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東から西へ

深刻さ増す欧州の金融・経済[日経]

欧州経済が一段と悪化してきた。中・東欧諸国の景気減速で欧州全体の銀行の貸し付けが焦げ付き、巨大な不良債権を抱え込む可能性が高まっている。

[,,,]ハンガリーやポーランド、チェコの金融市場の混乱は著しい。3カ国の株価は2月半ばから下落が加速し金融危機前に比べて約半分の水準となった。債券も売られ、通貨も下がっており、最悪の状態といえるトリプル安の様相を見せ始めている。

3カ国は欧州連合(EU)の新規加盟国の中でも経済規模が大きく、これまでは投資先として安定性が高いとみられてきた。トリプル安が起きるのは、国外の投資家の信頼が揺らぎ、投資マネーが一斉に流出しているためである。

問題は中・東欧にとどまらない。この地域で事業展開する企業などに資金を融資しているのは主に西欧各国の金融機関だからだ。特にオーストリア、ドイツ、イタリアの銀行の債権額が大きく、主要行の財務への影響は深刻だとみられている。

[...]ここで中・東欧発の信用収縮に歯止めをかけなければならない。EU内にとどまらず日米を含め国際的で大規模な政策協調を考えるときだ。国際通貨基金(IMF)や世界銀行の支援も視野に置くべきである[,,,]

日経の社説が簡明な見取り図を描いています。中東欧発の信用収縮と景気減速が顕在化し始め、西欧への波及が危ぶまれていると。多くが早くから予想し、危惧していた展開ですが、いよいよ黄色信号が点灯し始めているようです。で西欧諸国の対応は相変わらず足並みが揃っていない、と。ふう。

"Argentina on the Danube? "[Eonomist]

こちらはエコノミストの東欧経済の記事。2009年の東欧は1997年の東アジアと2001年の南米のミックスかと問うています。西側からの資金に頼る当地の金融システムの脆弱性が露呈している。地元の銀行の多くが失敗し、外資系銀行も親会社の好意に依存している状態で、親会社のほうも尻に火がついていると。ギリシア政府は銀行にバルカンへの投資から撤退するように勧告し、オーストリアはGDPの80%を東欧諸国に貸している。また金融だけではなくグローバルな沈滞がさまざまな問題を引き起こしている。西欧諸国への工業製品の輸出は激減し、移民の送金は落ち込み、ウクライナもラトヴィアも先行きが暗い。1997年の東アジア諸国並の落ち込みだが、輸出主導の回復も見込めない。政府ができることと言っても、多くの国で政策手段はわずかだ。利下げをしたポーランドやチェコでは通貨が暴落し、スイス・フランやユーロで抵当付きのローンをしている家計に苦痛を与えている。ハンガリーのようないくつかの国では巨大な赤字の問題が加わる。政策的に余裕のある国ですら緊縮財政をとっている。バルト三国とブルガリアではペッグしている関係で強いユーロが問題となっている。2001年のアルゼンチンの再来を恐れる者もいる。IMFは個々の国の援助は出来るが、地域全体はできないし、ECBは外部の国に貸し付けることを鼻であしらっている。ひどい景気後退は不可避だが、地域のカタストロフは不可避ではない。まず「東欧」というくくりは不正確だ。カザフやウクライナとより小さく豊かでよく統治された国とは無関係だ。10年前のアジアに比べて外貨準備があり、「ホットマネー」も少ない。新加盟国は西欧からの援助を期待できる。銀行システムはかつてのアジアよりも錯綜し、外資系銀行の撤退もなさそうだ。欧州連合やECBは大型の救済に関与したくないだろうが、しなくてはならなくなるだろう。近視眼的な政治家でも隣国を政治的、経済的アナーキーに突き落とすわけにはいかないからだ。ソヴィエト連邦崩壊以降最大の危機であるが、これを大惨事にするには意図的な破滅的保護主義と欧州連合の主要組織の解体の時期が必要になるだろう。が、そんなことはしないはずだ、といった具合に惨憺たる現状を記述する一方で地域全体のカタストロフは避けられるはずだとしています。

"L'Europe dans la crise : de la dénégation à la dissolution ?"[La Tribune]

こちらはラ・トリビュヌのオピニオンに掲載されたエロワ・ローラン氏の記事です。「危機の中の欧州。否認から解体へ?」というタイトルの通り、欧州は迫りくる危機の存在を必死に否認しているが、協働して対応しなきゃ解体しちゃいますぜ、と警鐘を鳴らしています。

グローバルな危機の中で自滅的な無気力から欧州連合を脱するためにはなにが必要なのか。欧州全体での2桁の失業率?ユーロ圏の分裂?東欧諸国の集団的破産?この三つの同時襲来?なにものも欧州の責任者達を動かすことはないようだ。彼らは万が一の際の共同行動の可能性を検討するために、危機の暴力的加速から6ヶ月も経った3月1日にサミットをなおいやいや召集したばかりである。もう少し現実的な議題を提案しよう。いかに欧州プロジェクトが粉砕するのを避けるべきか?行き過ぎだろうか?警鐘家みたいだろうか?次の三つの事実を考えよう。欧州連合とユーロ圏は-ほとんど信じられないことに-今日では米国以上に深刻な景気後退に落ち込んでいる。単一通貨は崩壊を迫られている。欧州拡大は断絶に接している。

第一に大西洋の両岸の景況の信じがたい交代ぶりだ。2008年第4四半期は世界中の経済にとっての殺し屋みたいだった。米国が年率で3,8%の成長の低下を記録したことに欧州ではひどく心を動かされたのだったが、欧州連合とユーロ圏は30%も悪くすることに成功した。米国が-1%に対して-1,5%である。

2008年の傾向の反転は仰天すべきものだ。第1四半期には欧州連合とユーロ圏よりも低いところから出発した米国は年末には1%の累積の成長の超過を記録したのである。このの開きの半分は最後の3ヶ月に広がった。

いかにこの破滅的なパフォーマンスとここ10年の欧州の経済政策の2つの傷とを関連づけるべきなのか?ちっぽけな輸出国のように自らをみなし、内需を無視して対外貿易に全幅の信頼をおいたドイツが実践した社会的ディスインフレーションは高くつく失敗だ。2008年の第4四半期にドイツの国内総生産は米国の2倍以上も後退した。それから果敢、頑固、かつ絶望的に盲目的な欧州中央銀行は2008年7月に金利を上げるという許しがたい誤りを犯して欧州の成長を犠牲にしたのだった。

IMFと欧州評議会の2009年の見通しはこの傾向を延長している。燃料をフル稼働した米国は破裂し、痙攣する欧州よりもダイナミックになるだろう。

しかし景況を超えて現在動揺しているのは欧州の基礎そのものである。グローバルな危機は実際に高い犠牲を払って得た2つの夢を損ないつつあるのだ。単一通貨と東方拡大だ。

公債の金利の開きはユーロ圏の一体性を脅かし、1990年代末の南北の断絶を再活性化している。ところで、悪の重力を信じないようにするためにこの危険な分裂に対する救済策が存在している。イタリア政府の提案にしたがって「ユーロの責務」といったものが創り出されることになるだろう。欧州中央銀行は金融市場をブロックすべく直接にギリシア、スペイン、アイルランドの公債を買収できるだろう。こうした解決に反対するものは日和見主義とエゴイズム-現在の文脈ではどちらも受け入れ不可能だが-を除けばないのだ。

第二の断絶は-長い間縮まると信じられたが-より深刻だ。欧州の西と東が新たに脱線しつつある。新しい加盟国は類稀なる暴力に起因する為替レートと貿易収支の危機の餌食になっている。ところでハンガリーやリトアニアを救うためにぐらつく欧州の連帯の枕もとに呼び出されているのはIMFである。いかに欧州連合はその統合が問題になっている時に二義的な役割に満足できるというのか。

1930年の危機と我々が目にしている危機の間の大きな違いは統合された強力な経済的欧州の存在である。これが国際協力の実験場となるはずなのだ。ところが反対に混乱、さらには対決の震央となってしまっている。グローバルな危機はこの解体に帰着するのだろうか。ひとつのことは確かである。もし欧州が危機を否定し続けるならば、危機は欧州を否定する結果となるだろう。

以上、個人的にはやや見飽きた観のある悲観シナリオですが、ローラン氏もこうした論調に加わったのかというある種の感慨があります。欧州連合の無気力への苛立ちが感じられる記事でした。ともかくオーストリアからはしばらく目が離せないですね。

追記

"Eastern crisis that could wreck the eurozone"[FT]

同じ問題についてのミュンヒャウ氏のFT記事。危機を嘆くだけでなく、一応具体策も記しています。

In my view, the smartest answer to the prospect of meltdown is the adoption of the euro as quickly as possible. There is no need to switch over tomorrow. All we need tomorrow is a credible and firm accession strategy – one for each country – which would include a firm membership date and a conversion rate, backed up by credible policies.

といった具合にユーロ圏の拡大を訴えています。そのために加盟条件を緩和せよと。ユーロ採用については政治的理由もあったりしてそう簡単に進まないような気がしますが、どうにもならなくなったらばあるいは雪崩を打ったようにユーロ・シールドの保護下に逃げ込む事態になり得るのかもしれません。

再追記

"Collapse in Eastern Europe? The rationale for a European Financial Stability" by Daniel Gros[VoxEU]

こちらは同様の問題を扱っていますが、金融危機を救うために欧州レベルのファンドを立ち上げろという提言をしています。

In this environment of continuing systemic stress on the banking system, the case-by-case approach at the national level must be abandoned in favour of an ambitious EU-wide approach. The EU should set up a massive European Financial Stability Fund (EFSF). Given the scale of the problem facing European banks, the fund would probably have to be of substantial scale, involving about 5% of EU GDP or around €500–700 billion.

で誰がファイナンスするのかという問題ですが、かわいそうなドイツ、ということになるのでしょうか。上の記事でローラン氏は批判してますが、そんな風に追い込んだのは誰なんですかねえと言いたくもなります。積極的に経済統合とユーロ推進の旗振りしていたのはドイツ自身だったりするのですけれどもね。

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コメント

 私が3年ほど前にフランスに行った時は,1ユーロが140円ほどでした。その後,一時160円台まで上がりましたが,ぐっと下がりましたね。
 アメリカが今後保護主義をとっていくと,どうなることでしょうか。

投稿: 一法律学徒 | 2009年2月26日 (木) 14時07分

ずいぶんユーロは高かったですねえ。個人的には本を買うのにいいですけれども(笑、そんなレベルの話ではないですね。さすがに欧州を見捨てる訳にはいかないでしょうから救援があるのでしょうけれども、あんまり明るい図は浮かびませんね。

投稿: mozu | 2009年2月26日 (木) 21時18分

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