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欧州大統領への道

株価と円がすごいことになっていますが、この傾向は当面は続くのでしょうね。確かに政府は機敏に動いてはいますが、目的と手段が対応していないように見えるのは私が素人すぎるからなんでしょうか。また相変わらずの日銀の腰の重さはどうしたことなのでしょう。いや別に利下げじゃなくともいいんですよ。いろいろやれそうじゃないですか。この際、涼しい顔で世界経済にすべての責任を転嫁してひそかに方針転換したらいいんじゃないでしょうかね。そう、これは撤退ではなくて転進です。政界からもマスコミからもたいして非難されないでしょう。うるさいのは経済系ブログぐらいです。まあ素人の囀ですからこれは無視してくださいね。

"Why the market has been down on the Euro and European banks"[Marginal Revolution]
kitaryunosukeさんが訳されている(いつもご苦労様です)アンブローズ氏の記事に対するコーエン氏のコメント。

By the way, this is further evidence that the driving force behind the earlier boom was the global savings glut, and sheer giddiness, not the excessively loose monetary policy of Greenspan's Fed. The ECB has pursued a relatively tight monetary policy since its origin. It also will be interesting to see what trouble arises in Spain, since Spanish banking regulation has been considered a model of how to keep these problems under control.

ここで出てくるglobal savings glut(グローバルな過剰貯蓄)というのはバーナンキ氏が語っていた話ですよね。FEDとECBの金融政策を相対的に比べるとそうも言えるのかなという気もしてきますが・・・、これはグリーンスパンを戦犯視する世間を賑わす話とは対立する意見ですよね。どう考えたらいいのかよく判りませんが(ここではFed擁護の意図はないでしょう)、認知的不協和を与える意見は尊重するという格率に従ってここにメモしておきます。ところでアンブローズ氏の記事ですが、読んでいて寒気がしてきます。でも誇張じゃなくて本当にやばそうです。レバレッジ投資の本場はアメリカではなく欧州だったことがはっきりしてしまいましたね。私が観察しているイタリアのいくつかの銀行ですが、株価が順調に下がっているようですね。ふう。

"The other part of the bailout: Pricing and evaluating the US and UK loan guarantees" by Viral Acharya and Raghu Sundaram[VoxEU]
英米の銀行救済プランの比較をしている記事です。bail outプランの本格的な分析ってあまり見た事がなかったのですが、これは議論のたたき台になるのかもしれません。この論者によるならば、なかなか優劣はつけ難いが、もし危機が深刻化した場合にはイギリスのプランのほうがパニックをひき起すだろうとしています。ゴードン・ブラウン氏が今は英雄みたいになっていますが、さてどうなるのでしょうかね。

"Sarkozy’s ways put EU peers on edge"[FT]
サルコジ外交が周囲に怨恨の種を蒔いていることについては前に紹介したエコノミストの記事でも触れていましたが、これも同様に周囲を振り回し続ける大統領についての記事ですね。

So, in the space of a few days, Mr Sarkozy offended Prague and Luxembourg, worried London and once again angered the Germans. In most countries they would be regarded as embarrassing diplomatic blunders. But that is Mr Sarkozy’s way of doing business.

“[Some people say to me], ‘you move too fast’. That’s true for those who don’t want to move,” Mr Sarkozy said.

ということでサルコジ氏は無反省のようです。この人が反省などするわけもないですがね。

"Prague accuse Sarkozy de vouloir "siphonner sa présidence" de l'UE"[Le Point]
上の記事の引用部分でプラハを怒らしたとありますが、これはサルコジ氏が「欧州大統領」(そういう役職はないですが)としての役割を一年延長しようと動いていることに対してです。順番から言うと半期交代で欧州連合の議長国は次はチェコに回ることに決定しています。それで前にも書きましたが、このチェコのクラウス大統領は有名なユーロ懐疑派であります。こんな時期にリスボン条約にも気候変動案にも強硬に反対しているユーロ懐疑派を議長にしていいんですかねというのは私みたいな人間でも思うところです(この人の環境保護主義は新手の共産主義だ発言は表現を穏当化すれば半分ぐらい賛成なんですけども)。またその次はスウェーデンでしてここはユーロ圏外なんですよねえ。なんという使えない枠組みなんでしょう。サルコジ氏がさかんに揺さぶっているのも判るというものです。この記事によれば、欧州連合の議長とは無関係に危機への対応の会合が開かれていると嘆くクラウス氏ですが、フランス、ドイツ、イギリス、イタリアの四カ国は1938年にチェコスロヴァキアの一部への侵略を許したミュンヘン協定を結んだ国だと非難したとされます。さらにこのユーロ懐疑派は欧州議長職は重要なものだとは思わないと明言しています。ふう。この人ではなにも決まらないですよね。

"Sarkozy’s attempted EU coup fails – for now" by Wolfgang Munchau[FT]
ミュンヒャウ氏のサルコジ氏の「クーデター」についての論評。この人は好意的なんですよね。彼の「欧州大統領」(president of Europe)の一年延長案や「経済政府」の提案はチェコやドイツの反対で失敗に終わったように見えるが、最終的にはこれは実現するだろうと6つの根拠から予測しています。第一に欧州経済の景気後退は明らかで米国の新大統領は景気刺激策を用意して欧州に圧力をかけると予想される。第二にマネーマーケットの保証の提供の失敗の是正が必要である。第三に現在の銀行の資本増強プランはユーロ圏レベルの協定で改訂される必要がある。第四にユーログループの指導力のなさ。第五にドイツの反対は孤立しつつある。スペイン、イタリアは賛成であり、東欧の危機が深刻化すれば、オーストリア、スロヴェニア、スロヴァキアがユーロ圏の連帯を求めるだろう。第六にリスボン条約の不確定性。チェコのクラウス氏が議長になった場合には、欧州連合のリーダー達はこの条約の外で危機に対応するほかなくなる。ドイツは反対し続けるだろうが、サルコジ氏はメルケル氏を追いつめるだろう。現在のサルコジ氏はフランス大統領に過ぎないが、危機が深刻化するならば、彼のクーデターは成功するだろう。

私は何度か書いたようにユーロ懐疑派的なんですが、今回の危機にはどう見ても欧州レべルの対応が必要ですし、これを機にあるいは欧州も実効的な枠組みに成長できるのかもしれないという気もしています。リスボン条約のような大仰なばかりの法的枠組みとは別のもっと実効的な枠組みからですね。さてサルコジ氏はどこまでこの危機を最大限に利用できるのでしょうかね。ところでフランスのSWFについての経済学者のまともな論評がでていないようなのはどうしたことなんでしょうね。放置というやつですか。そうですか。チャベス氏が素敵なコメントをしていましたね。ようこそ社会主義クラブへと。

おまけ
"Shopping in Taiwan's hypermarkets"[BBC]
BBCのネット版のタブロイド化傾向については識者の間で指摘されているところでありますが、兆候的ですのでここでメモしておきます。この記事、見出しが"Go, go gadgets"、リード文が"The wacky world of Taipei technology"といかにもアクセス稼ぎをねらったような仕掛けになっています。そう、"wacky"と"weird"、この二つは英語圏のギーク層において我が国を指すのにほぼ独占的に使用されてきた形容詞ではありませんか。さて今後英語圏でwacky Taiwanキャンペーンが始まるのでしょうか。今時BBCに幻想を抱いているのはどこかの島国の公共放送の職員ぐらいしかいないという話も聞きますが(面白い番組はありますけどね)、こういうネタはGizmodoやPink Tentaclesに任せて少しは真面目に報道したらどうですかと言いたくなる自分もいたりします。まあいいですけどね、少なくとも政治社会ネタではいい加減な報道は止めていただきたいものです。

追記
"Yen is caught in carry-trade turmoil"[FT]
例のFTの記事はこれですね。政策提言は以下。

Given the current pressure on the yen, additional measures may be needed. Japan could print yen and use them to buy foreign currencies, putting a floor under the yen and preventing deflation. While this would slow a correction of global imbalances, highly disruptive jumps in currencies due to speculative flows are the greater of two evils.

円を刷って外貨を買えと。複数の通貨(ドル以外もということですよね)に対する円売り介入。いろいろ勘ぐりたくなるところですが、今の局面ではこれもなかなか悪くないアイディアに見えます。確かにFTは円キャリーについては早くから警告していましたが、正直に言ってなんだか蜃気楼みたいな話に感じていました。

コーエン氏のエントリに関して、当初は「FEDの緩和策」「ECBの引き締め策」としていたのですが、これは相対的な話で誤解を与える表現でしたので書き直しました(ご指摘ありがとうございます)。

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コメント

コーエン氏の言う『金融引き締め政策』というのが何を指しているのか分かりませんし、貯蓄ブームがあったのかどうかは知りませんが、アメリカとユーロ圏ではインフレ傾向にありながら金利が下がってきており、そこにアメリカの投資銀行が開発した金融商品と金融緩和策とが相俟って、行き場を失っていた金が一気に金融市場に流出したことは事実ではないでしょうか。単に時系列の話ではないかと思いますが。
FTやエコノミストは日本に対してよく能書きを垂れますが、そんな暇があるなら自国の経済を少しはましにしてから言え、と思っています。

投稿: chengguang | 2008年10月29日 (水) 13時38分

あくまでもアメリカに比べて「相対的にタイトな金融政策」ですから「引き締め策」とするのはまずかったですね。本文を直しておきます。

「グローバルな過剰貯蓄」は2005年にバーナンキがグローバルなインバランスについて説明するのに使った概念です。世界中が過剰貯蓄となっており、それがホットマネー化して世界中を駆け巡っているという話なんですが、面倒な議論なので私も十分に理解できていないです。
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2005/04/26/AR2005042601394.html
http://economistsview.typepad.com/economistsview/2005/09/is_there_a_glob.html
あたりでイメージがつかめると思います。

グリーンスパンの低金利政策がバブルを生んだ元凶だと今非難されていますが、この議論だと低金利政策は原因ではなく結果だということになるんでしょうかね。アメリカに都合のいい話に聞こえますが、そういう議論もあるということで。

短い記述ですので真意は判りませんが、文脈から判断するとコーエン氏は欧州から新興国市場への投資をこの概念で説明できると考えているようですね。

>FTやエコノミストは日本に対してよく能書きを垂れますが、そんな暇があるなら自国の経済を少しはましにしてから言え、と思っています。

また説教かという気分になるのはよく判ります(笑)。まあこちらがしっかりしていればいいんですけれどもね。崇めて読むのは間違いだと思いますけれども、英米系がなにを考えているのか知るのに両紙は便利ですからね。

投稿: mozu | 2008年10月29日 (水) 16時42分

『貯蓄過剰』という概念に『世界的』が加わったところが新しい概念と言う事なのでしょうか。
サムエルソン氏が説明している経済状況は、『合理性のパラドックス』と呼ばれる行為で、小室直樹氏がバブル崩壊後、日本の不況と金余り状態とを説明し、個人の経済的合理的行動が全体としては不合理な結果となっている、としてこの用語を引用し、個人が貯蓄に励む結果社会が益々不況に陥っていると解説していました。そして氏はその解決手段として、こういう状況だからこそ量的財政政策を実施せよ、と主張しました。
それに対し、政府は既に多額の資金を投入しているが景気はちっとも浮揚しないではないか、氏の言う事は事実で否定されているという議論が多かった記憶があります。規模と量との区別の出来ない人が当時は多くいました。
今、同じ批難を、イギリス労働党のブラウン氏の経済対策に対して保守系の人が行っています。ブラン一派をケージアンと呼んで。一方、アメリカでは、小室氏の説と同じ量的財政対策を採れと言っているアイケングリーン氏のような方もいます。どちらの対策でも景気が良くなればよいのですが。

投稿: chengguang | 2008年10月29日 (水) 23時34分

小室氏は『合理性のパラドックス』を経済用語である『合成の誤謬』という言葉で説明していたと思います。

投稿: chengguang | 2008年10月30日 (木) 08時04分

バーナンキ氏の議論はなかなか精妙なので理解できていないのですが、おっしゃるように一国経済単位の説明ではない点が新しいのでしょうね。

小室氏の「合理性のパラドックス」の議論には通じていないのですが、デフレ不況下での貯蓄性向の高まりは「合成の誤謬」なんでしょうね。

財政政策に対してはマンデル・フレミングの法則に基づく批判がありますが、アイケングリーン氏の主張するように各国協調で財政政策をやれば発散せずに効果を発揮するように思えます。それから財政政策一般を「ケインズ主義」のレッテルを貼って全否定するような議論はやはり行き過ぎだと思いますね。当時の日本政府のやり方が下手過ぎたのは事実だと思いますけれども。

投稿: mozu | 2008年10月30日 (木) 23時28分

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