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アイルランド、大丈夫か?

ここ10年ほどイギリス、スペインと並んで欧州バブル三兄弟の一角を占めていたアイルランドがやばい状況に陥っているという話は風の便りに聞いていましたが、不動産バブルがはじけてしまった模様で大変なことになっています。住宅市場の概観はEconomist作成のグラフ(下)が分かりやすいです。これを見ると、アメリカの住宅市場の高騰などたいしたことがないじゃないかと思われます。日本についてもいやな話を耳にしますが、おーい、大丈夫かぁ。

「クレジット・クランチはアイルランド経済を完全に押し流してしまうのか?」[Telegraph]という記事があったので紹介しておきます。訳ではなく要約です。

アイルランド首相アハーン氏は最近では最も成功した指導者として評価が高い。1997年に就任して以来、北アイルランドをめぐる和平交渉を進展させるなど世界の舞台での共和国の自信を高めさせ、いわゆる「ケルトの虎」と呼ばれる経済ブームを体現する人物であった。彼の下でこの小国は商業的に遅れた地域から西欧で最も成功した経済へと変貌した。

しかし先週からアハーン氏は収賄をめぐるスキャンダルに巻き込まれている。この政治的騒動はアイルランド経済にとって険しい時期に生じた。わずか数年前に成長率は10%をたたき出していたし、昨年ですら他のユーロ圏やイギリスを追い抜いていた。一人当たりのGDPも驚くほど上昇し、スイスやルクセンブルクと並んで世界トップクラスに躍り出ていた。

これが悪い方へ向かおうとしている。商業的にも文化的にもイギリスとの結びつきが強い国であるが、経済的な運が尽きそうなのだ。また他の欧州のどの国よりも共和国の金融の運命はアメリカと一蓮托生になっているため、アメリカが景気後退に入るに従って経済の見通しも悪化しているのだ。アメリカへの輸出は90年代を通じて増大し、全貿易額の5分の1を占めるにいたった。またアイルランドの教育レベルの高い労働力と安い法人税、それから移民を通じたつながりからアメリカの投資先として好まれてきた。アイルランド系アメリカ人の企業リーダーが「故郷」に投資する傾向がケルトの虎を支えてきたといっても過言ではない。

アイルランド中央銀行は2008年の成長率を3%と予想していたが(昨年は4.8%)、金曜にGDP見通しを2.5%へと下方修正した。これは突発的な惨事ではない。長いパーティーの後の二日酔いのようなものだ。住宅価格は一年で9%下落した。アイルランドは住宅ブームを経験し、不動産セクターは国民所得の10分の1、労働力の13%がここに属している。そのため不動産ブームが去ると、このセクターの雇用が急激に落込むのも驚くべきことではない。

アイルランドは減速しているが、景気後退に入るとは思えない。金融セクターはサブプライムの影響は少ないし、過剰なブームにもかかわらず、国民の多くはアメリカやスペインよりも慎重に振る舞ってきたからだ。アイルランドの貯蓄率は高いままで、HEW(housing-equity withdrawal)もきわめて低いため、この両者が住宅価格の下落の痛みを和らげるだろう。

しかし最近のニュースにはアイロニーがある。まずクローニー主義的な政治文化がアハーンの下で弱まり、経済的成功がアイルランド人をより従順ではなくした。新しい世代は移民になるよりも地元にとどまって、より高い生活水準を求めつつある。もうひとつはリスボン条約の国民投票でイエスの票のチャンスを損なうことを恐れて党のリーダー達がアハーンを追いやったことだ。しかしアイルランド人は欧州への愛を失いつつある。1999年にユーロに加わることは─イギリス人を困らせるためばかりではなく─すばらしい考えのように思えた。しかしユーロがドルに対して記録的な上昇をしている今、輸出は打撃を蒙っている。

どこかの段階でアイルランドはユーロから離脱するものと思われる。数年前には異端的に思われた考えだが、今は活発に議論されているところだ。ドイツ経済に都合よく欧州中央銀行によって維持されている金利の高さはアイルランドが必要としていないものだ。ブームが終わりつつある今、このことにアイルランドの公衆は気付きつつある。

というように見通しはたいへん暗いわけですが、景気後退には入らないのではないかという希望的予測を述べています。そうだといいですがね。それから後半でユーロ離脱論に触れています。これは絶対に出てくるだろうと予想していました。景気後退が深刻化するに従ってスペインやイタリアからも出てくることでしょう。各国の金融政策を不可能にした欧州共通通貨政策にはどう考えても無理があるわけですが、さて欧州はこの危機を乗り越えられるのでしょうか。ちなみにこの記事のコメント欄はお国意識まるだしでなかなか楽しいです。

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