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上限金利の話

2年ほど前に貸金業法の改正をめぐっては経済系ブログ界や掲示板でずいぶん熱い議論がなされていましたが、Economistに関連した記事が出ていましたので紹介しておきます。上限金利を定めることの是非論については私は結果オーライの日和見派ですが(つまり良いのか悪いのかよく判らない)、「法と経済学」の実験として貴重な事例にも思われますのでウォッチしていきたいと思っていました。この記事は法改正によって銀行がサラ金から信用査定のノウハウを吸収するという結果をもたらしていると報じています。クレジット・スコアリング文化の確立に貢献するかもと。以下粗い訳でちゃんとした全訳ではありませんのでご確認を。

"Lenders of first resort"[Economist]
日本の貸金業者が銀行にリスク管理の教訓を与える

彼らは債務者の職場に一時間に何度も返済の督促の電話をしたり、あるいは夜中に自宅に取り立て人を送ったりするかもしれないし、もし払えないなどと答えたならば、現金を手にするために腎臓か目を売るように勧めるかもしれない。日本の賃貸業者の一部は醜悪な連中だった。

しかしこうしたことは彼らが日本の消費者金融の基礎であることを決して妨げなかった。1400万人、つまり人口の10%が賃貸業者すなわち「サラ金」から金を借り、約1万社(10年ほどで3万社から減少)が存在している。途方もないローンの価値は10兆ドルにものぼる。そのうち最大のものは公的に商いがなされ、しばしば大銀行と連携している。トップ7がこの市場の70%を占めている。しかしこの業界と組織犯罪組織すなわち「ヤクザ」とは縁遠い訳ではない、と日本の入れ墨の暴力団の専門家のJake Adelsteinは述べる。

このビジネスは日本社会の重要なニッチを埋めている。銀行から金を借りることが恥だとされ、保証人が必要とされる国で、サラ金のローンはわずか100ドルでも可能であり、債務者は証明が求められるが、担保は必要なく、ATMに類似したキオスクでの取引は1、2分しかかからない。ローンの金利はかつて29.2%の高さであった─ゼロ金利の国にあって─。2006年の法は2010年までに20%に金利の上限を設定し、取り立て方法を規制した。ローンは1年のサラリーの3分の1を超えることが認められず、サラ金が債務者の生命保険を購入することまで禁止された。というのもこれが、ゴホッ、「モラルハザード」につながる可能性があるからだ。

新しいルールはリストされた貸金業者の株価とこの業界全体のローンの量に大打撃を与えた。多くの会社が倒産し、いくつかが売却された。GEはその消費者金融部門のレイクを売却しているところだ。シティーバンクも処分を考慮している。しかし規制は尊敬される地位(respectability)をもたらすかもしれない。最悪の慣行が禁止されたことで主流の銀行が参入しているのだ。

結果として大手の賃貸業者が銀行にバック・オフィスの与信チェック・サービスを提供すべく自分達のビジネス・モデルを適応させようとしている。これは納得だ。結局、債務者の返済能力をすばやく査定することは金を提供するのと同じぐらい彼らのビジネスにとって中心的なのだから。さらに日本は西洋と同じクレジット・ビューローの文化をもっていない。各金融機関が自前のスコアリングをもち、債務者の信用情報は広範に広まったりしないのだ。

したがって銀行が今や消費者ローンの店頭として活躍できる一方で、サラ金は裏手で債務者に指を上げたり下げたりできるという訳なのだ。彼らは負債を徴収することもできるし、銀行ローンの保証人としても活動するかもしれない。

法人への貸し出しが儲からなくなり、日本の巨大銀行が消費者金融に焦点をあてつつある中でこうした変化が生じている。プロミスの20%を所有する三井住友、アコムの13%をもつ三菱UFJはそれぞれ異なる消費者金融の事業とクレジット・カードの事業を統合しつつある。

こうしたことは試みのステップだ。2006年の法の批判者はこの法は貸し出し─したがって消費─を、弱い経済が一番必要としている時に、鈍らせていると論じてきた。しかしこの法の支持者のTaku Otsuka議員はより良い慣行が最終的にはサラ金を利用することを恥と感じる債務者をより信頼させるかもしれないと信じている。もしこの法が日本のクレジット・スコアリング文化を改善するのに役立つならば、なおさらよいだろう。
(了)

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コメント

この記事は面白いですね。サラ金が与信サービス提供業に転換するとは。

ちなみに悪い方の影響としては、こんなことも起こっているようです。借りられない人が多くなることや闇金の跋扈までは予想できましたが、2ちゃんねるが舞台になるところまでは予想できませんでした。w

「2ちゃん」でおカネが借りられる 素人装う「ヤミ金」業者の可能性
http://www.j-cast.com/2008/05/23020505.html

投稿: Baatarism | 2008年5月28日 (水) 09時52分

銀行の消費者金融部門の強化につながるというのは悪くない話ですよね。予想外でした。

ヤミ金の問題は、いやあ、あの手この手よく考えますね。この筋の人達もどうにか善用できないものでしょうかね。

投稿: mozu | 2008年5月28日 (水) 16時59分

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