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紛争の余波

世間はオリンピック報道一色のようですが、グルジア紛争のことがどうしても頭から離れないのは、この地震の余波が大きくかつ深いものとなることが予感されるからです。ここまで主に欧州視点からこの紛争について書いてきましたが、単に他人事として眺めていた訳ではなくて、我が国が西側の一員である以上(確かに微妙な位置ではありますが)、NATOだとかミサイル防衛構想だとかの動向は我々の生存とも無関係ではないからです。とはいえこの余波は無論欧州には留まらない訳です。Asia Timesから気になった記事をクリップしておきます。

Syria reaps a Russian reward[Asia Times]
まずシリアがロシアに接近しているという記事ですが、ある意味面白いです。1956年のスエズ動乱の際にシリア大統領がクレムリンを訪問し、「ヒトラーを打ち破った偉大な赤軍」の派兵を要請した事例を枕にしていますが、このたびのグルジア紛争後に最初にクレムリン訪問をしたのはシリア大統領アル・アサドであった。ロシア紙とのインタビューの中で大統領はロシアを熱烈支援し、反米的、反イスラエル的言辞を弄していますが、シリアとしては軍事的な支援とイスラエルとの和平交渉でのロシアの主導を望んでいるようです。この動きはフランスの例の地中海連合にも関わってくるでしょうし、同様の動きを見せる国々も現れるのでしょうね。しかし、すごいですね、この記事。

極東の民たる私にとっては欧州がどうしたということ以上に東アジアにこの紛争が与える余波のほうがよほど重要な話です。あまり我が国にとって好都合なシナリオというのが想像できないのでありますが、どうなるんでしょうかね。

"North Korea wary of Russia's return" by Donald Kirk[Asia Times]
北朝鮮のロシア恐怖、両国のこれまでの一筋縄では行かない関係、また今後ロシアの関与が深まった場合の経済面、軍事面でのインパクトなどについて書かれています。Kirk氏は現大統領の対北朝鮮政策にはもともと辛い評価をしている人ですのでそこは割り引いて読む必要があろうかとも思いますが、もし韓国が親米反北路線をとるならば北朝鮮とロシアは接近するだろうという指摘をしています。これといった動きのない中での記事ですから特に目新しい内容はないのですが、現在は一歩引いた構えをとっているロシアが半島情勢に影響力を行使しようとするならば─その確率はそれなりに高そうに思えます─我が国にも相当なインパクトが及ぶことになります。という訳でロシア・北朝鮮関係からは当分は目が離せなくなりそうです。

"War in the Caucasus and the Global Repositioning of China, Germany, Russia and the US"[Japan Focus]
こちらは中国、ドイツ、ロシア、アメリカの今後の動向を扱ったビックピクチャーの記事ですが、我が国に最大のインパクトを及ぼすのは言うまでもなく米中関係です。論者によればこの紛争に対して中国は中立的な立場を維持しているが、中露関係はかつてなく安定している。チベット、ウイグル、台湾を抱える中国としては南オセチアやアブハジアの独立には賛成できない。アメリカはロシアと中国に対して異なるアプローチをとっているが、「新冷戦」になった場合には米中はさらに接近するだろうという予測です。911テロの勝利者は中国だなどと囁かれますが、この場合も中国が勝利者となるのでしょうか。日本としてはプラグマティズムに徹するのが吉であるという訳で(原則論的対応というのも時には必要だとは思いますがね)、アメリカの対中政策の微細な変化に合わせて柔軟かつ巧妙にステップが踏めるように今から準備運動をしておく必要があるのでしょうかね。

というわけで相変わらず微妙な記事の多いAsia Timesなのですが、最後にComing Anarchyで台湾モンゴルについて記事がありますのでリンクしておきます。モンゴルの話はこのブログにもコメントしてくださることがあるAcefaceさんですね。台湾の不安というのは判る話です。同じような思いの国も多数あるでしょう。ふう。

ではでは。皆様、御機嫌よう。

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コメント

台湾、モンゴルから相次いで続々記事載せますので、是非お読みください。

投稿: Curzon | 2008年8月23日 (土) 22時11分

Curzonさん、コメントありがとうございます。グルジア紛争の東アジアへの影響はまだあまり論じられていないのでとても刺激的です。楽しみにしています。

投稿: mozu | 2008年8月24日 (日) 13時47分

歴史的に見ると、ロシアは欧州やカフカスで手詰まりになると、アジアで打開策を講じようとする傾向があるので、中国との連携強化、あるいは6か国協議での揺さぶりは多いにありえると思いますね。

投稿: Aceface | 2008年8月24日 (日) 15時56分

>Acefaceさん
ええ、そんな図柄がぼんやり見えてやや暗い気分になります。先回りしてなにか手は打てないものですかねえ。

投稿: mozu | 2008年8月24日 (日) 16時42分

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