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OECD勧告(2) 税制改革

OECD勧告の2008年度版ですが、ここのサイトで読めます。このうち話題になっている税制改革の提言の部分です。全訳ではなく要点のみです。

・財政再建には包括的な税制改革の一環としての歳入増が必要である
政府は包括的な税制改革を実施するべきだが、日本経済の中期的な成長を損なわないように歳入を増やすことが重要だ。現在の景気の拡大を維持するために税制の改革は段階的に実施するべきだ。税制改革は所得格差の拡大に対処し、地方税制の改善を促す必要があり、効率性、公正性、簡素化という目標にバランス良く配慮しなくてはならない。

・増収は主として消費税の引き上げを通じて行われるべきである
直接税よりも間接税の比率を高めることで経済成長への悪影響を最低限に抑えることができる。現在5%とOECDの中で最も低い消費税率の引き上げが必要だ。消費税率を1%引き上げると歳入は対GDP比で約0.5%増加する。

日本はOECD内で最低の付加価値税率(2006年の水準)
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出所: OECD(2006), Comsumption Tax Trends, OECD, Paris

・法人税の課税ベースを拡大し、成長を促すよう税率を引き下げる
法人税減税には特別措置を削減するとともに控除枠の引き下げが必要だ。法人税を納めていない企業の比率は減少するだろう。法人税を支払っている企業は全体の3分の1、大企業では半数に過ぎない。課税ベース拡大による増収分を利用して現在40%の法人税率をOECD平均の29%に近い水準まで引き下げることで成長を促すことができる。

日本はOECD内で最も高い法人税率
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出所: OECD (2007) 、Tax Database, OECD 、Paris

・所得の不平等の悪化を改善するために個人所得税制度を改革する
賃金所得の2分の1以下のみが課税対象であることから、個人所得税の課税ベースを拡大して税収を増やす余地も十分にある。これは、給与所得者と自営業者の間の公平性を推進するための給与所得控除(給与所得の4分の1以上)による。課税ベースの拡大による個人所得税収入の増加が法人税減税の影響を補完して、直接税収入は一定の水準を維持できることだろう。課税ベース拡大による増収分は勤労所得控除(EITC)の財源に充てることができるとともに、個人所得税率の引き下げ財源に充てることによって勤労意欲の向上を促すことができる。所得分配の裾野の広さ、勤労所得に対する低い税率、非雇用者に対する低い社会保障水準といった日本の特徴を考慮するならば、こうしたアプローチは効果的だろう。また公平性は死亡件数の4%にしか課税されない相続税の強化によって対処すべきだ。最後に勤労意欲を低下させる配偶者、扶養家族の控除などを見直し、金融所得の税制を改善することで成長を促す必要がある。

日本では課税される所得の割合は相対的に低い
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出所: Ministry of Finance, National Tax Agency and OECD (2006), Taxing Wages 2005 2006, OECD, Paris.

・そして地方税制を改善する
地方税制の改善も重要だ。現在、23種類もある地方税は複雑なシステムだが、地方政府の自律性は限定的だ。法人所得にかかる地方税を段階的に廃止する一方で、個人所得、消費、資産に対する地方税収を増やすことが改革の目的だ。また固定資産評価額を市場価格に近づけることで資産に対する実効税率も引き上げるべきだ。地方法人税の廃止によって全般的な実効税率はOECD平均に近づき、経済成長によい影響を及ぼすだろう。

勤労所得控除(EITC)というのは例の「負の所得税」のバリエーションでアメリカ、カナダ、イギリスなどで導入されている税制です。小沢一郎はこれを導入すべきだと以前は主張していましたが、今はどうなんでしょう。実際のところうまくまわるのかどうかよく分かりませんが、考え方の骨格はよく理解できます。このぐらい大胆に改革するには相当な政治力が必要でしょうね。今のように与野党で足を引っ張り合っているようでは厳しいです。

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