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やっぱり統計のとりかたに問題ありそう

FTの記事で紹介しようかと思っていたのですが、gooニュースで翻訳されていました。生産性に関する国際比較で日本がひどく低くなっている─サービス業に足を引っ張られて─のは統計の取り方の問題が大きいだろうと前々から思っていたのですが、デビッド・ピリング氏がその点について言及しています。

まず工事現場の誘導員やエレベーター・ガールが象徴としてよく引き合いに出されて、世界トップレベルの製造業に比べてGDPの7割を占めるサービス業が欧米に比べてひどく非効率であると批判されている事実に触れます。このブログでも採り上げた今年のOECD勧告でも同じ論調でしたね。曰く

現役世代が高齢化し減少するに伴い、「サービス部門の生産性を向上させることが、長期的成長を促進させるための最優先事項だ」と。同報告書によると、日本の製造業の1時間ごとの労働生産性は1999年〜2004年の間に毎年4%ずつ改善し、米国と同レベルだったものの、サービス部門の生産性向上率は0.9%に留まり、米国に大きく遅れをとったのだという。

しかしこうした分析には問題があるといい、日本の運輸システムがアメリカのそれよりも3割効率性が低いというのは事実に照らしておかしいことは誰にでも分かると述べます。こんなに効率的な国はないはずだと。医療制度に関しても患者の入院期間の長さを理由に非効率だと批判されるわけですが、ここにもなにか問題があるといいます。曰く

日本の医療費は国内総生産(GDP)の7.9%。対して米国では15.2%だ。(医療制度の品質を判断する基準として単純すぎるかもしれないが)日本の平均寿命は男性が79歳、女性が86歳。米国は男性が75歳、女性が80歳だ。

したがってこの分析手法にはなにかしら誤りがあるはずだと述べて、一橋大学経済研究所の深尾京司教授の見解を紹介しています。教授によると、サービス部門の効率を測るのに使う指標(工数あたりの付加価値や、資本と労働のアウトプットも含めて測る全要素生産性)は大まかなもので、国際比較は困難である。よく引き合いに出される小売部門に関して、曰く

小売部門の生産性を測る基本的な指標は、従業員が1時間あたりどれだけの商品を販売できるかだ。この指標を使うと、ドイツの成績はとてもいい。これがなぜかというと、営業時間が短いからだ。店が開いている時間が限られているので、客はやむを得ず短時間でたくさんを買うことになる。一方でこの測り方をすると、日本は成績が良くない。巨大でガラガラな米国のスーパーが、狭くて小さい日本のラーメン店や豆腐屋よりずっと成績がよいということになる。加えて日本にはあらゆる街角に24時間営業の店舗が立ち並ぶ、非常に密度の濃いコンビニ・ネットワークが存在し、おかげで消費者はいつでも好きな時間に買い物ができる。よって購買量は時間単位で集中しないため、効率が悪いということになってしまう。

加えて、日本の小売店がほとんどの場合は徒歩圏内あるいは遠くても自転車圏内にあるという点も、プラス材料として評価されていない。使われている統計データでは、小売店にたどり着くための移動の不便や、遠くの店で買い物することに伴う要素(交通事故の危険性、公害、道路維持管理費)などを考慮に入れていない。

さらに欧州委員会出資のプロジェクト「EU KLEMS」による生産性の国際比較では1995〜2004年の労働生産性が0.5%の上昇にとどまったのに対して、翌年の1995年〜2005年の労働生産性は2.1%上昇しているという事実を採り上げ、分析手法に問題があることは明らかであると指摘しています。このEU KLEMSの数字のことはよく知りませんでした。少し調べてみましょう。

これに続けて、だからといって問題がないわけではないと述べ、労働市場の硬直性やサービス価格の高さ(港湾使用料、空港着陸料、電力料金)といったよく指摘されている点について言及しています。最後は、生産者重視から消費者重視に転換し、内需拡大して輸出依存度を減らせと。まあここはいいでしょう。

というわけで問題点が指摘されている以上統計のとりかたについてしっかりと再考したほうがいいでしょうね。政策にも影響しますから政府も動いたらどうでしょう。この他、GDP速報値問題は有名ですが(こちらは改善の動きあり)、物価指数についても問題ありと一部で指摘されていますね。こちらはお願いですから予算回して改善してください。不確かな数字の幻に振り回されたくはないですからね。

PS 一方でこちらのインフレ万歳記事は思わずよく分かっていないだろうお前と言いたくなりますが・・・。日本でもこうした議論する人いるんでしょうか。気になります。

EU KLEMSの記述のところ、怒濤の如く読み間違っていましたので本文を修正しました。これは一橋大学の経済研究所がデータを提供しているようですね。ここのサイトには面白そうなデータがたくさんあるので、そのうち読んでみたいです。

最後に港湾の問題というのはいろいろな意味で非常に重要だと思うのですが、なかなか政治のアジェンダになりませんね。いやなっているのかな。ここも興味のあるポイントです。

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