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ナイスな協力関係

"The Fall of America, Inc." by Francis Fukuyama[Newsweek]
フクヤマ氏のこのたびの金融危機についての長い論評。ウォールストリートのメルトダウンは単なる銀行救済の是非論の問題ではなくアメリカ・ブランドそのものの危機の問題であるとしています。1980年代以来世界を席巻したアメリカの二つの理念─規制緩和、小さな政府、減税を是とする資本主義のヴィジョンと自由民主主義の擁護者としての合衆国─が崩壊しているのだと。ロシアや中国のモデルが魅力的に映っている中でオバマにせよマケインにせよ立て直しをしなければならない。レーガニズムは登場の時点においては正しかったが、福祉国家へのプラグマティックな対応ではなくいつの間にか減税と金融の規制緩和のイデオロギー、ドグマと化してしまった、それがこのたびの惨状をもたらしたと述べています。まあ長いので後は原文でお読み下さい。ネオコンに愛想つかして民主党支持に転向したんですよねえ。この人は思想らしきものをまぶして「でかいこと」を語るのが上手なだけの人という気もするのですが、アメリカの今の気分のドキュメントとしてこの記事はよく書けているのではないでしょうかね。

"The Age of Bloomberg" by Fareed Zakaria[Newsweek]
ザカリア氏の短い論評。フクヤマ氏と似ていますが、やはりこちらの方が多少私の好みですかね。確かに現在生じていることは悲惨だが、歴史は信用危機、パニック、金融メルトダウン、不況に満ちている。今回の危機は資本主義の終焉を意味しない。しかしこれはアメリカにとってはある種の世界支配の終焉を意味するかもしれない。歴史的に見て現在の危機は巨大であり、政府は市場に介入しなければならない。現在では介入が少なかった19世紀西欧諸国で当たり前だったようなダウンスウィングには耐えられない。1854年から1919年の間の不況の平均は22ヶ月続いたが、ここ20年では8ヶ月ほどだ。1854年から1919年の間アメリカ経済は平均して49ヶ月ごとに収縮した。ここ20年では収縮と収縮の間は100ヶ月だ。これには多くの要因があるが、政府の金融政策と財政政策が主要なものだ。今回の介入は規制の時代への回帰だろうか。40年前に戻ることはないだろう。資本主義は現在はグローバルな現象だ。諸国は成長と生活水準の向上のために自由市場と自由貿易に依存し続けるだろう。この金融危機の副産物はアメリカのdelegitimizationだろう。かつて世界中の人々はアメリカをモデルとみなしたが、もはや信用は失われた。数十年にわたってアメりカは資本を集め、贅沢な暮らしをしたが、こうした時代も終わった。他国同様に投資を求めて努力しなくてはならない。競争的資本主義の世界では大きな政府も無政府も必要ではなく、必要なのは賢い政府だ。成長、技術革新、生産性を効率的に高めるような政策の競争だ。大切なのはイデオロギーのマントラではなくてなにが有効なのかをはっきりさせることだ。サッチャーの時代ではなくブルームバーグの時代なのだ。アメリカは悪い規制、補助金、アド・ホックな介入ばかりだ。政策は長期的な成長よりもパワフルな選挙民のためにデザインされる。フリーライドの時代は終わった。真面目になる時だ。

フクヤマ氏にせよザカリヤ氏にせよ今回の危機でアメリカの正統性が大きく損なわれた点を強調しています。後はイデオロギーのマントラはいらない、必要なのは賢さなんだという点ですね。ただ思想畑から出たフクヤマ氏には理念へのこだわりがザカリア氏よりはあるようです。アメリカの消費市場が全世界の成長を支えるというブレトン・ウッズ体制の現代版のようなあまり持続可能性のなさそうだった体制がどうやら終焉を迎えつつあるのは事実なんでしょうが、勿論資本主義も続くし、歴史は続くよ、だらだらと、ということなんでしょう。

なお前のエントリではなげやりなことを書きましたが、政府も日銀もいったいなにをやっているんですか、どうしてこうも受け身なんですかと言いたくなります。各国政府と協調して金融政策でも財政政策でも派手にアピールしてもっと積極的にやったらどうですか。素人が偉そうに言うのもなんなんですが、財政再建だのインフレ防衛だの言っている局面ではないように見えます。フォワードルッキングっていったいどんな麗しい光景が見えているのでしょうか。泉が湧き、小動物が戯れ、美女が踊り・・・みたいな光景なんでしょうかね。

"Japanese hoteliers turn backs on foreign tourists" by Justin McCurry[Guardian]
国交省の大臣の発言といい総務省のわざわざ誤解されることを意図したような質問表(「宿泊がなかった」と「拒否した」は全然違います。後者は法律違反ですよね)に基づいた調査報告公表といい、なんのために我々はこんな連中のために税金を払っているのだと言わざるを得ないのでありますが、オチがついたようでなによりな話です。ここでJTが大臣発言を恣意的に引用した点については既に指摘しましたが、ガーディアンのマッカリ氏は例の大臣発言を「日本人は一般的に外国人が好きではない」とさらにパラフレーズした上で、大先生とタッグを組んで日本叩きに勤しんでいます。ただの阿呆なら放っておけばいいわけですけどね、大先生はこうしてメディアに重宝されているわけですよ。だから問題なんです。また新任の大臣もJapanTimesのインタビューで微妙すぎる発言をしていますね。自分の発言がどのように利用されるのかについて想像力を持ち合わせていないようでありまして、戦略的思考を養成するカリキュラムが必要なようです。間抜けな大臣と愚かな役人とJapanTimesと大先生とマッカリさん、ああ、なんという爽やかな組み合わせでありましょうか。

ちなみに観光大国で知られるかの国ですが、欧州で最も外国語ができない国として知られ、英語メニューのような便利なものは観光客の集まるような限られたところにしか置いていなかったりするわけです。ここは日本なんですから、外国人にも日本語で話しかけるのが基本だと思うのですよ。日本語でも意志は通じますので特に外国語を話そうと緊張したりあたふたしたりする必要はないわけですね。外国語をある程度話せる人でも、まず日本語でまくしたてた後に、なんだ話せないのかよ、しょうがないな、じゃあお前の言語を使ってやるよ、みたいな態度を時にはとってみせたりするのもいいと思います。さらには話せるけれどもあえて話さないという高等テクもありましょうね。まあ相手を見て使うべきですけどね。けっこう長いこといるくせにろくに日本語を話す気のない人と観光客とでは違いますから。前者は語学の必要性を認識させるためにも日本語で通してあげるみたいな親切心が必要だと思うのですよ。いえ、なにもある種の日本的美風を批判するつもりはなくてですね、私としては日本国民がもう少したくましくなることを祈念しているだけなのですね。

ではでは。

追記
なお観光大国のわりには歓待の態度に欠けるなどと陰口をたたかれがちなかの国の人々ですが、言われるよりはだいぶ親切ですよ、とここで擁護しておきます。それから日本語を覚えたいのに英語で話しかけられて困るという意見もよく目にします。外人さんは日本語を出来ないんだろうという思い込みはもう捨てたほうがいいと思いますよ。まず日本語で話しましょうね。

総務省の調査の部分を訂正しました。「宿泊がなかった」「受け入れたくない」「受け入れる態勢がない」「拒否した」等の違いの意味をJustin McCurry氏は理解できないようです。あなたは記者なんだから日本語を学習する義務があるんですよ。言語能力や取材国についての知識がなくとも取材能力があればいいなんてのは甘えに過ぎない。大手メディアの特派員体制も見直されてしかるべき時期なんでしょう。またこのニュースに関する日本メディア各紙の英字面の報道も不正確でしたね。結局、問題はいつも日本のメディアなわけです。「べき」の前に「である」です。

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コメント

お言葉ですが日銀や日本政府がなに言っても無駄です
東証の取引高の6割は外人ですから、連中の換金売りが止まるまで
日本政府に打つ手なしです 長いこと株式市場を見てますが、
株式市場は西も東も一見頭良さそうで実は自分の鼻先も見えず
欲が深くてすぐ大慌てする人たちでいっぱいだと結論しています
いまの下落は来週には止まるんでしょうが、こんどは一転
みんな焦って買い戻そうとして狂ったような上げ一色になると思ってます
今までは毎回そうだったし、株式市場ほど懲りもせず同じこと繰り返す場所は
他にありません


先々週くらいの朝日新聞(日本語版のです)に出てた「後を絶たない外国人差別
外国人お断りの看板日本中に」みたいな記事にも有道さん出てましたね
有道さんの意見を全在日外国人の代表みたいに書かれてもね~ (・-・`)

投稿: ・・・ | 2008年10月12日 (日) 10時08分

株価は水物なんでしょうけれども、実体経済への影響が心配なんですよね。またデフレ不況になったら目もあてられないなと。まあ私みたいなものが言っても意味ないんでしょうけれど。

大先生には困ったもんですねえ。こいつは信用ならないと英語圏でもアンチが増えているのは心強いですが、まだこの人使うメディアがありますからね。

投稿: mozu | 2008年10月12日 (日) 12時43分

金利の世界協調利下げに、日本が同調しなかったことを非難している人がいますが、日本のように、金利とは呼べない位十分下がっている金利を、実行効果が期待できない状態で、何故協調して下げる必要があるのかの説明が不足しているように思います。
日本のオンラインの経済誌に、中国で今年の9月27日に催されたダボス会議について、10月10日に書かれた記事が載っています。この記事で、執筆者は、出席した『エリートたち』の関心は『誰がアンクルサムを助けるか』で、それには中国しかないとの期待感を表しており、わが日本には、『金融危機を体験した反面教師として言及されることが専らであ』った、と述べています。この時点ではまだ世界のエリートたちと称される人々は、状況を他人事としてしか認識しておらず、日本は資本主義を理解していない劣等民族であったようです。そしてこの話を10月10に書いている日本人は、正に日本のジャーナリストの典型と言えるかもしれません。
中川財務大臣はG7でもIMFへの資金提供に関しても、言うべきことは言っているようです。

投稿: chengguang | 2008年10月12日 (日) 19時44分

協調利下げをパスするのはいいのですが、会見などを見ていてもどういう見通しを持っているのかが見えてこないというのと、今後の展開に応じた複数のプランを用意しているのかどうかが気がかりです。

日本は随分前から公的資金投入の必要性を訴えていたようですが、一緒にするなと相手にされていなかったようです。日銀の中にはざまあみろとひそかに思っている人達がけっこういそうです。他人事ではないのがつらいところですが。ダボス会議の記事は読みましたが、日本の孤立やら存在感のなさを読者にアピールするよくある語りのスタイルですね。こういう語りが一番売れますから。

G7での中川氏の発言には関心があるのですが、断片的な報道しかありませんね。この人は適任だろうと思っていましたので期待していたのですが、IMFの件はどういう枠組みになるのでしょうかねえ。

投稿: mozu | 2008年10月12日 (日) 21時14分

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