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コルベールの亡霊

驟雨の降りしきる夜でありますが、ハワイアンにすっかりご機嫌であります。皆様はいかがお過ごしでございましょうか。ハワインアンと言えばやはりスチーム・ギターに限りますよね。ウクレレなんて知るかです。灰田勝彦サイコーです。このファルセット・ヴォイスがたまらない。こんな夜はやっぱり戦前ハワイアンですよね。

Michel Rocard : "La crise actuelle est née en 1971"[Le Monde]
ロカール主義の主導者として一時代を築いた感のあるミシェル・ロカール爺でありますが、あいかわらずお元気なようでなりよりです。国家主義的、統制主義的な経済的思考が一般的であったフランス社会党内部にあって市場経済の重要性を強調する少数派の領袖として活躍され、ミッテラン政権下では首相も務められたお方です。周囲の空気をまったく読まない直な物言いで有名な方ですね。私はこの政治家がけっこう好きでしてル・モンドになぜかインタビューがあったので嬉しくなってしまいました。内容に関してはあまりコメントしたくないのですが、想像を絶する発言の数々に腰を抜かしそうになりましたと言っておきます。このたびの危機の原因は1971年にあるのだそうです。金ドル本位制を止めたのが諸悪の根源だという洞察には唸ってしまいましたが、最後のセリフには・・・、いや、これでこそ、ロカール氏です。

フリードマンがこの危機をつくったんだ!あいつはもう死んだ、本当に、残念なことだよ。生きていたらあいつは人道に反する罪で国際刑事裁判所に告訴されただろうさ。市場の機能は完全だという考え方であいつは人間の強欲と貪欲とが自由に表明されるようにしてしまったんだよ。

フリードマンというのは偶像化されてしまった経済学者なんでしょうねえ。なお私が心から氏に同意するのはオルタナに対する「阿呆達の記念碑」発言ですね。その通りです。

"Sarkozy crée un fonds stratégique d'investissement"[Le Monde]
アヌシーでサルコジ氏が地方税源の事業税の1年間の停止と中小企業のための戦略的投資ファンドの立ち上げを提案しています。欧州ソブリン・ファンドの提案が空振りに終わったために(やはりドイツが嫌がった)フランスのソブリン・ウェルス・ファンドを立ち上げたということのようです。この大統領にとっては新自由主義だの国家資本主義だのといった寝言は知ったことかということなのでしょう。例によって日本はじっと動かずに「世界の大勢」を読んでいるといった感がありますが、サルコジ氏はもう国を賭けたようですよ。吉とでるか凶とでるかは神のみぞ知るところです。

"The president who loved summits"[The Economist]
最近のサルコジのサミット狂いについてのエコノミストの記事。シラク時代に比べたフランス外交の変貌について述べています。最近の出来事から欧州はリスボン条約で提案されたようなpermanent presidentが必要だという議論がなされている。もし金融危機とグルジア危機の際にスロヴェニアが議長国だったらどうなっただろうと。ただこうした議論はエコノミストは気に入らないようです。制度と指導力とは違うのではないかと。曰く、

Yet there is an obvious flaw in this argument: it equates leadership with institutions. If Mr Sarkozy has appeared as a strong European leader, this is because of his political qualities and egotism, not because of the EU’s institutional arrangements. Indeed, it is possible to take precisely the opposite line over the Lisbon treaty: that Mr Sarkozy’s hyperactivism demonstrates that strong European leadership does not need a new institutional set-up; and even that to have had another worthy as permanent EU president would just have created another obstacle.

そしてサルコジ外交の特徴としてプロトコル破りを挙げています。サルコジ流の非フランス的な袖をまくり上げたプラグマティズムとは事態を動かすためにはなんでもやることを意味しているといいます。このスタイルの欠点としてエゴが強過ぎて周囲に怨恨を残すというのはそうでしょうね。それでシラクではないことは確かだが、利害の相反の著しい欧州を本当にまとめられるのと締めくくっています。まあエコノミストらしくお手並み拝見といった引いた視点の記事ですね。

"Re-bonjour, Monsieur Colbert"[The Economist]
ケインズの復活について大騒ぎになっているが、墓場から飛び出した亡霊はイギリスの経済学者ではなくフランスの官僚だったというわけでコルベルティスムについての半分冗談みたいな記事です。

Now suddenly every politician has ideas about how to run a business. Thus Congressman Henry Waxman (no doubt inspired by the picture of Colbert that hangs in the House of Representatives) lambasted the rescued American International Group for spending $440,000 on a junket for a crew of life-insurance agents (no matter that the reps were self-employed). Britain’s Tories want to stop bonuses in the banks their government has just bought (clever idea: driving away good staff just when you need them). Politicians everywhere want banks to be free with their credit (not normally the route to profits).

しかし現代の統制主義者(dirigistes)達よ、新しい玩具の遊び方を知りたければ、フランスに行くがいいと述べ、フランスの国有化政策がいかに失敗したのかの事例を列挙しています。最後はコルベールは復活したのかもしれないが、それは解決ではないと。ドーバー海峡の向こう側の王様気取りの大統領はだんだん「コルベール的」になっているようですけれども、この危機に対するイギリスの身の処し方には興味があります。冗談記事ですが、1930年代ではなく17世紀のことを考えたくなりました。なんとなく国の体質みたいなものって変わらない部分があるような気がしてくるのが不思議ですね。

追記
浮かれて意味不明なことを書いていたので最後のほうを書き換えました。
コルベルティスムと戦後のディリジスムは別物と考えていたのですが、似たようなフランス的伝統として捉える人が多いのですね。なんだか頭が混乱してきました。英語圏に多いようなので外から見るとそんな風に見えるということなんですかね。なお日本を一種のディリジスムと捉える英語圏に根強くある見方はやはり間違いだろうと思いますね。

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コメント

今回の信用危機により、現行のマネー市場の問題が浮き彫りになりましたので、救済策と同時に問題点の解決を図らなければ、同様のことが再び生じる可能性は高いと言えます。それ故、問題の原因が、マネー市場のシステムにあるのか規制の緩さにあるのかも明らかにすべきなのは言うまでもありません。
サルコジ氏は前者にあると考えた譯で、他の国はマネー市場の存続を前提に暫定策を採っているだけで、問題点とその根絶については今のところ何の見解も述べてはいないし、対策も採ってはいません。そういう意味では、サルコジ氏は為政者として評価できると思います。

投稿: chengguang | 2008年10月24日 (金) 22時29分

おっちょこちょいな部分もありますが、政治家としてのカンは一流だと思います。この金融危機をフルに利用して欧州政治を動かすつもりのようですね。

SWFについては左派の支援もあるようです。経済愛国路線で不況を最小化するつもりなんでしょうが、評価は分かれるでしょうね。ハゲタカにやられてたまるかという心意気はよく判ります。東欧がひどいことになっていますねえ。

これから金融市場の規制と監督のあり方についてのヴィジョンのぶつかり合いになるのでしょうね。

投稿: mozu | 2008年10月24日 (金) 23時08分

ヘッジファンドはこの間スペインに空売りを浴びせていました。日本の株価暴落も彼らによる空売りではないかとも言われています。
尤も東京も香港も、株主の大部が外国の機関投資家と言われていますので、彼等の売買が株価に大きな影響を与えているのは既知の事柄のはずですが、マスメディアがこの事実を一切報道することなく、日々の乱高下を大げさに言い募りているのは、何所かに買収されている所為なのかと勘繰りたくなります。

投稿: chengguang | 2008年10月25日 (土) 11時58分

値が崩れたところで日本国民が買えばいい、お買い得じゃなないですかという話なんですけれども、なかなかそうはならないですね。

投稿: mozu | 2008年10月26日 (日) 05時18分

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