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憧れの杜氏たち

まとまったことは書けそうもないので記事のクリップを続けます。

"Communist party surges as Japan's economy withers" by Eric Talmadge[WaPo]

APのタルマジ記者による日本共産党の近況報告。不況とともに、特に若年層の間で、人気がそれなりに集まりつつあること、志位氏がメディアで人気者であること、党勢は国政では弱体であるが地方では強いこと、全般に政界が保守化している中にあってチェック&バランスを果たす機能を果たしていることなどが書かれています。日本の政界をウォッチする上で特筆すべき存在なのかどうかは別にして、また資本論や蟹工船の漫画とかはネタとして微笑むだけにしておくとして、だいたいそんな感じなのでしょう。似たような趣旨のわりと好意的な記事としてはタイムのコレがあります。冷戦崩壊の影響をそれほど受けずに先進国では最大級の共産党が日本に残っているという現象はやはりなにか不思議に見えるのでしょうね。他の国ならば別のものが手当てしているような層がいて日本では「土着化した」共産党がその役割の一端を担っているということなんでしょう。党勢回復はあっても躍進とまではいかないのではないでしょうかね。

"The conservatives undaunted"[Observing Japan]

日本はミドル・パワー路線でいくべきであり、「保守」は危険であるというのがハリス氏の基本的なスタンスですが、安倍元首相のワシントンでのスピーチと中川氏の核の議論の必要性に関する発言をとりあげています。とりわけ中川氏の発言に関しては公論において感情的な反発ではなく理性的な批判が必要だとだいぶ懸念しているようです。心配せずとも、政治的ハードルが高すぎる独自核については「現状では」現実的でない選択であることはよく理解されている話だと思われます。ちなみにテレグラフがこの件で軽く煽っていました。えーと、憲法9条で禁止されている訳ではないんですよ。

引っかかるのはハリス氏の言う憲法改正と「保守」の関係です。氏の言説では憲法改正は「保守」のアジェンダとされているのですが、それは正確ではないでしょう。「保守」でない改憲論者というのもいる訳ですし、9条問題にオブセッションを抱いている人ばかりでもない。また憲法改正とミドル・パワーも別の話でしょう。憲法論と国家戦略論は別の問題であってミドル・パワーを標榜する改憲論の立場だってあり得る訳ですから。とはいえビッグとかミドルとかスモールと言っても結局、自己イメージをどう持つのかとか国外向けのブランド戦術の話でしかないようにも思えてきます。それが重要ではないとは思いませんが、漠たる話に感じられます。

"Integrity needed in journalism"[Japan Times]

"Shukan Shincho's responsibility"[Japan Times]

ジャパン・タイムズの社説二本ですが、それぞれ講談社と週刊新潮の問題を扱っています。精神科医がクライアントの個人情報を提供したとされる事件と朝日新聞襲撃に関する例の記事の話です。内容は日本語圏で報じられている通りですが、ここで述べていることを自ら実行することをジャパン・タイムズには求めます。なおこの件で擁護する気はさらさらないですが、週間新潮の話には微妙な感想を持ちます。必ずしも週刊誌の良い読者ではないですが、ろくでもない記事に塗れつつもそこにジャーナリズムの場所があるのもまた事実であってそこまで一緒に萎縮するようだと困るなという思いもするからです。ただ今の週刊誌の形式がなにかずれている感じはあります。遠くない将来に再編されるのでしょう。

"Manifesto of a Comic-Book Rebel"[NYT]

劇画の生みの親とされる辰巳ヨシヒロ氏の『劇画漂流』の英訳版の紹介記事ですが、漫画史に占める劇画の位置について基本的な説明がなされています。ふむふむと読んだのですが、最後で躓きました。村上春樹って・・・あるいはこの意外な連想になにかを読み取るべきなのかもしれません。話を戻すと、藤子不二夫の『まんが道』にも似た自伝ですが、戦後の風俗史としても面白いのでおすすめしておきます。ところでフランス語訳は知っていましたが、辰巳氏は各国語に訳されているのですね。社会派漫画みたいな受け止めなんでしょうか。漫画についてあまり偏ったイメージになるのも困りますから訳者に敬意を表しておきます。歴史的なパースペクティヴが得られるような地味な作業はひっそりと進行しているようです。

"Japanese whisky leaves traditionalists on the rocks"[Guardian]

中学生の頃には杜氏は憧れの職業でした。今も酒造りの人々には敬意を抱いています。ニッカの余市とサントリーの響が昨年のウィスキーのワールドコンテストで優勝し、英国進出を目指しているというマッカリーさんの記事です。竹鶴政孝とスコットランド人の妻リタによる日本におけるウィスキー史のはじまりにも記事の最後で簡単に触れています。竹鶴についてはこのサイトで概要がつかめます。かなりの情熱家のようですね。いい顔をしている。

"Although some Japanese people are the last to believe in the quality of their own products, their malt whiskies are as good as any in the world," said Chris Bunting, an expatriate Yorkshireman who blogs about the country's whisky at Nonjatta.

とバンティングさんも言っておられますが、ニッカのウヰスキーは美味いと思います。余市よいとこ一度は行くべし

2009年4月20日・4月21日[ムネオ日記]

先日の谷内氏の3.5島発言は不可解で理解し難いです。国内世論向けの観測気球のつもりなのかとも思ったのですが、先に手の内を明かすメリットがよく見えません。この問題で内閣と外務省は統一的に行動しているのでしょうかね。

バルチック艦隊司令長官の手紙 ロシアで発見[朝日]

もうひとつの日露戦争 新発見・バルチック艦隊提督の手紙から [著]コンスタンチン・サルキソフ[朝日]

コメント欄で教えていただいたのですが、サルキソフ氏が発見したロジェストウェンスキー中将の書簡と書籍についての一昨年前の記事です。この話見逃していました。司馬遼太郎の描いた提督像とは大きく違い、日本海海戦の敗北を冷徹に予測していた将であることが書簡からは分るといいます。「坂の上の雲」を読んだのはずいぶん前の話なのでそこで中将がどう描かれていたのか具体的な記憶に乏しいですが、愚将のイメージは確かに残っています。いつかこの本には目を通さないといけないですね。ネットソースでは子孫も加わった日露戦争百周年会議に参加された方の記した文章がありましたが、軍人さん同士の心の連帯が感じられます。日露戦争はいろいろな意味で本当にすごい戦争ですが、集合的な記憶からはだいぶ抜け落ちてしまってますね。90年代には1930年代にリアリティーを感じることが多かったのですが、今はこの時代のほうにリアリティーを感じることが多いのは不思議な話です。論壇もこっちのほうに目を向けるべきではないでしょうかね。激しくレベルは違いますが、この時代と同じことを言っているだけのような気もするんですよね。

[本日の一曲]

http://www.youtube.com/watch?v=M4O1di7fmW8&feature=related

沢田研二『時の過ぎ行くままに』(1975年昭和50年)

研二サイコ-。

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コメント

ハリス氏のここ最近の何本かの投稿には多少ズレを感じますね。で、ぼくも何か書こうとおもったんですが、まだ、関連投稿があるようなのでもう少し様子見です。
民主党、あるいは中国よりで、保守の一部を異様に警戒しすぎていますね。あの感覚はどこからきているのかな、と頭をかしげます。麻生氏の価値外交にアメリカのネオコンを読み込んで恐怖しているのか、また、安倍氏に対してはなんか私怨でもあるのか、とさえ思う。両者ともそれほど過剰反応するほどのものではなかろうにとおもうけど、両者の主張の日本の政治での位置付けに狂いがあるのかな、とも思います。
中川氏の件に関してもしかりですね。
麻生氏の価値外交に関しては誤読、また、こうした保守の日本の政治での位置付け、あるいは日本の政治の全体の傾向についての誤解があるのではないか、という印象です。
もちろんこうした一部の保守は、その発言の波紋まで考慮すべきでしょうが、これだけ反応してくれるなら、波紋まで考えてうまい使い道があるのではないか、とも思いますね。


投稿: | 2009年4月22日 (水) 22時53分

米国の対中タカ派への警戒心と日本の「保守」-氏の呼称は普通とかなりずれているようです-への根拠のない恐れが綯い交ぜになって分析を狂わせていると思います。日本のタカ派と米国のタカ派は全然考えていることが違うのにダブってしまうようですね。日本では中国と戦争する気なんてはじめからない訳です。憲法が改正されようがされまいが。極端な論壇人を別にすれば。

それから「19世紀的なもの」-欧州的な権力政治-への嫌悪というのがもともとありますね。これは米国人では珍しくもない世界観ですが、東アジアにそのまま持ち込まれるとかえって危ないと思うんですよね。今、近代化の途上や端緒にある国々が多い訳ですから。もっと時空の混在するような多元的な世界観でないと対応できないと思います。

ミドルパワー云々はサミュエルズ教授の類型論の影響かもしれませんが、これも日本の議論とは微妙にずれているのですから仕方ありません。

以前からの傾向ですが、しばらく前からくっきりと顕在化するようになりましたね。なにか個人的にきっかけがあったのかもしれません。

国内のタブーに風穴をあけたいというような意識は分りますが、核については政治家は発言に気をつけたほうがいいと思います。議論するなという意味ではなくて国外の反響を意識しないといけない。国際的には既に潜在的核保有国のステータスですから。

投稿: mozu | 2009年4月22日 (水) 23時29分

日本では中国と戦争する気なんてはじめからない訳です

ここらへん、戦中の日本が世界制覇を企てているといったプロパガンダが未だに浸透でもしているのか、とさえ思うことがありますね。昔、世界制覇への野心もなければ、現在も中国と戦争する気、というのをどこから読み取っているのか不思議でならない。


「19世紀的なもの」

というような見方をするんですよね。あそこらへんぼくらからするとよおわからんところです。逆に米国の方が、洗練されてはいますけど、19世紀的な発想でしょう。
クリントン氏が価値外交をやめた、というのも見方を変えれば、従前通り、専制君主で、民衆を抑圧していてもアメリカの邪魔にならない、もしくは有益であれば、積極的に利用させていただく、という古い手法といえなくもない。
麻生さんの真意はわかりませんが、しかし、あれは、例えば、別に強引に民主主義を押し付けようという意図もなく、民主主義を推進しようという勢力はお手伝いしますよ、程度というのが、日本人の一般の読者の解釈ではないでしょうか?


ハリス氏のソースは日本語なので事実のうえで、トンデモ論というのはあまりないし、同意できるところも多いとも思うのですが、なにか、立ち位置というのがわかりにくいのと、個々の政治発言の日本全体での位置付けというものに違和感がありますね。どんな政治評論も政治活動の一部というべきなのかもしれませんが、活動の方を特に意識されているのかしら?と思わせるものがありますね。

投稿: | 2009年4月22日 (水) 23時56分

米国の理想主義外交の欺瞞というのはさんざん言い尽くされてきたことですけれども、空さんがおっしゃるように現実主義にシフトしたら19世紀的になっちゃいますよね(微笑 まあ両者のバランスみたいな結論に落ち着く話なのかもしれませんが。それから米国の戦略家や外交評論家はよく言いますけれども、21世紀ってなんなんでしょうね。

ただなんといいますか、こういうのはいわゆる「米国の苦悩」に属している問題であって日本に投影すると認識がずれると思うんですよね。自由と繁栄の弧とか価値観外交とか麻生氏が言ったからと言って別に日本がメシアニズムに燃えている訳でもないですから。中国とも普通に外交しているし。日本外交が本質的にリアリズムなんてことは分っているでしょうに。

「保守」へのオブセッションを別にすれば、国内政局分析はそんなに狂いはないですし、奥村さんのところと合わせれば日本語のできない記者さん達にとって有用だろうと思います。そういう意味で日本政治に関する英語圏の言説のクオリティーを底上げしているところがあるので感謝するような気持ちもありますが、別の立場にたつレベルの高い英語圏のブロガーが他に登場すると視点が複数化していいですね。

投稿: mozu | 2009年4月23日 (木) 00時22分

理想主義的、道義的なレトリックというのがうまい。日本の政治家もあれは見習った方がいい。
麻生さんなんかその点を意識したのかもしれませんが、ネオコン的と誤解されたようですね。

また、やっていることとズレがあるわけですけど、アメリカでもそうした発言と行為のズレがあるわけですから、やはり、日本の政治家の発言にしてもそこいらへん読み込んでくれてもよさそうなんですがね。

投稿: | 2009年4月23日 (木) 00時54分

ステレオタイプと違って日本の政治家は本音と建前の使い分けが下手ですね。芝居が下手というのか。おっしゃるとおり、米国とは反対に日本の場合はもう少し偽善的になるぐらいでちょうどいいと思います。

投稿: mozu | 2009年4月23日 (木) 05時13分

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