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左の左

フランス左翼の分極化傾向はずいぶん前から明らかであったのですが、現在の社会党に不満を抱く層の独自路線の動きが活発化している印象を受けます。両者の対立軸というのは非常に複雑なんですが、簡単に言ってしまうと、市場経済(資本主義ですか)に対する考えの差異が根本的な分岐ポイントになっていることは言うまでもありません。「左の左」から見れば、社会党は「自由主義liberalisme」に妥協しすぎな体制派に過ぎないということになります。

ご存知の方も多いでしょうが、一応注意しておきますと、フランスでは「リベラル」というのはアメリカとは正反対で右翼です(保守主義と自由主義が右)。なお日本でも昔はそうだった訳ですが、戦後は欧州的意味のリベラルとアメリカ的意味のリベラルの両方がいて─あるいは社民主義者やアジア主義者や社会保守がリベラルと呼ばれるというよく判らない傾向のせいで─混乱を招いています。イデオロギー的多神教ともいうべきこの種の混沌を我が邦の国体であるとみなし、それはそういうものなのだと観じることもできるのかもしれませんが、少なくとも私には著しく難解な状況です。

話が逸れました。フランス左翼の分裂傾向でありますが、「左の左」を象徴する人物としてオリヴィエ・ブザンスノという人物がいます。社会党の人気低落傾向の一方で、最近のブザンスノ人気というのはたいしたものです。社会党のセゴレヌ・ロワイヤルよりも人気があります。実際、なかなか魅力的な人物ではあります。革命的郵便局員さんです。

Olivier Besancenot : une popularité qui commence à inquiéter le reste de la gauche[Le Monde]
がブザンスノ人気の分析をしていますが、それによると(以下訳ではなく要約)、Opinion WayとLe Figaroの調査で革命的共産主義同盟(LCR)のリーダーたるオリヴィエ・ブザンスノがニコラ・サルコジの最大のライバルに選ばれた。またExpressの調査でもフランスの政治生活により多くの影響を与えて欲しい3番目の政治家となった。45%から60%ぐらいの好意的評価を獲得しているこの男は社会党やかつて反リベラル同盟の仲間だった共産党のリーダー達を不安にさせている。サルコジはこの男を「すごくいい」と強調することを忘れず、右翼でル・ペンが占めるのと同じ位置を左翼で占めることを望んでいるようだ。

IFOPの研究によると、三つの段階を通じて公衆の前に存在感を増してきた。2005年の欧州憲法の国民投票、2006年のCPEをめぐる争論、そして2007年の大統領選挙だ。政治学者によればなおイメージ先行で確たる基盤を得ているとは言えないが、大衆の怒りの代弁者となった。市議会議員選挙でもLCRは顕著な結果を出している。この人気を受けて「反資本主義新党」の結成に向けた動きが見られる。6月28日と29日にサン・ドニで7000から8000人が集結する予定だ。しかしこの極左のリーダーの人気が新党の人気につながるとは限らない。

Tiberj氏によれば、LCRに近いとする選挙民は2%に過ぎない。「人々はブザンスノに投票するが、LCRのことは知らない。活動的、ラディカル左翼はブザンスノに投票するが、彼には社会党が失った一貫性と純粋性があるからだ」「もし社会党がコンプレックスなきリベラル路線を維持し、中道左派の道を目指すならば、ブザンスノは本当の居場所を得るだろう」とTiberj氏は語る。

というように今後右翼側で国民戦線が果たしたような役割をこの反資本主義新党が左翼側で果たすかもしれないといいます。反リベラルで極右と極左の勢力が拡大するといいますと、なにかあの時代を想起させるものがあって症候的な政治現象に思われますが、おそらくはエコロジー派やボヴェ(マクドナルド襲撃の人)ファンみたいな層も含めて現状不満勢力を糾合して一定の勢力をなしていくのではないかという予感がします。景気後退が長引くようなことがあればなおさらですね。なおサルコジのセリフはもちろん左翼の分裂を歓迎したものです。保守は国民戦線の攻勢にずいぶん手こずりましたからね。この左の左の動きはプロテスト勢力にとどまって政権の獲得をすることは勿論ないでしょうが、左翼の勢力地図を塗り替え、また欧州連合に対する国内世論にも結構な影響を与えていくことになるでしょう。ええと、欧州連合=リベラルです。

誰が読むのか判りませんが、この反資本主義新党結成の動きを告知しているル・モンド記事にも登場していたTiberj氏の呼びかけがありましたのでリンクしておきます。

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コメント

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投稿: BentleyKris | 2011年8月28日 (日) 19時54分

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