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平和維持軍の醜聞

国連の平和維持軍による現地での悪行についてはここ数年来国際的に問題となっていますが、日本のメディアはあまり力を入れて報じていないような印象を受けます。国連が好きなくせに国連のことをよく知らないという状態は非常によくないと考えますので紹介しておきます。なお前にも書きましたように私は醒めた国連重視派ですのでここで単なる国連バッシングをしたい訳ではありません。日本も平和維持活動へのコミットを深めているのですから他人事ではない問題です。NGOや援助団体の行動をどこまで政府はつかんでいるのか判りませんが、協力体制はうまくできているのでしょうか。以前よりは多少は良好な関係になりつつあるとは思いますが、うまく恊働できなければ有効な活動などできないでしょう。また我らが自衛隊はその士気と規律の高さにおいて国際的に評価が高く、私も深い信用を置いていますが、万一の場合も想定しないといけない。これは確率論的な話です。またこうした想定は軍法会議がそもそも不在であるという戦後の我が国の異例状態をあぶりだすことになるでしょう。公正かつ有効に機能する軍法会議を運営すること、それは我が国が歴史から学ぶべき重要な教訓なはずなのですがね。当分先の話になりそうですけれども。

「誰が監視人を監視するのか」[Economist]
危険な場所に平和の番人や援助活動従事者を派遣する組織はたいていは派遣された者達の身体的安全に懸念している。しかし醜悪な懸念が近年持ち上がっている。他人を助けているとされる人々の道徳的誠実性をいかに保証するのかという懸念だ。

援助機関のSave the Childrenのイギリス支部による今週のリポートはこの問題を強調している。国際機関が介入している三カ所─南スーダン、ハイチ、コート・ジボワール─で昨年実施された調査で援助活動従事者やとりわけ国連平和維持軍の兵士による子供の性的虐待─6才の児童まで─が広まっていることが確認されたと言う。インタビューを受けた10才から17才の250人の少年少女の半数以上がこうした事例を知っていると答えた。しかし子供が訴え出るのを恐れるためにこうした虐待は「広く報告されない」状態のままだというのだ。

悲しいことにこのリポートが語るのはおなじみの話だ。とりわけ国連は最近その平和維持軍兵士のセックス・スキャンダルに見舞われている。2003年のコンゴでのネパール人のブルーヘルメットによるショッキングな一連のレイプ事件の後、国連事務総長のコフィ・アナン氏は調査委員会を立ち上げた。国連平和維持軍兵士によるレイプやその他の性的虐待の「繰り返されるパターン」の発見によって、アナン氏は国連とその機関に世界中で雇用されている民間人、軍人含めて20万人の要員に対してこうした犯罪に対する「寛容ゼロ」政策を宣言した。

この世界機関は現地スタッフが売春婦や18才以下とセックスすることを常に禁止してきた。またホスト人口の同意可能な成人との性的関係すら「強く反対」している。現在、こうした災いを根絶すべくニューヨークの司令部の特別ユニットと並んで「行動と規律」チームが国連の17の平和維持活動のそれぞれで設立されている。さらに2005年以来すべての新しい平和維持軍兵士は現地に派遣される前に性的搾取を防ぐべくトレーニングを受けることを求められている。

しかし虐待は一見したところ衰えることなく続いている。コンゴでのスキャンダルに続いて毎年ブルー・ヘルメットによる民間人の深刻なレイプ事件が起こっている─ブルンジ(2004)、スーダン(2005)、ハイチ(2006)、リベリア(2006)、コート・ジボワール(2007)。昨年は国連は兵士による748件の不品行の申し立てを受理したが、そのうち127件が性的搾取や虐待に関連したものだ。すべてではないが大半が調査されることになる。しかし有罪判決や処罰を受けることはほとんどなさそうだ。

ブルーヘルメットに関しては、国連には拘束があるためだ。国連はブルーヘルメットに対する深刻な苦情を調査できるし、実際しているのだが、容疑者に対する裁判権をもたず、彼らの母国のみが審理し、処罰する権威をもつのだ。大半の平和維持軍の部隊は発展途上国出身─バングラディシュ、パキスタン、インド、ヨルダン、ナイジェリア、ネパール、ガーナが最大の貢献者だ─であり、多くの国がこうした事件をカーペットの下に払いのけることを好むのだ。国連ができることはこうした者達を解雇し、補償を求めることだけだ。全国連平和維持部隊が絶対的な法的免除(immunity)を享受しているので、ホスト国もなにもできない。

こうした活動に付属する警察は別の問題だ。現地人でない国連民間人スタッフ同様に警察は条件つきの免除─公的な職務の間に犯された行動に対して─のみを享受する。レイプや未成年者の虐待はもちろんこうしたカテゴリーには含まれない。したがってこうした犯罪は理論的には現地で訴追され得る。しかし実際にはこうしたことはなさそうだ。ブルーヘルメットが派遣される諸国はぞっとするような裁判制度だったり、裁判制度がなかったりするからだ。その上、語ろうとする証人を探したり、十分な証拠を集めたりすることはこうしたカオスにおいては実質的に不可能なことが多い。

また援助機関やNGOは異なる法に服している。外国に拠点をもつ従事者はホスト国で免除を受けない。もしフランスのような大陸法の国の出身ならば、自国で─大変困難であるが─訴追される得る。イギリスやかつてのコモンウェルス諸国のような慣習法の国の市民は海外で犯した犯罪に関して自国で訴追されることはないが、性犯罪については訴追され得る。

ほとんどのNGOは行動準則を持ち、実際の虐待はもちろん売春も厳しく禁止されている。しかし彼らが課すことのできる最大の処罰は解雇だ。不法ではないが、この準則を破る17才の少女とセックスをした3人の従事者を最近Save the Children UKは解雇した。

この慈善団体は現在、虐待と戦う国際的な監視団体を望んでいる。国連が失敗した分野でどうやって成功できるのかは不透明だ。最大の問題のひとつは被害者が訴えたがらないことではなく、被害者が基本権に無知であることだ。必要なのは簡単にアクセスできる不服手続きと並んで地元の人々に自分達の権利を知らせるキャンペーンだと国際法の教授のFrançoise Hampsonは示唆する。しかしコンゴのような巨大でカオス的な場所ではそれは無理な注文だ。

現在のシステムを改善する別の方法は正式な申し立てを待つよりも最初の気配の段階で犯罪を調査することを作戦司令達に求めることだと彼女は言う。また国連と貢献国との間で結ばれた協定が犯人の処罰としてなにがなされたのかを報告することを義務付けるように改定されるべきだと彼女は提案する。

国連はこうした手続きを強化するよう努めている。昨年採用されたmodel memorandum of understandingの改定版の下、各国政府は明示的に国連の行動基準を強化するために「法的処罰を完全に効力あらしめる」よう求められる。これが実際なにを意味するのかはまだ判らない。しかし少なくとも調査手続きは改善した。深刻な不品行のケースの通知について国連は関係国に知らせるだけでなく、国連の内部監督局と協力して事件を調査するように招待する。この新しい調整は昨年ハイチでのスリランカ人の兵士による虐待容疑に初めて適用された。100人以上の兵士が現在軍法会議にかけられている。

平和維持軍の国連スポークスマンのNick Birnbackは、この新しいリポートを「深く憂慮すべき」とみなすが、こうした巨大な組織で「事件ゼロ」を保証することは不可能だと語る。「我々ができることは寛容ゼロのメッセージを理解させることです。これは信用すべき申し立てがあった際にみくびることがゼロで、違法行為が判明した際に処罰を免れることがゼロを意味します」と彼は言う。どうやらこれは有益なスタートになるだろう。
(了)

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