カテゴリー「地方」の9件の記事

自衛隊がねぇ

なんだか隔世の感のあるニュースですね。大陸、半島に我らが自衛隊が上陸する状況というのは現実感をもって想像できなかったのですが。かすかな胸騒ぎのようなものを感じます。とりわけご年配の世代の方々の複雑な心中は察して余りあります。

自衛隊機派遣で日中両国が協議、民間機との組み合わせ案も[読売]

中国が四川大地震の被災者対策として、テントなど緊急支援物資の輸送を求めていることを受け、日本政府は航空自衛隊派遣などの準備を進めている。

防衛省は29日、C130輸送機3機による輸送計画をまとめた。ただ、中国には自衛隊派遣に反発する声も根強く、日中両政府は慎重に検討を進めている。

輸送計画は、3機のC130が3日間で計8往復し、四川省成都に陸上自衛隊や兵庫県などのテント計約200張り、毛布約3600枚、食料などを運ぶ内容だ。31日に派遣できるよう準備している。

一方、中国政府が自衛隊機を敬遠した場合に備え、C130と民間のチャーター機を組み合わせる案なども検討している。
(5月29日)

まだ協議中ですが、どうもこのプランは実現しそうな様子です。あちらさんでも人民解放軍の強硬派あたりはかなり不満でしょう。どう反響するのでしょうかね。またJapan observingにあるように、この救援要請は日本の左右のイデオロギー的な勢力を困惑させているようです。国家威信にかけて自衛隊の海外での活動の拡大を求めてきた反中的な勢力にとっては「まさか中国の救援をするとは」でしょうし、大陸への贖罪意識から逃れられず、非現実的な平和主義を唱えたきた親中的な勢力は「まさか中国から要請がくるとは」という気持ちでしょう。さっそく社民党が支離滅裂な反対をしていましたね。災害救助活動や人道復興支援はソフトパワーの面から言って軍にとって重要な活動だと思いますよ。どん底からスタートした自衛隊が日本国民の間で信頼を勝ち得てきたのはこの分野での貢献(怪獣や異星人との仮想的な戦いも含めて)が大きかったわけですし。

どうなるのか判りませんが、私としてはこのプランは支持したいです。自衛隊が大陸の土を踏む─輸送機が降下するだけかもしれませんが─というのは、あちらの反応は別にしても、我が国の国民心理にとってもひとつの転換点になり得るかもしれないですから。どういう意味での転換なのかはなかなか説明し難いのですが、大陸は戦後日本にとっても多かれ少なかれトラウマ的な土地であった訳でそこに自衛隊が降り立つことでより現実的な地平が開けてくるといいますか・・・、いや単純化し過ぎでしょうかね。なお「日中友好」みたいな陽気なお題目を素朴に信じている訳ではありませんが、疑心暗鬼が高進し過ぎないようにこうしたコミュニケーション履歴を重ねて行く必要はあるでしょう。

地方分権ネタはしばらくとり上げていませんでしたが、継続して追いかけています。道州制の議論の続報です。

行革推進の700人委員会、道州制導入を提言[読売]

有識者でつくる「日本再建のため行革を推進する700人委員会」の代表世話人を務める塩川正十郎・元財務相、水野清・元総務庁長官と、同委の道州制導入研究会の石原信雄座長(元官房副長官)らが26日、増田総務相に道州制の提言書を手渡した。

水野、石原両氏は記者会見し、「日本の統治構造を全面的に変えるために道州制導入が必要。2018年をメドに道州制を導入すべきだ」と強調した。総務相は提言に賛意を示したという。
[...]
 石原氏は、「行政改革の総仕上げとして、道州制導入を提言した。我々の言う道州は国内行政の大半を担当し完全な地方自治体とする。国の出先機関との位置づけは一切ない」と主張した。
(2008年5月26日)

こちらは有識者による行革推進のための700人委員会が道州制案を提出したというニュースです。最近行った会議の報告のPDFがありました。骨子ですのであまり踏み込んだ記述がないですね。行財政改革としての道州制というトーンが強いですが、区割りの問題と地方財政の基盤をどう考えているのかはこれだけだとよく判りませんね。

自民、道州制区割りで4案まとめる…分割数は9と11[読売]

自民党の道州制推進本部(本部長・谷垣政調会長)は29日、道州制の区割りに関し、9ブロックに分ける案と11ブロックに分ける3案の計4案をまとめた。

これらを基に道州制議論を進める考えで、6月には全国の知事や都道府県議会議長と意見交換する予定だ。

9道州案は、北海道、東北、北関東、南関東、中部、関西、中国・四国、九州、沖縄にブロックを分けている。このうち、中部を北陸と東海に、中国・四国を中国と四国に分割したのが11道州案だ。

11道州案は、新潟県を北関東と東北のどちらに入れるか、埼玉県を南関東と北関東のどちらに入れるかにより、3案に分けている。

いずれも、北海道と沖縄県は単独の道州としているのが特徴だ。東京都は南関東に入れているが、「道州から独立させるべきだ」という意見もあり、さらに議論を詰める予定だ。
[...]
政府は道州制について、増田総務相(道州制担当)の私的懇談会「道州制ビジョン懇談会」(座長・江口克彦PHP総合研究所社長)で検討を進めている。しかし、3月にまとめた中間報告では、区割りや税財政制度を先送りにするなど、議論は深まっていない。
(2008年5月29日)

政府の中間報告は区割り議論を回避しましたが、自民党案はいくつかの案を併記しているようです。第3次中間報告はまだアップされていませんね。去年の第2次中間報告のPDFはこれです。理念的な記述が多いのはいいですが、細部の議論はつめられていないように見えますね。特に財政の部分。地方交付税交付金と国庫支出金の体系をどうするのか、プロの財政学者の意見を伺いたいところです。今度の報告では区割り案も含まれているようですが、前にも書いた通り、区割りの話は人々の関心を集めやすいだけに紛糾しがちであまり実があがらないうらみがありますので、北海道や九州などパイロット地区を定めて推進してしまうのが早いような気がします。ネットで調べた限りでは、九州が一番進んだ議論を展開していますね。地方からの議論がもっと盛んになることを期待しております。

追記
投稿した先から当面見送りとの報せ。「当面」ですから可能性はまだあるのかもしれませんが、中国世論の反応を探る意味合いもあってのアナウンスだったのかもしれませんね。6月中に例の防衛交流の一環で海自が訪中する予定ですし。

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地方広域計画についてのメモ

道州制に関するメモとして「道州制ビジョン懇談会」の報告について以前紹介しましたが、こちらは国土交通省の方の「国土形成計画」の話です。この計画の中の「広域地方計画」というのは全国を8つのブロックに分けて地域振興をはかるというものです。道州制の区割りの議論とは別ということでなんだかすっきりしない話ではありますが、同時に進行している動きとして注目したいと思います。

なにが計画対象なのかについては国交省のサイトからコピーしたフォトをご覧下さい。かなり広範囲にわたるようですね。
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「ヤフーみんなの政治」に「道州制を先取りした練習問題」というタイトルの記事がありましたのでクリップします。計画の概要と提言です。

直接道州制を名乗ってはいないものの、道州制時代を先取りする動きが始まっている。それが国土交通省が策定を進める「国土形成計画」における「広域地方計画」である。   国土形成計画は、全国総合開発計画を前身とする。1962年の「一全総」以来、5次にわたって描かれた計画は、それぞれ10年程度を計画期間とし、道路や河川をはじめとした分野ごとの公共投資計画を集大成したものであった。 [...] しかし、高度成長を背景とした開発至上主義はバブル崩壊とともに綻び、地方分権の流れのなかで国が国土計画をつくることへの疑問が呈された。 [...]  そこで関係法令が改正され、全総計画に代わって策定されることになったのが国土形成計画である。内容面の目玉は「開発主義からの脱却」が明確に謳われたことだ。「開発プロジェクトてんこ盛り」であった全総から、いわば「成熟社会の国土利用の指針」へと様変わりした。   より大きな特徴は方法論にある。国土形成計画は「全国計画」と「広域地方計画」から構成されるが、従来は国が策定してきた後者を、初めて地域が自らまとめ上げることになったのである。 [...]   これを受けて各地域ブロックは2008年度中に広域地方計画の策定を進める。圏域設定は、東北圏、首都圏、北陸圏、中部圏、近畿圏、中国圏、四国圏、九州圏の8ブロック。境界地域の自治体は相手圏域の検討に加わることが可能とされており、これ自体が道州制の区割りに直結するものではない。また北海道と沖縄は国直轄の振興計画があるため、広域地方計画は策定されない。

というように前身は全国総合開発計画で高度成長期の「開発主義的」な国土計画の軸だったが、バブル以降は「成熟社会の国土利用」へとその理念を転じたという歴史的経緯、また国交省から地方へと計画作成の主導権が移されたことに触れています。この記事は後半で国と地方の垂直調整ではなく地方同士の水平調整の必要性を述べ、うちも空港が欲しいというような都道府県計画の「寄せ集め」ではなく、グローバルな視点をもった地域戦略に裏付けられた「選りすぐり」の計画をまとめ上げるという作業を地方自らが行う練習の機会であると結んでいます。

この記事の主旨にはまあそうですよねと感想なんですが、総務省と国交省と別々にやっていてどこかで一本化しないと競合してちぐはぐな結果にならないかなと思うのはわたしだけではないでしょう。内容的にもダブる部分がかなり多いですしね。それから道州制をめぐってはあれだけ紛糾しているのにこの「広域地方」の区割りについては問題はなかったのでしょうかね。

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地方ニュース(3) 北海道

世界は騒然としていますが、足下を見つめよということで地方ニュースのクリップ。

道、今年度に327権限を移譲・市町村に大型店出店許可など[日経]

道から市町村への権限移譲を巡り、道は9日、2008年度中に327項目の許認可などの権限を128市町村に移す方針を、道議会への報告書で示した。将来の道州制への移行や支庁再編構想をにらみ、道は約4000項目の権限のうち2683件を順次市町村に移す計画。今後も市町村の意向を踏まえつつ自ら地方分権を進め、住民の利便性向上などにつなげる。
今年度は大規模小売店舗立地法に基づく大型店の出店許可権限や、河川での砂利採取の許可や埋め戻しをしたか監督する権限などを移す。06年度から進める、パスポート申請の窓口業務の市町村移管も拡大する。

というわけで以前に紹介した道州制に向けて熱心な北海道ですが、着々と道から市町村への権限委譲を進めています。既にパスポート申請がいくつかの市役所や町役場でできるようになっていて好評であるとのことです。以前のエントリでも書きましたが、北海道の場合には県の統廃合が必要ないですので、まず道から市町村レベルへの権限委譲を進めつつ、次に国から道への権限委譲がなされるならばスムーズに道州制に移行できるわけです。地方分権のパイロット地域の実験として北海道のケースはたいへん興味深いものがありますので今後も注視していきたいと思います。

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地方ニュース(2)

地方関連のニュース・クリップです。

ベルギーのデクシア銀、日本の自治体への投融資残高1兆円台に[日経]

自治体向け融資で世界最大手の仏ベルギー系デクシア・クレディ・ローカル銀行の日本の自治体向け投融資残高が、2月末に初めて1兆円を突破した。日本での営業は2006年12月に始めたばかりで、邦銀が手掛けない超長期融資で取引を急拡大している。
2月末の東京支店の自治体向け投融資残高は、1兆226億円だった。内訳は貸し出しが27自治体向けに3823億円、債券購入が41自治体向けに6403億円だった。
自治体の債務残高は約200兆円。国が地方自治体への貸し出しを減らし、自治体の新規の資金調達に占める民間資金の割合は6割超にまで高まっている。

地方財政について考えるとだんだん鬱になってくるのですが、ファイナンスの形もずいぶん変化していますね。デクシアについては知ってはいましたが、ずいぶん突っ込んでいるんですねぇ。超長期融資ということですからそれほどやばくはないでしょうが、これまわるんだろうか。記事にもありますが、国の貸し出しから民間資金へという流れはどんどん加速しているようです。

山口FGが地域ファンド・山口など3県70社に投資[日経]

山口フィナンシャルグループ(FG)の山口銀行ともみじ銀行、ワイエム証券(山口県下関市)は7日、地域ファンドの取り扱いを始める。投資対象は広島県や福岡県、山口県に本社を置く上場企業を中心とし、マツダや中国電力、九州電力など70社程度に投資する。地元企業への投資で地域経済の活性化につなげる
[...]
中国地方の企業の株価も指標的には割安となっているため、「投資利回りが確保できると判断した」(もみじ銀行)としている。

福岡、山口、広島の三県の上場企業向けに山口FGが地域ファンドを立ち上げたというニュースです。しばらく前から地域ファンドやコミュニティ・ファンドがローカルな新しい資金の流れをつくる形ということで続々と設立されているようなのですが、うまくいっている事例が知りたいです。

On Japan’s Catholic Outposts, Faith Abides Even as the Churches Dwindle[NewYorkTimes]
例の大西記者ですが、この人はイデオロギーの絡まないネタではけっこういい記事を書くということは認めなければならないでしょう。前にも離島についていい記事を書いていました。ちゃんと取材していますしね。五島列島のキリスト教コミュニティーの話です。過疎化、少子化の影響でどんどん信者が離れている現状についてレポートしています。ここは約25000人のうち4分の1という他の地域では考えられないほどの人口比率がカトリックであることで知られています。隠れキリシタンの里ですね。当地の暮らしの中の信仰の様子についてもよく書けています。ところで五島列島は日本史を考える上でも面白いトポスですよね。

PS 徳島市長選は現職の自公推薦候補が当選したようですね。当地についてなにも知らない者が言うのもなんですが、遠くの地より善政への期待申し上げます。またここで山口FGのニュースをとりあげましたが、ふくおかFGは大幅な評価損を出してしまった模様orz

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地方ニュース

千葉市、市債格付け「A+」 財政健全化へ意欲[朝日]
千葉市が米国の大手信用格付け会社スタンダード・アンド・プアーズに市債の格付けを依頼し、「A+」の評価を得たというニュースです。他に横浜、京都、大阪、新潟が格付けを取得しているそうです。安定した財政基盤をもつ自治体はどんどん乗り出すことになるのでしょう。この手の格付け会社ってあまり信用していないんですけどもね。日本でもつくればいいのに。

同社は、千葉市を重工業プラントのほか、外資系企業の業務・研究拠点などが集まる成長地域と評価。人口も増え続けており、安定した自主財源基盤を持つとしている。

 一方、都市基盤整備や市街地活性化策を相次いで進めたため債務負担が非常に重く、徴税率や各種料金の徴収率も他の政令指定市に比べ見劣りすると分析している。

千葉市って今ひとつキャラクターを把握しにくいような気がしますが、わたしが知らないだけかな。観光案内をざっと見るに千葉城、千葉寺、千葉神社、青木昆陽、それに貝塚ですか。千葉氏のこともよく知らなかったのですが、相馬氏のご先祖様なんですね。麻生太郎氏ともご縁があるとはなんとも数奇なことです。

地方政府創造会議が初会合・分権提言へ、せんたく議連と連携も[日経]
例のせんたくが地方分権推進をめざす地方政府創造会議の初会合を都内で開いたとのことです。山田啓二京都府知事が座長となり、約40人の首長さんが出席しましたが、地方自治体の行財政改革や国の出先機関の廃止・縮小などに関する提言をおこなっていくそうです。これまで東国原知事人気にあやかって注目をあびることが多かったように見えるせんたくですが、今後地方分権論をめぐってどんどん具体的かつ実効性のあるアイディアを出していってほしいです。

徳島市長選に三人が立候補[日経]
任期満了に伴う徳島市長選が告示されたとのこと。再選を目指す自公推薦の現職の原秀樹氏(52)、共産推薦の新人で徳島大名誉教授の十枝修氏(66)、民主推薦の新人で会社役員の加藤真志氏(60)の三氏が立候補を届け出たそうです。投開票は4月6日とのことですが、JANJANに三氏のマニフェスト分析がありました。JANJAN的なものにはいささか懐疑的なわたしですが、こういう記事はいいですね。

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道州制に関するメモ(3)

九州の事例を紹介しましたが、北海道もまた道州制の実現にむけて積極的な姿勢で知られていますね。日本の両端から大きな声があがっているわけです。どちらも地理的な完結性をもっている点で共通していますが、地域意識も重要なのでしょう。「日本のアメリカ」とも言われる北海道が他の地域とは異なったその歴史的成り立ちから特有の地域性を保持していることはあらためて指摘するまでもないでしょう。なにか感覚が違いますよね、北海道出身者と話していて感じることがあります。

北海道は自らを道州制のパイロット地域と位置づけ、その先行的な実現を求めています。新たな行政区の画定が必要ないですから「縦の区割り」だけでいい、道州制の実現は最短コースとなるわけです。それだけ導入しやすい。また北海道が重要なのは九州に比べて経済的に弱い地域である点です。夢みる九州に対べて、北海道はより厳しい認識をもってなお道州制の実現を求めているわけです。地方分権化や道州制論に対してそれは「地方の切り捨て」だという左右の国家主義者からの批判があるわけですが、この点において厳しい財政事情の北海道のケースは注目に値するでしょう。

北海道庁のHPが道州制に関して詳細なコーナーを設けていますが、そこにあったこのPDFは北海道の思考を端的に伝えていると思われます。まず「官治的」な地方分権ではなく、住民自治の拡充を目指すとのことですが、地域間の経済格差、財政格差がある以上、自己完結型の道州制論(九州の「自律経済圏」)には立てないと述べています。そのうち2点についてだけ紹介します。ひとつは「縦の区割り」の問題、もうひとつは財政問題についてです。

先に述べましたように、北海道の場合は「横の区割り」は必要ない。国、道、市町村の役割分担だけに論点は集約されます。北海道の考える役割分担は、

・国の役割
外交、国防、社会保障
・道の役割
警察、高等教育、都市計画、産業政策、電源開発、金融、運輸、雇用、環境対策
・市町村の役割
消防、初等中等教育、都市計画、保健福祉、公衆衛生

といった感じで九州と同じく「ラディカルな」分権論に近いと言えます。法的には連邦制ではないが、実質的にはそれに近いイメージです。また公共事業に関しても国からのバラマキでなく道や市町村レベルで主体的に行うのが望ましいと述べられています。

次に財政問題ですが、まず北海道は財政力指数で全国的に下位にあり、市町村レベルでも自主財源でまわっているのはわずかというシビアな現状であります。97年と古い統計ですが、地方税収入が18%に対して地方交付税が23%、国庫支出金が22%とのこと。ふう。税源移譲した場合のシミュレーションによれば、移譲額は現在の交付税より1兆円低くなってしまうとこのこと。ふう。

というわけで経済的に完全に自立するのは無理なわけです。それで財源をどうするのかという問題になりますが、まず同州間での水平的財政調整モデルが挙げられています。各州間で所得移転をするやり方でドイツ連邦で採用されているそうです。ところが試算してみるとこの方式でも財政はもたないようです。それでどうするかですが、国庫支出金は全廃、また特定財源(いわゆるヒモつき財源)も可能な限り減らす必要がある述べ、地方税と地方交付税のふたつで構成される財政を理想型として提出しています。根拠はどちらも地方自治体の自由裁量が認められている一般財源であり、地方自治の理念からいって望ましいからであるとしています。

以下ややテクニカルになりますが、地方交付税のあり方についても現状維持でよしとはせず、現在の補助金化したあり方を改革すること、簡素化することで財政調整機能を充実させた新たな交付税のあり方を提言しています。またこの新しい地方交付税が確立するまでは国庫支出金を廃止する代わりに暫定的に包括的補助金という制度にすべきだとしています。これはフィンランドの制度だそうで、国が支出項目を細かく決定せずに地方に任せる補助金のあり方だそうです。また建設事業に関して国庫支出金ではなく一括交付金にすべきだと述べていますが、これも同様の論理で、要は地方の裁量を大きくするということです。

「道州制は自主・自律のバラ色の未来ではなく、国の財政構造改革により公共事業が減少していく中で、公共事業に依存してきた地域社会と経済を支えるため自らに厳しい改革を課す取組ともなり得るのである」という言葉が端的に示しているように、厳しい改革の試練としてとらえています。

もちろん完全自立できないところに所得移転はなされるべきだと思いますが、その条件は透明性が確保されていること、効率的な経営がなされていることにあります。大都市圏の住民たちが怒っているのは非効率なバラマキであります。北海道の提言する新たな地方財政のあり方がそれに答えるものであるのかどうかはわたしの能力を超えています。経済学者や財政学者のみなさんの評価を読んでみたいところですね。

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道州制に関するメモ(2)

九州地方が明治維新および日本の近代化を推進する上で重要な役割を果たしたことについてはいまさら強調するまでもないことです。それに先立つ幕藩体制下においても先見の明をもった藩主の下で多様な政治的、経済的実験が試みられたことでも知られるお国柄です。この進取の気性に富んだ地方が件の道州制論議をリードしていることも頷ける話であります。中央からの議論ばかりでなく、地方からの議論が活発化するのがいいと書きましたが、麻生氏の道州制論は九州発の議論なんですよね。

九州知事会および九経連が提唱している「九州モデル」は今後の道州制議論に大きな影響を与える可能性を秘めたものとして注目されていますが、わたしの関心に引き寄せてその一部を紹介しておきます。いろいろなソースがありますが、この九経連のPDFが包括的で分かりやすいでしょう。

九州が目指すべき道州制とは「自律的経済圏」を可能とする地方自治システムであるとし、5つの戦略を柱にしています。

(1)広域的な産業政策の展開
(2)競争力のある社会資本の蓄積
(3)人材力を高める教育の推進
(4)対外的な情報発信 PR戦略の強化
(5)広域的な生活環境の整備

それぞれ要点だけ述べると、
(1)これまで県や市町村単位で行ってきた非効率な産業政策を改め、州政策として産業クラスターの形成をすすめる。既存の半導体、自動車、環境産業のクラスターに加えて、ロボットやバイオテクノロジーの産業集積を推進する。
(2)循環型高速交通体系の整備、港湾、空港整備による域外ネットワークの形成をすすめる。財政事情を勘案して選択と集中の原則により効率的なネットワークを構築する。
(3)半導体、バイオテクノロジーなどの分野での産学連携を進め、海外との連携を強化するために語学力の強化をはかる。ドイツの州立大学のモデルを挙げています。
(4)アジアからの観光客の受け入れ、アジア企業の誘致をサポートする。
(5)州の観点からの交通計画や都市計画、九州独自の環境政策、防災、救急、消防エリアの再編成をすすめる。

特に重要なのが、国、州、市町村の役割分担です。空間的な区割りでなく、「縦の区割り」ですね。ここで提唱されているのはわたしの望む「ラディカルな」分権論に近いものです。これによると、

・国の役割
   外交、防衛、国全体の治安維持に関わること
   一律の基準が必要な分野(法律、金融、社会保障)
   広範囲にわたる大規模プロジェクト、政策等
・州の役割
   域内の治安維持、災害対策に関わること
   域内の国土、環境保全
   広範囲にわたる社会資本整備の計画
   地域の特性を活かした教育
   競争力をもつ産業の育成
   地域の実情に沿った雇用政策
・市町村の役割
   住民生活と密接に関わる分野
   医療、福祉に関わる分野
   下水道、公園、街路の整備やまちづくり

最後に道州制への移行については漸次的なアプローチを主張しています。まず地方分権の推進、県間連携の強化、市町村機能の強化の段階、次に、県連合の形成の段階、最後に州への移行です。順序論としては基本的に正しいと思いますが、この過程では激しい権限と利権をめぐる角逐がみられるでしょう。期限を切って強力に押し進めていかないといけないでしょうね。

日経連は全国一律ではなく九州先行で道州制の導入を求めているようです。成功例をつくることが肝要なのかもしれませんが、九州は「自律的経済圏」の形成におそらく成功するでしょう、それだけの潜在力がある。まあ夢があっていいですね。

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道州制に関するメモ(1)

区割りの議論の例としてWikipediaからフォトをコピペしておきます。これは内閣総理大臣の諮問機関である地方制度調査会が2006年に発表した「道州制のあり方に関する答申」の案です。上からそれぞれ9道州制、11道州制、13道州制のプランです。他に経団連が10程度、大前研一氏が12道州制のプランを出しているようですね。各州のGDPのデータがWikipediaには記載されています。

これを眺めているとそれだけでいろいろ考えさせられて楽しいのですが、そこが区割りの議論の危うさかもしれません。実際、道州制の議論で一番大切なのは中央と地方の権限の画定にあるわけですから。単に行政区画の組み替えで中央集権が維持されるようならば地方の政治的、経済的成熟は期待できそうにない。区割りについても現在の行政単位の単なる足し算ではなく、住民のニーズに答えるためにも都市間ネットワークの構造をベースに考えていく必要があるのでしょう。そのためにも中央からの議論ばかりでなく地方からの議論が活発化するのが望ましい。

ナショナルミニマムの維持は言うまでもないですが、わたし自身は中央政府は主として外交、安全保障を扱い、それ以外の分野は地方政府が自主的に行うという「ラディカルな」枠組みが好ましいと思っています。となると区割りは4つとか5つとか大きなものになるのでしょうか。いずれにせよそうとう戦略的にやらないと中途半端な結果に終わりそうな予感がします。手順論が重要になるでしょうね。300pxregion_system9
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道州制についての中間報告

総務省の私的懇談会である「道州制ビジョン懇談会」が中間報告をとりまとめて総務相に提出したとのこと。以下、読売の記事です。

増田総務相の私的懇談会「道州制ビジョン懇談会」(座長・江口克彦PHP総合研究所社長)は24日、中間報告を取りまとめ、総務相に提出した。

国と道州、基礎自治体の役割分担を明確に規定した上で、2011年までに「道州制基本法」(仮称)を制定し、18年までに道州制に完全移行するよう提言した。

焦点だった道州の区割りと税財政制度については、専門委員会を設置して検討するとし、09年度中にまとめる最終報告に結論を先送りした。

中間報告では、「中央集権体制が日本を衰退させている」と分析、各地域が繁栄の拠点として活力を回復できる新しい体制整備が必要だとした。中央政府の権限を限定し、地域で生活や地域振興を独自決定できるよう「地域主権型道州制」への転換により、道州間の「善政競争」が促進され、日本全体に活気がよみがえるとしている。

具体的には、国の役割は外交や大規模災害対策など16項目を基本とし、道州は広域の公共事業や市町村間の財政格差の調整などを行う。福祉、教育、都市計画など身近な行政サービスは基礎自治体が実施。国と道州間の行財政の調整は「国・道州連絡協議会」(仮称)が担うとした。道州の組織面では「広範な自主立法権を持つ1院制議会」を設置、首長、議員は直接選挙で選ぶ。課税自主権を与え、道州債の発行も可能とする。道州制移行は全国一律が望ましいとし、基本法制定後、首相を長とする「道州制諮問会議」(仮称)を設置するとした。

この懇談会のサイトでこれまでの議事録が公開されています。そのうち目を通しましょう。国と道州政府との権限の画定が焦点になるのでしょうが、中央官僚の猛攻が予想されます。わたしは分権論者ですのでこの動きが失速しないことを願っています。

政界のキーマンでは麻生氏が少し前にVoiceに道州制についての未来のヴィジョンを論じています。なかなか痛快なヴィジョンにみえてくるのがたいしたものです。ちなみに左派からは民族主義者のレッテルをはられがちですが、そのプレゼン能力と卓越した交渉力を買っているわたしとしては残念なことだなと思っています。閣下、くれぐれも失言にご注意ください。

日本自由主義界の雄、石橋湛山の言葉を引用しておきます。普通のことを言っているだけなのでなにも湛山の権威を借りることもないのですが、言っていることが今とあんまり変わらないなあという感想です。第二維新ですか、そう思うと夢が膨らもうではないですか。

元来、我が行政組織は、維新革命の勝利者が、いわゆる官僚政治の形において、新社会制度の下において、国民を指導誘掖する建て前の上に発達し来ったものである。であるから、役人畑に育て上げられた官僚が、国民の支配者として、国民の指導者として、国運進退の一切の責任を荷なうという制度に、自然ならざるを得なかった。これ、我が政治が国民の政治でなくて官僚の政治であり、我が役人が国民の公僕でなくて国民の支配者である所以であり、我が行政制度が世界に稀な中央集権主義であり、画一主義的である根因である。

[...]
元来官僚が国民を指導するというが如きは、革命時代の一時的変態に過ぎない。国民一般が一人前に発達したる後においては、政治は必然に国民によって行なわるべきであり、役人は国民の公僕に帰るべきである。而して、政治が国民自らの手に帰するとは、一はかくして最もよくその要求を達成し得る政治を行い、一はかくして最もよくその政治を監督し得る意味にほかならない。このためには、政治は出来るだけ地方分権でならなくてはならぬ。出来るだけその地方の要求に応じ得るものでなくてはならぬ。現に活社会に敏腕を振いつつある最も優秀の人材を自由に行政の中心に立たしめ得る制度でなくてはならぬ。ここに勢い、これまでの官僚的制度につきものの中央集権、画一主義、官僚万能主義(特に文官任用令の如き)というが如き行政制度は、根本的改革の必要に迫られざるを得ない。

[...]
今や我が国はあらゆる方面に行詰まってきた。而してこの局面を打開して、再び我が国の国運の進退を図るためには、我輩がこれまで繰り返し言える如く、いわゆる第二維新を必要とする。而していわゆる第二維新のため、就中この際最も必要なることは、国民の聡明と努力とを組織化して、最も有効にこれを利用することである。

[...]
古き革袋に新しき酒は盛られない。我が現在の息詰まりを打開する第二維新の第一歩は、政治の中央集権、画一主義、官僚主義を破殻して、徹底せる分権主義を採用することである。この主義の下に行政の一大改革を行うことである。
「行政改革の根本主義 中央集権から分権主義へ」(大正13年9月6日号東洋経済新報社説)

PS 毎日の記事が道州制論議の見取り図を提供してくれます。これによると現在の焦点は「区割り」で、道州制ビジョン懇談会は2年以内に結論を出すということで問題を先送りしたそうです。他に自民党の調査会の案や経団連の案など様々な構想がせめぎあっていて混沌とした状況である模様。

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