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連合って不便ですよね

あちらもこちらも騒々しいですが、おかげさまでごく平穏な日々です。そう言えば、この間、金銭を代償にして他人に髪を切らせました。少し寒いです。以下、欧州関連記事のクリップです。

"L'Union pour la Méditerranée subit un coup d'arrêt depuis la guerre de Gaza"[Le Monde]

地中海連合が「制度的に機能停止」している件についてのル・モンド記事。サルコジ大統領の肝いりでアラブと地中海の43カ国を集めるこの広域連合組織が華々しくスタートした件については以前エントリしましたが、半ば予想通りイスラエルのガザ侵攻を受けて頓挫している模様です。イスラエルと同席することをアラブ諸国が拒否しているために4月以降開催される予定だった会合の見通しが立っていないとのことです。例えば、エジプト政府が地中海連合の停止を公的に求めているとされます。エジプト人はアラブ諸国の中で複雑な位置に置かれている、地中海連合で重要な役割を果たすエジプトを守らないといけない、というフランス側のコメントが引用されています。またアルジェリアは「我々は連合のメンバーだが、連合は進捗しないだろう」という冷ややかな見解を示している模様、リビアは「地中海連合はイスラエルの爆弾によって殺された」と発言、シリアも停止の方向に動いているとされます。他方、欧州との関係を強化したいモロッコは連合の進展を望んでいるといいます。理事会のポストをめぐる角逐もあるようで、43カ国も集めれば、そりゃなかなかうまくいかないですよ。さっそく企画倒れの匂いが濃厚に漂ってきていますが、まあ長い目で観察することにします。

"France to send envoy to Iran for nuclear talks"[Haaretz]

フランス政府がジェラール・アルノー氏をイランに派遣したとハアレツが報じています。それでこのアルノー氏ですが、

The French official to be tapped by President Nicolas Sarkozy to meet with the Iranians is Gerard Araud, who holds the title of political and security director-general of the French foreign ministry. Araud has been France's point man in the six-power talks - which include the five permanent members of the Security Council plus Germany - with Iran. Two years ago, he concluded a stint as Paris' ambassador to Israel. Two weeks ago, Araud called on the U.S. to expedite the formulation of its policy of dialogue with Iran. Washington ought to take a "one-time shot" at talks with Iran, Araud said.[....]"The French do not anticipate any extraordinary results from this visit," the diplomatic source said. "But they want to take part in preparing the groundwork for dialogue between the West and Iran."

といった人物です。フランスの対イラン戦略についてオバマ政権との間で齟齬が見られることは前からハアレツが報じていました。さすがに敏感ですね。修辞のレベルでは時に挑発的に振舞ったりしていますが、基本路線にそれほど大きな変更はないように見えます。こうした動きそのものはごく合理的だと思いますが、勿論イスラエルからすれば不満でしょう。

"Sarozy's talent for reinvention"[BBC]

BBCの記者によるサルコジ大統領の印象論。私は内務大臣になる前から眺めてきましたが、あのキャラクター-今日の俺は昨日の俺と違うんだぜとでも言いたげな-は変わってないですね。ともかく由来の知れない異様なエネルギーはありますし、政治玄人の爺さん大統領に飽きた国民の多くがそうした徳を欲していたし、こうした劇的な展開を前にして今も欲しているということなんでしょう。記者さんの言う予測不能性に関しては、大統領本人よりも取り巻き達の方を見たほうがいいんじゃないでしょうかね。

"EU consensus to tackle crisis"[BBC]

日曜のブリュッセルの緊急EUサミットに関してフランスの保護主義的な動きに対する牽制と東欧救援要請の拒絶の二点についてまとめたBBCの記事。前者については、連合内に動揺をもたらしたサルコジ氏の自国の自動車産業保護の訴えが却下され、自由で公正な共通市場の維持が確認されたとのことです。発言を否定するサルコジ氏ですが、アメリカが保護主義に走ったら欧州もそうするだろうと嘯いているようです、それで後者が問題です。ハンガリーによる東欧経済救済要請が拒絶された訳ですが、メルケル首相の各国で事情が違うからという発言が引用されています。他方、バローゾ委員長は不良債権処理の枠組みに関する協定が結ばれた点や中東欧への資金援助がなされている点を強調したとのことです。具体的には以下、

He said 7bn euros of structural funds would go to the new member states his year, including 2.5bn for Poland. Another 8.5bn euros from the European Investment Bank would help small and medium-sized firms in the region this year, he said.

"EU Rejects a Rescue of Flatering East Europe"[WSJ]

こちらは東欧の救援要請拒否に関するWSJの記事です。概括的ですが、こちらのほうが少し情報量が多いです。今回のサミットを象徴するかのように引用されているハンガリー首相の「新しい鉄のカーテン」発言やユーロ圏の拡大の要請についても触れています。ポイントは中東欧と言っても一枚岩ではなく状況がましな国は救援を受けることでイメージが悪くなることを恐れているという点でしょうか。ポーランド首相の発言は以下、

"Our position is that we must differentiate between countries that are in difficulties and those that are not," Polish Finance Minister Jacek Rostowski said. Poland, which benefited from years of healthy economic growth, is in better shape that some of its more-indebted neighbors. But it has seen a substantial fall in the value of its currency as investors scramble out of the region.

これに対して西欧諸国は他のどこかから借りたらといった冷ややかな態度であったとしています。こちらも深刻な景況悪化に直面して新たに東欧救済の件で国民を説得するのは困難だと。動こうとしない欧州連合に代わってIMFや他の国際機関の役割が重要になるだろうとしています。おーい。以下、各国の状況について概観しています。ポイントはやはりドイツですが、記事では、

Most critical was the cold shoulder from Germany, which, as Europe's largest economy and the one with most access to borrowing, would play the largest role in financing any aid. Germany, the EU's strongest economy, is unwilling to unwind its own fiscal discipline to pay for the spending excesses of others. Admitting countries with weaker finances could hurt the strength of the euro or push up inflation across the euro zone.

と書かれています。あの頑固な財務大臣がちゃんと役割を果たすと述べたという報を読んだ記憶があるのですが、ぎりぎりまで踏みとどまるようです。まあ気持ちは判りますけれどもねえ。ともかく欧州の東と西の間の心理的距離はモーゼの海割りの跡のごとく広がっているようです。

南無南無。ではでは。

追記

半ばボケて書きましたが、景況も財政状況もばらつきがありますし、中東欧と言っても一枚岩ではない訳で必ずしもハンガリー案が正しいアプローチとは限らないように思えます。東と西の二元図式よりも状況はもう少し複雑なようです。メルケル氏を支持する訳ではないですが。

再追記

"Emergency eurozone aid signalled"[FT]

こちらはメディアの反響の大きさを見て火消しのために書かれたような記事ですね。アルムニア氏がユーロ圏で困難に陥った国には支援がある点を強調しています。またこのたびのハンガリー案却下については

At an EU summit on Sunday called to discuss the crisis, it was not the bloc’s western European countries but several central and eastern states that had spoken most loudly against a Hungarian proposal for a €180bn ($226bn, £161bn) financial aid plan for the region, Mr Almunia said. “When someone says, ‘Give me a plan for the region’, I say, ‘It’s not a question of a plan, but of analysis, of monitoring, case by case, problem by problem’.”

といった具合に西欧諸国でなく中東欧諸国のほうがハンガリー案に反対だったのだと主張しています。また先日のシュタインブリュック財務大臣のユーロ圏支援の発言も想起し、ドイツのエゴイズム批判に反論しています。欧州連合の外交官によれば救済の法的根拠は第100条の

This states that “where a member state is in difficulties or is seriously threatened with severe difficulties caused by natural disasters or exceptional occurrences beyond its control”, EU governments “may grant, under certain conditions, community financial assistance to the member state concerned”.

に基づくとされます。金融危機、経済危機はexceptional occurrences beyond its controlの文言に関わる訳ですね。最後に氏はユーロ圏の崩壊はあり得ないと断言されています。まあ、その確率そのものは低いだろうと思いますけれども・・・、当面は戦力の逐次投入を続ける他ないのでしょうかね。

[本日の一曲]

http://www.youtube.com/watch?v=7SwC-S2aR3M&NR=1

灰田勝彦『アルプスの牧場』(1951年/昭和26年)

この年齢でこの声はすごいと思います。

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コメント

信用危機はEUの問題点を露呈させたと思っています。EUとは領主を持たない城塞都市と見ています。余り論じられていませんが、EU の周囲には保護主義の、高い牆壁が廻らされているからです。牆壁の内部は幾つもの自治地域に分かれており、運営は自治体の代表者による合議制組織によって為されている。
この組織は、対外的には利害の一致が比較的得易い利点があるが、自治体間の経済格差、資本提供、経済振興などの問題解決には、利害得失が背反し、合意が難行する弱点を有しています。其れでも城塞内の構成人員が少ない場合には、妥協の余地も多くあると思いますが、此処まで大きくなり、多種多様の自治体構成となると、中々一致するのは難しいと思います。
組織の分散・統合の変遷を閲すると、そろそろ領主が出現して城塞内の統合を計る必要があるのかも知れません。

投稿: chengguang | 2009年3月 3日 (火) 19時03分

ああ、中世的な比喩は判りやすいですね。おっしゃるように現状、自治体間の紛糾ばかりが激しくなっていますが統合(漠然とした概念ですが)を進める必要性は強くなっているとも言えると思います。ただ歴史に根ざした自治意識が強過ぎて、強い領主の登場が歓迎されるのかどうか。なにしろカールの帝国の崩壊以来、何人も挑戦したにもかかわらず、結局、頭をもったためしのない地域ですから。領主をやる気まんまんの人物は約一名知っていますが。

投稿: mozu | 2009年3月 4日 (水) 12時59分

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