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悪魔の弁護人

日本にも極めて悪質な犯罪者の弁護をあえてかってでることで有名な名物弁護士さんが何人かいますが、おそらくジャック・ヴェルジェの上のいく人はそうはいないだろうと思います。このたびまたしてもカンボジアのジェノサイドに関する裁判でクメール・ルージュの元リーダーの弁護を彼が引き受けたという話をBBCのニュースで知り、ああまたやってるなと思った次第です。光市の例の事件で弁護団がずいぶんメディアや世論に批判されていましたが(結局、死刑判決が出たんですね)、ヴェルジェのレベルまでくると、ある種畏敬の念の入り交じったような独特の感慨を抱かせるものがあります。事の是非は別にしてです。2004年ですから古いのですが、フセイン裁判の時のこの人のプロフィールをまとめたBBCの記事がありましたので紹介します。まあこういう弁護士もいるのですよと。

ジャック・ヴェルジェ 悪魔の弁護人[BBC]
ジャック・ヴェルジェは、その長いキャリアの中で、ナチ戦犯のクラウス・バルビーとカルロス・ザ・ジャッカルの弁護をしたことがある。彼によると旧ユーゴの指導者スロボダン・ミロシェビッチの代弁もしたことがあるそうだ。79才のヴェルジェ氏はカンボジアのジェノサイドの背後にいたクメール・ルージュの指導者ポル・ポトの友人であったとも言われる。論議の的になるキャリアから彼は「悪魔の弁護人」というニックネームを得た。旧イラクの首相だったタリク・アジズの弁護もするつもりだとヴェルジェ氏は言う。

ジェノサイド
裁判の詳細が─日時や罪科やどこで開廷されるのかすら─明らかになる前に、彼はサダム・フセンインのために行動することに同意した。罪科にはジェノサイドと人道に対する罪が含まれるかもしれなかった。BBCのヒュー・ショフィールドが言うには、彼は不人気な戦いをこそ行うことを生涯の職務にしているのだから、ヴェルジェ氏の50年のキャリアを追ってきた者にとっては、これほど論争を巻き起こすようなやっかいな人物をクライアントにすることになんら驚きはない。

ヴェルジェ氏はタイでフランス人の父親とベトナム人の母の間に生まれ、フランス領であるインド洋の島ラ・リュニオンで育ったが、この島で彼は壮烈なまでの反植民地主義的な世界観を獲得したとされる、と特派員は言う。第二次世界大戦では彼はシャルル・ド・ゴール将軍の自由フランスのレジスタンスで戦争の英雄としての評判を得たが、後には共産主義者となった。

アルジェリア戦争の間は彼はフランスへのテロで告発されたアルジェリア人達を弁護した。彼のクライアントの一人はアルジェのカフェに爆弾を設置した罪で1957年に死刑宣告を受けたDjamila Bouhiredであった。彼は彼女の判決を減刑させること成功し、彼女が釈放された1962年に彼女と結婚した。

後、1970年代には彼は極左と極右のチャンピオンとなり、イスラエルへのパレスティナの暴力やネオ・ナチの爆弾犯人の弁護もした。リヨンのブッチャーとして知られた元ゲシュタポのチーフのクラウス・バルビーの1987年の裁判のオファーがあった時には、エスタブリッシュメントの偽善と彼が見るところのものを暴露する機会に飛びついた。しかし彼はバルビーの341もの罪─ユダヤ人の子供を強制収容所に移送した罪も含まれる─に対する終身禁固刑を妨げることはできなかった。

カルロス・ザ・ジャッカル
爆破、誘拐、ハイジャックのキャリアからカルロス・ザ・ジャッカルとして知られるようになったヴェネズエラ人のイリイチ・ラミレス・サンチェスもまた彼のクライアントだった。この男は1997年に2人のフランス人諜報員を、そして1975年にレバノン人の革命家を殺害したことで終身刑を宣告された。

ヴェルジェ氏によれば、彼は2002年に欧州人権裁判所でハーグの戦争犯罪裁判のためにオランダ人が拘留したことに対するスロボダン・ミロシェビッチが起こした訴訟にも関わった。こうした評判を得ていることがヴェルジェ氏のクライアントの訴訟の助けになっているのか、妨げになっているのかを疑問視する者もある。サダム・フセインがジャック・ヴェルジェに弁護されているという事実そのものがサダムの有罪の証拠であると言うイラク人もいる。彼は「いつもギャングのリーダーを弁護しているけれど、サダムはその一人なのさ」と、イラクの暫定自治評議会のメンバーであるクルド人判事のNureddin Daraは語った。
(了)

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コメント

おもしろい記事ですね。
実際の弁護内容はどうだったんでしょうね。
裁判というからはどんな極悪人と思われているものでも、最大限の弁護をするのが公平ですが、光母子の場合はお粗末というより、被害者親族を傷つけ、社会に不信感をもたせ、結果的には被疑者の量刑にも悪影響だったようですね。
この記事の人の場合は減刑まで勝ち得ているのですからすごいですね。

投稿: 空 | 2008年4月23日 (水) 22時03分

この人の弁護士としての腕はどうなのかよく分かりません。アルジェリア人の奥さんは勝ち得たようですが。根っこは左翼の人なんでしょうが、テロリストだろうがナチだろうが弁護するその反骨ぶりには、なんかこいつすげえなあという感想を持ちますね。あちらでもああまたヴェルジェが来たよというようなリアクションですが、それなりの敬意も集めているようですね。こいつはガチだと。

投稿: mozu | 2008年4月23日 (水) 22時45分

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