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やっぱりペイしないのか

戦争を入門経済学で分析したポーストという人の「戦争の経済学」という本はしばらく前に読んで目からうろこの連続でしたが、この本ではおおざっぱに言って現代戦はペイしないよという結論になっていました。それで今日「週刊オブイェクト」さん経由で井上孝司さんの「防衛産業って戦争でボロ儲けできるの?」という論考を知ったのですが、戦争をしても軍事産業は儲からないよという事実を分かりやすく説いています。またアメリカの軍事関連業界団体も同様の報告書を出したそうです。軍事そのものについての知識は貧弱なのですが、こういう話ならば興味がありますのでメモしておきます。以下ただの紹介です。アメリカが戦争をするといつも軍産複合体の陰謀みたいな話が出てくるのですがそれってどうなのよと。

これらの話を簡単にまとめてしまえば、目先の戦争で必要な消耗品や作戦経費のために予算を食われてしまい、その分だけ大手防衛関連メーカーが得意とする大型正面装備に予算が回ってこなくなるということ。その正面装備も、システムの大規模化・複雑化でスケジュール遅延やコスト上昇、それに伴うキャンセルや規模縮小のリスクが大きくなっていて、必ずしも儲かるとは限らない。 現に、アメリカでは DD(X) も Virginia 級攻撃型原潜も F-22A も F-35 JSF も FCS (Future Combat System) も衛星関連のビッグ・プロジェクトも、そして MD 関連ですら予算削減のターゲットにしようと狙われまくっているし、何かというとコストやスケジュールが問題視されている。

つまりどこにでも売れるわけではないという点で販路の限定された製造業のようなもので、戦争をすることによって軍事産業が儲かるわけではない。戦争をしてもしなくとも同じというだけではなく、総力戦の時代ならいざしらず、イラクやアフガニスタンのような戦争では大型正面装備は最初に投入されるだけで占領統治にあたっては人件費や消耗品など諸経費に食われてむしろ武器メーカーにとってはマイナスであると。以下AIAの報告書PDFのイントロ部分です。

Introduction: Defense Budget Challenges Ahead

The Aerospace Industries Association is deeply concerned that three ongoing developments
within the defense budget will give U.S. decisionmakers far less latitude and flexibility to
respond to long-deferred defense modernization and recapitalization needs and requirements.

They are:
Inexorable growth in operations and maintenance costs.
Rising personnel expenditures, including future costs of recent increases in active
duty end strength.
Simultaneous needs for reset and recapitalization.
These three developments, working in combination, will require the next U.S.
administration to carefully formulate a national strategy for sustained, adequate
and balanced resourcing for national defense capabilities.

We present here an AIA Report on U.S. Defense Modernization, a study and recommendations based on our analysis of this important national security matter.

進行中の戦争において3つの要素、operations&management経費、人件費、(装備の)修復、補充経費が国防予算に占める割合が高くなっていることを懸念し、国防力の維持発展のために持続的でバランスのとれた財源を確保するよう国家戦略を練り直す必要がある、といった内容です。この報告書、ちょっと専門的なので十分に理解できない部分もあるのですが、要するに以上のような経費の上昇で装備や研究開発の予算がとれなくて大変だという話です。というわけで軍事産業はこのたびの戦争では儲けるどころか困っているという結論になるようです。もちろん国としてもぜんぜんペイしていないことは言うまでもありません。ちなみにただの好奇心によるメモでアメリカを弁護する意図はありませんので悪しからず。

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コメント

経済に全く疎いので、質問なんですが、戦争を景気対策の手段としての公共事業だ、とする俗説ってのは、あれはどうなんでしょうか? ハズレでしょうか?
http://www.nagaitosiya.com/b/war.html

投稿: 空 | 2008年4月18日 (金) 08時20分

不況脱出のための公共事業というのは現代戦では無理みたいですね。2つの世界大戦や朝鮮戦争は国内経済を活性化する戦争だったけれども、このタイプの大型ハイテク兵器ががんがん投入される長期戦は今は考え難い。軍産複合体としても平時に兵器をつくったり売ったりできばいいので別に戦争をする必要がない、むしろ戦争がはじまると困ってしまうということのようです。「戦争の経済学」は面白かったですよ。経済学入門書としても使えます。
http://www.amazon.co.jp/戦争の経済学-ポール・ポースト/dp/4862380573

投稿: mozu | 2008年4月18日 (金) 14時09分

ありがとうございます。m(_ _)m
おもしろそうですね。
早速図書館に頼んで読んでみます。

投稿: 空 | 2008年4月18日 (金) 17時55分

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