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暑いですね

最近は小学生が合唱しているポニョ、ポニョ・・・の残響が頭を離れません。子供がやたらと多い地域に住んでいるので今何が流行っているのかはだいたい彼らが勝手に教えてくれます。町のあちこちでピーチク囀っているのが自然に耳に入ってくるわけですね。昔から半身が異なる時空を泳いでいるようなところがあって流行というものに関しては全般に疎いので彼らの囀は便利です。芸人は知らないが、ギャグは知っている。知ってどうするということもないのですが。またなにが流行っているかばかりでなく時にこれはなにかの啓示なのだろうかとかつい考え込んでしまうような意味深なメッセージを耳にすることもあります。昨日はマクドナルドでしばし考え込んでいました。

先日のECBの利上げの評価は難しい、判断つかないなという状態が未だに続いています。期待のコントロールといっても外部要因で物価が押し上げられている現状でそんなこと出来ますかねという誰もが抱いているだろう疑念が消えないためです。フィガロにECB総裁のトリシェのインタビューがありましたが、中身は公式見解の枠から出るものはないですね。第二四半期と第三四半期には減速するが第四四半期に穏やかに回復するだろうという短期的な見通しはいささか楽観的ではありませんかねえ。先日の利上げは中期的な見通しでの物価安定のためで(目標は2%)、今後の利上げについてはバイアスは一切なしだと繰り返しています。また他の中央銀行の動向とは無関係に判断するとも。持続的成長との兼ね合いはどうするのだという問いには、二兎を追う者は一兎も得ず、中期的な物価安定のみを目標とすると断固として答えています。うーむ。ここまでの展開は私の予想のうちの最悪のシナリオの通りになっているのですがね。東の方面は大丈夫ですか。ちなみに「ドグマチック」という世評のトリシェでありますが、政治家の美辞麗句を見慣れているせいかそのフランス語の構文の単純さにはちょっとした驚きを抱きます。修辞に長けた中央銀行総裁というのはそれはそれで困りますが、融通があまりきかないのもどうかと思います。これは言っても仕方ないかもしれませんが、セオリー通りに動いているといってもそもそもユーロ・ゾーンじたいがセオリーから逸脱した存在だと思うんですよね。

なおエコノミストのマルク・トゥアティ氏が運営している「トリシェを止めろ!」というサイトがあります。英語版もありましたのでリンクしておきます。これは3日の利上げに合わせて出来たサイトですが、今後も運営されるのでしょうかね。我らが中央銀行についても不穏な動きがあった場合には誰かこのようなサイトつくりませんかね。逆効果のような気もしますが。なおインフレ話ではEconomistも記事を掲載していますね。FTの論調に比べるとこちらの方が日本での論調に近いですかね。

Not unambiguously good for Japan, in other words, but inflation may not be unambiguously bad either.

なんとも微妙な言い回しですね。なお外圧理論を信奉する方もいらっしゃるようです。

Historically, it has taken some form of external shock or pressure from overseas, known as gaiatsu, to induce rapid and profound change in Japan (as a result of the 1970s oil shock, for example, Japan started liberalising its finance industry). Inflation, argues Mr Wood, even of the bad, cost-push variety, will prove another form of gaiatsu. And when Japanese group behaviour changes, he warns, it will change fast.

ガイアツはもはや国際語のようであります。反対語はカミカゼになるのでしょうか。いや、ジョウイですか。英語でこう書かれるとなんだか本当に不思議の国な感じがしてきますが、完全に間違っている訳でもないのが困ったところです。外圧研究という学際的な研究分野があってもいいかもしれませんね。なお外圧神話というのもあると思うんですよね。誰か実証的に明らかにしてください。

シャルリー・エブドと言えば怖れ知らずの風刺雑誌で有名ですが、今度は白旗を上げてしまったようです。しかし風刺家受難の時代ですね。シネという名の「極左」の名物イラストレーターがスクーター事故で係争中の大統領の息子のジャン・サルコジを風刺した記事なのですが、「訴えているのはアラブ人に違いない!」「こいつはDartyの御令嬢でユダヤ系の婚約者を娶る前にユダヤ教に改宗宣言したばかりだ。この坊やは出世するだろうさ!」というところにヌーベル・オプセルヴァトワールのクロード・アスコロヴィッチ氏が反ユダヤ主義だ!と噛み付きます。シャルリー内部でゴタゴタがあったようですが、結局、編集長のフィリップ・ヴァル氏がユダヤ教への改宗は無根拠な噂に過ぎず、改宗と出世とを結びつけたことも擁護できないと敗北宣言します。サルコジ家が訴えると脅したとか脅さなかったとか噂されていますが、シネ氏はシャルリーを立ち去ってこの事件を風刺するイラストをRue89に送りつけています。ヘタれたヴァル氏を風刺しています。

で、問題はこのシャルリーがムハンマド風刺画の時には「言論の自由」の名の下に断固として戦った雑誌である訳です。そのためにこれってダブスタじゃねという感覚が残るわけですね。またシネ氏支援のために2000人の署名を集めた請願書も出たりしているようですね。反骨の風刺家を救え!と。日本でそれなりに知られている哲学者のミシェル・オンフレ氏やダニエル・ベンサイード氏も名を連ねています。一方で新哲学派のベルナール=アンリ・レヴィはこの擁護者達も含めて批判する記事を書いていますね。1930年代の例を持ち出して左翼だって反ユダヤ主義に加担したんだから風刺者が左翼であることは言い訳にならない、それからヴォルテールを引き合いに出して宗教の風刺と人種の風刺とは違うんだと説いています。ヴォルテール自身はこの区別ができていないがと断ってますが、ラビをからかうのと「ユダヤ人」をからかうこと、イマームをからかうのと「アラブ人」をからかうのは違うという話ですね。あとは「政治的正しさ」や「笑いの禁止」の風潮には与するつもりはないと断っていますが、シネよ、お前の笑いのセンスは駄目だと。

誰も聞きたくないかもしれませんが、まず、私の「趣味」から言えば、シネ氏流の風刺というのは実はそれほど面白いとは思えないです。なにか古くさいもののように感じられてしまうというのが率直なところです。勿論風刺一般の価値を否定する訳ではさらさらないのですが、こういうセンスはなんかずれてるよなあという感じは否めないですね。すべてを笑え!というのは勿論その威力を発揮するような場合があることはよく判りますが、この件で記号的に「ユダヤ」と「アラブ」をぶつけるセンスもやはりどうしようもないなあと思います。この人どっちでもない訳ですしね。この坊やを風刺するならいくらでもやり方はあると思うんですよね。サルコでもカーラでもセシリアでもコマは揃っているじゃないですか。最後に、この風刺そのもの出来やこれが反ユダヤ主義にあたるかどうかの問題(私は無関係なので判断は控えておきます)とは別に、「政治的」に言えば、この「事件」がマイノリティー間の対立が高まらないようなやり方で処理されるといいなと思います。けっこうやばい水準にまで来ていると思うのですよ。「事件」のたびに恣意的にPC基準をあげるだけではルサンチマンが一部の層でつのっていくだけのように思えます。まあこんなことはみなさん判っているでしょうから完全に余計なお世話ですね。

宗教風刺はいいが人種風刺は駄目というレヴィの議論について言えば(しかしコメント欄けっこう荒れてますね。まあ必ずしもニュートラルには受け取られない背景もあるんですがね。無関係な私は無骨にリテラルに読みますが)、それでも一般的な議論というよりもたぶんに文脈依存的な議論に感じられます。フランス社会の差別文脈における人種風刺のことを考えているのでしょうし、例えば「ブラジル人」風刺や「日本人」風刺までは射程に入っていないでしょう。それはそれで別にいいと思いますけどね。お互いからかい合うのを許し合うぐらいの関係が望ましいと思うので(悪質なもの除く)。関係ないですが、シャルリー・エブドの前身は「ハラキリ」と言います(笑)。仏語ですから「アラキリ」です。私の関心からすればむしろ自分達の文脈を文脈を共有していないところに当て嵌めたり、さらには自分達の文脈を直接別の文脈に持ち込もうとする現象でしょうかね。私は文化相対主義者では決してないのですが、それでもそれぞれの文脈を尊重しようという精神は必要だと思うんですよね、お互いのために。とはいえこれだけグローバルなレベルでメディア化や情報化が進み、人の移動が大規模になると混線現象は不可避なのかもしれません。なかなかやっかいな話ですね。

「フランスの失言屋」ことサルコジがアイランドを訪問したようですね。国民投票のやり直しを要求する旨発言したとかしないとかでその「傲慢さ」をめぐって当地では大騒ぎになっていたようですが、そんなことは言ってないからと、アイルランドの民主主義の勝利を讃えた模様です。説得力ゼロですが、この記事ではアイルランドのメディアのわりと好意的な反応がまとめられています。まあメディア受けする大統領であることは間違いないですねえ。なおかの地中海の夢のゲノー氏ですが、例外事項を設けて条約を改訂した上でアイルランドの民意にはかるプランを語っていました。このプランでいくつもりなんでしょうかね。

Global Talk21のOkumuraさんが例の騒動のエントリの中で私のスタンスを説明してくれています。ありがとうございます。この件に関しては言いたいことの8割ぐらいはもう言ったのでしばらく黙っていることに決めました。それから@もはずすことにしました。日本語圏ではたぶんあまり知られていない訳ですが、英語圏の日本政治をめぐる言説の貧困を救っているのはObserving JapanとGlobal Talk 21だと思っています。もしこの2つのブログがなかったらと想像するとなんだか寒気がしてくるほどです。なおそれぞれの分野の優秀な方々がそれぞれのスタンスで英語ブログを始めてくださると本当にありがたいのですのですがね。それがどれほどプラスになるのか計り知れないほどだと思うのです。皆様お忙しいことと存じますが、御一考なさってください。特に法学関係者の方。

今日は髪を切ってさっぱりしているはずなのですが(髪は自分で切る)、それでも暑いので(エアコンは入れない)思考が乱れていて意味不明なことを書いているような気もするのですが、また余計なことを書いているような気もしますが、まあそういう日もあっていいさと思い直してそのまま投稿します。

追記
誤字修正、追加フレーズを入れました。なお今後は誤字に関しては断りなく修正します。しかしなんでこんなに間違うのでしょう(汗)(7.23.2008)

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コメント

過分なお言葉、恐縮の限りです。

投稿: 奥村 準 | 2008年7月23日 (水) 22時13分

コメントありがとうございます。当初より愛読しております。上で書いたのは嘘偽りなき心情です。今は少し落ち着いていますが、随分とひどい時期もありましたし、本当にありがたいなあと思っていました。私みたいな日本人読者にとっても非常に啓発的ですので是非お続けなされるようお願い申し上げます。

投稿: mozu | 2008年7月24日 (木) 01時11分

立ち読みですが、外圧の神話については、
http://www.amazon.co.jp/Japans-Foreign-Policy-Since-1945/dp/0765616505/ref=pd_sim_fb_img_4
で一章さかれていた、と思います。
要するに、政治決断の一要因ではあるが、決定要因ではない、ということだったと思います。
いや、ほんま暑いっすね。

投稿: 空 | 2008年7月25日 (金) 00時37分

情報ありがとうございます。あらら、既にアメリカ人研究者に見透かされていましたかという感じですね。なんだか日本の外圧利用の仕方をみるとちょっと中国と似ているような感じもしますよね。あちらの方が国内権力闘争が激しいですけれども。Kevin J. Cooney氏の名前は記憶しておきます。

投稿: mozu | 2008年7月25日 (金) 16時34分

ベトナムについてのブログを書いています。
TBさせていただきました。
有難うございます。

投稿: ベトナム大好き | 2008年7月28日 (月) 00時14分

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Xin Chao!!(こんにちは!!)やはり、ガソリンの大幅値上げは、物価、為替、金、事業等の各方面に影響を与えています。引用ここから******************************石油値上げで物価上昇加速へ[経済]中央政府が21日に断行したガソリンなど石油製品大幅値上げは、各方面に影響を及ぼしそうだ。当局は物価上昇加速の可能性を認める一方、省エネなどの努力で対応するよう企業や国民に呼び掛けた。22日付ベトナム・ニュース(VNS)などが報... [続きを読む]

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