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2009年11月

微妙な動き 

ずいぶんと急に寒くなってまいりましたね。ここのところずっと狭いけれども快適な穴蔵でぶつぶつとつぶやいておりましたが、季節も変り目ということでちょっとばかり地上に出てまいりました。なんだかまぶしい思いがいたします。透明な秋の空が目に沁みる。

サルコジ大統領に北朝鮮特使としてジャック・ラング氏が任命された際にはやや微妙な反響を引き起こしたようなのですが、メディアの関心も少し集まっているようなのでメモしておきます。

ラング氏ですが、ミッテラン政権の文化戦略で辣腕を振るったことで知られるなかなかカラフルな政治家で大統領候補にも名前があがったこともあるような大物です。この人が北朝鮮特使になった背景はよく分からないのですが、サルコジ政権の左翼の取り込みの一環として語られることが多いようです。野党の社会党の所属議員ですが、経歴を見ると分かるように文教畑の方です。

邦語ソースをググる限りは、この件はあんまり注目されていないようですね。まぁ、実際、どこまで注目すべきか微妙なんですけど。

北朝鮮特使に野党有力者を任命 フランス大統領[2009年10月2日産経]

ラング元文化相、北朝鮮訪問のためパリ出発[2009年10月3日産経]

北の核で連携、岡田外相とフランス特使が会談[2009年10月5日読売]

仏特使、11月上旬に訪朝 外交樹立を模索[2009年10月28日日経]

記事にあるように、10月1日に特使に任命された後、日本を皮切りに各国を歴訪して北朝鮮との国交樹立のために必要な「情報収集」を行ったとされますが、先月の半ば頃に11月初頭には北朝鮮訪問をする旨公表しています。この経緯については山口記者がブログ記事で興味深いエピソードとともに書かれています。

北朝鮮サッカー選手、キムチ持参でフランスで練習[イザ]

サッカーを使ったのですね。で記事にもあるように今さらなんでフランスがのこのこと出てくるわけ、という空気が流れているようです。最初から安保理常任理事国として英仏が協議の面子に入っていれば数の論理で日本の発言権もなんぼか増していたのかなぁ、などと思ったりもしますが・・・。

で英語ソースだとAPがまた微妙な味わいの記事を出しています。

"France wades into Bog of North Korean Diplomacy"[3.11.2009.AP]

ラング氏のミッションは公的には二国間の国交樹立を目指しているが、勿論狙いは6カ国協議に絡むことにあり、援助をえさに核問題の行き詰まりを打開することにあるとしています。

記事では、自分は「平和の戦士」だとか、朝鮮戦争と無関係なのでフランスは中立的な立場に立てるとか、なにかが少し動いているという直観があるだとか、ちょっと分かっているんですかねぇ、という発言が引用されています。

またなぜ元文化相なのかという点についても言及があり、氏は左翼の社会主義者だからキューバや北朝鮮を相手にするのには適しているだとか、実際に実務を担当するのは専門家たちなのだから氏でも特使は務まるだろう、といった意見が拾われています。

最後にこのフランスのアプローチは関係国の警戒を呼んだが、6カ国協議の枠組みを損なわないように動くことを約束している点について触れています。

不透明さの理由のひとつとしてラング氏は一国を代表しているのか、それともEUを代表しているつもりなのかがよく分からないという点が挙げられるでしょうか。支援云々についてもEU内で本当に議論がなされているの、フランスの独走じゃないの、と。後者でしょうけれど。

"France's envoy to North Korea"by Judah Grunstein[3.10.2009/World Politic Review]

それでこの件についてなにか分析はないかなと探してみたんですが、まだ初動の段階であまり見あたらないです。書き手は私もよく記事を目にするフランス・ウォッチャー氏ですが、ラング氏の任命に疑念を表明しています。

サルコジはオバマ就任以来ようやく外交的なsweet spotを見つけた。ブッシュ政権末期以来、サルコジは欧州でも大西洋でもフランス外交の信頼性を向上させるように努めてきた。しかし不人気な大統領の数少ないよき友であることは人気のある大統領の多くの友たちの中で舵取りすることに比べて容易い。

ラングの任命は様々なレベルにおいてよくない。米国人に説明は難しいが、ラングについてそれからフランス政界の中のラングの位置について知っている者には明らかだ。彼は人気にもかかわらず、彼の任務が必要とする威厳を欠いている。ラングのことは個人的に好きだが、平壌でもどこでも笑顔を浮かべる以外のことができるとは思えない。

これはまた国内政治のために社会党の有名人をピックアップするサルコジの努力である。しかし真剣な外交的イニシアティヴが展開する限り、これは測り難い。

といった具合にラング氏個人の適性への疑義を記しています。いかにも事情通の文章ですが、私の印象でもそんな感じですね。フランス文化の宣伝に平壌に乗り込むにはいいかもしれませんが、核問題とはなかなか結びつかない。記事は米仏関係でこの動きを理解していますが、対イラン外交とも合わせて考えないといけないのかもしれませんね。とりあえず外交ゲームの焦点を探して極東まで手を伸ばしてみましたといった感じなのかと思いましたが。

ともあれ、いったいなにをたくらんでやがるという関係国の疑いの視線を浴びながら、素敵な笑顔とともにラング氏がやって来るという話でした。

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