« 閉ざされた言語空間 | トップページ | やはりロワイヤルなんですかね »

これって政治ショーですよね

What the G20 should do on November 15th to fix the financial system[VoxEU]
またVoxEUが代表的なエコノミストの提言を集めたE-bookを公刊しています。今週末のG20でなにがなされるべきか(なされるべきでないか)についての提言です。ここのサイトはこの危機で随分活躍していますね。論者によって意見のばらつきはありますが、1.金融部門では指導者は迅速に行動し、緊急措置を強化し、協調せよ、実体経済では景気刺激策を採用すべし、2. 新興市場での危機に対処すべくIMFその他の既存の機関の機能強化のために行動せよ、3. 長期的な金融、通貨制度改革について思考し始めよ、4. do no harmが4つの柱になっています。すべての提言をちゃんと読んでいないのですが、ざっと眺めた感じだとアイケングリーン教授の提言が目にとまりましたかね。WTOと同じようにWorld Financial Organization(WFO)をつくれ、またIMFの貸付機能を強化すべく新G7を結成せよと。後者ですが、アメリカ、EU、日本、中国、サウジアラビア、南アフリカ、ブラジルから構成されるべきだといいます。タイトルの「新ブレトン・ウッズではなく新ブレトン・ウッズ・プロセスを」が示すように、ローマは一日にしてならずの精神でG20の席上では大急ぎの協定を結ぶことよりもプロセスへのコミットをしろと提言しておりますね。おそらくは合理的な意見なのだろうと思われますが、IMF改革や新G7は政治マターですねえ。日本からは伊藤教授が寄稿しています。

"Bush and Obama Diss the G20 Financial Summit"[naked capitalism]
今度の危機で急激にアクセス数が上がっているnaked capitalismにもG20についての記事がありました。FTの記事へのコメントです。マルチラテラリズム嫌いのブッシュ氏がこのサミット開催に動いたのはサルコジ氏の要請に応えたからなのだが、これは奇妙なジェスチャーだった。オバマ新政権に用意はあるのか。また中国は通貨体制の問題を議題に含めよう脅しをかけている。そんなわけでアメリカは面子を守るためにさっそく人々の期待値を下げている。これはワン・ステップにすぎないと。またアメリカは金融危機の責任を中国にかぶせようとしているが、結局、元安も輸入もアメリカに都合がよかったのだ。本当はグローバル・インバランスが問題なのだが、ポールソンにそんな事が言う資格があるのだろうか(ここはポールソン叩きが好き)。アメリカのメディアと違って中国は我々の政策の一貫性の欠如を喜んで指摘するだろう。

This now looks deeply cynical. Were the Bushies trying to undermine multilateralism on the way out by neutering a potentially useful group? Given the funk the markets are now in, this could have been a good forum for crafting an emergency market-reassuring response. International coordinated moves did buoy the markets for a couple of weeks last month.

というようにエコノミスト達の意見も政治の前ではかき消されてしまうのようでありますね。

"After the fall"[Economist]
このエコノミストの記事はよくまとまっています。上のE-bookでのアイケングリーン教授その他の提案も紹介されていますね。教授は21世紀冒頭における—今我が列島でのみ妙な具合に有名になっていますが—ハリー・ホワイトになれるのでしょうか。記事はブレトン・ウッズのかけ声はあるが、今度のサミットは非常に難しいものになるだろうという内容です。国民国家の利害と全体の安定とを調停する困難についてたびたび触れていますね。そこそこ長い記事で論点を列挙するのもなんなので、最後のところだけ引用しておきます。

There are two ways of thinking about this weekend’s summit in Washington. To be charitable, look on and wonder at the sheer ambition of taking on so many hard, important questions. A severe financial crisis may be the only time when the technicalities wallowing near the bottom of policymakers’ agendas receive the attention they deserve. But there is a more cynical interpretation. Perhaps the summiteers will bask in the headlines and then, out of the glare of the television lights, set about something disappointingly modest.

現状ではどうもそれほど野心的な取り組みができるような雰囲気ではありませんね。IMFのストロス・カーンはなにか斬新な提案でもできますでしょうか。それなりに高い調子でひどく漠然たる構想を出して後は今後のサミットの日程が決定されるだけに終わるのかもしれません。まあ判りませんけれどもね。米中の鍔迫り合いが最大の見所でしょうが、私としては英仏の火花の散らし合いでもウォッチしましょうかねえ。固まってしまっている感のある我が国の指導者達にもいい刺激が与えられんことを。ところでこれって政治ショーですよね。違いますか。

おまけ
"Time for N. Korea to Give Up Nuclear Weapons"[Korea Times]
via Coming Anarchy
日本にとってはオバマ政権の対北朝鮮政策がどうなるのかが関心の集まるところですが、このインタビュー記事で登場しているジョージア大学教授のHan S. Park氏は新政権の重要な外交アドバイザーであるFrank Jannuzi氏との強いパイプを持っているんだそうです。で、このインタビューの内容ですが・・・頭が痛くなりました。外交的にはカーターの再来になるのではなどと以前から囁かれていますが、Park氏の述べるような戦略を採用した場合にはそんな風になってしまうと思うのですがね。こんなんで核放棄するとでも本気で思っているのでしょうか。まあ、政権とのパイプを強調する口だけの人かもしれませんけれどもね。

昭和恐慌 その時、宰相・犬養は /岡山[毎日]
地方版とはいえ毎日新聞にこの記事が掲載されているのはなにかしら感慨深いものがあります。毎日さんリベラルなんでしょう、自社の経済論調が正しいのかどうか本気で検討してみてください。豹変しても別に笑ったりはしませんて。

|

« 閉ざされた言語空間 | トップページ | やはりロワイヤルなんですかね »

経済」カテゴリの記事

コメント

ブレトン・ウッズIIは、イギリスの首相がIMFとの会談で持ち出した案ですが、これが通れば、サルジコ氏に奪われているEU指導権をイギリスに取り戻せるとばかりに、ファイナンシャル・タイムズが全面的に支援していました。しかし、IMFの返答は素気無いものでした。エコノミストはFTの記事と経過を見ていなかったのでしょうか。
VOXは摘要を見ただけですが、売り込み用プロポーザルのためのメモという感じでしょうか。もう誰でもが知っている問題点と提案のための覚書の域を、出てはいないように見えます。この時期になって、経済専門家と呼ばれている人々がこの程度ではしょうがないな、という印象を持ちました。

投稿: chengguang | 2008年11月14日 (金) 22時09分

エコノミストのこの記事は特にオピニオンのないまとめ記事ですね。ブレトン・ウッズIIみたいな騒ぎになっているけれど・・・という感じの。ご承知でしょうが、ブレトン・ウッズIIはサルコジも叫んでいます。その意味するところは実は違いますが。このへんの英仏の呉越同舟ぶりはなかなか面白いですね。ともかく欧州のCollege of Regulators案がどう受け止められるかがひとつの焦点になりそうですが、代表団のメンツをみてもアメリカは冷ややかに対応しそうですね。

パンフですからそれほど斬新かつ緻密な内容を期待しても仕方がないと思いますが、一流のアカデミシャンがこうやって大きなイベントの際に広く公衆に向けて意見を表明するという文化はやはり羨ましくなります。理論系の方が多いようですから難しいのでしょうけれども日本でも経済学者のみなさんには個々のイシューについて入門経済学レベルの知識層にまで訴えるハビトゥスを身につけて欲しいのですがね。個々にはいらっしゃいますけれどもね。

投稿: mozu | 2008年11月15日 (土) 00時26分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/507226/25307811

この記事へのトラックバック一覧です: これって政治ショーですよね:

« 閉ざされた言語空間 | トップページ | やはりロワイヤルなんですかね »