« ブルカをめぐる熱い論争(1) | トップページ | ブルカをめぐる熱い論争(3) »

ブルカをめぐる熱い論争(2)

で、ブルカの続きです。共和国の原理の護持派と文化的多様性の護持派の間で様々な意見が表明されているようですが、今のところは特に個人的には目新しい意見は目にしないかなといった感想です。ここのところやや忙しくて十分にフォローできているのかどうか分りませんけれども。ちなみにスカーフの頃に比べると後者の声が弱いような印象を受けます。それからこの大変な時期にこんな超少数派(せいぜい数千人、500万のムスリム人口比では取るに足らない数字)の問題で騒ぐのはうんざりだという感想を目にしますね。同感です。

今回の議論をざっと眺めていて気付くのはライシテの議論から女性の人権の議論に強調点が移動している点です。その点ではオランダなどの議論に近づいている印象を受けます。学校内での宗教的象徴の禁止とは違って公的空間全域でのライシテとなると、公的なものと私的なものの境界線の問題に直面し、合理的に推論するならば、例えばカトリックやユダヤ教の衣服までが問題化される可能性もなくはないでしょうから-実際、革命の際に司祭服が禁じられたことがありますが-フェミニズムの問題として提示するのが「賢い」のかもしれません。公的秩序概念とセットにして男女平等で攻めれば、法案は合憲になると考える法学者もいるようです。

それでどちらと言えば私が気になるのは具体的な政治的な動きのほうなので今回はそちらについて書いておきます。私にまだ見えないのが大統領側と例の調査委員会の距離です。学校スカーフの時にはシラク大統領は勧告を出したスタジ委員会に非常に距離が近かったのですが、サルコジ大統領が本気でブルカ禁止を法制化したいのかどうかにはまだやや疑問が残ります。大統領演説では強い言葉で批判した訳ですけれども、誰があの演説を書いたのかはだいたい想像できる。確かにサルコジ氏は内務相の時代から郊外の暴れん坊達と喧嘩してきた経歴を持つ人物ですが、本人は必ずしもごりごりの共和主義者という訳ではないと思うのですね。移民や外国人に関する問題についてむしろ彼らからはこの英米かぶれめと言われそうな見方を持っているところもあったりする。

まあ、どんな主義者なんだか少々不明な大統領は置いておいて、このたび立ち上がった超党派の32人の委員会に話を移すと、前に書いたようにこの調査委員会を主導しているのは共産党のアンドレ・ゲラン議員です。ローヌ県の議員さんですが、ずっとイスラムの過激派との戦いをしている人です。右派とも連帯して行動するせいか共産党内部では微妙な位置にあるようです。その他の経歴を見ると組合運動を指導したりといかにも立派な共産主義者です。過激な政治的イスラム主義との戦いそのものはもちろん正当化されると思いますが、私の目からは時にパライノイア的なすれすれの修辞を使っているようにも見えますね。

以下、ゲラン議員のブログにあった決議提案文の中のモチーフを説明している箇所の訳です。内容は①ライシテの来歴とその意義、②女性の人権への脅威の訴えから成っています。この提案文には89人の議員の署名がついています。かなり突貫訳なので変なところもあるかもしれません。気づいたら修正していきます。

Proposition de résolution n°1725 de André Gerin pour une commission d'enquête sur le port de la burqa

皆さん、1789年の人間と市民の権利の宣言は「何人も、その意見の表明が法律によって定められた公の秩序を乱さない限り、たとえ宗教上のものであっても、その意見について不安を持たないようにされなければならない」と定めています。

かくして我々の社会組織と我々の集合的歴史を構成するライシテの原理が誕生しました。

教会と国家を分離する1905年12月9日法は我々の制度にこれを根付かせました。信教の自由な実践は認められていますが、市民性と宗教的帰属の分離が確認されています。いかなる宗教といえどもその諸原則を社会の組織的規範として押し付けてはならないことになります。

1946年憲法以来、ライシテの原則は憲法的な価値を獲得しています。

第5共和国憲法第1条はこれを再びとりあげ、規定しています。

「フランスは世俗的(laique)、民主的、社会的な不可分なる共和国である。フランスは出自、人種、宗教の差別なく全市民の法の下の平等を保証する。フランスはすべての信仰を尊重する。」

この世俗的な枠組みは自閉的な、さらには互いに排除し合うような共同体のモザイクに押し込めるのではなく同じ領土の上で同じ信念を共有しない男女が共存する可能性と手段を提供するものなのです。

この意味においてライシテとはすべての者を社会へと統合するのです。ライシテは固有のアイデンティティーの権利の承認、個人の信念の尊重と社会的絆の間の均衡を創り出します。

国民的一体性、共和国の中立性、多様性の承認を強化することによって、ライシテは、伝統的な諸々の共同体を超えて、共通の価値に基づくひとつ運命共同体、共生の意志と欲望を基礎付けるものなのです。

それは共和国と市民に権利と義務をもたらすのです。ライシテが脅かされる時、フランス社会はその一体性、その共通運命を提示する能力において脅かされるのです。

歴史を通じて諸法がライシテの原理の法的確認を表明してきました。ライシテが危機にある時にこうした法律が必要であったのです。これに関して我々は明晰な証拠を示さなければなりません。

かくして児童が学校施設内で自らの宗教的帰属を誇示的に表明するための徴ないし衣服の着用を禁止する2004年3月15日の2004-228法にまでいたりました。

この法は2003年12月11日に共和国大統領ジャック・シラクによって委任されたライシテの原理の適用に関する「スタジ委員会」と呼ばれる熟慮の委員会の報告と勧告の延長上に位置付けられます。

我々は今日都市の街区においてまさに動く監獄に身体と頭部を完全に覆い、押し込めるブルカ、そして目のみを表に出すニカブを着用するムスリム女性達に直面しています。

イスラムのスカーフは宗教への帰属の明白な徴をなしていましたが、ここで我々はこうした実践の極端な段階を前にしているのです。

これは誇示的な宗教的表明のみならず女性の尊厳、女性性の表明に対する攻撃であります。

ブルカないしニカブを纏うことで女性は閉鎖、排除、屈辱の状態に置かれます。その存在すら否定されるのです。

これがイラン、アフガニスタン、サウジアラビアないし他のアラブ諸国からやって来る時、この囚われの女性達の光景は既に耐えられないものであります。こうした光景はフランス共和国の国土においては完全に受け入れられません。

さらにこうした衣服の着用に夫への、家族の男達への従属、市民性の否定が付け加わることを我々は知っています。

反白人、反フランス人種主義、反西洋観念の攻撃に基づいて姦通を犯した妻達への体罰に賛成した2004年4月のイマーム・ブジアヌの信仰表明を想起しなくてはなりません。

国務院は2008年6月27日の判決において政府が婚姻によるフランス国籍の獲得を拒否した(民法21条2、21条4)外国籍の人物のケースについて決定しなけければなりませんでした。関係者はその宗教のラディカルな実践の名においてフランス共同体、とりわけ男女平等の原則と両立しない社会行為をとったと考えらました。

国務院は申請者が民法が提示する同化の条件を満たしていないと結論づけました。

実際、彼女がイスラムの全身ヴェールを着用し、家族の男達の意志に完全に従って隠れて暮らしていたことを政府の委員が指摘しました。

他方、受入、統合契約の枠組みでANAEMが提供する言語研修の際にブルカを着用した別のムスリム女性のケースについてHALDEは決定しなければなりませんでした。

ANAEMの局長はこの研修を受ける者がブルカないしニカブを脱ぐ義務は人権と基本的自由の保護に関する欧州協定の第9条と14条の要請に合致しているかどうか知るためにHALDEに問い合わせました。

2008年9月15日の審議によってHALDEはこうした義務が上述の協定に合致していると決定しました。

かくしてHALDEは次のような結論に到達しています。
-ブルカは女性の従属の意味合いを持っており、これは宗教的射程を超えて、フランスではじめて認められた外国人に対する義務的研修の計画と統合の推進を統べる共和主義的な価値への攻撃と考えられる得る。

-ニカブないしブルカを脱ぐ義務は公安上の要請、個人を特定する必要性、さらには他者の権利と自由の保護という合法的目的によって正当化され得る。

こうした判例は有益でありますが、フランスで我々が許容できないこうした実践に直面するには十分ではあり得ません。

こうした理由から国民議会がこの件を採りあげ、調査委員会が組織されるように提案がなされているのです。


この委員会は既に2003年に個人の自由と若い女性の状況の深刻な後退にのしかかる脅威を指摘した「シュタージ委員会」の作業の継続に位置することでしょう。

この委員会は我々のライシテの原理に反する、そして我々の自由、平等、人間の尊厳の価値に反するこの共同体主義的な逸脱に終止符を打つために現状を調査し、勧告を定めることを任務とするでしょう。

こうした観察を条件として、皆さん、この決議提案文を採用することを皆さんに求めます。

ついでに書いておくと、イランではブルカは着用されていなかったと思います。原理主義=ブルカという思い込みが感じられる部分でした。今日はここまでにしておきます。またなにか動きがあったら続けます。ではでは。

|

« ブルカをめぐる熱い論争(1) | トップページ | ブルカをめぐる熱い論争(3) »

フランス」カテゴリの記事

政治」カテゴリの記事

社会」カテゴリの記事

コメント

The personal loans seem to be essential for people, which would like to organize their company. By the way, that's comfortable to get a short term loan.

投稿: BoothCelina32 | 2012年1月 3日 (火) 18時33分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/507226/30409642

この記事へのトラックバック一覧です: ブルカをめぐる熱い論争(2):

» ◆夏帆◆入浴姿を盗撮される!?【動画】 [◆夏帆◆入浴姿を盗撮!?【動画】]
「ホームレス中学生」で姉役やフジテレビ系連続ドラマ「オトメン(乙男)」に出演している夏帆の入浴姿が盗撮されネットに流出して話題に!? [続きを読む]

受信: 2009年7月13日 (月) 03時51分

« ブルカをめぐる熱い論争(1) | トップページ | ブルカをめぐる熱い論争(3) »