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王様は裸だ

仏国経済でありますが、第二四半期のGDP速報値が予想外に悪かったこともあり、このまま景気後退に突入するのではないかという暗いムードに覆われています。メディアにも暗い論調が溢れかえっています。財務相のラギャルドが歓喜の雄叫びを上げるほど第一四半期は予想以上の輸出の伸びによっていい数字だったのですがねえ。まあこうなるだろうと思っていた通りの展開ですので、私としては特に意外ではありません。どちらかと言えば我が邦のほうが・・・、まあこちらは止めときます。

"France urges action on Europe’s economy"[Financial Times]
まずFTから。フランス首相のフランソワ・フィヨンが月曜ユーロ・ゾーンの経済悪化に対して欧州レベルでの協調行動をとるように呼びかけました。この呼びかけはフランス国内の消費者心理が冷え込む中でいかに対処すべきかをテーマにした緊急閣僚会議の後に出されたもののようです。フィヨンによれば、経済を再活性化するのに新しい国内プランは必要ではなく、唯一の解答は構造改革を推進することだけだと。フィヨンによればEUの協調は「不可欠」であり、9月のニースのEU財相会談の場で議長国フランスのクリスティヌ・ラガルドがなんらかの措置を提案するものとみられているようです。GDP速報値を受けて、今年の経済成長率予想も大幅に見直され、さらに財政赤字の2.5%ラインを維持できるかどうかもあやしくなってきた模様です。既に一年前に財政的インセンティブのパッケージを発表したこともあり、この景気後退に対しては手がない状況ということです。他方、ビジネス界からはフランス企業の国際競争力を削ぐような障壁を撤廃すべきだという声があがっており、中小企業のロビー団体のCGPMEは企業にかかる負担の一部を除去するよう訴えています。

"Croissance : Fillon en appelle au sang-froid"[Le Figaro]
「成長 : フィヨンが平静を呼びかける」という記事ですが、上で言及された閣僚会議を扱っています。Inseeによって第二四半期のGDP0.3%減の数字が公表された4日間後に開催された経済閣僚を集めた会議の後に首相は平静かつリアリストになろうと努めたといいます。「政府は驚愕することなく冷静にこの時期に対処する」と述べ、景気刺激策については退けた模様です。またフィヨンは第二四半期は「よくないだろう」と年初に述べた通りであるとし、第三四半期の0.1%成長予測をしたフランス銀行と同じく、景気後退の語を使うことを拒否したそうです。「2008年はポジティブな成長の年になるだろう、私自身は景気後退について語るのは妥当ではないと考えている」と強気の姿勢は崩さず、「数ヶ月続く」「減速」という表現に固執したそうです。それって同じことでは・・・という野暮な突っ込みはしてはいけません。他方、社会党はフランス覆う主要な経済的危機に直面して「責任回避に固執する」政府の「自閉症」を非難したといいます。記事によれば、フィヨンの目的は政府が「この状況への唯一の回答」たる構造改革に邁進するつもりであることを示すことにあったとされます。

"L'opposition dénonce «l'autisme» du gouvernement"[Le Figaro]
「野党が政府の『自閉症』を非難する」と題された記事は上で述べた野党側の主張を伝えています。社会党のフランソワ・オランドが、自分が首相であったならば、「我々は次のように言っただろう。景気後退のリスクはそこにあり、国際的な景況は厳しい。我々は政策の余地を見つけ、景気刺激策をとらなければならない、と」と発言し、「財政パッケージの措置の一部の再検討」によってそうしただろうと語ったといいます。アンリ・エマニュエリによれば、「社会的後退の政策を追求することで経済政策を運営しようと説明して武器を足下に置いている、これは非常に無責任だ」と。ファビアス派のクロード・バルトロヌは「財政パッケージの一部を取りやめ、財政のニッチを再検討することで700億ユーロ以上を捻出できる」と政策の余地を指摘しています。ミシェル・サパンは「危機に直面した政府の自閉症」を非難し、「消費も投資も支えることができないことを暴露した財政パッケージは年150億ユーロもかかるのだ」と政府批判を繰り返しています。ディディエ・ミゴーもまた財政パッケージに対して同様の批判を行い、購買力、産業の競争力を高めるのに無益であるとしています。労組側ではCGTが購買力に関して労働者の「給与明細書に関する」「期待」を強調し、「労働者の力」のジャン・クロード・マイイは同様に「富裕層向けの」財政パッケージの「誤り」を攻撃し、また交通費の援助についても政府の主導を要求しています。左翼からの批判に対して、与党UMPのスポークスマンの一人のフレデリック・ルフェーヴルは「危機がそこにある」のは疑えないとする一方で、「改革の加速が社会党時代が生んだ遅れを取り戻し、世界的な成長に他の国々よりもよくしがみつく唯一の方法だ」と述べています。シャンタル・ブリュネルは財政パッケージを攻撃しても意味がなく、フランスでも欧州でも建設セクターが困難な時期に入っている時に住宅取得の借入れ金利の引き下げは有益であるとし、2007年6月からのその効果が十分に出ていない決定的な改革や現在進行中の他の改革の強調をしたとのことです。政策の余地は少ないが、ともかく景気刺激策をとれという野党と構造改革に邁進するという与党の対立です。

構造改革は言うまでもなく長期に関わる政策であって、この危機的状況に対する政策ではないのであって、あの忌まわしきブリュッセルとフランクフルトのせいで(ええと、誰かの代弁です)財政政策も金融政策も使えないのですから、要するに打つ手なしです。人気とりのためにちまちましたバラマキをやって嵐が過ぎるのを待つのか、果然と構造改革に励むのかというどうにもならぬ選択肢です。ふう。勿論違う部分が大きいのですが、どこかの国の状況にいくぶん似てはいないでしょうかね。

以下はフィガロの嘆きとも叱咤ともなんともつかぬ「経済失調 : 王様は裸だ」という8月19日付の社説です。
"Économie en panne : le roi est nu" par Yves de Kerdrel[Le Figaro]
これは戦争だ。景気後退との戦争。国富の低下との戦争。半旗の掲げられた購買力との戦争。こうした理由から首相は月曜午後に政府の経済の軸となるメンバーからなるまさに作戦会議を開いた。議事日程に従って、現況分析、我々を襲う重大なる悪についての討議、そして公的権力が前哨にいることを示すためのいくつかの措置をもって。

その意図は称賛されるべきものだ。善意の政府のメンバーとこの即席会議が証すのはフランスがコントロール下にあるということだ。フランソワ・フィヨンによって公表された措置、ガソリン手当ての増額、交通チケットの発行、積極的連帯所得の一般化、入学手当の増額といった措置は異論のあるものに見えるかもしれない。世界的な危機に直面して、公的権力が一つの解決を有するとか、経済が王権に属する活動であるとか、幸運にも過ぎ去った物価の計画化と管理の時代のように経済水準が布告されるものだなどとは思ってはならないだろう。

今日ほど王様が裸だったことはない。二つの理由からだ。一つはマーストリヒト条約以来、とりわけユーロの発行以来我々の財政政策はブリュッセルの強制に応じてなされる他なく、我々の金融政策は選出された訳でもない官僚によってフランクフルトで決定されているのだ。予算と貨幣の支配権なくしては信頼し得る経済政策を運営することなど不可能であるということを理解するのにノーベル賞受賞者である必要はない。こうして欧州の協調的イニシアティブに焦点を当てるという考え方が出てくるのだ。

第二の理由、それはたとえ政府が欧州委員会によって定められた予算の強制から解放されたいと望んでも、そんなことはできないだろう、かくも政策の余地があきれるほど乏しいのだ。それも当然のことだ。経済減速のせいで50億ユーロ以上の税収入が点呼の時に不在なのだから。2009年の見通しは金融法案の準備の任を負うエリック・ウェルト[Woerth]・チームの髪を掻きむしらせている。国庫がかくも空なのでのガソリン手当ての増額をファイナンスするのはトタル─純然たるメセナ─である。

たとえ国家が金持ちになったとしても購買力の問題を解決するのに流れのままに手当てや助成金を分配するというのが幻想であることに変わりはない。この問題は─このことがこの国でもようやく理解されるべき時だろう─我々の企業の繁栄、そしてその競争力を経由する集合的富の増大に依存する他ないのだ。フランス人がいっそう金を稼ぐ能力を条件づけるのは企業の利益なのだ。今日の公的権力の唯一の義務はデマゴギー的にありもしない公的なマナ[出エジプト記に出る奇跡の食べ物]を広めることではなく、経済ショックの第一の主要な犠牲者である企業を支援することだ。あるいは少なくとも企業を安心させることだ。これはそれだけでも並外れたことなのだ!

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