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声が小さい

東欧の経済状況の悪化ぶりについて書こうかと思ったのですが、もう少し調べてからにしようと思い直して以下最近の英語圏のJapanネタをクリップしておきます。

"Will Japan Go Nuclear?" by Robyn Lim[Far Eastern Economic Review]
ねえ、最低限ググって調べてから投稿したほうがいいんじゃないという他のまともなメンバーの無言の抗議と冷ややかな視線を全く気にしないその傍若無人ぶりで名高いNBR常連のロビン・リム氏の記事。関係ないですが、NBRって無知で傲慢な人間達を少数のエキスパートが教え諭す場なんでしょうか。この記事は地政学の奥村さんのところのその著書についてのコメント(ふーん)つきのエントリから。このたびのテロ支援国家指定解除が日本の核武装への道を開くだろうと警鐘を鳴らす内容です。どうもまったく思わぬところから援護射撃(?)が来たようで、まあ、危機を煽っておいてくださいな。誰かに対する牽制になればいいんじゃないですかぐらいですね。

"Japan as Spoiler in the Six-Party Talks: Single-Issue Politics and Economic Diplomacy Towards North Korea" by Maaike Okano-Heijmans[Japan Focus]
Japan Focusということでどうせまたアレな記事だろうなと思っていたらなかなか精密な分析で感心しました。そう言えばこの論者は前にどこかで読んだことがありましたねえ。日本の対北朝鮮外交についてこの記事はよくまとまっていますのでこの問題についてなにか言いたいJapan論者は最低限この程度の知識と認識をもってからなにか言うようにして下さいね。勿論すべての文脈をひとつの記事に網羅することなどできませんから、他の文脈もあるだろうぐらいの想像力ももっていただきたいですが。別に日本が積極的にエンゲージメントすべき理由がなかっただけの話で特定条件下においてはごく合理的な行動でしょう、そして条件がどのように変化したのかの算術が今必死になされているのでしょう。それだけのことです。アメリカへの信頼性については別に平気なのではないでしょうかね。単純な反米屋さんには本当に困ったものですけれども、我が国には戦略的親米派がいればいいのであって奇妙な種類の親米屋さんが減少していることそのものはよい傾向だと思いますね。なお私は戦前の「親米派」自由主義者達に深い敬意と愛着を抱いている人間です。

"Managing the Japan-US alliance" by Koji Murata[East Asia Forum]
East Asia Forumは全般に「東アジア共同体」的な発想をする英語圏のリベラル系論者が集うところという印象のあるブログですが(いろいろいますが)、日本や中国においてその名が口にされる時の響きやイメージと英語圏のリベラル系論者のそれとの落差を味わうにはなかなかいいところかもしれません。Siro Armstrong氏の政局ネタにも飽きていたので村田教授が寄稿しているのを見ておやと思ったので紹介しておきます。ここしばらくの日米関係の不協和音に対する警鐘といった内容で日本国民からするとなんということもないことが書かれているわけですが、英語でこういう場所に寄稿すればそれだけで十分に意味があります。なぜならば英語圏においては日本国民のヴォイスが圧倒的に不足しているのですから。

"New US leaders need a Japanese 'jolt'" by Yukio Okamoto[Asia Times]
ウィリアム・スパロー氏の植民地主義的欲望に塗れた記事によって信頼性を著しく損なっているアジア・タイムズですが、この微妙過ぎる新聞にも日本国民の寄稿者が増えているようでなりよりです。岡本行夫氏による日米の安全保障関係についてのこの記事ですが、民主党によるインド洋での給油活動への妨害を批判し、在留邦人の保護や海洋の安全における自衛隊の役割の強化を訴えています。これも日本国民からすれば特になんということもない話でありますが、英語で発信することに意味があるわけです。なぜならば英語圏において日本国民のヴォイスは徹底的に不足しているのですから(何度でも反復します)。

"The LDP's Long Goodbye" by Tobias Harris[Far Eastern Economic Review]
ハリス氏の自民党における派閥の機能についての記事。近年の総裁選挙や閣僚人事から派閥の無意味化の傾向を指摘しています。派閥はどうやら多数の勉強会や議員リーグやイデオロギー的なクラブや伝統的な族議員に席を譲ったように見えるといい、近年の自民党は派閥や政策集団というよりも漠然としたイデオロギー的な「傾向性」で分裂しているようだと述べています。中川昭一氏の「真の保守」、中川秀直氏の「上げ潮派」、与謝野馨氏の「財政再建派」、伝統的な族議員、加藤紘一氏の「リベラル」、それから多数派たるリスク回避派(the risk averse)と。それで麻生内閣で表舞台から去った小泉構造改革派の後継者達の去就、彼らが自民党にとどまるのかあるいは党を離脱するのかが問題になるとしています。そしてこのイデオロギー的傾向性へのシフトによって自民党はかつてのような一貫性—権力の座につき続けるという目的の下で—を喪失した。かつてもイデオロギーは存在したが、派閥が無意味化するにつれて、政権の維持と並んで政策的目標がイデオローグ達にとって重要になっている。最後は問いかけで終わっています。

Can the LDP last as a party pursuing several distinct and contradictory policy agendas? Will Mr. Aso or a future party leader be able to impose a uniform policy agenda on the party? Or will the next general election prove a catalyst for a party realignment that breaks up the LDP as it exists today?

なるほど。これならばさほどの異論はないですね。私はハリス氏の「イデオロギー」や「イデオローグ」の用法を取り違えていたのかもしれません。別の言葉に置き換えて読めばいいわけですね。ただ日本政治思想史と日本政治史の常識が英語圏で十分に共有されていない以上、ハリス氏の記事を読んでも読者には自民党の「保守」とか「リベラル」とかの意味は判らないでしょうね。また実際には仔細に各グループの面子を観察してみるとその乱雑さに軽く目眩がしたりするわけですね。一枚岩の思想集団などではないわけです。このあたりはどうも海外ウォッチャーには見えないようです。それと私自身は一国民として我が国の政党政治の成熟を待望しておりますし、特定の政治家さん達を応援したりはしているのですけれどもね、消音ボタンを押して眺めると、私の目には日本政治はある運命の作用の下に置かれた剥き出しの権力政治として現れますね。そういうわけで私に興味があるのは本当はどちらかといえば政治家達の言葉と行為のずれのほうです。

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