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アイルランドが漢を見せるか

ここのところ少し忙しくて更新が滞っていたのですが、あまり間を置くとまた続かなくなりそうですので、ニュースのクリップだけしておきます。

アイルランドがリスボン条約の批准をめぐって欧州政治の焦点になっています。既に投票は終わっていますが、結果は予断を許さない状況のようです。アイルランドでなにか起きるのではないかという予感がずっとあったのですが、さてどうなることやら。前回の欧州憲法の批准の失敗に続いて出てきたプランBのリスボン条約でありますが、実質的には欧州憲法の内容とほとんど変わりないと言われます。長大な条約ですので未読でありますが。フランス、オランダの国民投票の否決を反省して、議会での批准の手法が採用された訳ですが、アイルランドでのみ憲法上の理由から国民投票が実施されたということのようです。

前にアイルランドのバブル崩壊の紹介をした際に少し書きましたが、今回の国民投票をめぐる言説を追っていましてもEUへの懐疑心はかなり強いものがあるように感じられます。良くも悪くも愛国心の強さは欧州でも随一のお国柄でありますが、主権問題に加えて経済問題が焦点になっており、今回の景気後退が反対論の予想以上の広まりを後押ししている模様です。与党は賛成を呼びかけていますが、例のシン・フェイン党と市民団体が激しい反対運動を展開しているようです。

他国の論調ではやはりテレグラフのオピニオンには楽しませてもらいましたが、フランスのメディアはだいたいどこも2005年の苦い思い出を想起しつつ懸念するといった論調ですね。あの時は社会党が分裂の危機に陥るほど割れた訳ですが、今回は特にメッセージは出していないようです。反対派の雄であったローラン・ファビウスは微妙な言い回しでノーコメントを出していて笑わせました。ちなみにコメント欄は、ノン!ノン!の合唱が優勢のようです。まあ嫌われたものです。

東アジアのアイルランドたる─そっくりだと思います─かの国もまた凄い事になっているようです。私が愛着のある国はどこもデモやらストやらが激しい国ばかりだったりしますが、かの国の今回の騒ぎはタイミング的にはかなりまずそうです。日本や台湾よりも条件が緩かったことが問題になっているようですが、もはやBSEだけの話ではなくなっている模様です。ろくでもなかった前政権が残した唯一の置き土産のFTA交渉に直接響くようですし(米国の条件は牛肉と自動車の市場開放)、また安全保障関連にも波及しないとも限らないでしょう。奥山さんのブログで紹介されていたこの記事にはアメリカ側の苛立ちが感じられます。ライス長官の談話でも韓国は「パートナー」扱いになっているそうで。そう簡単にはアメリカは韓国を切らないとは思いますが、今回の反米デモ(ですよね?)の心証もまた良くはないでしょう。かの国のものの見える人々の心のうちを想像するに大変だなあとしみじみとした気分になります。

最後にオーストラリアの首相の来日に対する我が邦の無関心にはなにかしら冷え冷えとしたものがあります。全般に日本のメディアのオーストラリア軽視─鯨問題みたいなある意味どうでもいい問題は別として─は問題だと前々から思っていましたが、ちょっと無関心が過ぎませんかね。逆にオーストラリアの有力新聞が盛んにラッドの日本軽視を気にしているようなのがなんとも。Asia Timesにもこんな記事がありました。日本とオーストラリアのポジションには似たところもあって両国のパートナーシップはそうとう重要だと思うのですがね。この首相の提唱する「アジア太平洋共同体」のヴィジョンには福田首相の「内海としての太平洋」にも似た暢気さを感じざるを得ないのでありますが。

追記
コメント欄にも書きましたが、英国との関係におけるアイルランドのナショナリズムのあり方が日本に対する韓国のナショナリズムのあり方に似ているという意味合いでしたが、ちょっと不用意な記述でした。実際の二国関関係の歴史はかならずしも似ていませんし、両国関係の現状もだいぶ違います。この種のアナロジーには注意しないといけないですね。反省。

国民投票では漢を見せましたね。なおBBCのこのQ&Aの記事が判りやすいのでおすすめしておきます。

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コメント

はじめて書き込みします。

韓国の問題ですが、そもそもFTA自体結ぶ時期ではなかったのに結んでしまったのが間違いだった気がします。
自国の産業の競争率をつけるのをまってから結ぶべきだったのに、前の大統領が暴走して・・
掟やぶりな要求とかも、日本にしてるような調子でアメリカにやっちゃってたりして「あちゃー」な感じでした。

でもちょっと不思議なのが、それだけ愛国心が強いわりに結構人の海外流失が激しいんですよね。かの国は。
アイルランドはそこの所どうなんでしょう?
意外と日本人は、普段愛国心に無縁な感じに見えて結局のところ国の為に我慢するような気が・・(住みやすいのもあるんでしょうが)


>日本のメディアのオーストラリア軽視

これはオーストラリアに限った事じゃないと思いますねぇ・・ 先日トルコからもきてたみたいですが見事にスルーでした。
阿部さんがインドで演説したのも、一切やりませんでしたし。昨年のオーストラリアとの安全保障の時も。特定アジアとアメリカくらいですねちゃんとやるのは。

情報鎖国です 笑

投稿: かかし | 2008年6月13日 (金) 09時07分

>アイルランドはそこの所どうなんでしょう?
伝統的にアメリカに移民を輩出してきた国ですが、最近は国を出ようという若者は減っているらしいです。生活水準がだいぶ上がりましたから。バブルははじけてしまいましたが、経済発展にあたってアメリカのアイリッシュが祖国への投資のためにだいぶ貢献したようです。

移民現象は愛国心うんぬんよりも生活水準の落差で説明できると思いますが、韓国の場合はどうなんでしょう。もう大量に移民を出す国ではないはずですが。一人当たりGDPで3倍以上の落差があると大量移民現象が起こるという説明をどこかで読んだことがありますが。日本からの大量移民というのはもうあり得ないでしょうね。日本国民が潜在的に愛国心が強いというのは多分正しいと思います。外国人との接触が限定されているので顕在化しにくいだけではないでしょうか。

そうですね。日本のメディアだけでは世界の動きはまったくつかめないですね。AFPの日本語版とかできていますから翻訳記事が増えることで今後は多少は是正されるのかもしれませんが、関心をもつ層はかなり限定的だろうなと想像します。

投稿: mozu | 2008年6月13日 (金) 12時58分

偶然このブログを見つけよく分からないなりにフォロウしています。アイルランドとお隣の国が似ているというのがちょっと解せません。激高しやすいところは多少似ている気はするのですが、生み出したものは相当違うし、視程がかなり違うように思います。

投稿: arz2bee | 2008年6月13日 (金) 22時35分

ちょっと書き方が悪かったですね。似ているというのは英国との関係のあり方やナショナリズムのあり方のことです。勿論全然別の国ですし、二国間の実際の歴史も違っています。またアイルランド・ナショナリズムもかつてに比べてずいぶん穏和化しているようです。こういうアナロジーの危うさにはもっと敏感であるべきでした。

投稿: mozu | 2008年6月14日 (土) 00時43分

でも似ていると思います‐アイルランドと韓国。
そっくりではないでしょうか。韓国の独立の歴史とアイルランドの独立の歴史はまったくかぶります。貧乏な時代にアメリカに大量の移民を送り込み、いまだに英国=日本に売春婦を送り込んでおきながら、自国こそ最上の道徳国家、ケルト民族=倍達民族の誇りと吹聴するところなど、そして英国人はアイルランド人を怠け者ですぐ喧嘩する危ない人たちと思っています。私は英国人と交流があるので良く知っています。

投稿: wanabon | 2008年6月14日 (土) 19時54分

おっしゃることはよく判ります。ケルト民族幻想の話も。ただアイルランド人で韓国に思い入れを抱いて日本をひどく攻撃する人というのがけっこういるんですよね。日本在住の方でも。というわけで無関係な人達の介入を呼びたくないということもあってこういうアナロジーは封印したほうがいいように思ったということもあります。イギリス人に対する説明には便利だと思いますが、統治期間や統治方式など違っている部分も多いですしね。

投稿: mozu | 2008年6月14日 (土) 22時56分

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