復帰というのはやはり支持したくないと思います。またぐずぐずになりそうです。人材の確保や育成は党が責任をもち、ねじれの弊害は国会改革で対処し、政界再編は政策志向の違いで組み直しということでいいんじゃないですか。

ただ日本において二大政党制が今ひとつ機能しないかもしれない要因として社会グループ間の利害対立がそれほど明瞭になっていないことが挙げられるでしょうか。こののっぺりした社会では(格差がないという意味ではない)、労働者階級だから労働党とかヒスパニックだから民主党みたいなアイデンティティーと投票行動の密接な結びつきがあまり望めそうもない。実際、ここしばらくの選挙結果を見るとそのときどきの「空気」で大振れしてしまうという傾向が見て取れるのがやや不安ではあります。これはメディアの問題が大きいと思いますが。

PS ここで与謝野氏が歴史的経緯について簡単に触れていますが、1928年の議論に少し興味が湧いてきました。どういう背景があったんでしょう。

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コメント

はじめまして

アメリカの民主・共和両党は、小選挙区制下、軍需企業などから多額の政治献金を受けて選挙戦を勝ち抜き、他党を排除し、異常な軍事政策を固定化する壮大な金権選挙を続けている、と私は見ます。

中選挙区制だと利権政治屋を排除できず、小選挙区制であればそれが可能であるとはいえないでしょう。

問題候補は有権者が主体的に排除するか、問題政党に変わる政党の誕生を待つべきだと考えます。

民意を反映しない小選挙区制に代えて、私は「中選挙区比例代表併用制」を提案しています。ご批評いただけると幸いです。

中選挙区比例代表併用制を提案する
http://kaze.fm/wordpress/?p=164
小選挙区制の廃止へ向けて
http://kaze.fm/wordpress/?p=215

投稿: OHTA | 2008年7月 7日 (月) 15時47分

コメントありがとうございます。
この問題について私はそれほど堅固な意見を持っているという訳ではありません。真剣に考えている方々のご意見を尊重したいというのが基本的な姿勢です。リンク先の記事はこれから拝読させていただきたいと思います。お知らせくださいましてありがとうございました。

投稿: mozu@ | 2008年7月 7日 (月) 23時07分

与謝野氏については僕もいろいろ批判してますが、最近はちょっと考えが変わってきて、「インフレは悪魔的」という信念さえ変えてくれれば、日本にとって良い仕事をしてくれる人なのかなあという気がしています。
ただ、諸外国並みの2%~3%のインフレすら「悪魔的」と考えている理由が、いくらあの人の意見を読んでも分からないんですよねえ。あれだけの人でも、狂乱物価のトラウマから抜けられないんでしょうか。

中選挙区制については、もし中選挙区の方が大人物が出てくるのであれば、中選挙区に近い参院の方が衆院よりも大人物が出てくるはずだと思うのですが、実際にそうなってるかと言えば、「?」ですよね。

投稿: Baatarism | 2008年7月 9日 (水) 10時02分

インフレへの恐怖というのは説明困難な世代的なトラウマなんでしょうかね。私はデフレの恐怖の経験しかないからこのへんの感覚はよく判らないです。「悪魔的」云々を除けばこの人にはそれなりの敬意を抱いています。優秀な方だと思いますね。

選挙制度については正直判らないですね。例えばジェラルド・カーティス氏のような優れた政治学者も中選挙区時代の方がよかった、二大政党制を志向したのが冷戦崩壊以降の不毛な政治的混乱の元凶だみたいな評価をしています。二大政党制の国の方がそういう言い方をするので妙な説得力があるのですがね。ただ政治改革で得られたものもそれなりに大きいと思っているのでそこはそう言い切りたくないなという気持ちが沸き起こってきます。

投稿: mozu@ | 2008年7月 9日 (水) 15時10分

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