« マケドニア問題(2) | トップページ | 68年をめぐる論争(3) »

アブハジア緊迫中

Georgia2_3

欧州ウォッチャーやロシア・ウォッチャーの間で熱視線を浴びているアブハジアでありますが、どうやらNATO首脳会議の結果(ウクライナ、グルジアの加盟見送り)を受けて動きがあったようです。アブハジアというこのあまり馴染みのない共和国は、グルジアの自治共和国という位置づけになりますが、1990年代以降分離独立運動が高まり、現在では事実上の独立国のような存在になっています。もっとも国際的にはこの国の独立は承認されていませんが。

ロシアがアブハジアと南オセチアの独立運動を煽りつつ内政干渉し、西側(=アメリカ、欧州は相変わらずふらふら)の支援を受けるグルジアを撹乱しているというのが基本構図です。あまり馴染みのない地域ではありますが、ロシア絡みということもあり、我が国の外交にも影響を与える動向でありますからメモしておきます。ちなみにソチの冬期オリンピックもこの動向と直接に関係していることは覚えておいたほうがいいと思います。やはりオリンピックは政治そのものです。

「ロシア、グルジア領に増派 独立派を支援、緊張高まる」[朝日]
日本語ソースではこの朝日記事がよくまとまっています。29日にロシアがアブハジアへの駐留部隊を強化する旨発表し両国の軍事的緊張が高まっているわけですが、これがNATO首脳会談以降高進しているということ、ロシアがコソボ独立を逆手にとってアブハジアと南オセチアの独立の支援を強めていること、20日にはグルジアの無人偵察機が撃墜されたこと、グルジアがロシアのWTO加盟阻止を訴えていること、両地域への自治権の拡大を約束したことなどが列挙されています。

英語ソースではWapo("Russia's Moves Add To Strains With Georgia")とNYT("NATO Accuses Russia of Stirring Tensions in Rebel Gerogia Areas")がやや詳しく報じていますが、特に踏み込んだ分析はないです。追加情報を得るのにいいと思います。

困ったときにはEconomistというわけで、事情をよく知らない人にも分かるように啓蒙的かつ鋭い分析記事をアップしています。うーむ、このレベルの分析記事が普通に掲載されているとはやはり凄い雑誌ですね。両国の国内政治や今後の見通しをクールに分析しています。

「ロシアとグルジアが鍔迫り合い」[Economist]
グルジアとロシアは一点で合意している。アブハジアという分離主義的な地方の状況が悪いという点、そしてますます悪化しつつあるという点で。アメリカと緊密な関係をもつ元ソ連邦の共和国であるグルジアが言うには、ロシアは不当にこの地域に軍を派遣している。先週グルジアはロシアの戦闘機がグルジアの無人偵察機を撃墜する模様を映したとされるビデオ画像を提供した。ロシア側は駐留部隊は平和維持軍として合法的に展開されていると言い返している。そしてクレムリンが主張するには、チビリシの中央政府にまだコントロールされていないアブハジアの一地域Kodori Gorgeの軍事的プレゼンスを強化することで挑発的に行動しているのはグルジア当局の方である。

最も悲観的な解釈はクレムリンはグルジアの扱いで西側があまりにも分裂、混乱していると判断してこの小さな隣人を不安定化させ、おそらく現在の為政者達をより親ロシア派的な者達にすげ替えようと圧力を強化しているというものだ。もしそうならば深刻な流血沙汰の恐れがある。最近の悪戯が開始されたのはブカレストの4月初頭のNATO首脳会議の直後であった。この際、ドイツやその他の国はグルジアとウクライナに西側の軍事同盟の加盟に向けたはっきりした道筋を与えるアメリカの試みをブロックしたのであった。グルジアはWTOへのロシア加盟を阻止すると脅しているところである。

外部世界はこれまで事件のグルジア版もロシア版も額面通りに受け取らなかった。グルジアはロシアの意図について狼少年という評判であり、クレムリンも過去にグルジアの悪行について無根拠な主張をしてきたからである。両者とも国内政治的な理由で緊張を高めている可能性があるのである。

グルジアの大統領ミハイル・サーカシュビリは腐敗したエキセントリックな独裁者と彼をみなす金切り声の野党に直面している。ロシアに対する強力な大物ぶったスタンスは5月21日の議会選挙で野党を窮地に立たせるのに役立つだろうし、ロシアとの対決は民主主義に、さらにロシアの仲間割れ戦術からグルジアを守ることに関心を持つ外国の批判者達の目を逸らすのにも役立つだろう。

より陰謀論的になるが、モスクワの強硬派は、ウラジミール・プーチンの貧しい後釜と彼らがみなすドミトリ・メドベージェフの新大統領任期に風を送るべくグルジアとの対決を歓迎するだろう。メドベージェフ氏は来週大統領に就任する。

しかしどちらか一方が(あるいは両者が)このケースを誇張しているにしても、コーカサスは無視し得ないほど着火しやすい場所である。グルジアは石油資源の豊富なカスピ海地方を外部世界と接続するエネルギー回廊の重要なリンクである。ヨーロッパもまたここがガスの輸出ルートになることを望んでいる。

4月30日水曜にNATOは「懸念をもって」ロシアの増派を見守っていると公言した。NATOと欧州連合の両者は緊張を高めているとクレムリンを非難した。NATO大使は月曜にブリュッセルでグルジア政治家のDavid Bakradzeと会談した。しかし少なくともグルジアの支持者にとって、西側の支援はひどくもたついているように見える。NATOが合意できた唯一の実際的な動きは年内にグルジアに代表団を派遣することだけである。別の元共産圏の国家のある外務大臣が述べるように、「グルジアは形式的には西側の同盟者ではない」。この大臣はグルジアの苦境には個人的には同情するが、その見通しについては悲観的である。

容易な出口を見つけるのは困難である。グルジアは最近、アブハジアに完全自治、立法への拒否権、憲法改正、副大統領職の保証された地位を含む取引を提供したが、これはおそらくはあまりにも遅すぎた。

大きな問題はロシアがどこまで押し込むのかという点である。ロシアはアブハジアともう一つの分離的な国である南オセチアの正式な外交的承認を渋ってきた。しかし4月16日の大統領令は両地域との正式な法的絆を確立した。これは西側のコソボの承認への単なる象徴的反応─ロシアはコソボを同盟者のセルビアの領土的一体性を大いに破るものとみなしている。─なのかもしれない。あるいはグルジアが主張するようにこれは両地域の事実上の併合への序曲であることが判明するのかもしれない。ロシアがやり過ぎるならば、外部世界はアブハジアにおける平和維持部隊の正統性を厳しく疑問視するだろう。批判者は長いことこの部隊を「地片維持部隊piece-keepers」と呼んできた。これが予見性のある揶揄であったことが証明されるのかもしれない。

|

« マケドニア問題(2) | トップページ | 68年をめぐる論争(3) »

欧州情勢」カテゴリの記事

コメント

頭が悪くてニュースが解かりません。
何故、南オセチアがグルジアから独立したら、アメリカ、ヨーロッパなどが反発するのかが解かりませんcoldsweats02coldsweats02coldsweats02coldsweats02
教えて下さい。

投稿: ロッキン | 2008年8月31日 (日) 14時11分

えーと、どの辺から説明したらいいのか判りませんが・・・、おおまかに言いますと、ソ連が解体した後に東方を民主化、市場経済化するんだと西側がどんどん内陸にまで勢力を拡大していった訳です。東欧のみならずこの地域にまで。民主主義というイデオロギーの問題もありますが、資源という実利の問題も大きいです。軍事的にはNATOが東方に拡大されてきましたが、このグルジアとウクライナをメンバーにするかどうかが政治日程に入っていたところです。ところがプーチン政権でロシアが復活して勢力圏の挽回をはかっているというのが今起こっていることです。

グルジアは西側がバックアップしている国ですが、国内に民族問題を抱えていましてロシアがそこにつけ込んで分離独立を煽ってきました。それで南オセチアとかアブハジアが独立してロシアの勢力圏に入ると西側のこの地域への重要な橋頭堡が失われることになる訳ですね。またドミノ倒し的にロシア側につく国々も出てくるかもしれないと。それで大騒ぎしているところです。西側視点で言うと、そんな感じになります。これで答えになっているでしょうか。

投稿: mozu | 2008年8月31日 (日) 14時47分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/507226/20694398

この記事へのトラックバック一覧です: アブハジア緊迫中:

» グルジア ロシア関連話題紹介 [注目のニュース、コレ知ってる?]
ひそかに願う略奪愛 ⇒ あなたの想い叶えます【注目のニュース、コレ知ってる?】に来てくれてありがとう!注目度の高い話題をピックアップしています。毎日更新がんばっているのでお気に入り登録ヨロシクです♪まずは新着一覧チェックをどうぞ! ⇒ ★新着トピックス一覧★..... [続きを読む]

受信: 2008年5月 9日 (金) 12時59分

« マケドニア問題(2) | トップページ | 68年をめぐる論争(3) »