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ポーランドのノー

ポーランドのカチンスキ大統領が議会で既に批准されたにもかかわらず、リスボン条約に署名をする気がないと言明したことがニュースになっています。大統領の署名がなければ条約の発行はないということですから混乱が続きそうであります。さあ、サルコジどうする。

Courrier internationalは世界中のニュース翻訳を集めた便利な雑誌ですが、そのネット版でポーランドの各紙の論調が簡潔に紹介されていました。ここには読売や朝日の記事が紹介されることもあります。マイナー言語の記事の翻訳が多く、深く突っ込んだ分析はありませんが、各国の論調を大雑把につかむのに重宝しているメディアです。

「リスボン条約 カチンスキはノーと言った」[Courrier international]
Gzeta Wyborczaの社説のタイトルは「カチンスキ大統領がサルコジを苛立たせた」だ。欧州連合の議長国にフランスが就任した最初の日の素敵な歓迎の贈り物・・・。「欧州がリスボン条約を救い、欧州統合を前進させるための方策を探っている時に、ポーランド大統領は、兄の反欧州政策を強化するために、条約に署名できないだろうと発言した。こうした拘束はポーランドを屈辱と不能に晒すことになる」とこのワルシャワの日刊紙でMarek Beylinは評価する。「急いで批准すれば、我々は欧州の先端に立ち、欧州の未来の意思決定に参加できるだろう」と彼は嘆く。「今や我々抜きで決定がなされるリスクがあるのだ。我々は立腹した欧州のパートナー達の圧力によって決定を受け入れざるを得なくなるだろう」。

カチンスキ大統領のノーは一般のポーランド人の欧州熱と矛盾している。「法と正義[社会保守政党]が与党だった際にはポーランドは欧州の笑いぐさで恥だった。しかし最近の総選挙の結果[2007年10月に市民プラットフォームのリベラル派が勝利]我々は統治権力の反欧州的な気まぐれを受け入れないことを証明したのだった・・・」とBeylinは続ける。「レヒ・カチンスキはリスボン条約の批准をできた」とジャーナリストのAdam Szostkiewiczは左翼の週刊誌Politykaのインターネット・サイトに掲載されたブログで主張する。「しかし彼は法と正義の人間ではないだろう[意味不明]。この党のポピュリズムにはなにも新しいところはない。欧州の問題に関して法と正義はナショナリストの右派と反欧州的な左派に連なった。この勢力は欧州連合の凋落に賭けている。だからこの勢力はエリートとその価値、その生活スタイルへの反感のような低劣な衝動を利用しているのだ」とAdam Szostkiewiczはみなしている。

右派の日刊紙Polskaもカチンスキがリスボン条約にノーと述べたことを残念がっている。「とりわけ彼自身が交渉し、自分の成果だと示した文書である」という点を同紙は指摘する。ポーランド大統領のノーは彼とは別の政治選択を代表している首相のドナルド・トゥスクとの対立の結果であろう。条約の批准の熱烈な支持者である首相はポーランドにアメリカのミサイル防衛システムを是が非でも設置しようとする件についても、ジョージ・ブッシュとの合意に調印しようとしている国家元首とは異なって懐疑派だ。「バローゾ氏には全幅の敬意を表明するが、欧州委員会は国家指導層の決定を判断する権能を有する組織ではない」とレヒ・カチンスキは右派の日刊紙Dziennikで説明する。この新聞のインタビューで大統領は条約に署名する意思がないことを表明したのであった。カチンスキ兄弟に近いRzeczpospolitaにとっては当面は待つことが最善である。「どの国が条約問題で優位に立つか吟味するために・・・」。
<了>

というようにRzeczpospolitaの社説を除いては主要紙はこの発言を歓迎していないようです。ポーランド政治ビギナー─私もビギナーですが─のために、カチンスキ兄弟は見分けのつかないほどにそっくりな双子の政治家で、兄がヤロスワフ(元首相)、弟がレフ(現大統領)で、どちらも欧州連合に対しては懐疑派で有名です。というわけでこの発言そのものにはポーランドではそれほどの驚きはなかったようです。Rzeczpospolitaは穏健保守的な論調の影響力のある新聞とされますが(ポーランド語版しかないので読めない)、カチンスキ兄弟寄りというのは知らなかったです。そうなんですかね。Polskaが首相との確執に触れていますが、この発言は国内向けという側面もありそうですね。

関係ないですが、Rzeczpospolitaはジェチュポスポリタと発音する「共和国」(レスプブリカ=リパブリック)を意味するポーランド語ですが、中近世のこの国の「国体」を表すようなキーワードです。「貴族共和政」として知られていますが、コンセンサス重視の政治システムです。専門家の話を聞いていて少しほのぼのした気持ちになったことを記憶しています。なんだか昔懐かしの「和の政治」みたいで。勿論別物なんですが。

追記
どうも最近誤字や書き間違いが多いですね。そんな年でもないのに。というわけで一部修正しました(7.3.2008)

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