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奇妙なカップル

先のイタリアのローマ市長選に関するFTの「ファシストとユダヤ人がローマ市長で一致」という記事ですが、欧州政治にとっていくばくか兆候的な要素を含んでいるように思えます。先のローマ市長選でムッソリーニの運動の流れを受けた「ネオファシスト系」の政治的出自を持つアレマンノ氏が選出されて話題になっていますが、氏がユダヤ系住民の支持を受けたという事実はなんともいえない感慨を起こさせるものがあります。落選した中道左派の対立候補のルテッリ氏は「かつてはファシストならば敬意を受けるためには主流に属しているふりをしなければならなかったのに、今や連中はクローゼットから出てきてしまった」と慨嘆していますが、それが正しいかどうかは別にして、左派の側から見れば、アレマンノ氏はファシズムの亡霊そのものということになるのでしょう。

国民同盟の初勝利をめぐる議論は過熱しているようでありますが、とりわけアレマンノ氏支持にまわったと考えられるユダヤ系の共同体の内部ではそうであるといいます。ローマでは9000人ほどだそうですからそれほど大きな共同体ではありませんが、多くは国民同盟が親イスラエル的であることを投票理由にしているようであります。6日間戦争の際にリビアから亡命したMichel Bokhobza氏によると、イタリアの中道右派は親アラブ的なバイアスをもった中道左派よりもイスラエル寄りであるといいます。彼によると、「たとえ彼の過去がファシズムや旧ファシズムに結びついていても、彼はベルルスコーニやフィーニが指導する連立政権に属している」。これまで中道左派に投票してきたそうでありますが、右派にシフトした理由のもうひとつとして中道左派政権が経済運営に失敗した点を挙げています。「政治のイデオロギーはもう終わった」と。

またBene Berithアソシエーションの指導者のSandro Di Castro氏によれば、イスラム過激派とイランによるイスラエルに対する現在の危機意識が、ナチによるローマからのユダヤ人追放やムッソリーニの反ユダヤ立法の悲劇的な、しかしより遠い過去の記憶を帳消しにしているそうです。1993年に国民同盟のフィーニ氏が立候補した際には「悪魔ないしネオファシストと当時はみなされていましたよ」といいますが、「ターニングポイント」になったのは1995年の新国民同盟の結成と主流化の動きだったそうです。2003年のイスラエル訪問の際にフィーニ氏がファシズムは「絶対悪」だと非難した際にこの動きは完成したといいます。

FTの記事は現在のアレマンノ氏の立場はそれほどはっきりしないとしていますが、エジプト出身のDominique Sicouri氏は、「心は左派とともにある」が、アレマンノ氏と仕事をすることに決めているそうです。彼女はアレマンノ氏を知的で真面目でプラグマティックな近代主義者と見ているそうです。またユダヤ系の支持者の多くが過激派を抑えるためには彼が権力を握ったほうがいいとも考えているそうであります。

というわけでマイルド化することで主流化した現在の国民同盟をファシスト政党と呼べるのかどうかは不透明ではありますが、なんとも不思議な光景に見えます。「敵の敵は味方」といってしまえばそれまでですが、私もまだまだ修行が足りないのかもしれません。小さな変化ではありますが、兆候的だと思ったのでとりあげました。一応釘さしておきますが、深読みは禁物だと思います。

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