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政治的なもの、革命的なもの

"Le G20 devra être politique selon Henri Guaino"[Les Echoes]

via French Politics

サルコジ大統領のスピーチライターのアンリ・ゲノー氏については以前エントリしましたが、氏によればG20は「技術的なもの」ではなく「政治的なもの」になるだろうとのこと。氏によれば「問題は我々のいる、今日危機にある世界から別の世界、他の規則をもつ組織された別のモードへと抜け出すべく心性、精神を発展させることである。心性、思考様式に断絶がなければならない」とのことです。むう、精神革命ですか。また「問題はG20が本質的に政治的なものなのか技術的なものなのかを知ることである。政治を行うこと、それは全世界に理解可能で、すべてを変革し、責任をとれるような強力な決定を下すことである」と言います。技術的な決定は現状のシステムの微調整に過ぎず、現状の規則や理念を侵犯する能力は本質的に危機にある世界に属している技術屋どもにはないのだ、政治家にのみこの神聖なる侵犯能力があるのだ!と、いかにも「政治的なもの」の復興を掲げるゲノー氏らしい発言ですが、なにを決定するかが問題な訳ですよね、決定することそれ自体よりも、違いますかね。すでに波乱の気配の漂うG20ですが、席上でサルコジ氏は、はあ?みたいな演説をまたしそうで少し楽しみです。

"Pierre Lellouche nommé «Monsieur Afghanistan et Pakistan»"[Liberation]

少し前のニュースですが、UMPの議員で議会のNATO委員会委員長のピエール・ルルーシュ氏がアフガニスタン、パキスタンの特命大使に指名されたとのことです。2008年末にアフガニスタンへのフランス軍の関与とNATO戦略について評価する仕事をしたことがある安全保障の専門家で「アフガニスタンにおけるNATOの戦略は失敗しつつある。NATOはアフガニスタンで勝利できない」と述べたとのことです。記事は「我々はNATOの納税者の血税にファイナンスされた地上で初めてのアヘン国家をつくりあげることに成功した」という発言も引用しています。大西洋主義者で親米派とされるけっこう有名な人ですね。ホルブルック氏の相手としてはこの人以外いないような気がしますが、さて、どうなるんだか。

"La "gauche de la gauche" part en ordre dispersé aux élections européennes"[Le Monde]

先日「左翼党」を立ち上げたジャン・リュック・メランション氏とフランス共産党のマリ・ジョルジュ・ビュッフェ氏による3月8日の「左翼戦線」結成に関する記事。「市民的蜂起」を呼びかけたメランション氏ですが、「我々は6月7日の選挙をリスボン条約とサルコジの自由主義政策への二重の国民投票とする。人民は声を上げるだろう」とのこと。CGTシュミノのディディエ氏、映画監督のロベール・ゲディギアン氏、作家のジェラール・モルディヤ氏の演説に続いて最も成功を博したのが反資本主義新党青年部のリーダーのクリスティアン・ピケ氏であったということです。同党の同盟の拒絶の決定にもかかわらず一部が左翼戦線に合流したようです。数ヶ月前にオリヴィエ・ブザンスノ氏が同盟を拒んだ訳ですが、この会合の数時間前に同党の政治評議会が左翼戦線との「不一致」を表明し、「欧州の条約を拒絶するという根拠のみで結集することはラディカルな要請に満たない」と宣言したとのことです。ブザンスノ氏は候補に立つことを望んでいないが、党の選挙人リストを提出する予定であるとのこと。IFOP調査によれば極左の支持率は16%に達すると言われ、今後、極左政党間の競争は激しくなると予想されます。現在、反資本主義新党が9%、左翼戦線が4%、労働者の闘争党が3%の支持を受けているとされます。というわけで極左の通弊に違わず、いわゆる大同的見地に立った同盟はなく、互いに敵視し合っているようです。それはいいことなのでしょう。

"Le « Nouveau parti anticapitaliste » ou le retour vers un passé qui ne passe pas"[Coulisses de Bruxelles ]

極右が落ち着いたと思ったら今度は極左かよというのが正直なところですが、反資本主新党が10%近い支持率を獲得した事態を前にしてカトルメール氏が真面目に警告を発しています。大衆的人気ではサルコジ氏のライヴァルにまで祭り上げられているとっても感じのいい革命的郵便配達夫オリヴィエ・ブザンスノ氏ですが、彼がどれほど感じがよくとも反資本主義新党はレーニン主義的な革命政党であり、エコロジーやフェミニズムといった今風なアジェンダはこの点を覆い隠すものだ。ソ連や中国とは無関係だと言い張ったとしてもこれは1917年への回帰である。以下、同党の綱領を検討しています。

(1)欧州憲法、欧州中央銀行、OECD、IMF、世界銀行、WTO、NATOの否定。フランスの革命の後、全世界に反資本主義の波が及ぶとされる。

(2)民主主義の否定。左翼戦線を否定したようにいかなる妥協的連合もしない。「階級支配は改革の道によっては根絶できない」。暴力による革命も否定していないことになる。

(3)全体主義。生産手段の私的所有の否定、金融システム、サービス業に対する人民の支配。人民とは実際には国家でしかない。人民の善のための文化の革命。明瞭に語っていないが現在の政治的、法的秩序の打倒は論理必然的であり、反対意見に対して不寛容な体制になるだろう。

反資本主義新党に投票するとは社会党への抗議や社会党を左傾化させることを意味しない。反民主主義的、反欧州的な革命政党に投票すること、前世紀の亡霊たる共産主義に投票することを意味するのだ。といった具合に同党の危険性を警告しています。今時まさかと思われるかもしれませんが、綱領その他を読む限り、これまでの動きを見ている限りは、この人々は本気ですね。左翼戦線が成立しなかったことやブザンスノ氏個人の人気が必ずしも同党への人気につながらないという話を考えても、社会党不満層やエコな人々や極右支持層の一部も取り込んで今度の欧州議会選で躍進し、国際メディア的にも注目されることになるのかもしれません。もっともフランスおよび欧州政治の不安定の象徴となったとしても彼らの革命とやらが成就することはないでしょうが、日本でも勘違いした人々が騒いだりするのでしょうかねえ。

[本日の一曲]

佐藤千夜子『ゴンドラの唄』(1915年大正4年)

http://www.youtube.com/watch?v=hQp1RTjfiVU&feature=related

革命前のまだ浪漫的なロシア幻想ということで、ツルゲーネフ『その前夜』の劇中歌。この人の時に投げやりにも聞こえる歌い方はわりと壷です。

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