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NATO首脳会議

NATOの現状についてはEconomistの記事の抄訳をエントリしておきましたが、だいたい予想通りの展開になっています。日本語では毎日が比較的詳しめの記事を書いています。それによると、ブカレストで開かれているNATO首脳会談の第一目ですが、クロアチアとアルバニアの加盟によって加盟国は26カ国になり、さらなるNATOの東方拡大が進みましたが、懸念のウクライナとグルジアは加盟見送り、また以前エントリしたマケドニアは例の国名問題で駄目だったようです。

旧ソ連圏のウクライナとグルジアですが、米国の熱心な希望にもかかわらず、ロシアとの直接的な対立を恐れる仏独をはじめとする10カ国の反対によって見送られました。これは多くが予想していた通りになりましたね。ギリシアの狭量のせいでマケドニアは残念でした。バルカンの取り込みはずいぶん中途半端な格好になっています。

新規加盟問題に加えて、今回の会議の焦点はアフガニスタンにあるわけですが、フランスのサルコジ大統領が800から1000人のフランス軍をISAFの一環としてアフガニスタン東部に派遣することを表明しました。アフガニスタンの現状はイラクなどよりはるかに展望が見えない状況にありますが、これで少し息がつけるでしょう。カナダの撤退論も後退するものと思われます。またMDに関しても欧州防衛にとって重要であるという合意ができたようです。今回はアメリカの要求はあまり通らなかったわけですが、フランス軍の派遣とミサイル防衛の2点だけは外交的にポイントを稼いだことになります。


今回の首脳会談の焦点となっているのはサルコジですので、少しだけフランスの説明をしておきますと、この国の国家戦略を述べる際にしばしば用いられる語彙に大陸欧州主義と大西洋主義の2つがあります。前者は独仏枢軸を中心に大陸ヨーロッパをひとつの地政学的ブロックと考える反英米的な発想で、伝統的なゴーリストはこれに連なります。一方の大西洋主義は反対に欧州とアメリカとの関係強化を主張する新英米的な発想で、サルコジはこの大西洋主義者の代表とみなされています。もっともこの2つの軸は非常に複雑に絡み合っています。サルコジもNATO軍事機構への復帰によってアメリカとの距離を縮める一方で、NATOの指揮権の一部を要求するつもりですし、NATOとは別に欧州連合の防衛政策を強化することも狙っています。

というわけで単純な親米屋というわけではありません。それでもアメリカのポチ呼ばわりされていますが。簡単に言うと、アメリカとロシアの間で欧州連合の安全保障をどう構想していくのか、そこでいかにフランスが主導権を握るのかという問題ですが、あのごちゃごちゃと多数の国がひしめく欧州ですからまさに複雑な多元連立方程式のような問題になるわけです。アフガニスタンへの軍の派遣に関しては、野党社会党はもちろん国民世論の多数が反対にまわっているようですからこれから国内での反対世論との対決を強いられるでしょう。

この首脳会議をめぐってはいずれ分析記事が出てくるでしょうから追って紹介したいと思います。

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» 本の明晰 04042008 [つき指の読書日記]
 国連という国際政治最大の機構に対する、信頼というか、信仰にも近い絶対視がいつの間にか、日本の空気になっている。敗戦前の国際連盟からの脱退、ポツダム宣言の条件付き受諾、敗戦、そして米軍の日本本土占領、間接支配の占領期、そして1951年にサンフランシスコ講和条約締結し独立がかなった。しかし国連加盟は敵国条項があり、やっと5年後、念願かなって認められた。誰しもがこれで初めて国際社会の正式な一員になれたと、その喜びは感じたのは当然であった。しかし、国連はそのような場なのだろうか。  いま問題に...... [続きを読む]

受信: 2008年4月 4日 (金) 08時37分

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