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言論の自由の後退?

最近、東欧では政治家による干渉や名誉毀損関連の法律の強化によって言論の自由が後退しているという記事です。東欧の民主化の進展については中長期的には楽観的でいいと思いますが(一部除く)、こういう懸念も広がっているという話です。watchdogsの評価がどこまで正当なのかよく分かりませんが、なんだか身につまされるような話もありますね。ちなみに我が国の報道の自由に関する評価が芳しくないのは周知のことでありますが、政権つぶしに明け暮れる我が国のメディアのワイルドさというのはけっこう凄いものがあるような気もしますけれどもね(ええと、皮肉です)。悪制度や悪慣習の是正によって評価を上げようみたいな向上心があればいいのでありますが、メディア自身が1ミリの変化も拒んでいるのですからどうにもこうにも。

「言論の自由の後退」(Economist)
スロバキアの新聞を手に取ってみるといい。そうればあっという間に─憂鬱になるが─読めてしまうことに気付くだろう。主要新聞はここ何週間か記事で言及された人々に全面的な反論権を与える新メディア法に抗議するために一面で黒枠の空白スペースを掲載している。国際的なメディア監視団体は激しくこの法を攻撃している。彼らは東欧全体でのメディアの自由の衰退に憂慮しているのだ。

スロバキアの新法は6月1日に施行される。もし新聞で言及された人物が不満をもった場合には、法廷での説得ができなければ、彼らの反論を掲載する義務がエディターの側にあることになる。反論にはエディター側の追加コメントがともなわない可能性がある。反論の掲載拒否は多額の罰金につながり得る。返答の権利のルールはいくつかのヨーロッパ諸国で一般的ではあるが、スロバキアの法は最も懲罰的で、恣意的なものになり得る。

ポピュリストかつナショナリストの連立政権はこの法はメディアをより責任あるものにすると主張している。「これは報道の自由を侵害するものではない。これはただ新聞社の利益よりも公共的な利益を優先するものである」と文化相のMarek Madaric氏は述べる。スロバキアのメディアは非難に値しないわけではない。ジョージ・ソロス氏が財政支援するオープン・ソサイアティー・インスティテュートのリポートは「盗用、訂正拒否、隠された利害相反」について語っている。

しかしスロバキアの首相Robert Fico氏がこの法をいかに利用するかについての懸念には理由がある。無能と腐敗の疑惑ゆえに政権を繰り返し攻撃してきたメディアとは彼は険悪な関係にある。彼はインタビューを受けることや批判的なジャーリストからの質問に答えることを拒否し、いくつかの新聞を「娼婦」と呼び続けてきている。何人かのジャーナリストは─Vladimir Meciar氏(現在のFico氏の連立パートナー)の権威主義的な政権がEUとNATOへの参加を危険にさらした─1990年代の暗黒の日々を想起している。(公平のために言っておくと、改革者として知られる前任者のMilulas Dzurinda首相もプレスと衝突したし、かつては反対メディアを盗聴したと非難された。)

スロバキアの新法は地域で最も目を引くものであるが、報道の自由に対する恣意的な法的強制は他の国でも懸念をもたられている。ブルガリアでは公的人物(著名なビジネスマンを含む広いカテゴリー)の名誉毀損は罰金刑で処罰される犯罪である。ジャーナリストはまた誰かの「名誉と尊厳」を侵害したと訴えられる可能性がある。2006年には60件もの訴訟が、さらに2007年には100件の訴訟が法廷に持ち込まれた。

ルーマニアでは憲法裁判所が昨年「中傷」を犯罪化する厳格な名誉毀損の法律を復活させた。とはいえ報道の自由へのこの影響は三人の政治にアクティヴなボス達による大半の主流メディアの独占や公共放送への政治的干渉に比べれば色あせるのであるが。アメリカのブカレスト大使のNicholas Taubman氏は、「ジャーナリスティックな努力を犯罪化したり、独立メディアを脅したりして、自由なメディアがルーマニアで正当な役割を果たそうとするのを阻止するよりも・・・議員は自身の説明責任を強化すべきだ」と示唆した。

こうしたことのすべては再生した自由にかつて誇りをもっていた地域における悪いニュースである。そして悪法はピクチャー全体のわずかな部分である。4月29日に公表される予定のニューヨークを本拠地とする圧力団体のフリーダム・ハウスの年次報告によると、旧共産主義諸国は、主として公共放送の政治化ゆえに、世界のメディアの自由の中でもっとも相対的な後退を示している。この落ち込みはアジア、アフリカ、ラテン・アメリカよりも大きい。

かくして政府がロシアをもっと紳士的に報道するよう公共テレビに圧力をかけたとされた後にラトビアのスコアは19位から22位に下げた。スロバキアは22位から20位へ、スロベニアは23位から21位へ、ポーランドは24位から22位へと順位を落とした。ソロス氏のメディア・ウォッチャーはフリーダム・ハウスの評価と共鳴している。「政治家はこうした公共放送が自分達のものであるべきだと考えている」とこの地域の公共サービス放送の詳細なリポートを公表しているMarius Dragomir氏は言う。EU加盟交渉がうまくいっているので、政治家は現在は権力の果実をもっと自由に使えると感じている。政治化した公共放送は商業テレビが親しいボス達によって運営されてる際には特に有権者を操作するのに有用なツールである。

こうしたトレンドには困惑させるものがある。しかしすべては相対的なものである。最近ロシアの新聞のMoskovsky Korrespondentがウラジミール・プーチン大統領と魅力的な体操選手のAlina Kabaeva氏の関係について広まっている噂を伝えた。プーチン氏が反政府的な新聞であるNovaya Gazetaの姉妹にあたるタブロイドを非難すると出版社によってすぐさま廃刊になった。こうした出来事は中欧や東欧の新しいEUメンバーでは想像できないだろう。今は、少なくとも。
(了)

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