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複雑な関係

波乱含みで日米関係と日中関係が焦点化されている日々ですが、ル・モンドに後者について記事が出ていましたので紹介しておきます。

「北京と東京、複雑な関係」
“Pékin-Tokyo, une relation complexe” par Philippe Pons[l19.12.2009, Le Monde]

中国の副主席でおそらくは未来の「ナンバーワン」である習近平は好意的な扱いを受けた。政府の要請で、天皇との会見には一ヶ月前の事前申請を求めるプロトコルにもかかわらず、君主によって迎えられたのだ。その一方で彼が成田空港で篭城している同胞の馮正虎を目にすることはなかった。中国はこの問題には無関心なようであり、日本にとってはこうしたケースが提起されるのは初めてのことである。

人権は日本外交の「十八番」であったことはない。民主的価値の擁護者たる日本はこの件について激昂を示していない。

過去の拡張主義-とそれに伴う残虐行為-は日本をなかなか「教えを垂れる」位置には置かない。政治的現実主義もまた妥協的に振舞うことを強いている。1945年の敗北以降、日本は経済的観点を除けばアジアに無関心であるかのようであった。日本は明治時代(19世紀後半)の改革主義者達の思考の延長にあったが、彼らにとって、列島の近代化は「アジアの根を絶つこと」そして西洋、この場合、欧州の方法を採用することを要請するのであった。たとえ自由と権利の擁護者たる日本の思想家達が西洋の諸価値とその帝国主義の間の落差を非難したとしてもだ。

中間の道

列島は20世紀初頭に汎亜細亜主義のスローガン―間もなく帝国的イデオロギーとなった―の下にアジアを再発見した。

西洋との接触以来、日本は近代性の参照モデルとみなすものとの関係性において自らを定義づけようと止むことなく努めてきた。こうした思考は列島では極めて意味深長なものであり、1990年代には日本とアジアの同一化の支持者達は「アジアへの回帰」を告げることで明治時代の表現を転倒した。鳩山政権は中間の道に位置している。つまり一方の足を西洋に、もう一方の足をアジアに置いている。

民主党は前任者たる、半世紀にもわたって政治生活を支配した自由民主党よりも、「開かれた地域主義」の立役者となるべく、右翼のなかった主義(negationisme)とは断絶して戦前の負債を引き受ける用意があるようだ。中国の台頭は日本をして地域に再焦点化することだけなく、不快なテーマを避けて北京との良好な関係を築くことを余儀なくさせている。

以上、この地域に特に知識のない人々に向けて歴史的パースペクティブを与えようといった趣きの短い記事です。汎亜細亜主義の問題性についてはもう少し書いてもらいたいところもありますが、同記者は確か戦前の亜細亜主義者や親中派についての記事も書いていた記憶があります。個人的には「脱亜」とか「入亜」とかというのはどうも苦手なところがあるのですけれども(そもそも西洋とはなにか、アジアとはなにかの段階でつまづく)、この言説系譜で言えば、民主党は「中間の道」を歩んでいるとみているようです。

ついでに。特例会見で戦後的な立憲象徴君主制の根幹に無造作に触れた点には困惑させられました。これは親中とか反中とかいう問題ではないし、政治的なものと官僚的なものとの対立の問題でもない。国際政治の荒波に天皇陛下を巻き込むことは望ましいことなのかどうか、大げさに言えば、戦後的な「国体」概念に関わる要素を含んでいるだけに政府にはそれなりの理論武装が必要であるように思えます。また冒頭で国際的には大きく報じられているにもかかわらず日本国民にはあまり知られていない成田の馮正虎氏の問題に触れていますが、「教えを垂れる」ような高圧的な態度でなくとも政府はしっかりとした対応をしたほうがいいと思います。日中友好も結構な話でありますが、原則論的な部分については確固とした態度をとっていただきたいわけです。

追記

背景や経緯が十分に報じられていないところで少し大げさだったかもしれません。でもこういう不透明なやり方は個人的にとても望ましくないです。

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コメント

教えをたれる位置にたとう、という発想がそもそもおもしろいですね。

ツイッターの少し長めのようなブログの更新でいいんじゃないでしょうかね?

ぼくのなんかもツイッタとほとんどかわらない。
ツイッターって使い方知らないんですが、検索がないようなので、あとで探すのが不便といえば不便かな?

投稿: | 2009年12月22日 (火) 23時52分

他国に影響力を行使すべく人権カードを切るという発想は日本ではやや薄いですね。いまでもどちらかというと切られる立場のような感じで。

ついったーは記事リンクやリアルタイムのコメントのやりとりには便利ですが、おっしゃるように後から読み直すことをあまり想定していないですね。こちらのブログもどうにかしていきたいです。

投稿: mozu | 2009年12月23日 (水) 08時38分

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