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チェコのロマ

私は別にチェコ語が出来る訳でもなくカフカとチャペックがかなり好きでプラハの町に強く惹かれ・・・といった程度の関心がある日本国民の一人に過ぎないのでこの国についてなにか意味のある事を書く訳にはいかないのですが、このたびの経済危機の東欧社会に与える影響という点で気になる記事があったので紹介しておきます。ここまでチェコ発のそれほどひどい話は聞こえてこなかったのですが、やはり外国人とりわけロマの排斥の動きが出始めているようです。リトビノフで起こった襲撃事件に関する短信はAFPで一ヶ月ほど前に報じられていましたが、以下はクリエ・アンテルナショナルの仏訳記事の日本語訳です。元ソースは憲章77のジャーナリスト達が創刊したとされるレスペクトというチェコの有名なインディペンデントな週刊誌(チェコ語)です。チェコにおけるロマに対する差別や襲撃そのものは昨日今日の話ではなく根深い問題とされますが、このたびの経済の悪化がこれに深刻な影響を与える危惧があるのでしょう、歴史を想起して強い警鐘を鳴らしています。左右の全体主義の両者を経験した国ならではの論調かと思います。もっとも既に安定した政治体制の基盤が整備されていてこの危機でそれが覆るような事態はちょっと想像し難いのですが、ともかく社会の不安定化が賢明に回避されることを願います。

極端主義に無力な政府

共産主義崩壊から20年、極端主義がこれほど強力だったことはない、とチェコの週刊誌が報じる。

チェコ社会はまずまず上手く発展しているが、それでも1918年のチェコスロバキアの誕生以来これまでこの社会は極端主義というものを真に理解できたことはない。こうしてチェコ人は11月17日に北部の町リトビノフでロマに対する極右の大規模なデモをある種の無関心とともに眺めたのであった(このデモは500人を集め、警察との乱闘を引き起こした)。チェコ人はこのデモを首都から離れた孤立的、地域的な現象であるかのように眺めた。これは明日と同様に今日も在る誤りといったものではない。国家が介入しない限り、なにも動かないだろう。我々の歴史のいくつかの決定的な瞬間が明らかにするのは、恐怖の中にあって想像できない故に差し迫った危機を認めることのある種の否認である。こうしてもはや戦争はないだろうと言って多くのチェコの知識人が1920年代には軍創設の無益を訴えたのだ。そしてドイツのエリートはヒットラーの登場を信じなかった。1989年11月の「ビロード革命」の後に共産党を禁止しなかったと言ってヴァーツラフ・ハヴェルは非難された。彼は他の者達と同様に共産党と選挙で戦う必要性を信じていたのだ。チェコの政治的偶像であるトマーシュ・G・マサリクは最初の共和国の際に民主主義を尊重してチェコスロヴァキア内のドイツのナショナリスト・グループの解散を拒否することで同様の誤りを犯した。国家が反応した時には既に遅かったのだ。チェコスロヴァキアのナチと同様に共産主義者は自分達の機会をうかがい、それを見つけたのだ。今日でもこの両極端はなお存在しており、生命力を失っていない。リトビノフのロマ人街の襲撃の後に、チェコのネオナチは以下のことを確証できたのだ。第一に自らの問題に追われて満足していたこうしたいくつかの街区の住民の一部が初めて公然と自分達の側に味方した。第二にメディアは常に自分達に関心を持っている。第三に標的である「問題のジプシー達」の存在が住民にショックを与えることなくうっぷんを晴らさせることを自分達に許した。最後に彼らはシステムが自分達をどう扱うべきか知らないことを発見したのだ。誰も彼らを守っている政党(労働者党)を解散せず、コミューンはデモを禁止できず、警察は証拠不十分で彼らを逮捕できなかった。

チェコ共和国では危機を原因とする工場閉鎖の後に路上に投げ出されたロマないし外国人のゲットーが拡大し続けている。フラストレーションは大きく、これがネオナチの言動に有利な腐植土を形成している。今日、国が危機に瀕していることは誰もが認めるのに、誰も出口戦略を提案できない。ここに困難があり、10年以上も政治階級は極端主義者の問題に対して将来性のある有効な解決策を引き出せなかった。

我々はなお原則的な糾弾とジプシー達のための短期的な援助の段階にいる。リトビノフで児童公園を新しくしたり、マイノリティーを担当する何人目かの責任者を雇ったりすることで問題を解決できると信じることは実際のところ絶望的である。政府は国全体の同様の状況に対して共通の解決策を引き出すために内務大臣、法務大臣、人権大臣からなる危機内閣を創設すべきだったのだ。とりわけ政府はネオナチが恐怖と暴力を広めるのを止め、ロマに対する真の政策に着手すべきだったのだ。

おまけ
"European left is sidelined by contradictions" by GUY SORMAN[Japan Times]
「嘘の帝国」という現代中国本でけっこう話題になっていたギ・ソルマン氏がJTに寄稿しています。欧州の左派がいかに時代に取り残されているのか、社会主義者のアイデンティティー喪失、それから最近の極左主義の台頭について論じています。ギリシアの騒乱を枕に、欧州を亡霊が徘徊している、カオスと言う名の亡霊が、と締めくくっています。そんな感じですね、ギリシアのことはよく判らないのですけれども。

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