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NATO軍事機構への完全復帰をめぐる論争(2)

前回はフランソワ・バイル氏の反対論のインタビューでしたが、今回は推進派のテルトレ氏のル・モンド寄稿記事です。氏は戦略研究財団のチーフ研究者ということです。反対論に対して逐一反論しつつ完全復帰のメリットを説いています。戦略系の人ということもあって論調に理念性は薄いですね。

"La France dans l'OTAN : le mauvais procès" par Bruno Tertrais[Le Monde]

NATO軍事機構への再統合によってまさにフランスがなそうとしている賭けについて自問することは不当なことではない。パリは欧州防衛の構築を通じて大西洋同盟を弱体化させようとしているのではと疑っている我々の同盟国との信頼を再建することを望んでいる。かくして我々は自らの善意を示し、NATOと補完的な欧州軍事計画を再始動するのによりよい立場に置かれるのだ。

NATOと欧州連合の一致が強くなっただけに議論は有意義である。今日では両者のメンバーは21ヶ国は下らない。しかしこれは弾が一発だけ込められた銃だ。カードは上手く使われないといけない。他方、我々の最良の士官が欧州の慎ましいポストよりもNATOの高官のほうに魅力を感じるのではないかと恐れられる可能性もある。そこでいくつかの問いを理解する必要がある。

しかし、我々は事実上アメリカの旗の下に身を置く事になるのではとか外交的駆引きの自由や独立権力としての我々のイメージを失うことになるではといった議論は根拠のあるものではない。我々はもはやアメリカの政策に反対できなくなるとかワシントンの対外的冒険への参加要請に反対できなくなるとか述べることにも意味がない。同盟内部の決定はコンセンサスによってなされるのであり、欧州の我々の同盟国は我々と同様にこの規則に従うのだ。各国は共通の作戦への軍事的貢献について主のままである。

復帰に反対する人々はしばしば本質的な点を忘れてしまう。すなわち、独自の核抑止能力をフランスが保持しているという点であり、この地位は復帰によっていかなる影響も受けないのだ。この能力によって我々は我々の生存が他者に依存しないと主張すること、それが正しい場合にはアメリカの政策を批判することができるのだ。こうしたラインの作り手は2003年のイラクへの米国の介入へのフランスの熱烈な反対には好意的ではなかった。しかし我々が抑止に与える戦略的独立性はこうした選択をすることを可能にするのだ(ドイツは作戦への参加を拒否したが、ワシントンへの活発な反対派のリーダーではなかっただろう)。

無視できないチャンス

時代を間違えるべきではない。ド・ゴール将軍は統合軍事機構からの脱退のみが我々の完全な主権の回復を可能にすると考えたが、それは1960年代にはフランスに米軍の強力なプレザンスがあったからなのだ。ところでワシントンにはフランス領土への軍隊の再配置を要求する意図も理由もないのだ。

大西洋同盟に復帰することで「西洋側」に閉じ込められるという感情を与えるリスクを冒すことになるのだといった話を聞くと当惑してしまう。この議論を進める人々は彼らのロジックの極限まで進み、NATO脱退を提案するべきだろう!しかし、とりわけ、この議論は政治的現実を勘定に入れていない。中東、アフリカ、アジア、南米で重要になるのは大西洋機構におけるフランスの地位ではなく対米政策と共通作戦への有効な参加なのだ。アフガンやパキスタンのイスラミスト運動のリーダーたちと関連してこの主題を取り上げた者は誰でもNATOの煩瑣な制度の話は彼らの理解を超えていることを知っている。彼らにとって重要なのはフランスがアフガニスタンでなにをするのか、フランスが米国の同盟国かどうか知ることだけなのだ。

それに大西洋同盟は西洋一家の排他的な代表たる野心を持たない。ワシントン条約(1949)には「西洋」にいかなる参照も含んでいない。そして同盟は西洋起源の共通価値によって互いに結ばれた諸国の一家を代表するが、例えばイスラーム世界とと対立するものではまったくない。トルコが57年間メンバーであることを想起すべきだろうか。それからNATOの3つの大規模な作戦―ボスニア、コソヴォ、アフガニスタン―が大部分ムスリムの人民に擁護され、支持されたことを想起すべきだろうか。

最後に復帰するがゆえに我々の声が小さくなると述べることは誤りに帰着する。大西洋同盟の内部で我々の声はむしろ大きくなるだろう。我々は国益を擁護するのによりよい位置に置かれることになるのだ。NATO軍事機構の中に多くのフランス人士官が入ることで防衛と安全保障に関して我々の概念がいっそう考慮されることが保証されるだろう。同盟が新たな戦略概念にまさに着手しようとしているその時にこうした作業においてフランスの重みが増大することは無視できないチャンスとなるだろう。

以上、フランスの独自性は失われないし、戦略的自立性は維持できる、西洋陣営に閉じ込められるというのは根拠のない危惧である、NATOの戦略構築への参加はフランスの声を反映させるチャンスである、という主張です。全般に合理的な意見であると思われますが、いくら言葉で否定してもNATOが西洋同盟として映るというパーセプション上の問題はあるでしょうね。それがいいことなのか悪いことなのかは別にして。

追記

「全般的に合理的」と書きましたが、「NATOと補完的な欧州防衛」のあり方がよく見えてこないので必ずしもすっきりした印象を与える訳ではないですね。

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