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福田首相辞任

私は福田氏を首相としては評価していませんでしたので、このたびの辞任の報に接しても、ああ、そうですか、ご苦労様でした、という以上の感想はないのですが、この難題山積の状況でこうも短命政権が続くとやはりなにかしら末期的に見えてきます。あるいは宰相の任期の極端な短さについてこれこそが我が邦の国体なりと開き直ってもうこの際歌い踊っていればいいのかもしれませんが、自民党がその歴史的使命を終えて解体していく緩慢なプロセスにつき合わされているという話なのでしょうかね。2代にわたって宰相を輩出するのに失敗したのですから政権与党として指導者を養成、輩出する能力がもはや弱体化しているのではないかと疑われても仕方がないでしょう。

民主党が対決路線をとっているのに対してなぜ福田首相が衆議院の3分の2以上の再可決で迎え撃たないのか私にはよく判らなかったのですが、結局のところ昔気質な方ということなのでしょうか。また政治家としてこれをやりたいというなにかを持ち合わせていなかったということなのかもしれません。現在のいわゆるねじれ国会における政治力学を十分に理解していないにせよ、何事かを実現せんとする確たる意志を欠いているにせよ、首相としては不適格だと思われても仕方がないと思われるのですが、いかがでしょうかね。早々にこれだけはやるんだというヴィジョンなり政策なりを示して臨んだならばここまで不人気にならなかったように思えるのですがね。

なお「強行採決」という言葉の使用は止めるべきだと思いますね。単なるオーバーライドなのにこれではなにか悪いことのようではないですか。コンセンサス政治の伝統から来ているのでしょうが、野党が何を言おうが与党が法案をがんがん通していくのが二大政党政治の流儀な訳で、我が国の政界もそこに近づいているのですから。いつもなごませていただいているムネオ先生流に言うと、俺が俺がの「我」の世界ばかりでお蔭お蔭の「げ」の世界が失われている哀しい世の中だ、ということになるのかもしれませんが、やはりそうも言ってはいられないでしょう。

このたびの辞任の背景については既に様々な憶測が出回っていますが、安倍前首相の時ほどの謎はあまりないように思えます。公明党との調整がうまくいかなくていやになったということなのでしょう。また麻生幹事長の独走で党内勢力のバランスも崩れてしまったというのもあるのかもしれませんね。去り際のセリフが実にこの方らしかったですね。辞任会見がひとごと的だという記者の質問に対して曰く「『ひとごとのように』とあなたはおっしゃったけどね、私は自分自身のことは客観的に見ることができるんです。あなたとは違うんです」。泥をかぶることのできない人なんでしょう。二世議員の淡白さみたいなものも感じてしまいますね。1970年代ぐらいならこの首相でもよかったかもしれませんがね。もっとやる気のある人求む。

さすがに国際ニュースになっているのでクリップしておきます。
"Fukuda quits as Japanese PM"[FT]
"Get someone else"[Economist]
"Japan's prime minister Yasuo Fukuda resigns"[telegraph]
"Japanese PM Yasuo Fukuda resigns"[Guardian]
"Japan PM in surprise resignation"[BBC]
"Japan’s Prime Minister Resigns"[NYT]
"Japan PM resigns to avoid `political vacuum'"[WaPo]
"Fukuda Resigns, in Japan's Latest Test"[WSJ]

英語圏のニュースは他もいろいろあたりましたが、どれも似たような記事ですね。公明党への言及があるかどうかが政局分析ができているかどうかのひとつの判断基準になろうかと思いますが、エコノミストとガーディアンがよく書けていると思います。マッカリさんのこともたまには誉めておきましょう。ワシントン・ポストとBBCはイエロー判定しておきます。私はワシントン・ポストのこの記事のスタイルを嫌悪しているのです。一人や二人をインタビューして市民全体の意見であるかのごとく表象するというお手軽スタイルのことです。なおここで言っているのはこうしたスタイルへの不満であってこの記事の内容そのものへの不満ではないです。英語圏のメディアにおける日本国民の「声」の選択をめぐる政治については誰かつっこんだ分析をしてください。また今現在皇室典範問題に関心があるのはBBC以外誰もいないでしょう。ずっとやってなさい。さらにテレグラフ様、麻生氏の名前はティローではなくタローですからね、やる気を出してください。フランス語圏、スペイン語圏も確認しましたが、ただの事実経過の記事ですね。経済的難局の時期に景気対策を発表したと思ったら唐突に辞めてしまったのはなんなんでしょうというのと、小泉純一郎以降、日本政治は不安定局面に入ってしまったというのがおおよその共通認識のようです。現在の政局では誰が首相になろうがあまり展望が見えてこないのがなんともしんどい話ですね。

今回の辞任の原因のひとつであろう給油問題に言及している記事がJapan Focusにありましたのでリンクしておきます。インドネシアの専門家でアメリカのアジア戦略に批判的な立場の人みたいですね。内容についてはあまりコメントしたくないですが、Japan Focusらしい記事と言っておきましょうかね。シーシェパードの国際指名手配と日本の「軍事化」の話は関係しているのですか。へえ。

追記
少し書き足しました。なおキャラとしては福田氏はそれほど嫌いではないです。もっとも持ち味はあまり出ていませんでしたが。ただ今のような政局では喧嘩のできる人でないと駄目でしたね。こんなタイミングで選ばれて不運でしたねぐらいの気持ちもなくはないですが、一国の首相ですからね、結果で評価するほかない。

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コメント

初めて投稿します。
今回の辞任の背景にあるのは、現在の院内構成、マスメディアの報道、首相権限の無さ、国民の政治への無関心さとそれでも平穏に過ぎていく日本と言う国家の成熟度ではないかと思います。自国の政治・経済・社会の体たらくを殆ど非難しない新聞ほど、大げさに日本のことを書きたてるのは、惨めな現実を少しでもよく見せたいと言う愛国心の為せる業なのでしょうか。また、経済に秀でた人・新聞・雑誌の政治発言が、経済問題に対する分析・解説に比べ、感情に走り過ぎるのはどうしてなのか不思議です。

投稿: chengguang | 2008年9月 4日 (木) 14時16分

chengguangさん、コメントありがとうございます。
どのあたりを指しているのかは想像で語るしかないのですが、一部論調の空騒ぎについては停滞したままで安定してしまっている社会状況の裏返しではないでしょうかね。難題山積とはいっても日本はまだまだ恵まれていますから危機意識が想像的なレベルにとどまっている感じがします。

経済問題に精通している人がなぜ感情的になるのかは難しいですが、自分の思い通りにならない現実への苛立ちということなんでしょうね。でも私の知る限りではだいたいどこの国のエコノミストも政治への不満たらたらですね。経済政策を決定するのは結局その時々の政治状況で、必ずしも合理的に政策決定される訳ではないですから。また日本は長いこと経済運営がうまくいっていませんからね。

投稿: mozu | 2008年9月 4日 (木) 15時25分

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