« 動けぬ欧州 | トップページ | 西洋人よ、団結せよ。 »

暑いといってはいけないと言われた

以下ニュース・クリップです。

"Les tardives réactions de l'Occident"[Liberation]
西洋サイドの反応についてまとめた記事。批判のトーンがやや強まっているが、アメリカも欧州も戸惑いの方が大きいと。情報戦の真っ最中ですから断定はしないでおきますが、確約もなしに西洋側の支持を得られると思い込んでオリンピック開会式をねらって南オセチアに侵攻したというのが事実ならば途方もない錯誤としか言いようがないですし、この紛争で亡くなられた方々のことを思うと浮かばれない話だとしか言いようがないです。ロシア側の策動にのってしまったという側面もあるんだろうと推測しますけどそれにしてもなあ。記事の最後で前に紹介した加盟推進派のグリュックスマンがNATO首脳会談でのロシアへの譲歩を批判しています。パリもベルリンも譲歩をすれば相手も譲歩をすると思い込んでいるが、プーチン体制には単なる弱さの印としか見られていないのだと。確かに首尾一貫した立場だとは思いますが、現在の欧州にはロシアと正面から対立する勇気もメリットもさほどないだけにやはり理想主義的に過ぎるようにも見えます。いえ、皆が皆リアリストになる必要はない訳ですからそういう声もあっていい、というのか、対重的言論としてあってしかるべきでしょう。一時的には非現実的に見えても現実的な意味を持つような状況変化がやってくる可能性というのもないわけではないですしね。歴史的にそういう事例はたくさんありますし。個人的にはグリュックスマンは好きじゃないんですけどね。なおずっと欧州視点で書いていますが、極東の島国の住民たる私自身の観点は勿論それとは違っています。

"Disturbing reasons to put a nation to death"[Japan Times]
JTのイアン・ブルマ氏の記事。ベルギーの問題を欧州の未来に重ね合わせる内容です。民族主義の原理に負けるなと。良識的な意見なのだろうと思いますが、連邦的なもの(帝国的なものでもいいですけど)と民族的なものって互いに支え合う関係にあるんじゃないですかね。これまでの歴史的経験から言って前者が後者を乗り越えるってあまり信用できないんですよね。むしろそうした志向が逆説的に民族主義を高めてしまう場合もあると思うのですが。だいたい多文化主義とか多民族主義ってなにも最近言われ出したことじゃない訳です。ソ連帝国でも満州国でもどこでもいいですけど先例がある訳ですね。そんなのと一緒にするなと言われそうですが、そして私もそれはそうだと思ってはいるのですが、ある力学的な構造として眺めた場合にそこにはやはりそれなりの類似性がない訳ではない。これはとても難しい問題ですから結論はないんですけれども。勿論このたびのグルジア・ロシア間の紛争も想起しています。まああまり一般化せずにこういう問題は個別に考えていかないといけないですね。ベルギーは・・・それなりに知っている国なのでやや複雑な心境になりますねえ。

なおJ-CASTに記事が出た時にはバックラッシュを警戒したこともあり、Japan Timesは必ずしも駄目じゃないと書きましたが、勿論良いなどとは一言も言ってはいません。今日見たら読める記事ほんのわずかじゃないですか。いえいえ論調のことではないですよ。イデオロギー・レベルの話でなくそれ以前の話です。それからなんでデマ・サイト管理人に記事書かせているんですか。既に完全包囲状態みたいですから、このままだと道連れにされてしまうかもしれませんよ。まあそれもいいかな、勝手に自滅したらぐらいの気分になってきていますが、そこまで突き放した言い方をしないとしたら、そうですねえ、South China Morning Postぐらいのポジションを目指したみたらどうでしょう。それなら読者増えますよ。はい、大きなお世話でした。

"China wary of a 'normal' Japan" By Hiro Katsumata and Mingjiang Li[Asia Times]
Asia Timesというのもなんとなく微妙なメディアなのですが、一応目は通しています。いえ、こちらはそんなに悪くはないです。ただなにか微妙です。この記事では日本の「普通の国」の議論というのが国連平和維持活動へのより積極的な参加を意味し、それを可能とするべく自衛隊の位置づけを憲法上明確にすることを目指すものであって軍国主義などとは無関係だと中国人に向けて説いています。いや、ごく当たり前の話なんですが、こういう記事が今更Asia Timesに掲載される意味について少し考えてみたのですが、よく判りませんね。まあいいんじゃないですか、こういう記事が普通に英語で流通するのは。NYTには掲載されそうもないですし。日本の安全保障について政策担当者や戦略家ではなく右翼だのなんだの無関係な連中ばかりをインタビューしていて(インタビュー受ける方もどう利用されるのか想像力ゼロというのが絶望的なんですが)心底唖然とさせられた大西記者の記事が堂々と掲載されたことですしね。

ところでWilliam Sparrow氏の記事を掲載しているとMainichiと同レベルにみなされると思うのですがね。内容も低俗週刊誌レベルですからそういうメディアなのねということになる訳ですよ。いいんですかね。この手の記号としての「アジア女性」を売る輩─欲情と啓蒙的意思との奇怪な結託はこの連中の共通の特徴です─を批判するのは本当はアジアのフェミニストの仕事だと思うのですがね。なお余計かもしれませんが、リベラル的な感性の人々に言っておくと、こういうケースでは、ナショナリズムに絡めとられるのは・・・とか変な禁忌に縛られる必要はないと思います。不快ならば不快だと言いましょう。また幻想には事実を対置しましょう。そういう地味な努力をしないから、ネオ・オリエンタンリズムの跋扈を防げないどころか巻き込まれてしまうんですよ。

という訳で少し攻撃的なのは雑誌の占いで今日はそう振る舞えと言われたからです。文句がある人は占い師に言って下さいね。なお私は今日は機嫌が悪い訳ではなくて愉快そのものです。

追記 1フレーズ追加、リンク追加しました(8.12.2008)。 一応断っておきますが、私が言いたいのは、アジア大好き!とか日本大好き!みたいなことを言っているけれども本質的にはアジアも日本も蔑んでいるこの手の偏見にまみれた不埒者どもを我々は一人一殺的に撃滅していくべきだというようなことではまったくなく、もしメディアが信頼性を獲得したいと願うならば、この手の輩のばらまく幻想に紙面を汚されないように気をつけたらどうですかというごく穏当な話です。Asia Timesがもしアジアのヴォイスを正確に伝え、アジア情勢について意義ある情報を提供する定評あるメディアになる気が本当にあるならばです。でなければ三流ゴシップ紙として扱うでしょう。

また、「普通の国」論の記事ですが、こんな当たり前のことをわざわざ言わなければならないほどネットの英語圏では日本の安全保障関連は妄想的な情報ばかりという現状がある訳です。本当は日本のメディアが、少なくとも英語版では、「主張」ではなく、客観的なデータに基づく啓蒙的な解説記事や素人ではなく専門家のインタビュー記事をなにかあった時だけではなく普段から掲載しているのが当たり前なのですが、日本のメディアにはそういう役割を果たそうという気がないようなので本当に使えないです。どうでもいいトリヴィアルなネタの速報記事やらくだらぬ事実無根のデマを流している暇があったら少しは東アジアの安全に資するような情報を出したらどうですか。別に日本政府の肩を持てとか言っている訳ではないですよ。日本国内でどのような議論がなされているのか(素人談義でなく専門家の間の議論)について前提的な了解がない現状ではいくら「主張」しても─それがどんな主張であれ─余計な警戒心を呼ぶだけなんですから。

|

« 動けぬ欧州 | トップページ | 西洋人よ、団結せよ。 »

その他」カテゴリの記事

メディア」カテゴリの記事

安全保障」カテゴリの記事

欧州情勢」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/507226/22920795

この記事へのトラックバック一覧です: 暑いといってはいけないと言われた:

« 動けぬ欧州 | トップページ | 西洋人よ、団結せよ。 »