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マケドニア問題(2)

日本のブログ界ではさほど関心を集めなかったように見えるNATO加盟に絡んだマケドニア問題ですが(極東ブログさんはさすがにとり上げていました)、国名を変えろというギリシアの無体な要求により残念な結果になったことは既に報告しました。その後のこの国の政争や世論の動向には涙をさそわれるものがありましたが、この東欧の日出ずる国はギリシアばかりでなく北の隣国ブルガリアとの間でも歴史戦争を戦っているようです。

またGlobal Voicesが、両国のブログ戦争について報告してくれています。それによると、バルカン戦争の後セルビア支配下に置かれたこともあり、ブルガリア人にとってマケドニア人は20世紀初頭までブルガリア・ネーションの一部であったといいます。その後、セルビアの政策やマケドニズム・ドクトリンのせいで、ここの住民意識の変化が生じて、マケドニア・ネーションが形成されることになり、またコミンテルンやスターリンのスタンスがこうした結果に貢献したとされます。

他方、マケドニア人は自分達を古代のマケドニアの後継者である別のネーションであると考え、ブルガリア人が自分達の土地を占領したと非難し、マケドニアの歴史を盗み取ろうとしているしていると主張しているそうです。 サムイルオフリドの聖クリメント革命家のゴツェ・デルチェフといった偉人達はマケドニア人だと。これに対してブルガリアも同様の非難をしているそうです。ふう。

マケドニア側がブルガリアが自分達を「同化」しようとしていると恐れ、ブルガリア側がいわゆる大マケドニアの一部であるピリン地方を併合しようとしているのではと疑っていることが対立を激しくすることにつながっているといいます。

ブルガリア側のブロガーPeter Stoykovさんによると、マケドニアがブルガリアの一部かどうかとかマケドニア語というのものが存在するかとかブルガリアの国益はなにかとかいった議論になると、歴史家や政治家やネトウヨは命がけのナンセンスを競い合う。マケドニア人がブルガリア人なわけはない。そんなことは自分達が決めることだ。自分はマケドニアがブルガリアの一部でないことが嬉しい。ブルガリアは「バルカンの安定の焦点」であって、争いに明け暮れている周辺国の狂気に巻き込まれるべきではないと冷静な意見を述べています。

もう一人のブルガリア側のブロガーPeter Dobrevさんによると、「マケドニアはブルガリアの国民精神の揺籃の地である」というのが1944年まで(共産党がブルガリアで支配権を握った年)支配的な意見だったが、今日ではそうした記憶は色あせている。Peter Stoykovがマケドニア問題は存在しないというのは不思議ではない。誰もが自決権をもつ。誰もがアレキサンダー大王をギリシア人と考えるように、1878年以降マケドニアのリーダー達がブルガリア人だったのは争えない事実だ。自分達もブルガリア人だと言っていたし、外国人からもそう見られていた、ということです。

だいたいこの2人がブルガリア側の意見の要約になっていて、ほとんどのブルガリア人は隣人に対してなんの権利も主張していないし、内政干渉する気もないといいます。ただ多くが歴史の一部を放棄せよと迫るマケドニア側に苛立っているということです。同様の声はマケドニア側にもあるといいます。ふう。どこかで見た光景ではありませんか。

マケドニア側のIvica Anteskiさんは、両者の「真実」が一致しないならば、それはつまりどちらも真実ではない(あるいは一方が間違っている)ということだ。目撃証言が矛盾する時には、法廷対決で決まるが、歴史家はそうしたがらない。歴史家や文献学者やスラブ研究の専門家にどこに問題があるのか教えて欲しい。マケドニア人かブルガリア人かは忘れてくれ。学者に国籍はないのだから、とネットの戦争の無益さを説き、アカデミズムに解決を促しています。

というわけでどうもこの論争ではマケドニア側が突っかかっているのに対してブルガリアが迷惑顔という反応のようですね。マケドニアへの同情がブルガリアを悪役にしてしまうのではという危惧を語るブロガーもいるようですから、こういうネタで小国に同情が集まるというのはどうやら普遍的な現象のようです。そのうちセルビアやアルバニアも参戦したりしたら大変なことになりそうです。いずれにせよバルカンの地域秩序が不安定なうちはこの種の問題は続くのでしょう。

というようにこの種の問題はどこにでも転がっているわけです。個人的に東欧情勢に関心があるのでウォッチしているわけですが、自分たちが当事者でない歴史問題をウォッチするというのは頭をクール・ダウンして状況を理解するのにいい訓練になりますからおすすめしておきます。またこれを外国人に説明する際にもいろいろと役に立つことでしょう。

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