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ムスリム・ファンガールズ

なにに心和まされるのかというのは人によって違うのでしょうが、私の場合、柿の種だったり、ちくわだったり、万葉集だったり、今昔物語だったり、ムネオ日記だったり、近所の阿呆なガキどもだったり、職場のやや奇矯で善良な先輩だったり、と書き連ねるとどこまでもいきそうなのですが、最近遭遇したのがムスリム・ファンガールズです。

ムスリム・ファンガールズについて極東に住まう一成人男性が書くというのはひどく無作法な振る舞いに思えますが、西洋世界のメディアを中心に政治イデオロギーに塗れた記号としての「ムスリム女性」像が日々流布される中にあってあまり日本のファンガールズ達と変わらない姿を見て心和んだということは否定できない歴史的な事実です。まあそんなに大げさな話じゃないんですけれどもね。

我が邦において嵐という名のアイドル・グループがたいそうな人気を博し、興奮と喚声の渦を巻き起こしているという事実はビリーズブートキャンプをこれから始めようと思っているような流行と波長の合ったためしのない人間にすら知られた話です。テレビはけっこう見るほうかと思うのですが、実は眺めているだけでなにも見ていなかったりします。だからずいぶん前から嵐なるグループを見た記憶が存在しているのですが、それが今、その人気の絶頂にあるジャニーズ・タレントであるということを知ったのは家の人がファンになっていろいろと教えられるようになったわりと最近の話です。

かつて日本関連情報について英語圏と仏語圏と西語圏についてリサーチした際に、美少年的なもののアピールが欧州および南北アメリカの一部に及んでいることについては確認したのですが、伝統的にこうした両性具有的な美学文化を保有する東アジア圏での受け止め方はやはり違うような印象を受けます。あまりエキゾチズムなしに近しいものとしてするっと受け入れられている感じがあります。

マレーシアやインドネシアのようなイスラーム圏の国でもこうした伝統というのは存在しているとされます。一般にシャーマニズムやヒンズーの文化的レガシーとされるようですが、植民地化による西洋文明との接触以前は同性愛「的」行為を含めて咎められるでもなく存在していたようですね。このあたりは昔論文をいくつか読んだ記憶があるのですが、インドネシアというのはトランスジェンダーやトランスセクシャリティー方面でもけっこう論じらてきた国のようです。イスラーム圏というイメージしかないと意外に感じられるかもしれませんが、かの地の文化の多層性と混交性はなかなか面白いです。まあ歴史の話は別にして、ざっと現在の両国のアイドルを見ていると日本ほどではないにしても両性具有的な要素というのは確かに認められますから、共振する文化コードというのは存在しているようですね。

それでマレーシアやインドネシアには嵐ファンのグループが多数存在しているようなんですね。マレーシアのあるファンガールのブログに遭遇し、コーランの一節のいささか自己流の解釈の記述と嵐の大野君への熱烈な思いを綴った記述の混交に軽い認知の不協和を起こしたのですが、でるはでるはという感じでブログやファンサイトがあります。日本語勉強中というのも多いですね。で、ムスリム・ファンガールズというのは私が勝手に名づけた訳ではなく、彼女達の多くが自称に用いているようです。ムスリムのファンであるというこの自己規定のあり方とそこに置かれたアクセントの意味は私にはよく判らないし、あるいはあまり勝手に解釈したくはないのですが、まあそういう意識がある人にはあるんですね。国内の中華系を意識しているのかもしれないし、盛んに英語発信しているところにはステレオタイプに抗したいというモチーフもあるのかもしれないし、同好の友達を探しているだけで特にそんな意識はないのかもしれない。まあ判らない。それと連れ合いに示唆されてユーチューブを見てみるとファンガールズ達のアップしたビデオがずいぶんありまして、メンバーのお誕生日会などを愉しそうにやったりしている訳です。上海のコンサートに行ったの巻のビデオなんかもありますから、中産階級の行動力のあるお嬢さん達もいるんでしょう。クラスの中でどういった位置を占める人々なのかは私にはよく見えません。なんとなく躊躇われるのでリンクはしないでおきます。

私は何度か旅行に行っているので当地の雰囲気というのは表層的ではあれ知ってはいるのですが、当地ではスカーフには宗教的民族的意味合いとファッション的意味合いが混じっているぐらいの印象を受けます。デパートなんかでオサレなスカーフが売られている訳ですね。消費の記号になっている側面がある。トルコほどではないにしてもイスラーム圏の中では緩めの国という印象を受けましたし、ニュースを眺めている限りでは最近はいろいろな動きがあるようなのですが、一般にそのようにみなされています。勿論スカーフについては人によってその意味合いは違うでしょうし、あるいは特段そこに意味合いを与えていない人もいるのでしょうし、年齢でも違うのでしょうし、都市と地方でも違うのでしょう。ファンガールズ達のスカーフの意味合いを勝手にあまり解釈したくはないのですが、そこにはある幅と揺れがあるような印象を受けます。そしてその揺れは別にムスリムの少女達に限ったものではなくてもう少し普遍的ななにかに感じられます。

まあそんな愉しげなサークルの外野による印象などはどうでもいいのですが、どこも一緒やねえ、とひどく心和んだという話でした。

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コメント

この記事を読んで、ふと「ガザのハルヒ」を思い出しました。

ハマスとファタハ間の緊張高まる - パレスチナ自治区 国際ニュース : AFPBB News
http://www.afpbb.com/article/1174867

このプラカードを上げた少女は無事なんでしょうかねえ。ちょっと感傷的になります。

投稿: Baatarism | 2009年2月10日 (火) 16時53分

こ、こんなところにまで・・・、無事だといいですね、本当に。

投稿: mozu | 2009年2月10日 (火) 21時52分

韓国の英語圏ブログで、韓国の男性アイドルが中性っぽくてキモイ、というようなコメントを見たことがあって、ふーん、と思ったことがあります。
あの手の中性的なアイドルというのは、日韓共通で、やっぱアメリカはマッチョーーーとまでいかなくても、なんやかやいって男女の区別がはっきりしており、また、はっきりしていなければまずく、それゆえゲイやレズビアンに対する異様な嫌悪感がある人たちがいるのかな、などと空想したことがあります。

「美少年的なもののアピールが欧州および南北アメリカの一部に及んでいる」とはびっくりしました。


 面白いですね。

なお、「ガザのハルヒ」をブログで紹介させていただきました。

投稿: | 2009年2月10日 (火) 22時35分

アメリカのポップアイドルにもandrogynousな人はいますね。マッチョな美学も健在でしょうけれども。ヴィジュアル系やジャニーズやアニメの中性キャラはある層の間では受けているようです。なんとなくオタクっぽい人の逃避先という感じもありますが。調べてからだいぶ経つので今はどんな感じなの判りません。

伝統的にアジア系男性のステレオタイプにゲイっぽいというのがありますね。家父長イメージとどう調和するのか判りませんけれども。

投稿: mozu | 2009年2月10日 (火) 23時38分

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