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2008年10月

サンにはサンの「道」がある

きのこの美味しい季節ですね。あまり真面目なことを考えられる心境でもないので日本関連ニュースとしばし戯れたいと思います。

"Democratic pretension vs. airs of entitlement" by Hiroaki Sato[Japan Times]
「イルカ」と「強制連行」が目玉のジャパン・タイムズですが、この記事はある意味典型的に思えましたので紹介します。柔道の金メダリストの石井選手の「天皇陛下のために戦いました」発言から唐突に三島由紀夫と軍国主義をめぐるいかにも外国人向けの皮相なおしゃべりへと飛躍し、最後はアメリカ大統領の君主的性格を語りつつ民主政の困難に思いを馳せてみるという前後の脈絡の不分明な文章であります。枕だけにしておきますかね。石井選手がどういうキャラクターでこの発言がどれほど不敬な響きを持っているのか判らないようですね。三島由紀夫も草葉の陰で泣いているでしょう。つまりあなたの認識の正反対です。というわけでスタート直後での大転倒、立ち上がってよたよた走り出してみたもののあさっての方向に向かってしまってゴールは出来ずといった走りでした。次回はまっすぐ前方を見てゴールを意識しながら走ることをおすすめします。ところでデスクはチェックは入れないのですかね。

"Japan hangs two more on death row"[BBC]
もはや日本で死刑が執行された時にはBBCがすべて報じてくれるというありがたい仕組みが出来上がっているようでなによりです。私自身のこの問題に対する考えはここでは開陳しないことにします。この記事で特筆すべきは麻生首相がカトリック教徒である点の強調ですかね。写真の下にもわざわざキャプションがついています。教皇猊下は死刑に反対しておられますよと。都合のいいときだけ権威を利用するとははさすがですね。ちなみにBBCさんは就任以来この点を盛んに強調するのでありますが、勿論ここはイギリスではないのです。ブレアがカトリックに改宗した、ふーん、それで?、の国なのです。私個人は英国カトリック史には非常に興味がありますけれどもね。ふふふ。日本ですけれども、どうやら宗教的信念を政治に持ち込まず、善政をなしている限りは、首相がなに教徒でもさほど気にしない(あるいは儀礼的に無視する)人が多い国のような印象を受けますね。印象ですけれどもね。

"North Korean leader 'in hospital'"[BBC]
"Pulses race in Pyongyang"[Asia Times]
キム・ジョンイル氏の病状に関するニュースが世界を駆け巡っていますが、やはり日本には北朝鮮に関するインテリジェンスはあるのですね。どこ発の情報なのか知らないのですが、この記事だとフジテレビになっていますね。ふーむ。フランスでもこの話はけっこう大きく報じられています。普通に考えるとテロ支援国家指定解除との関連を想定したくなりますが、そういうことでいいんでしょうか。どうやら情報戦の最中みたいなので判断は保留しておきますが、いずれ舞台裏が明らかになる日も来るのでしょうかね。

"Plus ça change..."[Observing Japan]
ハリス氏の政局ネタ。民主党は総選挙を求め、自民党は国際的危機を理由にこれを遅延させる。自民党は民主党を国よりも政局を優先していると非難し、民主党は世論を意識しながら政府と時に協力し、時に反対すると。タイトルの「変われば変わるほど・・・(変わらない)」というのは今の政局が福田政権の序盤とまったく同じ構図であることを指しています。この金融危機は自民党にとっては天の助けとなりそうな予感がします。いろいろ書いてはいますが、経済の見通しについてはさほど悲観的ではありません。しかしいったいいつになったら政権交代のチャンスはやってくるのでしょう。民主党はどんどん魅力に乏しくなっていきますしねえ。困ったものです。

"Heroes""Instant Karma"[Shisaku]
ホテルのバーだのカップラーメンの値段だの「庶民感情」からの乖離ネタが日本のメディアでは流行っているようですが、幸福な国だなあとしみじみと思います。グローバルな阿鼻叫喚の中にあってやはりのほほん教徒の国ですね。いいえ、これは本当に日本の強さだと思うんですよ。ところでジャコバン派の記者が「庶民」であろうはずもないことぐらい当の「庶民」が知らないとでも思っているのでしょうかね。また隣家の庭の小さな変化は気になっても一国の宰相の小さな贅はさほど気にしないのがいわゆる「庶民」らしいあり方のような気もしないではありませんが、あるいはジャコバン派には気にいらない認識なのかもしれません。私はアカの家の出なものでこのあたりの自己欺瞞には幼少時からとても敏感なんですね。ちなみに私はカップラーメンの値段を知らない麻生氏は嫌いではないですが、秋葉原で媚びを売っている麻生氏はあまり好きではないです。コメントは別にShisakuさんに向けたものではないです。

"Exclusive: Killer of Lindsay Hawker, teacher buried in bathtub, 'commits suicide'"[Times]
"Sympathy turns to scepticism as courtiers whisper princess does not do her duty"[Times]
パリー氏が日本に戻ってさっそく飛ばしています。あのー、この人のソースは週刊誌と2chみたいですのでこれをネタにwaiwaiしてもあまり意味ないと思いますよ。縦を横にしているだけです(本人は日本語読めないようですが)。ちょっとシニカルな味付けをして一丁上がり。楽な商売ですよね。それにしても市橋容疑者自殺断定報道は飛ばしましたね。警察の否定を受けて本人はブログで言い訳をしているようですが。それとどうでもいい話ですが、タイムズが「高級紙」である点を妙に強調して報じているのにはやや違和感があります。いったいいつの時代の話ですかね。俗に「東スポのほうがなんぼかまし」という言い回しがありますけれども(ない)、こういう中途半端な新聞よりはサンのほうが潔いだけなんぼか好もしいですね。

それではみなさまも秋の深まりを楽しみましょうぞ。

追記
ジャパン・タイムズのエッセーですが、本当を言うと、私を苛立たせたのは石井君の話ではなくて三島由紀夫と久野収の粗雑な扱いです。どちらももっと複雑な人達であってこういう平板な図式に収めるべきではないと思うのです。左派は平板な市民派のイメージから離れて久野収をちゃんと読むべきだと思います。この人の右翼認識はなかなかのものです。だいたいこのエッセー、英語圏の三島幻想に媚びているのが不快なんですよ。三島氏の思う壷ではないですか。言っている意味わかりますかね。

また「庶民感情」の話は左派メディアばかりでなく右派メディアも騒いでいたのですね。ふう。こちらは松平定信症候群でしょうか。どちらにしても政治家に過度な清廉潔癖を要求する風潮は好まないですね。青年将校を焚き付けていた頃から進歩がないです。だいたい景気後退なんですからお金持ちのみなさんに消費していただかないと我々も困るではないですか。

なにを思っていたのか、タイムズを「雑誌」と書いていましたので直しました。ところでパリー氏はわりと人気者(?)なのですねえ。まあ言い過ぎだとは思いますが、ここしばらくのタイムズには苛立たされる傾向があるのですね。欧州ネタはまあいいんですけどね。

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欧州大統領への道

株価と円がすごいことになっていますが、この傾向は当面は続くのでしょうね。確かに政府は機敏に動いてはいますが、目的と手段が対応していないように見えるのは私が素人すぎるからなんでしょうか。また相変わらずの日銀の腰の重さはどうしたことなのでしょう。いや別に利下げじゃなくともいいんですよ。いろいろやれそうじゃないですか。この際、涼しい顔で世界経済にすべての責任を転嫁してひそかに方針転換したらいいんじゃないでしょうかね。そう、これは撤退ではなくて転進です。政界からもマスコミからもたいして非難されないでしょう。うるさいのは経済系ブログぐらいです。まあ素人の囀ですからこれは無視してくださいね。

"Why the market has been down on the Euro and European banks"[Marginal Revolution]
kitaryunosukeさんが訳されている(いつもご苦労様です)アンブローズ氏の記事に対するコーエン氏のコメント。

By the way, this is further evidence that the driving force behind the earlier boom was the global savings glut, and sheer giddiness, not the excessively loose monetary policy of Greenspan's Fed. The ECB has pursued a relatively tight monetary policy since its origin. It also will be interesting to see what trouble arises in Spain, since Spanish banking regulation has been considered a model of how to keep these problems under control.

ここで出てくるglobal savings glut(グローバルな過剰貯蓄)というのはバーナンキ氏が語っていた話ですよね。FEDとECBの金融政策を相対的に比べるとそうも言えるのかなという気もしてきますが・・・、これはグリーンスパンを戦犯視する世間を賑わす話とは対立する意見ですよね。どう考えたらいいのかよく判りませんが(ここではFed擁護の意図はないでしょう)、認知的不協和を与える意見は尊重するという格率に従ってここにメモしておきます。ところでアンブローズ氏の記事ですが、読んでいて寒気がしてきます。でも誇張じゃなくて本当にやばそうです。レバレッジ投資の本場はアメリカではなく欧州だったことがはっきりしてしまいましたね。私が観察しているイタリアのいくつかの銀行ですが、株価が順調に下がっているようですね。ふう。

"The other part of the bailout: Pricing and evaluating the US and UK loan guarantees" by Viral Acharya and Raghu Sundaram[VoxEU]
英米の銀行救済プランの比較をしている記事です。bail outプランの本格的な分析ってあまり見た事がなかったのですが、これは議論のたたき台になるのかもしれません。この論者によるならば、なかなか優劣はつけ難いが、もし危機が深刻化した場合にはイギリスのプランのほうがパニックをひき起すだろうとしています。ゴードン・ブラウン氏が今は英雄みたいになっていますが、さてどうなるのでしょうかね。

"Sarkozy’s ways put EU peers on edge"[FT]
サルコジ外交が周囲に怨恨の種を蒔いていることについては前に紹介したエコノミストの記事でも触れていましたが、これも同様に周囲を振り回し続ける大統領についての記事ですね。

So, in the space of a few days, Mr Sarkozy offended Prague and Luxembourg, worried London and once again angered the Germans. In most countries they would be regarded as embarrassing diplomatic blunders. But that is Mr Sarkozy’s way of doing business.

“[Some people say to me], ‘you move too fast’. That’s true for those who don’t want to move,” Mr Sarkozy said.

ということでサルコジ氏は無反省のようです。この人が反省などするわけもないですがね。

"Prague accuse Sarkozy de vouloir "siphonner sa présidence" de l'UE"[Le Point]
上の記事の引用部分でプラハを怒らしたとありますが、これはサルコジ氏が「欧州大統領」(そういう役職はないですが)としての役割を一年延長しようと動いていることに対してです。順番から言うと半期交代で欧州連合の議長国は次はチェコに回ることに決定しています。それで前にも書きましたが、このチェコのクラウス大統領は有名なユーロ懐疑派であります。こんな時期にリスボン条約にも気候変動案にも強硬に反対しているユーロ懐疑派を議長にしていいんですかねというのは私みたいな人間でも思うところです(この人の環境保護主義は新手の共産主義だ発言は表現を穏当化すれば半分ぐらい賛成なんですけども)。またその次はスウェーデンでしてここはユーロ圏外なんですよねえ。なんという使えない枠組みなんでしょう。サルコジ氏がさかんに揺さぶっているのも判るというものです。この記事によれば、欧州連合の議長とは無関係に危機への対応の会合が開かれていると嘆くクラウス氏ですが、フランス、ドイツ、イギリス、イタリアの四カ国は1938年にチェコスロヴァキアの一部への侵略を許したミュンヘン協定を結んだ国だと非難したとされます。さらにこのユーロ懐疑派は欧州議長職は重要なものだとは思わないと明言しています。ふう。この人ではなにも決まらないですよね。

"Sarkozy’s attempted EU coup fails – for now" by Wolfgang Munchau[FT]
ミュンヒャウ氏のサルコジ氏の「クーデター」についての論評。この人は好意的なんですよね。彼の「欧州大統領」(president of Europe)の一年延長案や「経済政府」の提案はチェコやドイツの反対で失敗に終わったように見えるが、最終的にはこれは実現するだろうと6つの根拠から予測しています。第一に欧州経済の景気後退は明らかで米国の新大統領は景気刺激策を用意して欧州に圧力をかけると予想される。第二にマネーマーケットの保証の提供の失敗の是正が必要である。第三に現在の銀行の資本増強プランはユーロ圏レベルの協定で改訂される必要がある。第四にユーログループの指導力のなさ。第五にドイツの反対は孤立しつつある。スペイン、イタリアは賛成であり、東欧の危機が深刻化すれば、オーストリア、スロヴェニア、スロヴァキアがユーロ圏の連帯を求めるだろう。第六にリスボン条約の不確定性。チェコのクラウス氏が議長になった場合には、欧州連合のリーダー達はこの条約の外で危機に対応するほかなくなる。ドイツは反対し続けるだろうが、サルコジ氏はメルケル氏を追いつめるだろう。現在のサルコジ氏はフランス大統領に過ぎないが、危機が深刻化するならば、彼のクーデターは成功するだろう。

私は何度か書いたようにユーロ懐疑派的なんですが、今回の危機にはどう見ても欧州レべルの対応が必要ですし、これを機にあるいは欧州も実効的な枠組みに成長できるのかもしれないという気もしています。リスボン条約のような大仰なばかりの法的枠組みとは別のもっと実効的な枠組みからですね。さてサルコジ氏はどこまでこの危機を最大限に利用できるのでしょうかね。ところでフランスのSWFについての経済学者のまともな論評がでていないようなのはどうしたことなんでしょうね。放置というやつですか。そうですか。チャベス氏が素敵なコメントをしていましたね。ようこそ社会主義クラブへと。

おまけ
"Shopping in Taiwan's hypermarkets"[BBC]
BBCのネット版のタブロイド化傾向については識者の間で指摘されているところでありますが、兆候的ですのでここでメモしておきます。この記事、見出しが"Go, go gadgets"、リード文が"The wacky world of Taipei technology"といかにもアクセス稼ぎをねらったような仕掛けになっています。そう、"wacky"と"weird"、この二つは英語圏のギーク層において我が国を指すのにほぼ独占的に使用されてきた形容詞ではありませんか。さて今後英語圏でwacky Taiwanキャンペーンが始まるのでしょうか。今時BBCに幻想を抱いているのはどこかの島国の公共放送の職員ぐらいしかいないという話も聞きますが(面白い番組はありますけどね)、こういうネタはGizmodoやPink Tentaclesに任せて少しは真面目に報道したらどうですかと言いたくなる自分もいたりします。まあいいですけどね、少なくとも政治社会ネタではいい加減な報道は止めていただきたいものです。

追記
"Yen is caught in carry-trade turmoil"[FT]
例のFTの記事はこれですね。政策提言は以下。

Given the current pressure on the yen, additional measures may be needed. Japan could print yen and use them to buy foreign currencies, putting a floor under the yen and preventing deflation. While this would slow a correction of global imbalances, highly disruptive jumps in currencies due to speculative flows are the greater of two evils.

円を刷って外貨を買えと。複数の通貨(ドル以外もということですよね)に対する円売り介入。いろいろ勘ぐりたくなるところですが、今の局面ではこれもなかなか悪くないアイディアに見えます。確かにFTは円キャリーについては早くから警告していましたが、正直に言ってなんだか蜃気楼みたいな話に感じていました。

コーエン氏のエントリに関して、当初は「FEDの緩和策」「ECBの引き締め策」としていたのですが、これは相対的な話で誤解を与える表現でしたので書き直しました(ご指摘ありがとうございます)。

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声が小さい

東欧の経済状況の悪化ぶりについて書こうかと思ったのですが、もう少し調べてからにしようと思い直して以下最近の英語圏のJapanネタをクリップしておきます。

"Will Japan Go Nuclear?" by Robyn Lim[Far Eastern Economic Review]
ねえ、最低限ググって調べてから投稿したほうがいいんじゃないという他のまともなメンバーの無言の抗議と冷ややかな視線を全く気にしないその傍若無人ぶりで名高いNBR常連のロビン・リム氏の記事。関係ないですが、NBRって無知で傲慢な人間達を少数のエキスパートが教え諭す場なんでしょうか。この記事は地政学の奥村さんのところのその著書についてのコメント(ふーん)つきのエントリから。このたびのテロ支援国家指定解除が日本の核武装への道を開くだろうと警鐘を鳴らす内容です。どうもまったく思わぬところから援護射撃(?)が来たようで、まあ、危機を煽っておいてくださいな。誰かに対する牽制になればいいんじゃないですかぐらいですね。

"Japan as Spoiler in the Six-Party Talks: Single-Issue Politics and Economic Diplomacy Towards North Korea" by Maaike Okano-Heijmans[Japan Focus]
Japan Focusということでどうせまたアレな記事だろうなと思っていたらなかなか精密な分析で感心しました。そう言えばこの論者は前にどこかで読んだことがありましたねえ。日本の対北朝鮮外交についてこの記事はよくまとまっていますのでこの問題についてなにか言いたいJapan論者は最低限この程度の知識と認識をもってからなにか言うようにして下さいね。勿論すべての文脈をひとつの記事に網羅することなどできませんから、他の文脈もあるだろうぐらいの想像力ももっていただきたいですが。別に日本が積極的にエンゲージメントすべき理由がなかっただけの話で特定条件下においてはごく合理的な行動でしょう、そして条件がどのように変化したのかの算術が今必死になされているのでしょう。それだけのことです。アメリカへの信頼性については別に平気なのではないでしょうかね。単純な反米屋さんには本当に困ったものですけれども、我が国には戦略的親米派がいればいいのであって奇妙な種類の親米屋さんが減少していることそのものはよい傾向だと思いますね。なお私は戦前の「親米派」自由主義者達に深い敬意と愛着を抱いている人間です。

"Managing the Japan-US alliance" by Koji Murata[East Asia Forum]
East Asia Forumは全般に「東アジア共同体」的な発想をする英語圏のリベラル系論者が集うところという印象のあるブログですが(いろいろいますが)、日本や中国においてその名が口にされる時の響きやイメージと英語圏のリベラル系論者のそれとの落差を味わうにはなかなかいいところかもしれません。Siro Armstrong氏の政局ネタにも飽きていたので村田教授が寄稿しているのを見ておやと思ったので紹介しておきます。ここしばらくの日米関係の不協和音に対する警鐘といった内容で日本国民からするとなんということもないことが書かれているわけですが、英語でこういう場所に寄稿すればそれだけで十分に意味があります。なぜならば英語圏においては日本国民のヴォイスが圧倒的に不足しているのですから。

"New US leaders need a Japanese 'jolt'" by Yukio Okamoto[Asia Times]
ウィリアム・スパロー氏の植民地主義的欲望に塗れた記事によって信頼性を著しく損なっているアジア・タイムズですが、この微妙過ぎる新聞にも日本国民の寄稿者が増えているようでなりよりです。岡本行夫氏による日米の安全保障関係についてのこの記事ですが、民主党によるインド洋での給油活動への妨害を批判し、在留邦人の保護や海洋の安全における自衛隊の役割の強化を訴えています。これも日本国民からすれば特になんということもない話でありますが、英語で発信することに意味があるわけです。なぜならば英語圏において日本国民のヴォイスは徹底的に不足しているのですから(何度でも反復します)。

"The LDP's Long Goodbye" by Tobias Harris[Far Eastern Economic Review]
ハリス氏の自民党における派閥の機能についての記事。近年の総裁選挙や閣僚人事から派閥の無意味化の傾向を指摘しています。派閥はどうやら多数の勉強会や議員リーグやイデオロギー的なクラブや伝統的な族議員に席を譲ったように見えるといい、近年の自民党は派閥や政策集団というよりも漠然としたイデオロギー的な「傾向性」で分裂しているようだと述べています。中川昭一氏の「真の保守」、中川秀直氏の「上げ潮派」、与謝野馨氏の「財政再建派」、伝統的な族議員、加藤紘一氏の「リベラル」、それから多数派たるリスク回避派(the risk averse)と。それで麻生内閣で表舞台から去った小泉構造改革派の後継者達の去就、彼らが自民党にとどまるのかあるいは党を離脱するのかが問題になるとしています。そしてこのイデオロギー的傾向性へのシフトによって自民党はかつてのような一貫性—権力の座につき続けるという目的の下で—を喪失した。かつてもイデオロギーは存在したが、派閥が無意味化するにつれて、政権の維持と並んで政策的目標がイデオローグ達にとって重要になっている。最後は問いかけで終わっています。

Can the LDP last as a party pursuing several distinct and contradictory policy agendas? Will Mr. Aso or a future party leader be able to impose a uniform policy agenda on the party? Or will the next general election prove a catalyst for a party realignment that breaks up the LDP as it exists today?

なるほど。これならばさほどの異論はないですね。私はハリス氏の「イデオロギー」や「イデオローグ」の用法を取り違えていたのかもしれません。別の言葉に置き換えて読めばいいわけですね。ただ日本政治思想史と日本政治史の常識が英語圏で十分に共有されていない以上、ハリス氏の記事を読んでも読者には自民党の「保守」とか「リベラル」とかの意味は判らないでしょうね。また実際には仔細に各グループの面子を観察してみるとその乱雑さに軽く目眩がしたりするわけですね。一枚岩の思想集団などではないわけです。このあたりはどうも海外ウォッチャーには見えないようです。それと私自身は一国民として我が国の政党政治の成熟を待望しておりますし、特定の政治家さん達を応援したりはしているのですけれどもね、消音ボタンを押して眺めると、私の目には日本政治はある運命の作用の下に置かれた剥き出しの権力政治として現れますね。そういうわけで私に興味があるのは本当はどちらかといえば政治家達の言葉と行為のずれのほうです。

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コルベールの亡霊

驟雨の降りしきる夜でありますが、ハワイアンにすっかりご機嫌であります。皆様はいかがお過ごしでございましょうか。ハワインアンと言えばやはりスチーム・ギターに限りますよね。ウクレレなんて知るかです。灰田勝彦サイコーです。このファルセット・ヴォイスがたまらない。こんな夜はやっぱり戦前ハワイアンですよね。

Michel Rocard : "La crise actuelle est née en 1971"[Le Monde]
ロカール主義の主導者として一時代を築いた感のあるミシェル・ロカール爺でありますが、あいかわらずお元気なようでなりよりです。国家主義的、統制主義的な経済的思考が一般的であったフランス社会党内部にあって市場経済の重要性を強調する少数派の領袖として活躍され、ミッテラン政権下では首相も務められたお方です。周囲の空気をまったく読まない直な物言いで有名な方ですね。私はこの政治家がけっこう好きでしてル・モンドになぜかインタビューがあったので嬉しくなってしまいました。内容に関してはあまりコメントしたくないのですが、想像を絶する発言の数々に腰を抜かしそうになりましたと言っておきます。このたびの危機の原因は1971年にあるのだそうです。金ドル本位制を止めたのが諸悪の根源だという洞察には唸ってしまいましたが、最後のセリフには・・・、いや、これでこそ、ロカール氏です。

フリードマンがこの危機をつくったんだ!あいつはもう死んだ、本当に、残念なことだよ。生きていたらあいつは人道に反する罪で国際刑事裁判所に告訴されただろうさ。市場の機能は完全だという考え方であいつは人間の強欲と貪欲とが自由に表明されるようにしてしまったんだよ。

フリードマンというのは偶像化されてしまった経済学者なんでしょうねえ。なお私が心から氏に同意するのはオルタナに対する「阿呆達の記念碑」発言ですね。その通りです。

"Sarkozy crée un fonds stratégique d'investissement"[Le Monde]
アヌシーでサルコジ氏が地方税源の事業税の1年間の停止と中小企業のための戦略的投資ファンドの立ち上げを提案しています。欧州ソブリン・ファンドの提案が空振りに終わったために(やはりドイツが嫌がった)フランスのソブリン・ウェルス・ファンドを立ち上げたということのようです。この大統領にとっては新自由主義だの国家資本主義だのといった寝言は知ったことかということなのでしょう。例によって日本はじっと動かずに「世界の大勢」を読んでいるといった感がありますが、サルコジ氏はもう国を賭けたようですよ。吉とでるか凶とでるかは神のみぞ知るところです。

"The president who loved summits"[The Economist]
最近のサルコジのサミット狂いについてのエコノミストの記事。シラク時代に比べたフランス外交の変貌について述べています。最近の出来事から欧州はリスボン条約で提案されたようなpermanent presidentが必要だという議論がなされている。もし金融危機とグルジア危機の際にスロヴェニアが議長国だったらどうなっただろうと。ただこうした議論はエコノミストは気に入らないようです。制度と指導力とは違うのではないかと。曰く、

Yet there is an obvious flaw in this argument: it equates leadership with institutions. If Mr Sarkozy has appeared as a strong European leader, this is because of his political qualities and egotism, not because of the EU’s institutional arrangements. Indeed, it is possible to take precisely the opposite line over the Lisbon treaty: that Mr Sarkozy’s hyperactivism demonstrates that strong European leadership does not need a new institutional set-up; and even that to have had another worthy as permanent EU president would just have created another obstacle.

そしてサルコジ外交の特徴としてプロトコル破りを挙げています。サルコジ流の非フランス的な袖をまくり上げたプラグマティズムとは事態を動かすためにはなんでもやることを意味しているといいます。このスタイルの欠点としてエゴが強過ぎて周囲に怨恨を残すというのはそうでしょうね。それでシラクではないことは確かだが、利害の相反の著しい欧州を本当にまとめられるのと締めくくっています。まあエコノミストらしくお手並み拝見といった引いた視点の記事ですね。

"Re-bonjour, Monsieur Colbert"[The Economist]
ケインズの復活について大騒ぎになっているが、墓場から飛び出した亡霊はイギリスの経済学者ではなくフランスの官僚だったというわけでコルベルティスムについての半分冗談みたいな記事です。

Now suddenly every politician has ideas about how to run a business. Thus Congressman Henry Waxman (no doubt inspired by the picture of Colbert that hangs in the House of Representatives) lambasted the rescued American International Group for spending $440,000 on a junket for a crew of life-insurance agents (no matter that the reps were self-employed). Britain’s Tories want to stop bonuses in the banks their government has just bought (clever idea: driving away good staff just when you need them). Politicians everywhere want banks to be free with their credit (not normally the route to profits).

しかし現代の統制主義者(dirigistes)達よ、新しい玩具の遊び方を知りたければ、フランスに行くがいいと述べ、フランスの国有化政策がいかに失敗したのかの事例を列挙しています。最後はコルベールは復活したのかもしれないが、それは解決ではないと。ドーバー海峡の向こう側の王様気取りの大統領はだんだん「コルベール的」になっているようですけれども、この危機に対するイギリスの身の処し方には興味があります。冗談記事ですが、1930年代ではなく17世紀のことを考えたくなりました。なんとなく国の体質みたいなものって変わらない部分があるような気がしてくるのが不思議ですね。

追記
浮かれて意味不明なことを書いていたので最後のほうを書き換えました。
コルベルティスムと戦後のディリジスムは別物と考えていたのですが、似たようなフランス的伝統として捉える人が多いのですね。なんだか頭が混乱してきました。英語圏に多いようなので外から見るとそんな風に見えるということなんですかね。なお日本を一種のディリジスムと捉える英語圏に根強くある見方はやはり間違いだろうと思いますね。

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提唱王

"IMF Probes Chief Over Tie to Worker"[WSJ]
IMF総裁のドミニク・ストロス・カーン(DSKと略す)氏が部下との不適切な関係で調査されている模様です。おそらくはフランス人の誰一人として驚かなかったこのニュースですが(そういうやつであることはみなが知っている)、なにもこんな時期といいますか、あるいはこんな時期だからなのでしょうか。盛んに陰謀論が囁かれていますね。規制論者で知られるDSK対WSJが代表するところの勢力との闘争という図式で。またこんな話はパリでは日の目を見ることはないだろうといった政治家の私生活に関する比較文化論的解説も出回っています。ピューリタン!といういつものやつです。まあ私はコメントしないでおきます。ブランシャール先生はなにをやっているのかなとかIMFの役割は今後はどうなるんでしょうかというのは気になりますけれどもね。

"La victoire de l'Europe"[Le Figaro]
先日の緊急首脳会合での欧州協調路線を主導し、それが米国の政策にも影響を与えたということですっかり気をよくしているサルコジ氏が、カナダ、アメリカで吹かしているようです。ル・フィガロが連日サルコジ万歳、欧州万歳記事を掲載しているのが微笑ましいのですが、米国に影響を与えたことが(米国にimposerしたのだと強調されています)そんなに嬉しいですか。逆にどれほど心理的に依存しているのかを示しているようでもあり、どこか切ないものもあります。あるいはこれから本格的な不況の波が欧州を襲うことについてしばし忘れたいということなのかもしれません。

"Des sommets internationaux contre la crise financière"[Le Point]
「未来の資本主義」とか「ブレトン・ウッズ」とか威勢のいいことを語っていますが、もはや任期切れを待っているブッシュ氏相手になにか実質的なことが決められるわけもなく、今回の訪問は今後の展開をにらんだ政治的パフォーマンス以上の意味はなさそうです。複数のサミットが開催される予定とのことですので今後は熾烈な外交戦になるのでしょう。ところでル・ポワンの記事の一節を引くと

フランス大統領が「未来の資本主義」の建設を望むのに対してジョージ・ブッシュは「民主的な資本主義(つまり現状の資本主義)の基盤を維持することが肝要だ」と繰り返した。土曜にはハーパー首相の報道官によれば「国際金融システムに永続的な損傷」を与えない慎重さをカナダも同様に訴えた。

といった具合のようですからそもそも噛み合っていないようです。今後しばらくは欧州が規制と監督を叫び、その他の国々はこれを横目でにらんで慎重に対応するという構図になるのでしょうか。FTはこの動きを牽制していますね。ともあれ今はいかに目前の危機に対処するのかという段階で経済新秩序について派手なパフォーマンスをする段階ではなさそうな気がします。これはこの「ハイパー大統領」の持ち味なのですけれども。確かにあの当初の混乱ぶりから政治の力で欧州協調の流れを実現できたのはたいしたものだとは思いますが、最近の欧州というかフランスは少し浮かれてはいませんかね。大変なのはこれからだと思うんですよ。辛過ぎますか。

"Nicolas Sarkozy veut un gouvernement économique pour la zone euro"[Le Monde]
キャンプ・デイビッドで「未来の資本主義」について語った大統領は、ストラスブールの欧州議会ではユーロ圏の「経済政府」の樹立を訴えております。一部引用すると、

「明確に定義された経済政府なくしてユーロ圏の存続はあり得ない」とストラスブールの欧州議会で彼は主張した。現在ユーロ圏の唯一の連邦組織たる欧州中央銀行が「独立すべきである」としても、欧州中央銀行は「経済政府と討議できるというのでなければならない」と論じた。

記事によるとバローゾはECBの独立の観点から距離をとったとされます。さらにサルコジは中国に出向いて資本主義の立て直しの枠組みにアジア諸国を参加させるべく説得すると宣言している模様です。欧州中央銀行とサルコジの因縁の対立を想起するならばこの「経済政府」の主張に警戒する人は多いでしょうし、果たしてドイツはこの提案に乗るのでしょうか。ベルルスコーニは賛成しそうです。アイディアそのものはそれなりに理に適っているとは思いますがね。また北京に来てこちらも引っ掻き回す予定らしいですので、日本も警戒したほうがいいのかもしれません。ともかく矢継ぎ早に提案を繰り出して手数を増やし続けるサルコジです。壮大かつ曖昧な構想を提唱することにかけてはこの人の右に出る人はそうはいないでしょう。構想倒れのパターンもあるのですが、やはり侮れないんですよね、この行動主義者は。

"This toxic crisis needs more than one shot" by Wolfgang Munchau[FT]
ミュンヒャウ氏の論説。以下訳ではありません。この金融危機がトキシックなのは実体経済への多くのフィードバック・ループがあるからであり、先週の救済プランのような一撃的な解決策は思われているほど有効ではない。第一に住宅市場。米国の住宅市場は既に20%下落したが、今後さらに10%から15%下落するだろう。これはまた価格と賃料、価格と所得の比率を長期的な均衡へともたらすかもしれない。しかしこうしたトレンドが続くと想定する理由はない。不動産市場はさらに乱高下しそうだ。これは住宅価格の下落したイギリス、スペイン、アイルランドにも当てはまる。第二にクレジットカードだ。クレジット・クランチの際にこれは多くの家計にとって自由に融通のきく最後のクレジットである。ここ数週間カードとカード・ローンのCDSスプレッドが拡大している。クレジットカードの証券化された市場はサブプライムモーゲージ市場と同じぐらい大きい。景気後退が進めば、クレジットカード・デフォルトも上昇し、証券化されたクレジットカード商品が大打撃を受けるだろう。第三に企業倒産と支払いデフォルトだ。アメりカは長期にわたる残酷な景気後退に突入したが、企業倒産の上昇は確実だ。不明瞭なのはデフォルト・レートが10パーセント以上に上昇するかどうかだ。こうならない理由が私には判らない。CDS市場がリーマン・ブラザーズの没落に、さらに二桁のデフォルト・レートの本格的な景気後退に耐えられるかどうかは不明瞭だ。第四に株式とクレジット商品の評価だ。現在の評価がそのままであるならば、時価会計ルールの一時的免除はほとんど意味がない。どんな会計的トリックを弄しても多くの金融機関が実際には支払い能力がない事実から目を逸らすことはできないだろう。ヘッジファンド危機や新興市場のメルトダウンのような他にも悪化するかもしれない要素がある。アイスランドに続いて危機は今や他の国々を襲っているところだ。また国際的な海運の混乱が始まり、もはや信用状の受け取りもあまねくなされていないと言う。

こうした一連の危機を前にして最善の政策的対応とは何だろうか。第一に実体経済とクレジット市場の間の多数の相互作用に鑑みるに、賢明な対応は金融の安定と経済成長の両者に向けられなければならないだろう。先週のEUの指導者達がなしたようにきわめて寛容な金融救済パッケージを通す一方で財政刺激のロジックを拒むようでは有効でないし公正でもない。有効でないというのは不必要なまでに深刻な景気後退は金融制度の健全さに否定的な影響を与えるからであり、公正でないというのは現在のアプローチは低所得者から高所得者へのリソースの大規模な移転に相当するからだ。またこのパッケージにはインバランスがある。全銀行システムの資本増強の可能性を提示しているものもあるが、そんな仕事は一国の能力を超えているのだ。イギリスが8行に限定しているのは正しかった。完全に欠けているのは銀行間貸付市場の明瞭な保証だ。ユーロ圏では多くのローンやモーゲージがEuribor(ユーロ銀行間取引金利)のようなマネーマーケットの金利と結びつけられている。中央銀行の利下げは歓迎されようがマネーマーケットが機能しない限りは不十分な効果しかない。欧州諸政府が銀行間貸付保証の提供に失敗した最もありそうな理由は銀行間貸付はユーロ圏の市場なのだから国家レベルではこれは有効になされなかったというものだ。これは悪い理由づけだ。こうした大規模な流動性の注入は奇跡的に市場を再活性化するだろうとECBは論じている。私にはそうは思えない。マネーマーケットの金利が先週やや低下したのは事実だが、トレーディングはほとんどなかった。現在、銀行は必要な流動性をECBから得ているが、中央銀行にファンドを一時的に預け入れている状態でマネーマーケットにまだ貸し付けてはいないのだ。こうしたインバランスは是正されなくてはならない。的の絞られた資本増強、マネーマーケットの保証、消費を維持するための刺激策、所得の再分配といったものが包括的な戦略の一部として必要とされている。先週のパッケージは差し迫ったメルトダウンを防いだかもしれない。しかしこれは通常のセカンド・ベストな政策対応で静められるような危機ではないのだ。

以上、4つのポイントから実体経済への影響に警鐘をならしています。また先日の銀行救済プランでは不十分であるとして、資本増強のターゲットをもっと絞れ、銀行間取引の保証をしっかりしろ、財政刺激も必要だとかいった提言をしています。首脳会合では否定されましたが、金融政策のみならず財政政策も実行すべきだという声はあちらこちらから聞こえてきますね。多分もっと追い込まれないと政治的にそれはなさそうな気がします。

ではでは。

おまけ
いわゆるchild abductionの問題をとりあげる際の英語圏の報道の不公平性については以前から批判的でした。ここでは法的議論には踏み込みませんが(私自身は柔軟な立場です)、私が気になったのはコーカソイドの元夫の意見のみを一方的に報じるその姿勢です。日本人の元妻の完全なる沈黙と対照的な元夫たちの雄弁ぶり—ああなんというわかりやすい構図でしょう—に見られるあからさまな権力関係には辟易とさせられるわけですね。この問題で一方の声だけを提示するというのはやはり不公平でしょう。この点に関してJapan Timesが"I 'abducted' my daughters"という記事でアメリカ人女性の意見を掲載しています。せっかく日本にいるんだから本当は足を使って日本人の元妻の声も取材して拾って欲しいんですが(難しい部分もあるでしょうけれども)、この意見を掲載した姿勢は評価しておきます。さらに各国の事例について調査した上で記事は書かれるべきでしょう。要はプロパガンダではなく問題を分析し、検証する記事を書くべきだということです。

なお北朝鮮の拉致問題での日本政府の対応を攻撃するために、あるいは単に日本をクサしたいがために、このabductionという語以外になんら関連性のない話—工作員に拉致されて国家機関によってスパイ養成されたとでもいうんでしょうか—を利用する恥知らずさん達には徹底的な軽蔑を捧げます(そういう論調があるのですね。勿論外交政策の批判そのものは構いませんよ)。

追記
サルコジ氏今度は欧州ソヴリン・ファンドの提案もしていますね。まあ次から次へと提案します。それから別に転向などしておらず、最初からこういう方だったと記憶しています。「アングロサクソン的」というレッテルの空疎さがだんだんはっきりしてきているだけだと思います。

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カダフィの高笑い?

欧州各国が金融機関の救済に動く中にあってさっぱり音沙汰のない中核国があります。そう、イタリアです。欧州第三の経済を誇るこの国の動きの鈍さはなにを意味しているのでしょうか。便りのないのはよい便りということでみなさん元気にやっておられるということなんでしょうか。それだといいのですが。

残念ながらイタリア語ができないために他国のソースに頼るしかないのですが(英字面のある新聞は読んでいますが、日本の新聞の英字面にも似てあまり面白くないですね)、最近のかの国のニュースと言えば、ファシスト絡みばかりでして、おいおい、どうなっているんだと心配したくもなるのですが、確かに移民関係でそれはまずいだろうというニュースもけっこうあるのですが、無論「ファシズムの復活」とやらを真に受けるほど当方ナイーブではないですので他国のメディアのフォーカスの偏りの向こう側でなにが起こっているのかもどかしい思いで眺めているわけですね。いや、歌ったり踊ったりしているんでしょうけれどもね。

"Italy's Economy On The Ropes (Again)"
まずビギナー向けにRGEmonitorでマクロ経済動向の判りやすい記事がありましたのでリンクしておきます。ちょっと辛目の記述ですが、近年のかの国の経済の綱渡りぶりが判ると思います。経済構造が基本的に違うので日本に関連づけてなにか言うのは難しいのですが、労働人口の減少問題などはあまり他人事とは思えません。がんばれ、イタリアですね。日本もですけれどもね。

Italian Economy Watch経由ですが、今回の金融危機にあたっての欧州各国の動きをまとめているGlobal Insightの記述によれば、

Italy
In a deviation from the measures seen in France and Germany, Italy has not created a fund for its rescue plan, with Finance Minister Giulio Tremonti stating that, "As of today, we estimate that it's not necessary to have a predetermined figure." The package of measures announced includes a Treasury guarantee for new bonds issued by banks until 31 December 2009 and valid for five years. The guarantee will be supplied at market prices and requires the approval of the Bank of Italy. Italy, Europe's third-largest economy, has also lowered the minimum collateral guarantee required of banks seeking a loan from the central bank to 500,000 euro, which should provide banks with capital until the bottlenecks in inter-bank lending are loosened. The Bank of Italy will also engage in a 40-billion-euro debt swap, taking on inferior bank debt for government bonds that can then be used to obtain financing from the ECB. The debt swap is due to begin on 16 October and to last for one month. Italy is in stark contrast to other European nations by providing no firm capital commitments; however, the government's reluctance to create a rescue fund could partly be a reflection of the restraints imposed by its substantial public debt, which stood at 104% of GDP in 2007.

といった具合でして他の国々とは対照的に金融機関救済の具体的な動きが見えないのですね。ベルルスコーニやトレモンティーのそれらしき発言はあるのですが。この記事ではその理由を104%に達した公的債務の制約の反映なのだろうとしています。そうなんでしょうかね。

それでイタリア第二の銀行たるウニクレディットに関する悪い噂は随分前から聞き及んでおり、ひそかにおそれおののいていたのですが、意外なニュースが入ってきました。政府がぐずぐずとやっているうちに、救済の手がかつての植民地たるリビアから伸びているそうです。これはオラなんだかわくわくしてきたぞという展開ですね。

"Libyan stake in UniCredit worries Rome"[FT]
短信なので全文引用します。

Investors from Libya have begun building a stake in UniCredit after announcing Thursday they had a 4.23% stake in the embattled Italian bank. The move was welcomed by UniCredit, but could raise hackles in the Italian government. The Libyan Investment Authority, one of three Libyan investors who announced the investment, is also considering taking a stake in Telecom Italia, the telecoms provider. Alongside the LIA, the central bank of Libya and Libyan Foreign Bank said they had built the UniCredit stake by buying shares in the stock market but did not give further detail. UniCredit’s share price has plummeted in recent weeks amid the global financial crisis, sparking worries about its cross-border European businesses. The shares fell 13% to €2.16. Two weeks ago UniCredit announced it was raising €6.6bn in additional tier one capital to reassure investors. Earlier this week, Rome said it would not allow any Italian bank to fail in the global banking crisis and unveiled a package of measures to help the sector. But it stopped short of offering to put public money into the banks.

ということですね。これでリビア資本がウニクレディットの第二の株主になったそうです。この記事によれば、銀行は歓迎しているが、イタリア政府は懸念しているようです。リビア人は誇らしい気持ちでありましょうし、カダフィもテントで高笑いしているのではないでしょうかね。フォーブスのロイター記事にもう少し踏み込んだ記述がありました。

"Libya to raise UniCredit stake to 5 pct-Libya cbank chief"[Forbes.com]
Libya will continue buying UniCredit shares until its stake in the Italian bank reaches 5 percent, Libyan Central Bank Governor Farhat Omar Bin Guidara said in a newspaper interview published on Saturday.

'At this time, we are the second (biggest) shareholder. And we want to stay as such. Today we have 4.23 percent of the shares. We will continue to buy until we reach a total of 5 percent,' he told Italian daily Il Messaggero.

'And let it be clear, our actions are specifically economic and financial, there are no political considerations.'

Former colony Libya has taken a 4.23 percent in Italy's second-biggest bank and promised to give as much as 500 million euros ($673.5 million) to its planned capital increase, which was announced in a policy U-turn on Oct. 5.

Any investment of more than 5 percent in an Italian bank needs the approval of the Bank of Italy.

これは投資であって政治目的ではないのだと主張しています。イタリア銀行の同意の必要な5%ラインまで買い進めるつもりのようです。少し前にイタリアが植民地主義の謝罪をしたニュースがありましたが、これと関連づけているような記事も見受けられますが、そんなに麗しい話なんでしょうかね。不謹慎ながらここでイタリア政府が規制したりしたらさらに楽しい展開になりそうですが、どうなるのでしょうね。ベルルスコーニ政権による外国資本による買収に対する規制強化の動きが伝えられているところですが。いえ、悪い冗談ですけどね。

これもItalian Economy Watch経由ですが、ウニクレディットについての基本情報がロイターにありましたので貼付けておきます。

-- UniCredit is one of Europe's top 10 banks by market value, with a capitalisation of about $39 billion. It is second to Intesa Sanpaolo SpA (ISP.MI: Quote, Profile, Research, Stock Buzz) among Italian banks.

-- In a U-turn on Oct. 5 it announced plans to boost capital by 6.6 billion euros. It will ask investors for 3 billion euros in a capital increase and offer shares rather than a cash payout on 2008 results, putting 3.6 billion euros instead in its own coffers.

-- UniCredit on the same day boosted its target for Core Tier I to 6.7 percent at the end of 2008 based on Basel II requirements from its previous aim of 6.2 percent. The figure was 5.7 percent at the end of June.

-- It also slashed earnings per share forecasts for this year to 39 euro cents from around 52 euro cents previously.

-- It is the Italian bank with the most foreign exposure. UniCredit gets about half its revenue from outside Italy and its conservative lending market.

-- UniCredit, whose units include Germany's HVB, is among market leaders in Germany and Austria.

-- UniCredit's share price has dropped about 62 percent since the start of the year, pushing it second to Intesa Sanpaolo among Italian banks. The DJ Stoxx European banks index has lost about 52 percent.

-- First-half net profit was 2.9 billion euros on operating income of 14 billion euros. Deposits from customers and debt securities totalled 639.8 billion euros.

-- The bank traces its origins back to 15th century Bologna. The current UniCredit resulted from the merger of nine of Italy's biggest banks in 1998, as well as the purchase of HVB in 2005 and Italy's Capitalia last year.

-- The biggest shareholder is the Fondazione Cassa di Risparmio di Verona Vicenza Belluno e Ancona, at 5 percent.

-- Libya now comes second with its combined 4.23 percent, followed by:

Fondazione Cassa di Risparmio di Torino with 3.83 percent

Carimonte Holding with 3.35 percent

Gruppo Allianz with 2.37 percent

Fondi Barclays Global Investors UK Holdings Ltd with 2.01 percent.

そんなわけでウニ関連でまた展開がありましたら紹介するかもしれません。どうでもいい話ですが、今日の昼飯は駄目なイタリアンでした。私は別にグルメな人ではないですし、出されたものは米粒ひとつ残さない、自然と農民への感謝の心は忘れない、食べ物を粗末にするようなバラエティーには抗議する、という古風な道徳を年齢に似合わずに頑迷に保守しているのですが(主義主張というよりも身に付いた因習なのですが)、ちょっとこれはないだろうと言いたくなりました。文句を言わずに全部食べましたけれどもね。ワインで全部ごまかして。店名は出しませんが、ここで非難しておきます。

追記
なお例のリストランテは日本人経営の店で認証された店ではなかったと思います。イタリア人読者がいらしたら気を悪くされないように。そう言えば、スシ・ポリス騒動というのもありましたね。あの空騒ぎはワシントン・ポストのデマまがいの記事からでしたよねえ。農水省の役人だったかも愚かな発言をして火に油を注いでいましたけれどもね。ちなみにパリの偽ジャポに関するフランス・メディアの論調は大分違っていました。食い物に関するシリアスさというのは国によって違うわけです。戦後の農政に関しては辛い評価をしていますし、食育の話なんかも知るかと思っているのですが(これってたぶんフランスからの輸入概念ですよね)、アングロサクソンども(笑)につべこべ言われたくはないという国粋的感情もないこともなかったりします。まあ、冗談ですけれどもね。マクドナルドでも感謝して残さずに食べます。

おまけ
いつの間にかTokyo confidential閉鎖中(笑)のJapan Timesですが、「右翼大臣中川昭一の日章旗問題」の続報が出ていますね。私はここになんの問題も見出せないのですけれども、記者さんもなかなかがんばっているようです。半分ぐらいの省庁のブリーフィング・ルームで既に日章旗を掲げているんですよね。いったいなんの旗を掲げればあなたは満足するというのでしょうか。揶揄ではなく真面目に言いますね。批判的論調は結構です、ただ建設的な批判を目指してください、こういうつまらない硬直的な批判主義は身を滅ぼすだけです、また単純な反動を生み、望まない結果を生むだけなんですよ。知っていますよね、フランスの国歌侮辱の際のサッカー・ゲーム中止の話は。あれはですね、象徴に対する瑣末主義的な批判政治がめぐりめぐってあんなことになっているという話だったりするんですよ。ナショナリズムを煽っているのは誰だという話なんですけれどもね。まあこんなこと言っても判らないのでしょうけれども。

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実に寒い一日でした

寝ぼけたまま半袖シャツで出勤したので寒い一日でした。真の阿呆ですね。以下気になった記事をクリップしておきます。テーマはまったくありません。

阿佐奈伎尓(朝なぎに)…万葉歌刻んだ最古の木簡が出土[読売]
紫香楽宮から万葉集と同時代の歌木簡が発見された報に続いて、明日香村の石神遺跡で出土した7世紀後半の歌木簡に万葉歌が刻まれていたことが判明したそうです。いやあ、発見が続きますね。

木簡は羽子板を逆さまにしたような形で、長さ9・1センチ、幅5・5センチ、厚さ6ミリ。万葉集巻七に収められた「朝なぎに 来寄る白波見まく欲(ほ)り 我はすれども 風こそ寄せね」のうち、万葉仮名で左側に「阿佐奈伎尓伎也(あさなきにきや)」、右側に「留之良奈●麻久(るしらなにまく)」の計14文字が2行にわたって、クギのようなもので刻まれていた。歌の大意は「朝なぎに寄せて来る白波を見たいと私は思うが、風が吹いてくれない」で、作者は不明。(●はニンベンに「尓」)

朝なぎに来寄る白波見まく欲(ほ)り我はすれども風こそ寄せね

年代測定の根拠は記事にある近くで発見された「己卯(つちのとう)年(679年)」と記された木簡なんでしょうか。遠方よりの客人のための饗宴施設や役所があったところだそうで、饗宴の席で詠まれたものと推定されています。実に微妙な時期でありますね。万葉学の深淵にはアクセスできずに、その周囲を経巡っているだけのただの素人でありますが、いっそうの解明が進むことを期待します。

保守政策の配当金は 危機の震源から遠い日本にも[FT]
近況報告みたいな記事なのでそうですねえという他ないですが、金融立国!のかけ声は当分聞こえなくなりそうな雰囲気ですね。最後は製造業があって羨ましいな、日本はということですね。英国の次の一手が楽しみです。国内消費はどうしたら高められるのでしょうねえ。ふう。

"Robot girl mix up"[Guardian]
少女ロボット・スーツのニュースは私もあちこちで見て、ああ、またテクノオリエンタリズムか、とため息をついたのですが、考えてみれば、老人が少女のロボット・スーツを着るってすごい光景ですよね。というわけで「カット・アンド・ペイスト・ジャーナリズム」がいかにこの奇怪なマシーンをつくりあげたのかについての検証記事。ネタ元はザ・サンでしたというオチです(笑)。ネット情報からでっちあげたサンの記事が伝言ゲーム的に主要紙の紙面を飾るというのはかなり兆候的な現象だと思います。実はいわゆる一流紙ですら取材をせずに在日外国人のブログやフォーラムをソースにして記事を書くパターンは珍しくないんですね。いくらでも例はあります。そのうち私もメイキング・オブのエントリを書きましょうかね。

Olivier Besancenot : "Avec la crise, un chapitre des possibles est en train de s'ouvrir"[Le Monde]
前に紹介したフランスの「左の左」のブザンスノ氏のインタビュー。2009年の1月に例の反資本主義新党の立ち上げが決定しているようです。このたびの危機について可能なるものたちの一章が開かれつつあると述べております。労働者、消費者が監督する唯一の公的銀行サービスの下に全銀行を統合せよとか、今や社会変革の必要にして可能なる時なのだとか語っています。このキャラクターがうけるのは判るのですが、反資本主義派はどのぐらい支持を集められるのでしょうかねえ。共産党から国民戦線へ流れた層を引っ張り込めるかどうか。はるかに生温いですが、なんだか1930年代みたいな話ですね。Rue89に新党結成の舞台裏の詳細を伝える記事がありましたので仏語読みはどうぞ。

"The Great Illusion" by Paul Krugman[NYT]
クルーグマン氏が第二のグローバル化が終焉するのではないかという不安を語っています。以下、多くの人々が懸念とともに想像している図柄でしょうけれども、氏が語るのはそれはそれで意味があるのでしょう。訳ではありません。グルジアは兆候だ。第一のグローバル化が唐突に終焉した後に来たのは、民族主義の時代だった。食料危機を考えよう。食料自給なんていうのは古くさい考えで世界市場からの輸入に頼ればいいとされていたのが、食料の高騰とともに、ケインズの言う “projects and politics” of “restrictions and exclusion” が復活した。民族主義と帝国主義に戻ろう。グルジアは経済的にはたいした意味はないが、パクス・アメリカーナの終焉を画している。欧州のロシアへのエネルギー依存は中東への石油依存に比べても危険に見える。ロシアはウクライナに供給停止をして既にガスを武器に使っている。ロシアがもしその影響圏への支配を武力でもって主張したならば、他の国はこれに続かないだろうか。中国が台湾に武力侵攻した時に起こるだろうグローバル経済の混乱を想像しよう。そんな心配はいらぬと言うアナリストもいる。グローバルな経済統合は戦争から我々を守ってくれる。なぜならば繁栄する交易経済は軍事的冒険主義を妨げるだろうから。第一次世界大戦の後に19世紀イギリスの作家Norman AngellはThe Great Illusionという有名な本を出版したが、そこでは現代の産業時代にあっては軍事的勝利で得るものよりも失うもののほうが多いと論じられている。第二次グローバル化の基礎は第一次のそれよりも堅固だろうか。ある意味はイエスだ。例えば西欧民主主義諸国の間での戦争は考えることすらできない。経済だけではなく価値によっても結合されているからだ。しかし世界の国々はこうした価値を共有しているわけではない。征服がペイするというのは大いなる幻想だという信念を述べている点でAngellは正しいが、経済的合理性が戦争を抑止すると考えるのもまた大いなる幻想だ。今日のグローバルな経済的相互依存は想像する以上に脆弱なのだと。まあ実際に経済的合理性で動かない国だらけですからねえ。困ったもんです。というのは暢気すぎるコメントですが。

"Baltic Dry index at lowest since 2002"[FT]
第一次グローバル化がなぜ終焉したのかについて保護主義よりも輸送コストの果たした役割が大きいという論文については前に紹介しましたが、輸送関係のニュースです。de-globalizationの傾向は海運に現れそうですので、注目したほうがいいでしょう。

The cost of shipping bulk commodities such as iron ore, coal or grains on Thursday tumbled to its lowest level in more than six years as recession fears intensified and the difficulty of obtaining trade finance left many ships without any cargo.

The Baltic Dry Index, a benchmark for shipping costs and seen as an indicator of global economic activity, fell 6.75 per cent to 1,506 points, its lowest level since November 2002. The index has plunged 53.2 per cent since the end of September.

The average daily cost for the largest dry bulk vessels – known as Capesize and used mostly to ship iron ore from Brazil and Australia to China – on Thursday sunk 11.4 per cent to just $11,580 a day.

この海運の輸送コストを示すバルティック・ドライ・インデックスが2002以来11月以来最低レベルに達しているそうです。9月末からでは53,2%も低下しているとのこと。またブラジルやオーストラリアから中国への鉄鋼石の輸送に用いられるケイプサイズとして知られる輸送船のコストも低下中。そのため輸送船を出せない状況だそうです。この海運市場のクラッシュですが、特に大型輸送船の蒙っている損害が大きいようです。また中国の需用低下の影響が現れているとのこと。さらに金融が引き上げてしまったためにトレード・クレジットのレートが急上昇している模様です。タンカー輸送の市場も打撃を受けているとのこと。むう。デグローバラズしていますね。

"The Okinawan Alternative to Japan’s Dependent Militarismby Gavan McCormack"[Japan Focus]
Client Stateが翻訳されたばかりで(邦題は『属国』でしたか)最近は沖縄にご執心のマコーマック氏です。韓国の建国記念の際には道徳性を装ったプロパガンダ記事を書かれていましたね。とっても分かりやすいお方です。この記事についてはコメントいたしません。私は沖縄についてこんな風に「べき論」を高らかにそして気安く語る非沖縄県民を軽蔑しているのですよ、日本人だろうが非日本人だろうがね。ところで、あなたはポルポト裁判を傍聴して自己の認識を公的に表明する道義的義務があると思うのですが、こんなところでなにをやっているんですか。道徳警察官を気取るのはまったく趣味ではないのですが、訳書が出たことですし、この御仁を持ち上げる人も出そうですから釘を刺しておきます。こんなことを言っても、愚か者達が呼び合うのは世の常ですけれどもね。これはイデオロギーに免疫がなく人を疑うことを知らない善良な人々に向けた忠告だと思ってください。私は善良な人々が惑わされ騙される光景はもう見たくないんですよ。賢くなってくださいね。

ではでは。

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shikata ga nai

「仕方がない」あるいは「しょうがない」というフレーズを日本人の心性を凝縮したようなものとみなし、市民性の観点からこの心性を批判するのが啓蒙派の紋切り型になっていることはご存知の方も多いでしょう。怒れ、日本の市民よ、といった具合に。それは日本の市民派ばかりでなく日本人に説教したい外国人がよく言っていますね。さすがに極東の地において樹立さるべき近代的社会規範とは相容れない「封建遺制」みたいなものとしてこれを激しく糾弾する一種の文化革命派みたいなのは稀少になってしまいましたがね。あるいは、しょうがないではない、それでは敗北主義だ、日本人も戦わなくてはならないのだ、といった勇ましい用法もあり得ますかね。外国からの理不尽な要求に諾々と従うことはない、時には毅然とノーと言わねばならないのだ、みたいに。それから仏教的起源をもつ「仕方がない」の精神は西洋的なセルフとは別のセルフの可能性をもつものであり、キリスト教起源のセルフ概念を至上のものとみなすのは文化的傲慢と偏見に過ぎないといった反批判だってあり得るでしょう。

それで私はと言えば、shikata ga naiだのmottai naiだのkatajike nai(それはない)だのといったワン・フレーズでもって日本社会や日本文化全体を理解した気になるような知的怠惰に対しては日本人だろうが非日本人だろうが批判的なわけですね。こういう問題設定では議論はしたくない。といっても通俗的な日本論に飽き飽きしているだけなので日本文化などはないとか日本は存在しないとか無茶な主張をするような観念論的な立場をとるつもりはないです。ただ日本をそう簡単に語るなよということです。実際、「仕方がない」というフレーズがこの島国において日々発され、また私自身もよく口にしている事実を認めるにやぶさかではありません。例えば、またくだらない日本人論かよ、しょうがないな、いや、しょうがないじゃない、真の国際交流のためには他者の誤れる認識を正すことも必要なことなんだろう、ああ、面倒くさい、あのね、あなた、それちょっと違うんじゃないですか・・・といった具合にね(私も嫌みですね)。

私が関心あるのは私が日頃用いるだらしのない「仕方がない」ではなくて、深刻な受苦の経験において口にされる用法です。自然災害戦災において発される「仕方がない」、あるいは日系人達が異国の地において口にしたshikata ga naiです。前者についてはそのポジティブな側面について心理学者に解説されたりもしていますが(そうつぶやきつつ戦後復興を遂げたわけですからね)、後者については英語圏では文学作品化されたり、研究がなされたりしているようです。一世達がいつもいっていたあの言葉はなんなんだろうと二世、三世達が回顧するわけですね。ある意味では英語化した日本語のひとつなのかもしれません。キング・クリムゾンにもそういう曲がありましたね。

先の大戦でかのインターンメント・キャンプにおいてshikata ga naiがつぶやかれていたことはそれなりに有名な話なのでご存知の方もあるかもしれません。 ジャンヌ・ワカツキ・ヒューストンの小説Farewell to Manzanarではこのフレーズが呪文のようにたびたび繰り返されて作品のトーンを決定しています。残念ながら私はテレビ版は見ていないのですが、カリフォルニア州では学校の教材にもされているようですね。このインターンメント・キャンプにおけるgamanとshikata ga naiがいかに収容者達の精神を支えたのかについては日系人社会のアイデンティティーを規定するほどの意味を持っているみたいです。またカナダのインターンメント・キャンプにおいても事情はまったく同様であってshikata ga naiの精神によって日系人はある種の尊厳を維持したとされています。Joy Kogawa氏のObasanというやはりインターンメントの経験を扱った有名な小説がありますが、舞台は異なるものの二つの作品は非常に似ていますね。どちらも一世の苦難の物語です。私は北米の(南米も)日系人のブログもよく巡回しているのですが、そこでshikata ga naiがなにか崇高な響きとともに用いられることがあるのですね。wikipediaの説明の一部はたぶん一世の経験から来ているのでしょう。曰く、

The phrase has been used by many western writers to describe the ability of the Japanese people to maintain dignity in the face of an unavoidable tragedy or injustice, particularly when the circumstances are beyond their control.

と、これは私が用いるだらしない用法とはだいぶ違うわけです。いろいろ読んだり聞いたりしてみるに、日系人社会においてはshikata ga naiとgamanの二つは一世そのもの、「古い価値」そのものを象徴する言葉とみなされるまで意味づけがなされているようなんですね。そこに二世や三世が畏敬の念をもったり反発したりすると。沈黙し耐える一世、怒れる三世、その間で揺れ動く二世といったステレオタイプがあるようですね。日系アメリカ人はshikata ga naiとgamanのステレオタイプを脱してアメリカ社会の不正義に立ち向かわなければならないといったようなアジも見ることがあります。勿論世代論というのも神話的なものですから実際にはずっと多様なわけでしょうし、それほど政治意識の強くない人のほうがたぶん多いんでしょう。またこうした世代間対立に対して一世をshikata ga naiとgamanのナラティブに閉じ込めるのに抵抗するような試みというのも目にします。例えば、コレなどもそうですね。母は母なりにagencyを持っていたのだと。おしんのしんは辛抱のしんみたいな話でありますけれども、北米におけるshikata ga naiは日本のそれとは少々違うコノテーションがあるようですね。いえ、一世の方々がつぶやいたそれは多分日本のそれと変わらないのでしょうが、状況の相違から意味付けの仕方が違うのでしょう。そこにはなにかと偏見をもたれがちなアジア系の少数派という立場から来る葛藤だったり、また強制収容のトラウマ的な記憶とも結びついていたりといった具合になかなか複雑な背景があるわけですね。そういうわけで日系人社会におけるshikata ga naiは日本とは異なる文脈にあるフレーズと認識しておいたほうがいいような気もします。そういう意味では多分もう日本語ではないのかもしれません。

で、なんでこんなことを書いているのかというと、何年か前に三世に随分からまれたことがあっていったいこの人はなにを私に投影しているのだろうと疑問に思っていろいろ調べた記憶が蘇ったからです。それでなにが判ったということもないのですがね、あちらはあちらの文脈があってなかなか大変なんだなぐらいで。その時のことを想起させるような出来事があったのですね。今日はそういう日でした。はい。

追記
変な文章を修正しました。私の愛着のある国はデモ好きな国が多いこともあって日本国民もそれぐらいやってもいいんじゃないのぐらいのことは思わなくもないのですよ。でも政治的な意思の表現としてどういうスタイルをとるかはいろいろあってもいいんじゃないでしょうかね。短くコメントしておくと、私は別に人々は政治的アパシーだとは思いません、また日本国民はだいぶおかんむりですよ、ロジャーさん。それから私はWesternerではないですし、westernizedされた日本人みたいに呼ばれることは微笑みとともに拒否するぐらいには政治的な人間なんですが(ええ、あなたのthe Westが釣りであることは知っていますよ、え、マジですか)、匿名的であることと政治的であることは必ずしも矛盾しないと思うんですよ、マークスさん。the Westだのthe Eastだのの政治文化(ってなんだか判りませんが)の話でなくて一般的に言ってですね。そもそも大衆とは匿名的権力の別名ではなかったですか。また政治の定義如何でしょうけれども、ある意味これほど政治的な国民もそうはいないんじゃないですかね。そう思いますよ。まあお気持ちは判らないでもありませんがね。

追記

マルクスさん→マークスさん。マルクスの文化理論に興味があるらしいというと連想からか間違えました。失礼しました。

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ここまではよい、しかし

ごたごたと内輪もめに興じていたユーロ圏ですが、進捗がありましたね。

ユーロ圏15カ国、金融危機に「共同行動計画」 銀行間取引を保証[日経]

金融危機への対応を協議するユーロ圏15カ国による緊急首脳会合は12日夜(日本時間13日未明)、「共同行動計画」を採択して閉幕した。銀行間取引への政府保証、金融機関への資本注入、欧州中央銀行(ECB)による一段の流動性供給などが柱。欧州各国は今回盛り込んだ政策手段を組み合わせ、金融システムの安定確保に全力を挙げる。

独仏伊などのユーロ圏主要国は今回の計画に沿った個別の危機対応策の詳細を13日に公表し、実施を急ぐ。先に包括策を決めた英国に続き、欧州では「共通の政策パッケージから各国が最適な手段を選び実施する」(メルケル独首相)態勢が整う。欧州は年内の緊急サミット(主要国首脳会議)開催などを含め、日米に危機対応を急ぐよう働きかけを強める。

12日にパリで開催された緊急首脳会合でユーロ圏15カ国の「共同基本計画」が採択されました。内容は記事にあるように銀行間取引への政府保証、金融機関への資本注入、欧州中央銀行による流動性供給などが柱となっているようです。詳細はまだよく判らないです。実際に行動するのは各国政府なわけですけれども、まあなんとか協調の枠組みを設定できてこれで格好がついたわけですね。

以下日本語ソースで各国の動きを扱ったものをリンクしておきます
スペインも銀行に資本注入へ 首相「必要あればいつでも実施[日経]
ドイツ政府、4700億ユーロの公的資金投入へ[AFP]
英大手銀3行、最大6兆円の公的資金投入を申請[産経]

"Europe acts to rescue banks" by Bertrand Benoit[FT]
この記事が欧州各国の動きをまとめています。上の記事と重なる部分が多いですが、緊急首脳会合を受けてドイツが4700億ユーロ、フランスが3400億ユーロ、イギリスが3700億ポンド、スペインは1000億ユーロの公的資金を注入するプランを公表しています。またノルウェーが554億ユーロ、ポルトガルが200億ユーロといった具合に各国の金融機関救済策が続々と公表されていますね。なかなか壮観です。

"Sarkozy calms the crisis" by Charles Bremner[Times]
このたびのサミットの件でサルコジの主導性を称える記事です。

it would be uncharitable not to give Sarkozy credit for the way that he has banged heads together -- albeit a week after his first attempt -- as the current chairman of the European Union. Sarkozy is often criticised for making splashy announcements and failing to follow through, but this time, he seems to have managed. This was an example of le volontarisme -- getting hard things done by sheer force of will, a skill in which Sarko prides himself.

という風にサルコジの主意主義(volontarisme)の成果であるとされています。関係ないですが、主意主義は主知主義(intellectualisme)と対に用いられる概念で哲学的にはいろいろと議論があるわけですが、現実の政治的文脈では「現実を意志の力に従わせんとする態度」ぐらいの意味でよく用いられます。政治家の徳です。

At the cost of bad feeling between them, Sarkozy brought Merkel into a joint operation which she had refused only a week earlier on the grounds that each EU state should clean up its own mess. The Chancellor had been extremely reluctant to offer a blanket guarantee to all banks. For their part, the Germans did their own bit of arm-twisting, persuading the reluctant French to go along with the British idea of guaranteeing loans between banks.

この首脳会合の舞台裏ですが、サルコジが提案した全欧州の預金保護案をドイツは一度蹴ったわけですが、イギリスの銀行間取引の保証案をフランスに飲ませる形で取引をしたとされます。ユーロ圏の共同行動計画ですが、実際には圏外にいるイギリスの果たした役割が大きかったとされます。

We are in strange times when a British Prime Minister comes to Paris to counsel the single currency bloc on the merits of nationalising banks and intervening in the markets. Brown's UK rescue plan served as the model for the euro-zone action. The former British finance minister, politically discredited at home, has emerged in European eyes as something of an inspiration in troubled times.

というようにこの首脳会合に出席していたブラウン首相の救済プランがモデルになったとされています。イギリスではえらく不人気なこの首相がこの困難な時期にインスピレーションを与える存在として欧州人の目に映ったとTimesは書いています。

"Gordon Does Good" by Paul Krugman[NYT]
いやあ、ゴードンはなかなかやりやがると述べているのは本年度のノーベル賞経済学賞を受賞されたクルーグマン氏です。ロンドンは確かに金融の重要な中心ではあるが、イギリス経済はアメリカに比べたらはるかに小さく、イングランド銀行はFedやECBに比べたらわずかな影響力しかもたない。したがってイギリスが主導権を握るのを見ようとは期待していなかったはずだ。しかしイギリス政府は金融危機について明晰に思考し、その結論に従って急速に行動している。この明晰と果断においては他の西洋諸国で比肩する政府はないと。引用しておきますか。アメリカがごちゃごちゃやっている間に、

Meanwhile, the British government went straight to the heart of the problem — and moved to address it with stunning speed. On Wednesday, Mr. Brown’s officials announced a plan for major equity injections into British banks, backed up by guarantees on bank debt that should get lending among banks, a crucial part of the financial mechanism, running again. And the first major commitment of funds will come on Monday — five days after the plan’s announcement.

At a special European summit meeting on Sunday, the major economies of continental Europe in effect declared themselves ready to follow Britain’s lead, injecting hundreds of billions of dollars into banks while guaranteeing their debts. And whaddya know, Mr. Paulson — after arguably wasting several precious weeks — has also reversed course, and now plans to buy equity stakes rather than bad mortgage securities (although he still seems to be moving with painful slowness).

といった具合でして、あちらの島国はさすがでございますね。小さくとも知恵と行動力がある。銀行間取引の保証で大西洋の彼方にも影響力を及ぼしたわけですから。サルコジもゴードンに全部持っていかれてしまった感じですね。

"Brown offers Europe a lesson in leadership" by Wolfgang Münchau[FT]
ここで紹介したミュンヒャウ氏の記事は二本目ですかね。アイルランド絡みでよく目にしていたのですが、かなり早い時期から危機の到来を警告されていました。最近はFTに寄稿されていますね。G7には失望したが、欧州の緊急首脳会合にはbetter feelingを抱いたそうです。ただこれは全欧州プランではなく国別プランであり、国境を越えた問題に対処できるのかどうかは不透明だとしています。また本当にこれで十分なのかと前に紹介した記事と同様の疑問を呈しています。巨大金融機関を救えるのかと。

But even assuming that national responses are perfectly co-ordinated – which they are not – the question remains whether that is sufficient or whether higher-level type co-ordination at the IMF and the EU/eurozone level would be preferable or necessary. Would the German scheme pass the Deutsche Bank test? In other words, would it be able to deal with the hypothetical failure of the country’s largest bank? I am not sure it would. The existence of too-large-to-save banks is one of the reasons why a purely national approach cannot be effective, and why it would be preferable to establish a fund at the level of the eurozone. Burden sharing is not merely a desirable act of solidarity. More importantly, it is needed for any such scheme to be credible.

ここで私の念頭にまず浮かぶのはイタリアのウニクレディットですが、他にもいくらでも危険なところはあるでしょう。この方は却下されたサルコジ・プランを支持していたわけですが、ここでも国別ではなく全ユーロ的なファンドが必要だとしています。また銀行間取引を再活性化させたいならば欧州連合やユーロ圏レベルで動かないといけないといい、ドイツの銀行がオランダの銀行から金を借り、ドイツの銀行が破綻したらどうするのだ、誰が国家保証のシステム下で支払うのか、と判りやすい疑問を呈しています。ようやく政府が動きだし、アドホックではなくシステマティックな反応をするようになっているのはいいニュースだが、「システミックなメルトダウンの瀬戸際」にはこれで十分なのかといい、大西洋の両岸の指導者の協調を説いています。欧州にとっては協調の失敗による金融メルトダウンはユーロの未来に影響を及ぼすことになるぞと警告しています。また上の記事と同じくゴードン・ブラウンが政治的リーダーシップなるものについて欧州人にレッスンを与えたとしています。最期は引用しておきます。

But there are still many dangers ahead. The market for credit default swaps may explode at any time. A severe recession could trigger a sharp rise in defaults with reverberations in credit markets and banks. And if we squander money rescuing the wrong banks, which we have done in parts of Europe, we may not have enough leeway to launch an effective stimulus programme. At best we may have succeeded in calming the markets for a week. But we have not solved this crisis yet.

最初の動きとしてはあの混乱からよく立ち直ったと思いますけれども、そう、まだまだ始まったばかりなわけですね。そしてこれは西欧の協調であり、例えばIMFの救援決定のハンガリーは対象にならないわけです。あちらこちらから火が吹きそうですね。

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まだ民主主義は損なわれていない

えーと、私は別にJT叩き屋になるつもりはないんですね。バイアスのかかった不正確な記事やしょうもない誤誘導記事ばかりだけでなく興味を引く記事だって掲載されることがあるわけです。日本と関係のないイアン・ブルマ氏の記事なんですけどね(笑)。

"Austria's fear and loathing still democratic" by Ian Buruma[Japan Times]
これもまた踏み込んでいますね。イデオロギーのマントラを唱えてなにかを言ったような気になっているお気楽かつ退屈なリベラル達に比べればはるかに誠実だと思いますがね。いわゆる欧州の「右傾化」はなおも進行中であり、どうやらこのたびの危機はこの傾向を促進させることはあっても後退させることはなさそうです。リベラルなみなさんも覚醒して奮起されることを期待したいのですがねえ。奮起というのは反動しか生まないような批判主義や理想主義のことではなくて本気で敵対者とも対話し、なにが問題なのかを考えて、理念なり実効的な対策の構想なり練り直しましょうよということです。私はユーロ懐疑派的ですが、民族主義の勝利を望んでいるわけではないんですよ。なおこれはハイダー事故死の衝撃的なニュースの前に書かれたものですね。以下辞書もろくに引いていないいい加減な訳ですのでチェックしてからご使用ください。

二つの極右政党、オーストリア自由党と未来同盟が先日のオーストリア総選挙で29%の投票を獲得し、2006年選挙から議席を倍増させた。

両党ともに移民、とりわけムスリムと欧州連合に対して同様の態度を共有している。すなわち恐怖と嫌悪だ。両党の指導者のハインツ=クリスチャン・シュトラッヘとヨルグ・ハイダーが互いに軽蔑し合っているおかげで極右同盟が権力を握る可能性はほとんどない。にもかかわらず困惑させる結果だ。

この29パーセントだが、他の欧州諸国でポピュリストの極右政党が最盛期に獲得した票よりも約15%多い。自由党の指導者のシュトラッヘは政府に移民送還を管理する新省庁を創設することを希望している。ムスリムが公然と罵倒されている。ハイダーはかつてヒトラーの第三帝国の雇用慣行を称えたことがある。新しい右翼達が突撃隊員や人種立法の記憶を喚起するのは不可避だ。

しかしオーストリア右翼の台頭をナチズムの復活とみなすのは誤りだ。彼らのレトリックの一部がそれを教唆していたとしても両党ともに暴力を訴えているわけではない。極右への投票者はイデオロギーよりも不安と怨嗟に動機づけられていると考えられる。この感情は多くの欧州諸国で感じられるもので、オランダやデンマークのようなナチの伝統と無関係なものも含まれる。

デンマークでは25議席をもつ強硬右派のデンマーク人民党が第三の政党だ。「イスラム化」へのパラノイア的な恐怖に駆動されるリタ・ヴェルドンクやヘールト・ウィルダースのようなオランダのポピュリストは伝統的な政治エリート─リベラル、社民主義者、キリスト教民主主義者─に強い圧力をかけつつある。

これがポイントなのだ。欧州諸国の右翼投票者の間の最大の怨恨は多くの人々の意見によると微温的な連合の形で長く政権につき過ぎた政治エリートに向けられているが、彼らは既得権益保護のためにだけに存在しているように見えるのだ。

オーストリアでは社民主義政権とキリスト教民主主義政権の終わりなき交代が政治システムの動脈硬化をもたらし、少数政党が政治的特権の砦とみなされているものを突破することを困難にしていることはリベラルですら認めている。これは同じ中道諸政党によって何十年も統治されているオランダについても言える。慈悲深いがパターナリスティックな指導者達の「多文化主義」「寛容」「欧州」についての見解は近年まで挑戦を受けることはほとんどなかった。

欧州統合への懐疑は常に頑迷固陋、あるいは一種の人種主義として非難されてきた。国民の帰属感情は不人気な政策で説明責任を果たさないEU官僚を非難してばかりいる政府によっていっそう蝕まれた。これは移民の怨恨と結びついている。

1960年代にトルコやモロッコのような諸国から移住した単純労働者の子弟達が欧州の諸都市で巨大なムスリム少数派を形成し始めた時、労働者階級の近隣で緊張が生じた。犯罪と見慣れぬ慣習への苦情はリベラルなエリートによって「人種主義」としてしばしば無視された。人々はただ寛容であることを学ばねばならなかったのだ。

こうしたことは必ずしも悪いことではなかった。寛容、欧州統合、ナショナリズムへの不信、人種主義への警戒は称賛されるべき目標だ。しかしこうした目的を批判はおろかなんの討議もなしに推進することはバックラッシュに帰着した。オランダ人、フランス人、アイルランド人が欧州憲法を否決した際に、彼らは政治エリ−トへの不信を表明したのだ。そして「欧州」を拒否し、「イスラム化」と戦い、移民を追放することで国家主権の回復を誓うポピュリスト達はこの不信を利用しているのだ。

ゼノフォビアとショーヴィニズムの修辞は不愉快であり、オーストリアのような過去のある国では警戒すべきですらある。しかし新しいポピュリズムは今のところ非民主主義的でも反民主主義的でもない。右翼諸党派の投票民の間で最もよく聞かれるフレーズは「新鮮な空気」である。政権政党の硬直を打ち破るためにハイダーやシュトラッヘに彼らは票を投じたのだと言われている。

人々が自身のナショナル・アイデンティティー、自身の政府の主権、自身の社会の人口的、社会的趨勢に不安だとして、そうした恐怖が政治アリーナに最もよく反映されたまでなのだ。人々が自身の憂慮を暴力ではなく投票によって表明している限りは、たとえリベラルの耳には不快なものだったとしても、民主主義は深刻なまでにダメージを受けていない。

政治エリートに挑戦する事が勿論どこであれポピュリズムの本質だ。アメリカ大統領候補者は前大統領の息子であったとしても「ワシントン」に挑戦するふりをするものだ。

真のダメージは人々がエリートのみならずシステムそのものに信頼を失った時にもたらされる。これはまだ欧州では、オーストリアですら生じてはいない。

追記
via Global Talk 21
大西記者のいい記事。この人の仕事で評価するのはこれで3本目ですね。この記者はこういうネタではけっこうグッジョブをするんですよね。ただ最近の大西記者のこの路線ですが、いわゆる弱者への共感が単なる聖化の回路に陥ったり、そうでないと見なされる人々への反感に転化するというよくある罠にはまらずに社会の複雑性を複雑性として開示するような仕事になることを期待します。この記事では日本人についてのステレオタイプな退屈なおしゃべりもなく、うざったいだけの文化論的な解釈もなく、深刻ぶった定型的な社会批判の要素もそれほど前面には出ておらず、ただある人々の生を描くことを通じて戦後の歴史とともにひとつの光景が描かれています。「日本人」ではなくただ人間が描かれているような英語記事に飢えているようなので評価がやや甘くなっているかもしれないです。なお記事に登場する池田さんのような種類のノビリティーにどうにも私は弱いようです。なにかの投影なのかもしれませんが、勝利を祈って敬礼したくなります。

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ナイスな協力関係

"The Fall of America, Inc." by Francis Fukuyama[Newsweek]
フクヤマ氏のこのたびの金融危機についての長い論評。ウォールストリートのメルトダウンは単なる銀行救済の是非論の問題ではなくアメリカ・ブランドそのものの危機の問題であるとしています。1980年代以来世界を席巻したアメリカの二つの理念─規制緩和、小さな政府、減税を是とする資本主義のヴィジョンと自由民主主義の擁護者としての合衆国─が崩壊しているのだと。ロシアや中国のモデルが魅力的に映っている中でオバマにせよマケインにせよ立て直しをしなければならない。レーガニズムは登場の時点においては正しかったが、福祉国家へのプラグマティックな対応ではなくいつの間にか減税と金融の規制緩和のイデオロギー、ドグマと化してしまった、それがこのたびの惨状をもたらしたと述べています。まあ長いので後は原文でお読み下さい。ネオコンに愛想つかして民主党支持に転向したんですよねえ。この人は思想らしきものをまぶして「でかいこと」を語るのが上手なだけの人という気もするのですが、アメリカの今の気分のドキュメントとしてこの記事はよく書けているのではないでしょうかね。

"The Age of Bloomberg" by Fareed Zakaria[Newsweek]
ザカリア氏の短い論評。フクヤマ氏と似ていますが、やはりこちらの方が多少私の好みですかね。確かに現在生じていることは悲惨だが、歴史は信用危機、パニック、金融メルトダウン、不況に満ちている。今回の危機は資本主義の終焉を意味しない。しかしこれはアメリカにとってはある種の世界支配の終焉を意味するかもしれない。歴史的に見て現在の危機は巨大であり、政府は市場に介入しなければならない。現在では介入が少なかった19世紀西欧諸国で当たり前だったようなダウンスウィングには耐えられない。1854年から1919年の間の不況の平均は22ヶ月続いたが、ここ20年では8ヶ月ほどだ。1854年から1919年の間アメリカ経済は平均して49ヶ月ごとに収縮した。ここ20年では収縮と収縮の間は100ヶ月だ。これには多くの要因があるが、政府の金融政策と財政政策が主要なものだ。今回の介入は規制の時代への回帰だろうか。40年前に戻ることはないだろう。資本主義は現在はグローバルな現象だ。諸国は成長と生活水準の向上のために自由市場と自由貿易に依存し続けるだろう。この金融危機の副産物はアメリカのdelegitimizationだろう。かつて世界中の人々はアメリカをモデルとみなしたが、もはや信用は失われた。数十年にわたってアメりカは資本を集め、贅沢な暮らしをしたが、こうした時代も終わった。他国同様に投資を求めて努力しなくてはならない。競争的資本主義の世界では大きな政府も無政府も必要ではなく、必要なのは賢い政府だ。成長、技術革新、生産性を効率的に高めるような政策の競争だ。大切なのはイデオロギーのマントラではなくてなにが有効なのかをはっきりさせることだ。サッチャーの時代ではなくブルームバーグの時代なのだ。アメリカは悪い規制、補助金、アド・ホックな介入ばかりだ。政策は長期的な成長よりもパワフルな選挙民のためにデザインされる。フリーライドの時代は終わった。真面目になる時だ。

フクヤマ氏にせよザカリヤ氏にせよ今回の危機でアメリカの正統性が大きく損なわれた点を強調しています。後はイデオロギーのマントラはいらない、必要なのは賢さなんだという点ですね。ただ思想畑から出たフクヤマ氏には理念へのこだわりがザカリア氏よりはあるようです。アメリカの消費市場が全世界の成長を支えるというブレトン・ウッズ体制の現代版のようなあまり持続可能性のなさそうだった体制がどうやら終焉を迎えつつあるのは事実なんでしょうが、勿論資本主義も続くし、歴史は続くよ、だらだらと、ということなんでしょう。

なお前のエントリではなげやりなことを書きましたが、政府も日銀もいったいなにをやっているんですか、どうしてこうも受け身なんですかと言いたくなります。各国政府と協調して金融政策でも財政政策でも派手にアピールしてもっと積極的にやったらどうですか。素人が偉そうに言うのもなんなんですが、財政再建だのインフレ防衛だの言っている局面ではないように見えます。フォワードルッキングっていったいどんな麗しい光景が見えているのでしょうか。泉が湧き、小動物が戯れ、美女が踊り・・・みたいな光景なんでしょうかね。

"Japanese hoteliers turn backs on foreign tourists" by Justin McCurry[Guardian]
国交省の大臣の発言といい総務省のわざわざ誤解されることを意図したような質問表(「宿泊がなかった」と「拒否した」は全然違います。後者は法律違反ですよね)に基づいた調査報告公表といい、なんのために我々はこんな連中のために税金を払っているのだと言わざるを得ないのでありますが、オチがついたようでなによりな話です。ここでJTが大臣発言を恣意的に引用した点については既に指摘しましたが、ガーディアンのマッカリ氏は例の大臣発言を「日本人は一般的に外国人が好きではない」とさらにパラフレーズした上で、大先生とタッグを組んで日本叩きに勤しんでいます。ただの阿呆なら放っておけばいいわけですけどね、大先生はこうしてメディアに重宝されているわけですよ。だから問題なんです。また新任の大臣もJapanTimesのインタビューで微妙すぎる発言をしていますね。自分の発言がどのように利用されるのかについて想像力を持ち合わせていないようでありまして、戦略的思考を養成するカリキュラムが必要なようです。間抜けな大臣と愚かな役人とJapanTimesと大先生とマッカリさん、ああ、なんという爽やかな組み合わせでありましょうか。

ちなみに観光大国で知られるかの国ですが、欧州で最も外国語ができない国として知られ、英語メニューのような便利なものは観光客の集まるような限られたところにしか置いていなかったりするわけです。ここは日本なんですから、外国人にも日本語で話しかけるのが基本だと思うのですよ。日本語でも意志は通じますので特に外国語を話そうと緊張したりあたふたしたりする必要はないわけですね。外国語をある程度話せる人でも、まず日本語でまくしたてた後に、なんだ話せないのかよ、しょうがないな、じゃあお前の言語を使ってやるよ、みたいな態度を時にはとってみせたりするのもいいと思います。さらには話せるけれどもあえて話さないという高等テクもありましょうね。まあ相手を見て使うべきですけどね。けっこう長いこといるくせにろくに日本語を話す気のない人と観光客とでは違いますから。前者は語学の必要性を認識させるためにも日本語で通してあげるみたいな親切心が必要だと思うのですよ。いえ、なにもある種の日本的美風を批判するつもりはなくてですね、私としては日本国民がもう少したくましくなることを祈念しているだけなのですね。

ではでは。

追記
なお観光大国のわりには歓待の態度に欠けるなどと陰口をたたかれがちなかの国の人々ですが、言われるよりはだいぶ親切ですよ、とここで擁護しておきます。それから日本語を覚えたいのに英語で話しかけられて困るという意見もよく目にします。外人さんは日本語を出来ないんだろうという思い込みはもう捨てたほうがいいと思いますよ。まず日本語で話しましょうね。

総務省の調査の部分を訂正しました。「宿泊がなかった」「受け入れたくない」「受け入れる態勢がない」「拒否した」等の違いの意味をJustin McCurry氏は理解できないようです。あなたは記者なんだから日本語を学習する義務があるんですよ。言語能力や取材国についての知識がなくとも取材能力があればいいなんてのは甘えに過ぎない。大手メディアの特派員体制も見直されてしかるべき時期なんでしょう。またこのニュースに関する日本メディア各紙の英字面の報道も不正確でしたね。結局、問題はいつも日本のメディアなわけです。「べき」の前に「である」です。

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操縦士のいない飛行機

日経平均終値、952円安の9203円 下落率は過去3番目[日経]

8日の東京株式市場で日経平均株価が急落し、終値は前日比952円58銭(9.38%)安の9203円32銭と、2003年6月以来5年4カ月ぶりの安値になった。下落率としては1987年10月のブラックマンデー(14.9%安)、1953年3月のスターリン暴落(10%安)に次ぐ過去3番目で、下落幅は過去18番目。

スターリン暴落ですか。と言われてもイメージが湧かないのですが、バカヤロー解散の年ですよね。えーと、どの程度の信頼性があるのかは判りませんが、この電通の広告景気年表によると、バカヤロー発言が2月28日、スターリン死去の報に続く株式大暴落が3月5日、衆議院解散が3月14日、左派社会党が躍進した総選挙が4月19日となっています。政局の混乱ぶりという点ではパラレルな感じもなくはないですね。それはともかく今株価や円高でwaiwaiする気にはなれないですね。スペクタクルとしてはすごいですけどね。

米欧6中銀が協調利下げ、政策金利0.5% 中国も同調[日経]
日銀は我が道を歩むようで漢ですね。流動性供給などで対応すると。もう少し積極的に動いてほしいのですが、もうこの際、利上げさえしなければいいや、とかなげやりな気分になってしまうのは期待値が低過ぎるからなんですかね。いや、こんな状況で上げろとか言っている政治家がいたりしますからまさかと思いつつもですね、不安になるじゃないですか。この記事ではミスター・ヤマザキが円高が急激に進んだ場合利下げするかもと言っていますが、どうなんでしょうねえ。

"The Japanese are coming (again)"[Economist]
日本企業によるM&Aの話です。金融危機の中で世界的にM&Aが減少する中にあって日本が例外的に活発に動いていることはよく話題になっていますね。この記事によると、取引件数は昨年より少し多い程度ですが、取引のバリューでは2倍以上だそうです。1980年代の不動産、1990年代のテクノロジー関連の投資はひどい結果に終わったわけですが、第三波にあたる今回は違う結果になるかもしれないといいます。このたびは新テクノロジーや市場へのアクセスなど戦略的なターゲットを選んでいることを理由にあげています。日本企業は60兆円もの資金を持つキャッシュ・リッチであって自国では経済減速や買収嫌いの文化風土や人口減少に直面して海外で活動を展開していますが、現在はライバルが少ない状況で成功しているとしています。多くの企業の株価が下落し、対ドル対ユーロで円高であることもありますが、なによりも海外展開の必要性について長年議論してきて日本企業がこの悲惨な現状を理想的なチャンスと感じているという事実にこの動きの主要因を求めています。かつてとは異なり日本人は海外企業によいオーナーとみなされているそうですが、それは日本人が長期投資をする傾向があり(プライベート・エクイティー・ファームと違って)、営業成績もよいからだとしています(中国や湾岸諸国と違って)。既存の経営陣が離れないようになんでもやるという評判もあるようですね。こうした取引はラッシュというほどではなくとも今後も続きそうだとしていますが、日本のボス達はこのチャンスがほとんどビジネス上の達成によるものではないと考えたがるかもしれないといいます。というのも日本企業がうんざりするほどの使えない資本を抱えているのは企業統治や財務管理がpoorだからだと。はい。幸運が海外雄飛の機会をもたらしたわけですが、購入したものを経営する知恵とスキルが必要になるでしょうね、というように、今度はなかなかよくやっているが、知恵とスキルが必要になるよというご忠告です。足場づくりの時期なのでしょう。この幸運を次の展開につなげられるといいですね。ただ国内投資の仕組みもうまくつくってほしいものですね。

以下、欧州関連です。
EU、預金保証を2.5倍に増額 危機対応の「共通原則」で合意[日経]

欧州連合(EU)の加盟27カ国は7日の財務相理事会で預金保険制度の拡充を決め、EU規定の保証限度を現行の2.5倍の5万ユーロ(約700万円)に増額した。これを受けてスペインやオランダが独自に保証限度を10万ユーロに引き上げるなど、EU各国が預金保険制度の拡充で預金者の動揺を抑える動きを強めている。EU加盟国は初めての具体的な危機対応となる「共通原則」で合意。EUの足並みの乱れで金融市場が混乱したのを踏まえ、政策調整を強める。

預金保証限度額の引き上げ措置でようやく欧州の政策協調の流れが出来つつあるようです。とはいえかなり各国のフリーハンドを残した内容になっているようですね。この記事にある共通原則ですが、コレですね。7原則というのは以下です。

We agree on EU common principles so as to guide our action:
- Interventions should be timely and the support should in principle be temporary;
- we will be watchful regarding the interests of taxpayers;
- existing shareholders should bear the due consequences of the intervention;
- the government should be in a position to bring about a change of management;
- the management should not retain undue benefits -- governments may have inter alia the power to intervene in remuneration;
- legitimate interest of competitors must be protected, in particular through the state aids rules;
- negative spill over effects should be avoided.

"La baisse des taux : trop peu, trop tard ?"[Le Monde]
米欧協調0.5%利下げですが、ル・モンドのこの記事はtrop peu, trop tardつまりtoo small, too lateなのではないかという意見ですね。確かに協調姿勢を示すという点においてはメリットがある。飛行機に操縦士がいるのだと示すために。しかしこの程度の利下げで喜んでマネーが動き出すわけはない。とりわけECBがインフレを理由にここまで利下げを渋ったのは正しかったのかと。まあ現状を見渡す限りはそういう意見になりましょうね。利上げした時はこれが噂のENA経済学の真髄かとシビれましたけれども(いえ、冗談です、やばいと思いました)、セオリー通りだとか支持する声がけっこう大きかったですよねえ。ル・モンドは批判する側にいましたかね、あの時。ともかく飛行機に操縦士がいる感覚を与えるというのは大切なことなんですよね。で、日本国民はそういう感覚を失っているように感じられるのですね。

以下スペイン関連です。
"Confusion hampers Italy and Spain efforts"[FT]
時系列的に順序がおかしくなりますが、火曜に戻ります。金融危機に対する対応が欧州協調なのか国別なのかで混乱している中でイタリアとスペインがもがいている件です。スペインの高官達は欧州連合の協調的な対応をこれまで主張し、アイルランドとドイツの預金保護措置を批判してきたわけですが、「ドミノのようだ」「今や皆が同じようにしなくてはならなくなる」とのこと。サパテロ首相は月曜にスペインの銀行頭取達と会議をし、金曜にはサルコジと会談する予定で、一方ベルルスコーニ首相も月曜夜にメルケル首相と会談したといいます。土曜のG4サミットでベルルスコーニ氏はイタリア市民の預金保護をすると述べたそうですが、今のところこの談話は実際の政策には移っていません。氏も危機への欧州的な対応を支持してきましたが、月曜には国別対応に切り替えたようです。スペインはこれまでサブプライム危機の直接の影響を回避してきましたが、銀行は不動産市場の崩壊に続く不良債権の増加に喘いでいるところです。またイタリアの銀行、特にウニクレディットは危機の打撃を受けていますが、週末にはウニクレディットは緊急取締役会議を開いて資本増強措置をとることを公表したといいます。

"Spain announces emergency fund"[FT]
それで火曜日にはスペインが銀行資産の買い取りによって金融システムに流動性を供給するために300億から500億ユーロからなる緊急のファンドを立ち上げるという措置を宣言しています。サパテロ首相によれば、このファンドはインターバンク取引の停止により資金を渇望する借り手に対して貸し付けるためのものであるといい、銀行預金の保証額についても2万ユーロから10万ユーロへと5倍に上限を上げることに決定した模様です。このファンドの詳細は金曜の閣僚会議で具体化されるといいますが、スパイン財務省が金融機関の資産を買い取る仕組みのようです。このアイディアは自国の金融システムを救済ないし健全化するためのものではなく(危機にもかかわらず銀行には支払い能力があるといいます)、経済活動や雇用創出が続くように企業や個人に資金を投入するためのものであると首相は強調している模様です。またこのファンドは欧州中央銀行の毎週のファンディング・オークションを補完するもので、「悪性の資産ではなく健全な資産」を買い取るものとしています。上の記事にあるようにスペインは欧州協調のアプローチを求め、ドイツやアイルランドのような抜け駆け的動きを批判してきたのですが、火曜に政府は他の国の列に加わってスペイン独自のプランの策定を決定したことになります。欧州のガイドラインに沿うものであると述べてはおりますが。次はイタリアがどのような動きをするのか目を離せませんね。変な予言家みたいにはなりたくないのですが、震源地になり得るのはアイルランドかイタリアかというのは随分前からの予感なんですよね。

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今日のJT

というわけでちまちまと紹介を続けましょうかね。日本ではなくJapanなのはJT的パースペクティブから見られた私が居住するこの国とはやや異なる国についてのリポートだからです。

"Ministry rebuts Aso editorial in N.Y. Times" by Jun Hongo
先日のNYTの社説には不謹慎ながらどこの国の話だと笑ってしまいましたが、さすがに普段保守派に不快感を隠さないリベラル系Japan論者もこの社説には批判をしていましたね(コレとかコレとか)。どうやら外務省が抗議のレターを出した模様です。まあさすがに大人しいJapanと言えども、ここまでアレな社説を書かれては抗議ぐらいはするでしょう。なぜだか同社説でNYTが称揚している(すごい自己矛盾ですね)元首相による私的な戦死者追悼行為によって一時的に関係が冷却していた隣国との関係改善において麻生元外務大臣の果たした役割をNYTはどう考えているんでしょう。「戦略的互恵関係」って麻生氏の発案ではなかったですか。吉田茂が占領軍を"happy ignorant"と称したことは有名ですが、どうやらなにも理解していないらしいNYTにはこの言葉を贈っておきたいと思います。NYTの社説に惜しみなき拍手をおくりたいらしいこの記者の記事の最期にはいかにもJTらしい説明が添えられていますが、それによると

Aso, generally known for his blunt speeches and conservative foreign policies, has described China as a "growing military threat" and accused Beijing of politicizing the Yasukuni Shrine issue.

He has at times made his revisionist views public, including justification for forcing Koreans to adopt Japanese names during Japan's 1910-45 colonial rule of the peninsula.

だそうです。いわゆる創氏改名等についての不用意な発言はともかく(歴史は歴史家に任せろ主義ですので政治家が歴史問題に不用意に言及すること一般に私は否定的です。内容に関わりなく叩きに利用されますからね)、靖国に関する麻生氏の特異なスタンスについて記事に書いたらどうですか。知らないわけではないでしょう。また中国を「軍事的脅威」とみなす国はけっこうあるような気がするのですがね。JTが大好きな象徴的問題はさほど死活的利害と関わっているわけではないのであってこうした問題以外にはこれといった問題はないことはJapanと中国の関係が現状ではけっこう安定している証拠なんですよ。戦略的要件が揃うことで国家間関係は安定するのであって友好儀礼によって安定するわけではないなんて今時おませな中学生ぐらいでも理解できる話だと思うのですがね。といいますかね、JTさんは両国関係を不安定化させたくて長いこと燃料投下しているんですよね。善意なら本当に救いようがない話ですよねえ。率直に言うと、邪魔です。

"'Gaijin' mind-set is killing rural Japan" by Debito Arudo
読者からの心ない悪罵と嘲笑にもかかわらず大先生のgaijin三部作がついに完結されたようで私も感無量であります。しかし、僭越ながら指摘させていただきますと、大先生、それはgaijinではなくてyosomonoのことではないですか。日本人のgaijinって意味全然判りません。gaijin=outsiderなのだという思い込みに固執したために日本語の彼方へ飛翔されてしまったようですね。私のような凡庸な日本語の使い手は下方よりただただ仰ぎ見るばかりであります。ちなみにmarebitoというのもございますよ。嗚呼、懐かしきムラ社会論ですね。古き良きJapan。私もそんなJapanに行ってみたい。それと大先生が言及しているのは私にはなにが言いたいのかよく判らなかった大西記者の記事ですよね。そしてそこに独自の解釈を施されているわけですね。それで全く意味不明になっていると。大先生はライアンやデーブだけでなく大西記者とも交友関係があるんですか。負のネットワークというんですか陰のアソシエーションというんですか。しかし三部作を通じてついぞ論理というものに出会うことができなかったのはさすがですね。俗にいうフルフォード化という現象ですか。ともかくgaijin共同体主義の真髄は論理にあらず、妄念にありなのですね。事実なんて知るか、考える前に訴えろの精神ですよね。走れ、大先生!Sayonara, daisensei!

追記
修正しました。なおフルフォード氏はその強烈な言論活動の内容はともかくキャラクターとしては好きです。一緒にしてしまったような書き方をして氏に失礼でしたね。しかしいつまでJTはもはやただのデマゴーグと呼ばれても仕方のないような御仁に語る場を与えるつもりなんでしょうかね。あまりにも下らなさ過ぎたので私は品なくからかうだけにしておきましたが、空さんのところで真面目な議論がありますのでそちらを参照してください。ともかくこういう滅茶苦茶な主張ばかりする御仁をアクティヴィストとして持ち上げていると人種間対立を高めてしまう結果にしかなりませんよ。JTとしてもそういう展開は望んでいないでしょう。掲載する記事に関して責任ある態度をとるように要求します。

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預金保護競争

以下本当の記事のクリップです。

独不動産金融、救済策を見直し 5兆円支援の白紙撤回で[日経]
独政府、預金を全額保護[日経]
下の記事は短信ですので全文引用します。

ドイツ政府は5日、国内の個人預金を全額保護する方針を表明した。メルケル首相は「預金は安全だ」と語った。ドイツには複数の預金保険制度があり、実質的に預金が全額保護される仕組みだったが、政府関与の一段の強化を打ち出すことで、金融危機に伴う預金者の動揺を抑える狙いがある。具体策は明らかになっていない。

ドイツ事情に弱い事もあってヒポ・レアルエステートについてはこのたびの金融危機で初めてその名前を知ったクチなのですが、政府支援によるヒポ救済案が他の商業銀行の撤退によって失敗したという報で日曜の欧州メディアは大騒ぎでした。これが破綻した場合にはその規模から言って第二のリーマンとなるのではないかと。メルケル首相が預金全額保護宣言を出したようですが、不安定な状況には変わりないようです。先日のG4サミットにおいて預金保証宣言を出したアイルランドの抜け駆けを批判したばかりでしたが、一転してこの措置です。記事で触れられているアイルランドの子会社というのはDepfaという不動産、公共事業関連の金融機関のようですから、これもアイルランドの不動産バブル崩壊の余波ということなのでしょうか。

"Berlin shrugs off attacks on savings pledge"[FT]
この記事では抜け駆けへの批判に対するドイツ側の反応が伝えられています。G4サミットの際にはこの措置は決定されていたものの他の首脳には相談しなかった模様です。確かにフランス提案の欧州全体での救済プランを蹴って、アイルランドを批判をした手前、セルフィッシュな行動ととられても仕方がないでしょうね。

"The European collective response"[Marginal Revolution]
欧州としての強調のとれた行動がとれていない状況についてマージナル・レボリューションのTyler Cowen氏の短い論評。このたびのドイツの預金保護はnot a good sign。

British depositors were already crowding to get into the nationalized Northern Rock but they were turned away at the proverbial door. Other news is that the German government-led bank consortium to rescue Hypo Bank has fallen apart, not a good sign. The German government has today moved to guarantee all "private savings deposits" [private Sparanlagen], also not a good sign. Which other countries will now follow suit? All of them? Europe as a whole lacks a safe asset as focal, liquid, and available as T-Bills and now that is becoming a problem.

"The case for a European rescue plan"[FT]
Wolfgang Münchau氏の論評。ECBが利下げに向かうとか素早く国有化や救済に動いているとか自讃しているむきに対して辛い忠告をしています。デクシアだのフォルティスだのヒポだの中堅どころの救済はできても巨大金融機関が危機に陥った場合には救済できんのと。関心を引いたのはサルコジ・プランを支持しているところですね。サルコジは正しく、メルケルは間違っていたと。

Nicolas Sarkozy, the French president, was therefore right when he appeared to back a €300bn rescue fund. Regular readers of this column will probably recall my somewhat constrained enthusiasm for his economic policies. But this had the makings of a good plan. He ended up distancing himself from it, when it became clear that Angela Merkel, the German chancellor, would not support it. But he was right and she was wrong. Of course, a European plan should not have been a copy of the bail-out that was finally adopted by Congress on Friday. The US plan failed to address the problem of an undercapitalised banking sector. That issue is even more important in Europe where many banks have an extremely weak capital base, with leverage ratios of 50 or more.

またアメリカでは銀行危機かもしれないが、欧州の場合、通貨制度そのものの危機につながり得るんだと警告しています。どうやらユーロ崩壊論が本気で囁かれるようになってきましたね。軍靴の音ではないですが、リラ復活の声が・・・。

For Europe, this is more than just a banking crisis. Unlike in the US, it could develop into a monetary regime crisis. A systemic banking crisis is one of those few conceivable shocks with the potential to destroy Europe’s monetary union. The enthusiasm for creating a single currency was unfortunately never matched by an equal enthusiasm to provide the correspondingly effective institutions to handle financial crises. Most of the time, it does not matter. But it matters now. For that reason alone, the case for a European rescue plan is overwhelming.

欧州協調の枠組みが不十分なところで通貨統合してしまったツケを払わされることになってしまうのでしょうか。あちらでは鼻であしらわれつつもユーロは駄目だろうと言い張っていたのですが、まさかこんな風になるとはね。いや、まだそこまでいくとは決まったわけではないですし、内輪もめを続けながらもぎりぎりの協調を実現できるのかもしれません。ですが、どうも不穏な予感が脳裏から離れません。

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秋の戯れ

どうもJapan Timesが日本国民の与り知らないところでいつものごとく不思議な動きを見せているので紹介しておきましょうか。まあ、別にいいんですよ、この自由民主主義国においてはどんな論調だって決定的に報道のルールや倫理に悖らない限りは許される訳ですから。かつてシドニー・モーニング・ヘラルドというオーストラリアのタブロイド紙(嫌み)から怒りのブロガーというありがたい称号をいただいたことがありましたが、別に怒っているわけではなくてですね、英語圏ではこんな議論がなされているのだということを日本の公衆にも知っていただこうかなと考えているのですね。

ひとつは例の失言国交相の辞任の話です。この世界的危機にあってあなたいったいなにをやってるんですか、というのが私の偽ざる感想ですが、もう少しなにか言えと言われれば、日教組という組織に対してはなんら敬意を抱かない私のような人間にとっても国交相の発言は政治家として不適切というかお粗末に過ぎましたね、政治家たるもの敵とはにこやかに談笑しつつ悟られぬようにしかし決定的なやり方で打撃を与えるぐらいの狡知は持ち合わせるべきではないでしょうか、青年の主張じゃないんですから、ぐらいの気のない返事をするしかないですね。ずこーっというんですか、ドリフの大爆笑みたいな話ですね。そんなことやっている場合ですか。

それでこのつまらぬ話に日本のメディア同様にJTさんもはしゃいでいたわけですが、勿論この新聞の論調からある程度予想されるようにフォーカスがあたっているのはかつてのスターリン主義の残滓を引き摺る教職員組合や頑固一徹な成田空港建設反対住民よりも「単一民族」発言のほうですね。まず中山氏の発言を引用しておきます。

日本は単一民族といいますか、世界とのあれ(交流)がないものですから、内向きになりがち。(訪日観光客を増やすには)まず日本人が心を開かなければなりません。

という発言です。それでアイヌ民族を忘れているではないかという批判を前に氏はその発言の不適切性を認めて謝罪したのでした。「単一民族」言説については、これは多民族帝国たる日本帝国には存在しなかったのであって戦後のある時期に生まれたものであり、「戦後的」なナショナル・アイデンティティーの在処を示す言説であるとする小熊英二氏の有名な歴史社会学的な研究がありますが、その経緯はともかく1980年代に日米経済摩擦が文化戦争に転化した際に日米比較文化論の形をとった対抗的言説として表舞台に躍り出たというのがとりあえずの私の認識です。その心理的動機をなしていたのは内政干渉の度合いを深めるアメリカと喜々として「アメリカ化」を受け入れるかのごとき日本国民に対する保守派の不安と恐怖ですね。これが多文化主義的、反国民国家的、グローバリズム的な視点から批判されるようになったのが1990年代であったという流れを思い起こしておきましょう。ちなみに英語圏ではこの点についてはけっこう厚いヒストリオグラフィーがあります。騒々しい議論を別にすれば、これが「べき論」なのか「である論」なのか、規範的主張なのか事実の描写なのか、パフォーマティブな言明なのかコンスタティブな言明なのかといった点が議論の焦点になっているようです。やはり同質性が相対的に高い国には違いないですからね。別にそういう国は日本だけではないですけれどもね。

そうした議論はとりあえず脇に置いておいて、過去の保守派の政治家達の「単一民族」発言と中山発言を比べてみた場合、要は、島国根性を捨てて外の世界にも心を向けにゃいかんぜよ、我が同胞よ、という意ですから、ここでは批判的にこの概念が提示されている点が違っています。その点においてこの発言に対する批判はこの言葉を使用したことそのものへの批判、つまり言葉狩り的な印象を与えるものでした。単一民族「幻想」みたいなものがあるのかもしれないが、とでも言えば叩かれなかったのでしょうか。あるいはそれでも叩かれたのかもしれませんね。なぜなら正義の仮面をかぶりつつ閣僚の揚げ足を取る事そのものが政局報道において自己目的化して久しいのですから。ああ、なんとちまちまとした政治なのでしょう。

それはともかくこのネタをJTがいかに報じたのかを見てみましょう。第一報からしばらくは日本の報道とだいたい同じ内容ですが(アイヌに失礼とかですね)、残念ながら後段の「日本人が心を開かなければなりません」の部分が省略されている記事が多いのが問題と言えましょうか。つまり「単一民族」根性の批判の要素が消去されて単に日本は「単一民族」国家なのだという主張をしたことになってしまっているわけですね。そして9月29日付でスタッフライターのMasami ItoさんとTakahiro Fukadaさんの記事が駄目押ししています。

"Gaffe-prone Nakayama quits Cabinet" By MASAMI ITO and TAKAHIRO FUKADA[JT]

In an interview with The Japan Times and other media organizations Thursday, the conservative Nakayama said Japanese "do not like nor desire foreigners" and that Japan is inward-looking and "ethnically homogenous.

Nakayama retracted the statements the following day and offered an apology to the ethnic Ainu, who were officially recognized as an indigenous people for the first time by the Diet in June."

単一民族はethnically homogenousでありますが、ここで気になるのが前段です。木曜日のインタビューでJapanese "do not like nor desire foreigners"、つまり観光行政に関わる大臣が日本人は外国人が好きじゃないし、来て欲しくもないと思っていると語ったという新情報が追加されています。このインタビューの席には他のメディアもいたとされていますが、中山氏がこのように語ったと報じられているのはJTのみのようですね。さて問題は以下のようです。

1. the conservative Nakayama said Japanese "do not like nor desire foreigners"にあたるような発言を実際にしたのか。

2. 引用符はこの文の述語及び目的語の部分であり、主語は引用符の外に置かれている。中山氏は「日本人」を主語にしたのか

1に関してあるいは懐疑主義的に過ぎるように感じられるかもしれませんが、これまでの実績から言って政治面の事実報道に関しては私のJTに対する信頼はかなり低いです。ファクト・チェックの次元でエラーになるはずの記事を配信してきた過去があるのですね。とはいえこれを報じているのがJTのみであり、他のソースとのクロス・チェックもできないとなると私自身に検証する術はありません。話を進めるためにとりあえず引用部分は事実だと仮定してみましょう。

次に問題となるのは2の点です。主語はなんだったかという問題です。仮に記事にあるように「日本人」を主語にして氏がこのような発言したのだとすれば、それは単なる虚偽命題となるでしょう。総称命題の批判には反例を挙げればいいだけです。外国人が好きではなくてあまり来て欲しくないと思っている日本人もそれなりにいるという言明の場合にはこれは虚偽ではないしょう。もし仮にこの大臣が日本人は総じてゼノフォビックだと宣言したのであれば無論政治家失格となります。いったいどんな大臣ですか。しかしもし仮にこれがこの記事を書いた記者の創作であった場合には中山氏を政治的に批判することを意図したのみならずそれに便乗して「日本人」全体にあるイメージを付与するために虚偽を記事に紛れ込ませたことになりますからジャーナリスト失格となります。さてどちらなのでしょうかね。なんの確証もありませんが、これはジャーナリズムにおける声の引用の政治の分析対象になるようなケースではないでしょうかねというのが私の直感です。妙に細かいことを言っていると思われるかもしれませんが、こういうせこい情報操作の技術を好んで使うわけですよ。他のメディアによる検証が待たれるところですね。

[追記:コメント欄でPnetQさんから情報をいただきました。ありがとうございます。朝日報道によると、中山氏の発言は以下のようです。

外国人を好まないというか、望まないというか、日本はずいぶん内向きな、「単一民族」といいますか、世界とのあれがないものだから内向きになりがち。まず国を開くというか、日本人が心を開かなければならない。

この前段ですね。なるほど。まあ全くの虚偽とは言えないでしょうけれども、これを「日本人は外国人を好まないし、望まない」とパラフレーズして叩きの材料にするのは公平なんでしょうかね。むー。やはりダーティーですね。駄目報道だと思います。ただ島国根性批判にしてもこんなつっこまれそうな発言はやはり大臣としてはすべきでないでしょうね。ですからこの発言は支持しません。保守派の政治家の先生方にはワード・ポリティックスでいかに勝つのかについてもっと戦術的になっていただきたいです。連中(って誰だ、まあ)は誠実な自己批判ですら叩きの材料に利用しますからね。]

ちなみにこの失言についてはJTはご丁寧に読者投票をとっています。読者からの投票では中山氏は東国原氏の慰安婦発言を抑えて見事にトップの地位に輝きました。中山氏の発言ですが、「単一民族」ではなく上の「日本人は外国人を好きではない・・・」が候補に挙げられていますから、JTとしては日本国民には知られていないこちらの発言を重視しているわけですね。なお「単一民族」は伊吹氏の発言としてエントリーされているのですが、3%程度しか票を集めていませんね。ちなみにバッシャーの認識というのは日本は外国人嫌悪の強い同質的かつ排他的な国であるというものですから、彼らにとっては中山発言は真理であって虚偽ではないというのが皮肉な話ですね。ええ、あなた方の発言も失言扱いなんですよ、困りましたね、商売あがったりで。前にも書きましたが、通俗的な日本人論をこよなく愛するのは文化保守と左翼とバッシャーなんですね。前者は自己肯定のために後者は自己否定そして他者否定のために互いの言説を利用し合うわけです。そしてそこにおいては個々のあやしげな命題群について検証してみようという健全な実証精神が発揮されない。この伝言ゲームのごとき入り組んだ政治については研究もそれなりになされていますが、より洗練された分析による解明が待たれるところです。

Japanese "do not like nor desire foreigners." — recently resigned transport minister Nariaki Nakayama
733 (34%)
"Even people with Alzheimer's disease could understand." — Prime Minister Taro Aso, when he was Japan's foreign minister
140 (6%)
A reference to women as "baby-making machines" — former health minister Hakuo Yanagisawa
454 (21%)
The dropping of atomic bombs by the U.S. in World War II "could not be helped." — former Defense Minister Fumio Kyuma
162 (8%)
"It is very difficult to confirm as a historical fact that the 'comfort women' actually existed." — Miyazaki Gov. Hideo Higashikokubaru
594 (28%)
"Japan is an extremely homogenous country." — former education minister Bunmei Ibuki
73 (3%)
Total Votes : 2156

もうひとつは中川昭一大臣に関連した多分日本国民のほとんど誰も知らない話です。

Nakagawa shakes up press with move to plant Hinomaru in briefing room[JT]

Rightwing Finance Minister Shoichi Nakagawa created a stir Tuesday by backing a plan to display the Hinomaru flag in the ministry's press briefing room.

という書き出しで記事は始まります。右翼の財務大臣の中川昭一氏が財務省のブリーフィング・ルームに国旗を置こうとして騒動を起こしていると。なんという小ネタなのだというのが一読した感想でしたが、こういうどうでもいいネタを積み上げて印象づくりをするのはJTの得意とするところです。

Though officially Japan's national flag since 1999, the Sun Flag remains controversial due to its association with the nation's militarist past.

というように日章旗は軍国主義との結びつきゆえに論争的な象徴なのだと述べています。ソ連製メソッドを日本教育界に導入した某組織以外で現在国旗について騒いでいる存在を私は寡聞にして知らないのですが(彼らもかつては愛国だったんですけどね)、まあわけありの旗なんですよとこうやって教育しているんですね。不毛という言葉以外に語るべき言葉を見出せなかった学校式典妨害騒動の時にもずいぶんと"dissident teachers"をフィーチャーしていましたね。そういうわけで軍国主義だからといって日の丸を嫌う単細胞な在日外国人というのもそれなりにいたりするわけです。

記者クラブ内にはこの中川氏の動きに対して意見が分裂したそうで、中川はタカ派だから政治的意図があると反対する記者もいれば、なにも悪いことはないじゃないかという記者もおり、個人の受け取りだから記者クラブとしては共通の反応はすべきでないという記者もいたと。それで中川氏に意図について説明を求め、この問題について記者クラブのメンバーで議論するまでは国旗を置かんでくれと要求したということです。また1999年にも中川氏が農相の際に同様の騒ぎがあったそうです。ここで「リベラル」な宮澤喜一氏の無関心な発言を引用して中川氏との差異化をはかっています。そして現在半分の省庁がブリーフィング・ルームに日章旗を設置していると記事を締めくくっています。

記事の最期に見事なオチがついているので半分の省庁に置いてあるなら大臣が「右翼」であるかどうかとは関係ないんじゃないですかというつっこみを入れたくなりますが、要は中川氏だから問題にしているわけですね。ここでは日章旗の歴史についての説明はいらないでしょう。そもそも私はこの種の象徴政治の不毛性には心底飽き飽きしているので賛成だの反対だのどこかの無人の離島ででもやっていてくれという感想以外になんら興味を感じません。問題のないところに問題を捏造している暇があったならば、国民生活に直結するもっと実質的かつ喫緊な問題に我々の有限なリソースは費消さるべきではないですか。空騒ぎはもう止めましょう。

そしてこの話についてもJTさんはまたご丁寧にも読者投票をしています。ブリーフィング・ルームに国旗を設置するのをどう思うのかと。政府施設に国旗を設置してなにが悪いんだというのがトップですから、どうやら失敗だったようです。残念でしたね。新たなナショナリズムの危険な兆候だとかそんなにコントロバーシャルな旗ならなぜ新国旗をつくらないのかという選択肢がありますが、あるいはこれがJTの意見なのかもしれませんね。そんなどうでもよろしい論争には日本国民の多くはまったく関心がないのですよ。法制化されようがされまいが国旗は完全に定着していますから口汚くけなされるとかちんとくる、といっても家に国旗があるわけでもないぐらいがおそらくは大勢でしょう。大臣がブリーフィング・ルームに国旗を置くのがなぜナショナリズムの兆候なのかも理解不能ですね。いいですか、ナショナリズムというのはもっと大規模な大衆的な政治現象のことです。そもそもこんなニュース誰も知らないわけですから国民に影響を及ぼしようがないではないですか。そんなに国旗という存在が嫌いならば自国の政府機関から国旗を追放してから日本に言ってくださいね。ダブスタは許しませんからね。

What's wrong with displaying an official national flag in a government building?
235 (59%)
It's a troubling sign of renewed nationalism.
61 (15%)
I don't really care either way.
50 (12%)
Why doesn't Japan create a new flag design if this one is so controversial?
55 (14%)

ちなみにJTさんが「敵」としている人々を私は支持しているわけではないのでこのエントリで擁護しようという意図はありません。私は基本的に自由主義者ですから保守主義者とは今ひとつ反りが合わないんですね。かといってJTさんみたいに彼らを悪魔化したりはしないですけどね。悪魔化の言説戦術というのは嫌いなんですよ、ジャコバン的なものにせよ正統王朝派的なものにせよ。勿論批判すべきは批判しますし、困ったもんだという御仁が多いのも事実なんですがね、彼らの意見も意見として尊重するぐらいの寛容と公平のセンスぐらいは持ちたいものだと願っておりますし、ある種絶望の入り交じった共感とでもいった複雑な心情とともに日本史における彼らの存在意味は理解しているわけですよ。これは左翼に対してもそうです。こんなことを言っても判らないでしょうけれどもね。ともかくここで問題にしたいのはイデオロギーの話ではありません。まあこんなことを言っても友敵理論の信奉者に通じないことぐらいは知っているのですけれども。別の誰かに言っているとでも思ってください。

というわけでここ数年で微妙にトーンが変わっているとはいえ、在日外国人コミュニティーの世論誘導にいそしむJapan Timesはご健在なのでした。日本酒と焼き鳥の美味しい秋の宵ですよね。まあ、がんばってくださいね。

ganbatte! genki! yuki!

追記
小熊英二氏の著書のリンクが間違っていたので修正しました。また一部表現を変更しました。中川氏についてのJT記事はampontanさんもポストでとりあげていましたね。ともかくこういう瑣末主義的な象徴政治なんてのは暇人のやることです。もっと具体的にやるべきことはたくさんあるんですから。それからファンというわけではないのですが、中川氏はたぶんJTさんが考えるよりはスマートな政治家だと思いますよ。実務能力が高い政治家ですし、中道層にまでウィングを広げられる人ではないでしょうかね。まあなんであれ物事はイメージで語らないことですね。

ちなみに国旗を引きずりおろすことに執念を燃やすスターリン主義的な教職員組合ですが、個々に見れば、いい先生も立派な先生もいらっしゃることは承知しております。ただ組織体としては私は評価しないのです。韓国の教職員組合も同じ臭いがしますが、「アジア左翼的」というんでしょうかね。全体主義的なものへの免疫のなさをどうにかしてほしいです。またいろいろ話を聞く限りでは現在の学校教育の現場が真に求める組合のあり方からはやはりかけ離れているように思えますね。まあこれは話のついでに書いているので私は別に熱いアンチ日教組派でもないですし、それほど重要性のある問題だとも思ってはいません。ただ日本の左派が冷戦時代の枠組みから脱して成熟することを個人的に期待していることもあるのでなんというのか邪魔な存在に見えてしまいます。

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規制主義的自由主義

ここ1週間ほど仕事で激しく追いつめられていたわけですが、なんとか乗り切りましたのでほっとした気分でブログの更新しておきます。まあなんとかなるもんですね。

いやあ、すごいことになっちゃってますね、ここで欧州経済についてずっと悲観的な見通しを書いてきたわけですが、どうやら現実が想像を超えつつあるようです。英米については報道が多いですので私は地味にフランスまわりの状況をクリップしておきましょうかね。

"L'AMF enquête sur la déconfiture de l'action Natixis"[Le Figaro]
日本にも進出しているみたいですが、一般にはあまりなじみのないナティクシスは仏国を代表する投資銀行のひとつです。サブプライム問題の直撃を受けたところでして、資本の増強がはかられたわけですが、その際に大口投資家達が不自然な動きをして株価が下落した原因を金融監督庁が調査することになったそうです。今年に入ってから株価が70%も下落しているんですよね、ここ、やばくないですかね。

"Dexia lance une augmentation de capital de 6,4 milliards, à 9,90 euros par action"[La Tribune]
デクシアは日本の地方公共団体にもけっこう投資しているのでご存知の方も多いでしょう。フランス、ベルギー、ルクセンブルクの三ヶ国による総額64億ユーロの公的資金の投入が決定されたようです。首脳陣は責任をとって辞任ということですね。売り浴びせ状態だったようですが、これで息継ぎできるのでしょうか。

"Plan Dexia : la France pourrait recourir à l'emprunt"[Le Figaro]
それでフランス政府が投入することになっている10億ユーロですが、借金頼りになりそうです。報道官はこれは投資だから問題ないのだと主張しています。

3,8 millions pour l'ex-patron de Dexia?[Les cordons de la Bourse]
で、リベラシオンのブログでニコラ・コリ氏が噛み付いています。辞任することになった社長のミレール氏が380万ユーロの退職金を受け取ることになるかもしれないぞ!と。どうもここしばらくあらゆることに既視感を覚えますね。

"Nouvelle crise de 1929, ou pas ?"[Le Figaro]
このたびの危機において1929年が頻繁に想起されていますが、似ている部分もあるけれども違うところもあるよという記事。株価下落、連鎖倒産、景気後退といった点は同じだが、当時は経済減速が銀行倒産に先行していたし、中央銀行が蛇口を閉めてしまった。それに対して現在は世界的な成長は4%と底堅く、中央銀行は一年前から流動性を市場に供給し続けていると。バーナンキは1929年の専門家だと持ち上げて記事は締めくくられています。うーん、歴史が完全に同じ仕方で繰り返すということは勿論ないわけですが、それが必ずしも楽観的な見通しを与えてくれないようなのが困った話なわけですよね。

エコノミストにサルコノミクスについてのいい記事がありましたので紹介しておきます。何度か書きましたが、私はサルコジを「新自由主義者」だと思ったことはありません。規制論者にして競争主義者、国家主義者にして自由主義者というなかなか分類し難い存在です。フランスの史的内在論理からすると理解可能なんですがね。まあともかく物事はイメージだけで語るべきではないです。この記事のように今度の金融危機であるいは違った照明が当たることになるかもしれません。もっともこの高波の中をうまく泳ぎきれるかどうかは判りませんがね。以下粗い訳です。

"How Europe responds"[Economist]
一人また一人と欧州の指導者達はウォール・ストリートに対して福利の勝利を称える列に連なっている。「市場は常に正しいという考えは狂った考えだ」とフランス大統領ニコラ・サルコジは宣言した。サブプライム危機の間に行われたような米国の自由放任イデオロギーは「危険だったし、また単純過ぎた」とドイツの財務大臣ペール・シュタインブリュックは口を出した。イタリアの経済財務相のジュリオ・トレモンティはベストセラーとなったグローバル化の危険についての自著の正当性を証すものだと主張した。

ウォール・ストリートの凋落に対する欧州の感情が独善的だと誇張するのはよくないだろう。今週ベルギー、フランス、ドイツ、アイルランド、オランダの各国政府は先を争って困窮した銀行の救済に乗り出したが、このことは米国からのドミノ効果に欧州経済がどれほど晒されているのかを確認してくれる。退廃した米国資本主義を嘲笑するのに急なフランス左翼の社説子すら喜びを噛み殺した。「銀行界の逆上したような動揺ぶりを眺めているのにはなにからしら喜劇的なもの、愉快なものすらある。もし地球の経済的均衡は言うまでもなく何百万という人達の雇用が問題になっているのではなければの話だが」とリベラシオンの編集者のロラン・ジョフランは書いた。

にもかかわらず米国の苦難に対する欧州の反応には共通の糸がある。こんな風に続くのだ。無制約的な自由市場は誤りだということを我々は皆知っていたのだが、こう言うと我々は嘲られたのだ。そして今我々はあなた方の行き過ぎの対価を支払っているのだ。資本主義の堕落への人々の驚きを前にして、政策実行型の国家(activist state)が再び流行になっている。欧州人はそのことに信頼を持ちつつあるのだと。

しかしこうしたことが本当にどこかの国の政策を変えるのかどうかについては疑問がある。 いいテストがフランスだ。最近の宣言から判断すると中道右派のサルコジ氏は決定的に左転回した。2日間で2度、彼は自由市場資本主義を非難した。「自由放任は終わった」とトゥーロンで彼は宣言した。「常に正しい全能の市場は終わったのだ」。

これは単なる修辞ではない。上昇する失業率に対してサルコジ氏は15億ユーロの単年度の福祉から仕事へ(welfare-to-work)計画を開始した。これは低賃金を補う国家補助金に基づくもので、資本所得への1,1%の課税によって賄われるものだが、この措置は同じ党の議員達の多くを狼狽させた。減税についての話は棚上げされた。そしてサルコジ氏は2012年までに政府予算を均衡させるという約束を守るために公的支出を削減することに失敗している。

しかしこれは経済政策の真の転換なのだろうか。かつてサルコジ氏は「アメリカ人」というレッテルを貼られたが、実際にはサルコノミクスは常に分類を拒むものであった。産業政策においては国家による救済をずっと支援してきたし、2004年には財務大臣としてエンジニアリング会社のアルストムの救済に政府の金を使うことに反対する欧州議会と戦った。2007年の選挙演説の時に、彼は「自由貿易はドグマ足り得ない」と宣言し、金融資本主義が「道徳化される」よう訴えた。

しかしサルコジ氏はまたグローバル化を否認するのではなくこれに応える必要性をフランス人に訴えるために尽力してきた。週35時間制を発明した国にもっと働くこと、もっと主導権を発揮すること、国家からの補助金をあてにしないことを懇願してきたし、時間外労働を税や社会費用から免除した。もし失業者が2回以上仕事の提供を拒否した場合には給付を削減するために福祉のルールを引き締め、競争の監視を強化し、安売り店が出店しやすいようにした。いやいやとはいえ、グローバル資本主義に適応しなければならないことをフランスの有権者が知っていたがためにサルコジ氏は選ばれたのだった。

この点でサルコジ氏のトゥーロン演説を精読することは啓発的だ。金融資本主義に対する攻撃と並んで彼はまた「資本主義は西洋文明の尋常ならぬ発展を可能にしたシステムである」ことを思い起こさせた。彼は盲目的な国家介入ではなく国家と市場の新たなバランスについて論じているのだ。このバランスというのは所有する者としてではなく─極限的な場合を除いて─規制する者として、そして競争を強制する者として国家の役割を強めるものだ。

これはサルコジ氏の自由化の改革をどこに連れて行くのだろうか。「危機は改革の鈍化ではなくて加速的なリズムを求めている」と彼は語った。金融規制について彼は欧州連合の指導者達に会計ルールを厳格化することを求め、グローバルな金融の枠組みを再考するためにG8の指導者達の会合を求めた。国内改革について彼は経営幹部の給料やゴールデン・パラシュートへのさらなる規制を主張している。しかしこうした措置はサルコジ氏の並行的な措置であるところの官僚を削減し、起業家精神を促進し、福祉への依存を戒め、組合を無力化し、競争を支援する自由化の努力を脱線するものではなさそうだ。

かつての税金の高い国家の比重の大きなモデルが雇用と成長の面で限界に突き当たったことは多くの欧州人同様にフランス人は知っている。最近のル・パリジャンの調査でも60%がサルコジ氏は改革を継続ないし加速すべきだと答えた。鈍化させるべきだと答えたのは30%に過ぎない。フランス流社会主義がウォール・ストリートに到来することを怖れるアメリカ人もいるかもしれない。しかしフランス人が指導者として本当の社会主義者を選んだのは20年前のことなのだ。

追記
一部表現を修正しました。アメリカよりも欧州のほうがやばそうだということはずいぶん前から言われていたのですけれども、やはり欧州連合という枠組みは機動性と柔軟性に乏しいですねえ。これじゃあ、身動きとれないじゃないですか。

上述のトゥーロン演説のビデオにリンクしておきます(第一部第二部)。

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