« 新哲学派のお願い | トップページ | サルコジ=ゴーリスト? »

ねじれの効用

Observing Japanという日本政治のブログを運営しているトヴァイス・ハリス氏が、WSJのオピニオン欄にねじれ国会に関して寄稿しておられました。外交安全保障に関しては意見が違うことが多いですが、内政面に関してはかなり意見が一致することが多い人です。よくある文化論みたいなものに逃げ込まずに政局の微細な動きにもよく目配りがきいているので日本人が読んでもさほど違和感を覚えることはないはずです。日本政治に関しては英語圏の大手メディアはずいぶんいい加減な記事ばかりでうんざりさせられることが多いのですが、質の高い情報がブログから発信されるようになりつつあるのは非常にありがたいことです。こうして取材もしなければ日本語もろくに出来ない「ジャーナリズト」たちが淘汰される時代が来ることを希望しています。まあ日本のメディアがひどいのが諸悪の根源なんですけどね。彼らばかりを責めるわけにはいかない。以下記事の内容を要約します。訳ではありません。

「分裂国会」
日本が分裂国会に入って8ヶ月、政局は見通しのつかない状態だ。自民党と民主党は一連の激しい争論を続けているのが、数ある中のその結果のひとつが金融市場が混乱に陥っている最中の日銀総裁の不在状況だ。状況は悪く見えるかもしれないが、こうした政争は実際には日本政治が改善されつつあることの印である。

1955年に政権与党についてから初めて自民党がその権力に関して制度的なチェックを受けることになっているのだ。これは重要なことだ。ほとんどあるいはまったく精査されることがなかった政策が国会審議の場で問われるようになったのだから。国民から見えないところで党内政治が行われた時代が去り、両党の対立が国民の前で繰り広げられているのだ。

民主党の新たな活動はいい結果を生んでいる。1974年から徴収されているガソリン税の「暫定税率」をめぐる争論を見てみよう。自民党は地方での道路建設や道路維持のためにこの財源を守ってきたが、この税金を自民党の「道路族」が私的目的のために利用してきたのだ。この財源の廃止は浪費と成長への足枷であると認識した前首相小泉純一郎の目標でもあった。

福田政権は2月から今年度予算案を衆議院にかけてきたが、参議院を支配している民主党はこの法案に反対し、いかに浪費的であるのかを示し、暫定税率と道路特定財源の廃止を呼びかけ、一般財源化すべきである旨議論してきた。今や自民党が行き詰まっている。日本の憲法では参議院が法案を通さない場合、衆議院が法案を採決することができる。これは技術的には可能だ。問題は4月1日から税金が期限切れになり、消費者が一時的な減税措置を享受し、消費者がこの撤回を望まないだろうことだ。また民主党の宣伝で、世論は暫定税率に反対に向かい、道路特定財源の廃止の計画を支持するようになっているのだ。

こうした活動で民主党は一時的に改革の主張者になれる。そうすることで自民党内に亀裂を入れ、改革派は自党と自身の理念の間の選択に追い込まれる。福田首相は小泉氏を含めた改革派と古いシステムの変更を望まない守旧派の間で引き裂かれている。

さらに重要なのはこの議論が両党の若い改革派を全面に押し出す機会を提供したことだ。民主党では暫定税率廃止を訴える60名からなる「ガソリン値下げ隊」が結成された。期限切れが間近に迫り、福田首相の駆け込みでの計画変更にともなって、自民党からは37人の若手グループが福田プランの支持グループが生まれ、特定財源の廃止を訴えている。

ガソリン税に加えて民主党は日銀総裁の任命を疑問視し、政府は任命手続きにおける参議院の憲法的に認められた役割を認めるよう、また民主党の望む基準にあった候補を要求している。この結果は1955年の自民党政権誕生以来最も有望な立法府による監視の実験となりつつある。

この効果は外交についても感じられる。民主党は自民党の日米関係のマネージメントを問題化してきた。まず米国艦船への給油の不適切な利用の問題を採り上げることによって、次に駐留米軍への思いやり予算の法案の通過を止め、その支出を調査する時間を参議院に与えることによって。かつてはより小さくより弱い左翼政党が同様の質問をしたが、その効果はほとんどなかったのだ。今や民主党は回答を要求し、少なくとも税金に関連する限りで、必要な監視を提供しているのだ。

これは日本の民主主義にとって重要なモーメントだ。二つの大政党が日本国家の将来にとって実質的な意味をもつ原則的な事柄についてオープンに衝突しているのだ。したがってまだ日本の政治システムには経済が直面する長期的な問題を扱うことができる希望があるのだ。たとえその進展が短期的には望めないとしても。とりわけこうした議論が改革派を全面に出す余地を与えるならば、この行き詰まりは日本が必要としているものであるであることが証明されるだろう。

以上のようにハリス氏はこのねじれ国会による「政治的停滞」とみなされるものを日本政治の向上にとって重要な契機ととらえています。ようやく政府への野党によるチェックが効くようになりつつあると。わたしは日銀総裁人事に関しての民主党の行動はハリス氏のように評価はできませんが(政治的理由でなく経済的理由から)、その他の論点については異論ありません。55年体制崩壊以降、長期不況の中、日本政治は迷走に迷走を重ね・・・と一般に語られますが、将来的には日本政治の進歩の時代として記述されることになるではないかと希望込みで考えています。ですから国民もあんまり悲観的になる必要はないし、メディアも今なにが生じているのか、それが日本民主主義発展史の展望の下でどのような意味をもつのか淡々と報じるべきだと思います。我らが父祖達はしびれを切らしてしまったわけですが(外部環境が最悪だったことは無視できませんが)、我らが世代は我慢強くいかないといけない。

追記
トビアス・ハリス氏→トヴァイス・ハリス氏でした。ハリスさん、失礼いたしました。

|

« 新哲学派のお願い | トップページ | サルコジ=ゴーリスト? »

政治」カテゴリの記事

コメント

ベトナムについてのブログを書いてます。
TBさせていただきました。
有難うございます。

投稿: ベトナム大好き | 2008年7月28日 (月) 00時30分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/507226/12262113

この記事へのトラックバック一覧です: ねじれの効用:

» トビアス・ハリス氏は、与野党の対立を評価。 [Espresso Diary@信州松本]
「与野党の対立は、むしろ日本にとって良い現象である」。CNBCでトビアス・ハリス氏が語っています。ブログ"Observing Japan"を運営しているシカゴ生まれのアメリカ人。話の中身はMozuの囀に要約されているのと、ほぼ同じ内容です。 おそらく日本の民放あたりでは、「政争に...... [続きを読む]

受信: 2008年4月11日 (金) 13時06分

« 新哲学派のお願い | トップページ | サルコジ=ゴーリスト? »